- はじめに
- 第1章 評価の基本的な考え方
- T 指導要録の改善と目標に準拠した評価
- 1 学習指導要領で育てる学力をどうとらえるか
- 2 評価はどのような考え方を基に改善されたか
- U 観点別学習状況の評価の観点とその趣旨
- 1 教科目標と評価の観点とのかかわりはどうか
- 2 家庭分野の目標と評価の観点とのかかわりはどうか
- V 観点別学習状況の評価と評価規準
- 1 育てる資質・能力の明確化を図る
- 2 評価規準を作成する
- W 観点別学習状況の評価に当たっての配慮事項
- X 指導に生かす評価の工夫改善
- 1 指導と評価の一体化を図る
- 2 評価の工夫改善を図る
- Y 観点別学習状況の評価の総括
- Z 選択教科としての技術・家庭科の評価
- 第2章 評価の進め方
- T 指導計画と評価計画の作成
- 1 指導計画と評価計画はどのような手順で作成するか
- 2 評価計画の作成に当たっての配慮事項は何か
- 3 評価はいつ行うのか
- U 観点別学習状況の評価の進め方
- 1 題材の指導目標を設定する
- 2 題材の評価規準を設定する
- 3 学習活動における具体の評価規準を設定する
- 4 「判断のための視点」について検討する
- 5 評価方法の工夫改善を図る
- 6 毎時の評価を行う
- V 観点別学習状況の評価の総括
- 1 題材ごとの観点別学習状況の評価の総括
- 2 分野ごとの観点別学習状況の評価の総括
- 3 学期末及び学年末の観点別学習状況の評価の総括
- 第3章 評定への総括
- T 観点別学習状況の評価と評定とのかかわり
- 1 観点別学習状況の評価と評定の表示とのかかわりはどうか
- 2 観点別学習状況の評価と評定とのかかわりはどうか
- U 観点別学習状況の評価の評定への総括の実際
- 1 4観点のABCの出現パターンから決める
- 2 ABCを点数化して総括する
- 3 点数化した素点を基に総括する
- 第4章 指導の充実を図る評価事例
- A1 中学生の栄養と食事
- A2 食品の選択と日常食の調理の基礎
- A3 衣服の選択と手入れ
- A4 室内環境の整備
- A5 食生活の課題と調理の応用
- A6 簡単な衣服の製作
- B1 自分の成長と家族や家庭生活
- B2 幼児の発達と家族
- B3 家庭と家族関係
- B4 家庭生活と消費
- B5 幼児の生活と幼児との触れ合い
- B6 家庭生活と地域とのかかわり
はじめに
平成10年に告示された中学校学習指導要領は,移行期間を経て,平成14年度から全面実施されている。この学習指導要領では,基礎的・基本的な内容を習得させるとともに,自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育成することを基本的なねらいとしている。すなわち,中学校で身に付けさせる学力を,学習指導要領に示された「基礎的・基本的な内容の定着」と「生きる力」ととらえることができる。
また,このような学習指導要領のねらいを実現するためには,評価の改善が必要であるとして,平成11年12月17日に,文部大臣から教育課程審議会に諮問が行われた。諮問事項は,(1)今後の児童生徒の学習の評価の在り方,(2)学習指導要領に示す目標・内容の達成状況の評価の在り方,(3)教育課程の実施状況等から見た学校の自己点検・自己評価の在り方の3つであり,教育課程審議会からは,平成12年12月4日に「児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方について」(答申)が公表された。
答申の中では,評価の機能と今後の課題とし,学校が児童生徒の学習状況の評価を行うことは学校の基本的な責務であるとし,学校及び国・地域における児童生徒の学習状況や教育課程の実施状況等の評価をそれぞれの段階において充実させることが重要であるとしている。これからの評価の基本的な考え方としては,学習指導要領の目標に照らしてその実現状況を見る「目標に準拠した評価」を一層重視するとともに,個人内評価を工夫することが重要であること,指導と評価の一体化を図るとともに,評価方法の工夫改善を図ること,学校全体としての評価の取組みを進めることが重要であるとしている。また,評価の基本的な考え方を基にして,指導要録改善の基本方針等,児童生徒の学習状況を客観的に評価するための方策としての評価規準,評価方法等の研究開発,全国的かつ総合的な学力調査の実施について提言されている。さらに,教育課程の実施状況等から見た学校の自己点検・自己評価の推進をすることが学校の責務であると指摘されている。
このような教育課程審議会答申の提言を受けて,平成13年4月27日には,文部科学省初等中等教育局長から,指導要録の改善通知が発出された。指導要録の改善通知では,各教科の学習の記録について,学習指導要領に示す目標に照らして,その実現状況を観点ごとに評価しA,B,Cの記号により評価する観点別学習状況の評価を基本とするとともに,評定については,目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)と改めることとされた。また,生徒の学習状況の評価が,自ら学ぶ意欲や問題解決の能力,個性の伸長などに資するよう,一人一人のよい点や可能性,進歩の状況などを評価する個人内評価を工夫することが重要であるとされ,指導要録の「総合所見及び指導上参考となる諸事項」の欄に記入することとされた。
国立教育政策研究所教育課程研究センターでは,平成13年2月に各教科ごとの「評価規準,評価方法の研究開発に関する検討委員会」を発足させ,同年5月の中間整理の公表,教育課程研究指定校における検証の結果等についての検討を経て,平成14年2月に「評価規準の作成,評価方法の工夫改善のための参考資料」を公表している。
技術・家庭科の指導は,教科目標・分野目標の実現を目指し,適切な題材を設定して指導計画の作成,授業実践,評価という一連の活動を繰り返して展開されている。したがって,技術・家庭科の学習指導を進めるに当たっては,まず,教師が学習指導要領に示された技術・家庭科の目標,各分野の目標及び内容,内容の取扱い,指導計画の作成と内容の取扱いについて十分に理解し,基礎的・基本的な内容とそこで育てる資質・能力を確認することが重要なことになる。また,生徒の学習状況の評価は,教科目標・分野目標の実現状況をみると同時に,教師の指導計画・指導方法等が適切であったかどうかを反省し,学習指導の改善に生かすために行っているといえる。すなわち,学習指導要領に示された基礎的・基本的な内容を確実に習得させるためには,学習指導の過程における生徒の学習状況を細かく見取り,「おおむね満足」と判断される状況に到らない生徒には適切な補充指導を行うなど,指導に生かす評価を工夫することが求められているのである。
技術・家庭科家庭分野の学習指導が充実し,育てる資質・能力が確実に身に付くことは,生徒が自分のもてる能力を発揮して自己実現を図り,ともに助け合う共生社会を築く上で重要であるばかりでなく,少子高齢化,高度情報化,国際化などの大きな変化が予測される我が国の社会を活性化する上で,根幹となる重要なことだと考えている。
本書は,一人でも多くの生徒に技術・家庭科家庭分野で育てる資質・能力が確実に身に付くことを願い,指導と評価をどのように一体化させたらよいかを考える資料となることを意図して,第1章 評価の基本的な考え方,第2章 評価の進め方,第3章 評定への総括,第4章 指導の充実を図る評価事例 として構成した。本書を参考にして,指導と評価の一体化を図ったり,評価の工夫改善を図ったりするなど,生徒の目の輝く授業と社会の要請に応える教育の両面を踏まえた教育活動に取り組んでいただくことを期待している。
公務ご多忙中にもかかわらず,評価の在り方や評価を生かした指導事例などについて,ご執筆いただいた皆様方には心から感謝を申し上げる次第である。
平成15年6月15日
文部科学省初等中等教育局主任視学官 /河野 公子
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- 明治図書