観察・実験を取り入れる数学の授業紙教具がつくる数学とのふれあい

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生徒が,数学的教具を通して数学とふれあい,数学を自分の中につくることを意識した授業にするため,観察・実験の内容と方法や型紙を例示。


復刊時予価: 2,211円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-567206-3
ジャンル:
算数・数学
刊行:
3刷
対象:
中学校
仕様:
B5判 112頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
T 観察・実験の内容、方法および教具の型紙
本書の使い方
1年
1−0 オリエンテーション〈数学の学習を始めるにあたって〉
1−1 加法・減法計算尺〈正負の数の加法と減法〉
1−2 正負の数パズル〈正負の数の四則,累乗〉
1−3 ○○人に聞きました,「代入」といったらどれ〈代入〉
1−4 方程式てんびん〈方程式〉
1−5 あみだ式ブラックボックス〈関数,比例,反比例〉
1−6 座標キャンバス〈座標〉
1−7 タングラム〈平面図形〉
1−8 作図おみくじ〈作図〉
1−9 3平面の合体〈直線や平面の位置関係〉
2年
2−1 等式の変形杯ゴルフ大会〈等式の変形,フローチャート〉
2−2 鶴と亀がすうべった、おのおの何頭〈連立方程式〉
2−3 シーソー型さおばかり〈1次関数〉
2−4 ダイヤグラム〈1次関数のグラフの利用
2−5 つくって使おう合同条件〈三角形の合同条件〉
2−6 証明訓練センターへようこそ〈証明〉
2−7 いつまでも平行四辺形〈いろいろな四角形〉
3年
3−1 乗法公式10ゲーム〈展開,素数〉
3−2 平方根ブラックボックス〈平方根〉
3−3 決戦!川中島〈2次方程式〉
3−4 物体の自由落下〈関数〉
3−5 円周角望遠鏡〈円周角〉
3−6 みんな仲間,四角形の輪〈円に内接する四角形〉
3−7 どう切ってもピタゴラス〈三平方の定理〉
3−8 エジプトの野球場〈三平方の定理の逆〉
3−9 相似顕微鏡〈相似〉
3−10 確率ピラミッド〈確率〉
U 観察・実験の手引き

まえがき

 私たちは常に激動している自然の中で生きています.その自然の真のイメージを子どもたちがとらえていくことは,生きてはたらく学力を生み出す上でも非常に大切なことです.数学という学問は,自然を理解する手段として考えられていますが,数学自体も自然そのものであることを忘れてはいけません.自然を理解するには,頭をはたらかすだけでは不十分です.自然に対して,手足を動かし,しっかりと観察・実験をして,そして考察していってこそ,すなわち,自然と直接肌をふれあうことにより,自然の真のイメージをとらえていくことができます.

 私は,次の「直接的価値」と「間接的価値」を融合したものを子どもの中につくることが,生きてはたらく学力を生み出す源となると分析しました.直接的価値のもつ意味をふくむものが「イメージ」なるものであり,それが間接的価値を形成するのです.


直接的価値

数学的概念・原理・法則          数学的技能


間接的価値『        』

 :「あとを見通す」直観力       :「すじみちの通った」論理的思考力

 :「いい方法」の数学的な見方・考え方 :「うまくできた」ときの自分をみる力

 :「らくらく記号で表す」表現力    :「がんばるぞ」という学習意欲

 :「ぶんき点」での情報選択力     :「くしする」活用力


 数学にかかわるイメージ化をうながす道具として,数学的教具が重要な位置を占めます.本書は,数学を学ぶ方法として観察・実験を主に取り入れた数学実験書であり,その実験器具である教具を集めた数学的教具集でもあります.

 本書の特色は,

 @ 生徒一人一人が教具を所有し,観察・実験をできるように,生徒自身が作成できる紙質の教具の型紙をのせた.

 A 観察・実験をしながら考察ができるように,流れを生徒用にわかりやすく示した.

 B 手軽にできるもののみをそろえた.

 C それぞれの観察・実験の目的を明示した.

 D 各項目に関連する事項を随所に取り入れた.

 E 教科書の内容が自然に身につくようにした.

 F 観察・実験を,「教具を対象にして,見たり,操作することによって,何かをつかむことができる場」とかなり幅広いものとし,習熟,定着を図るものもそこにふくめ,いくつか取り入れた.

 G 「新しい時代に生きる数学的教具がもつべき10の特性」を意識して教具を取り入れた.「新しい時代に生きる」とは,「生きてはたらく学力を生み出す」という意味に訳すことができます.この特性を教具にもたせるには,本書にのせた紙質の教具が一番適したものであると私は考えています.

新しい時代に生きる数学的教具がもつべき10の特性

 @ 構造の単純化

 A 生徒全員操作可能

 B 生徒全員作成可能

 C アルゴリズム性  C′多価性

 D 側近性

 E ミステリー性

 F ファッショナブル性

 G パズル,ゲーム,クイズ性

 H 正確性

 I オリジナル性


 なお,21世紀の新学習指導要領に合わせて各項目を配列してあります.

 「紙教具がつくる数学とのふれあい」をサブタイトルにしましたが,数学的教具というものを使って観察・実験することは,人間の内面にある「触れて,動かして,確認したい」というものを保障し,学習過程におけるある種のストレスを発散させる作用をもっています.その作用により,学習において獲得したものが自分のものであるという自覚が生じ,それが課題へ向わせるエネルギーとなり,生きてはたらく学力を形成するのです.自分の手で確認させるためには,生徒一人一人に教具を所有させる必要があり,経済性や作成時間を考慮すると,紙質の教具が生きてくるわけです.生徒が,数学的教具を通して,数学とふれあい,数学を自分の中につくることを意識した授業を組み入れてはいかがでしょうか.

 実験というと教師サイドからはおっくうに感じることもありますが,子どもたちの授業での姿にその価値を感じることができます.まだまだ不十分な書物ではありますが,この実験書が先生方の実践の一助となるとともに,遠慮のないご批判ならびにご叱正をいただければ幸せに思う次第です.

 終わりになりましたが,本書の刊行に際しましてお力添えをいただきました明治図書出版株式会社の立花正夫氏をはじめ編集部の方々に心から感謝申し上げます.


  平成10年12月   /渋谷 久

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      明治図書
    • 生活体験の少ない生徒が多くなってきている現在。自身の手で教材を作成・実験し得られるものが、生徒の生きる財産になると思います。
      2012/4/5

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