- まえがき
- 1章 絶対評価と問題づくり
- §1 問題づくりを見直す必要性
- 1 これまでの問題づくり
- 2 今回の改訂で示された基本的な考え方
- §2 絶対評価の問題のつくり方
- 1 絶対評価のよい問題の条件
- (1) 目標への適合性
- (2) 方法の妥当性
- 2 問題づくりの手順
- 2章 「数と式」の新絶対評価問題
- §1 第1学年のプレテスト
- §2 正の数・負の数
- 1 正の数・負の数の加減
- 2 正の数・負の数の乗除
- §3 文字と式
- 1 文字と式
- 2 一次式の計算
- §4 一次方程式
- 1 一次方程式
- 2 一次方程式の利用
- §5 第2学年のプレテスト
- §6 式の計算
- 1 文字式の計算
- 2 文字式の利用
- §7 連立方程式
- 1 連立方程式
- 2 連立方程式の応用
- §8 第3学年のプレテスト
- §9 多項式と因数分解
- 1 式の展開
- 2 因数分解
- §10 平方根
- 1 平方根の意味と数の大小
- 2 平方根の計算
- §11 二次方程式
- 1 二次方程式の解とその解き方
- 2 二次方程式の応用
- 3章 「図形」の新絶対評価問題
- §1 第1学年のプレテスト
- §2 平面図形
- 1 平面図形の対称性
- 2 基本的な作図
- §3 空間図形
- 1 空間図形の構成
- 2 基本的な図形の計量
- §4 第2学年のプレテスト
- §5 図形の性質と合同
- 1 多角形の角
- 2 証明及び証明のしくみ
- §6 三角形と四角形
- 1 二等辺三角形
- 2 平行四辺形
- §7 第3学年のプレテスト
- §8 図形の相似
- 1 相似な図形
- 2 図形と線分の比
- §9 三平方の定理
- 1 三平方の定理
- 2 三平方の定理の応用
- 4章 「数量関係」の新絶対評価問題
- §1 第1学年のプレテスト
- §2 比例・反比例
- 1 比例
- 2 反比例
- §3 第2学年のプレテスト
- §4 一次関数
- 1 一次関数の関係
- 2 一次関数の値の変化とグラフ
- 3 一次関数と二元一次方程式
- §5 確 率
- 1 確 率
- §6 第3学年のプレテスト
- §7 関 数
- 1 関数y=ax^2
- 2 関数y=ax^2のグラフと値の変化
- 3 関数y=ax^2の利用
まえがき
目標に準拠した評価活動の流れをおってみることにしましょう。
まず,準備・計画の段階があります。
ここでは,目標の分析を,従来より入念に行う必要があります。といいますのは,目標を4つの観点に分類し,評価規準に変換しなければならないからです。
これまでも,教育活動でありますから,目標を分析してきました。ですが,下位目標にまでわたり,詳細に,観点に分類して評価規準を作成することはなされない場合が多かったと考えられます。したがって,もし,入念な目標分析と具体性があり詳細な評価規準作りが各学校においてなされるとしますと,より明確に目標を意識できるようになると予測できますから,支援あって指導なしと非難されるようなことは,悪意か杞憂にもとづくものと片付けられましょう。きっと,これまで以上に的確な指導がなされると期待してよいのではないでしょうか。
ところで,評価規準作りは,めあてを明確にしようというのでありますが,それ以上のことは期待できないでしょう。効果的に評価活動を進めるには,評価の方法と技術について具体的に準備し,適切な手段を選択しておかねばなりません。
ここでは,その方法の1つとして,問題づくりを取り上げています。
さて,問題づくりといいますと,経験の浅い教師の場合,どこから手をつけてよいのか見当がつけにくく,教師自身の生徒としての経験を知らず知らずの間にたどることになってはいなかったでしょうか。そのことが,批判を受けている伝統をおしつけることになっていないか考え直すことも必要かと思います。この変革の時期にもう一度見直すきっかけにしてください。
また,ベテランといわれる教師の場合,問題づくりには自信をおもちの方が多いことでしょうし,きっと,よい問題をつくってこられたことでしょう。しかし,ここで,思わぬ落し穴があるかも知れないのです。と申しますのは,ベテランのよい問題は,相対評価にとって,すばらしい問題かも知れないのです。
絶対評価と相対評価のちがいは,問題づくりの考え方ではっきりしてきます。99.99%おちこぼれをなくすためには,絶対評価のよさを生かし,少子化にともなって貴重品になってきた生徒の能力をすべて活用しきる方策を見出さねばならないと考えねばならないのでしょう。
このように考えると,今回の改訂をみのりあるものにするには,準備・計画の段階が充実したものにならなければならないのです。だが,残念なことに,評価規準の具体例や指導資料の具体事例が公表されてから各学校が準備に入るのに十分な余裕があったとはいいにくい状況でした。ここに,今日の混迷の原因があるともいえるでしょう。大枠が変わったことを具体的に納得できるようにされることが,まず,重要であると考えました。
次に,評価を実施し,評価資料を収集し解釈する段階があります。
準備・計画の段階で十分に手順がつくされていれば,この段階では,従来とあまり変わりはないとも考えられますが,4つの観点すべてにわたって評価しなければならないことから,観察,面接,ノート・レポートの活用など,これまでより多くの方法を活用しなければならなくなったということができましょう。
このように多くの方法を併用することにより,教師の負担が増加することはある程度やむをえないことです。ここで,もし,独断と偏見が通用するのであれば負担は軽減できるかも知れません。しかし,それでは,逆に精神的な負担は確実に増えることでしょう。
このように考えると,ここでの教師の負担は,独断と偏見におちいるリスクをさけるための保険だともいえるでしょう。
さて,ここでの落し穴は,観察などでは,ある程度,主観的判断が許容されると思いこむことです。評価を改善しようと努力してきたエネルギーは,それぞれの時代の在り方を批判してきたところに源泉をおいているということができましょう。主観的な判断をぎりぎりまで排除する努力を続けねばならないのです。このような基本的な考え方は共通理解として確立する必要があると考えました。
最後に,評価をまとめ,総括し,さらに,次の学習指導の改善へ反映する段階があります。
カリキュラム評価にむすびつけるところは,これまでは,あまり積極的にはなされてきませんでした。これからに期待することといたしましょう。
評価のまとめ,総括について,望ましいのは,今回の改訂の趣旨を生かし,生徒のよい点や可能性を引き出すことです。しかし,残念なことは,例えば,「4つの観点がすべて80点であれば,オールAであるから,評定は5になるが,4つの観点がすべて79点であれば,オールBであるから,評価は3になる。このギャップは大きすぎるではないか」などの架空の議論が大真面目に展開されていることです。
生徒のよい点,可能性を生かして,次の学習指導に結びつけようとしていて,生徒の実像に接している教師であれば,上のようなデータに遭遇することは,まずないでしょうし,それほど大きな差がないのであれば,実態に応じて評定することは,大きな困難のようには思われません。したがって,上のような議論は実態にそくしたものではなく,相対評価,それによる損得にとらわれた議論のように思われてなりません。
このようなことから,配点例は示しましたが,参考にしていただければよいとのみ考えています。
大きな枠組が変わろうとしています。その基本をしっかりつかんでいただいて,改訂の趣旨を生かし,生徒の未来を拓いていただくことを願って,この本を編集しました。ご活用いただけることを心から願っています。
この本の編集にあたって,安藤征宏氏のお力添えがありました。深く感謝の意を表します。
平成14年11月 編者 /正田 實
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- 明治図書