- 『検定外・学力をつける算数教科書』第6巻 第6学年編の趣旨 /横地 清
- はじめに /奥山 賢一
- 第T章 倍数と約数
- 1 倍数と公倍数
- 2 約数と公約数
- 3 素数と素因数分解
- 4 最小公倍数・最大公約数の求め方
- ・チャレンジ
- 〈解答〉
- 第U章 分数のたし算とひき算
- 1 大きさの等しい分数
- 2 分数のたし算とひき算
- ・チャレンジ
- 〈解答〉
- 第V章 複合量
- ―単位量・速さ・密度―
- 1 単位量あたりの大きさ
- 2 速さ
- 3 密度
- ・練習1,2
- ・チャレンジ
- 〈解答〉
- 第W章 体積
- 1 直方体や立方体の体積
- 2 複雑な直方体の体積
- 3 大きなものの体積の求め方
- 4 水かさと体積の関係
- 5 小さいものの体積
- 6 いろいろなもののおよその体積の計算
- 7 いろいろなものの密度の計算
- ・練習1〜7
- ・チャレンジ1〜12
- 〈解答〉
- 第X章 分数の乗法
- 1 分数の乗法(1)
- 2 分数の乗法(2)
- 3 逆数
- ・練習1〜15
- ・チャレンジコーナー
- 〈解答〉
- 第Y章 分数の除法
- 1 分数の除法の計算を学習する前に
- 2 分数の除法の計算のしかた
- ・練習1〜3
- ・チャレンジ1〜4
- 〈解答〉
- 第Z章 多面体・展開図・立体作り
- 1 立体の名前・特ちょう
- 2 展開図・立体作り
- ・チャレンジ1〜5
- 〈解答〉
- 第[章 地球儀の数学
- 1 地球の体積と表面積
- 2 緯度と経度
- 3 方位と方向
- 4 時差
- 5 飛行距離と飛行時間
- ・練習1〜3
- 〈解答〉
『検定外・学力をつける算数教科書』第6巻第6学年編の趣旨
この本は,『検定外・学力をつける算数教科書』第6巻として,6学年担当の先生方が早速にも学校や学習塾などで活用していただけるようにと作成したものである。この本には,学校現場の先生方の協力を得て,私どもが研究してきた成果が生かされている。本来の6年は,何を学習すべきかを探究してできた,斬新な検定外教科書である。
現在の検定教科書の内容には数々の欠陥がある。私どもはこの欠陥を補い,子どもたちが本来獲得すべき学力を保障しようとして,この検定外教科書を作成した。そこで,以下ではT部,U部に分け,次の点を語りたい。T部では,私どもは,現行の検定教科書のどのような欠陥を克服しようとしたのかを述べる。U部では,この6学年用の検定外教科書で取り上げた内容と,その意図を語ることにする。
T部 『検定外・学力をつける算数教科書』を作成したわけ
私どもは,現行の検定教科書は,各学年の子どもが本来,到達されるはずの学力を,はなはだしく喪失させていると考えている。その喪失をいささかでも防ぎ,子どもたちに,本来,到達できるはずの学力を保障しようとして,この検定外教科書を作成した。
そこでまず,現行の検定教科書は,どのような欠陥を持っているか,率直に語ってみる。もちろん,この語りは,検定教科書が依拠した現行の学習指導要領の欠陥の語りでもある。ここでは,検定教科書の方で説明する。
おことわりするが,私どもは,検定教科書や,それが依拠する学習指導要領の欠陥自体を荒立てるのが目的ではない。私どもは,そうした欠陥を越えて,日本の子どもたちに,本来到達するはずの学力を保障する検定外教科書を作成するのが目的である。
それでは,現在の検定教科書の欠陥を,個条書きにして率直に書いてみよう。これらの欠陥は,これまでに実施した,私どもの各種教育実験を背景として語るものである。
1 学習内容の水準が極めて低い。事例を挙げよう。
(1) 入学当初の1年は,すでに100までの数を唱え,形式的ではないにしろ位取りの原理を把握している。数の学習はここから始めるべきである。また,1年は10を単位とする数の加減にも十分に熟達できる。検定教科書はこれらのいずれをも欠落させている。
(2) 平面図形の基本は,点,直線,円であり,これらは1年が十分に学習しうる。検定教科書はそれを怠り,円に至っては4年に出てくる始末である。
(3) 拡大,縮小の概念,つまりは相似の概念は,遅くとも4年には学習し得る。検定教科書は,それを怠り,相似の概念も用語も小学校から消えている。
(4) 4年後期から代数的思考が始まり,文字を使った演算式が入って当然である。また,応用問題の問題構造は,文字を使った演算式でいちだんと明確になる。検定教科書は,これらを怠り,文字を使った演算式は6年になっても出てこない。
(5) 割合や速度などの3用法,特に第3用法は,5,6年の場合,文字式の考え方を生かし,逆演算を導入して把握できるのに,検定教科書はそれを怠り,5,6年の思考を3年生以下の絵で見る低次の思考に堕落させている。
2 平面や空間の領域では,極端なほどに内容が貧弱である。事例を挙げよう。
(1) 1年は工作用紙に展開図を描き,スポーツカーなどを作成するというのに,検定教科書はそれを怠り,展開図の用語は6年に出る始末である。
(2) 平面に角があると同様に,空間にも角がある。そして多面体には2面の作る角として2面角が必要となる。検定教科書はそれを怠り,空間の角も2面角も姿を見せない。
(3) 平面では多角形の特殊な場合として,台形や平行四辺形が存在する。その際には辺や内角が問題とされる。同様に,空間では多面体の特別な場合として,直方体や角柱が存在し,面や2面角,多面角が問題とされてよい。これに対応して,1,2年には,歪(いびつ)な多面体作りが必要であり,子どもたちもその製作が大好きである。検定教科書はこれらを怠り,展開図に至っては6年に出る始末である。2面角はついに姿を見せない。
(4) 平面上の図形については,回転運動,線対称運動といった運動自体の学習が必要である。そしてこれらの運動の把握や,それに基づく模様作りは,1,2年は大好きである。また長方形などの平面図形の模様では,模様作りの基本となる運動とそれら運動関係構造が重要であり,5年には,それが把握できる。しかし検定教科書は,上記のいずれをも欠落させている。
3 今日の子どもは早くから地球時代,宇宙時代,さらにはIT時代の世界に生きていると言ってよい。検定教科書は全くと言ってよいほど,これに対処していない。事例を挙げよう。
(1) 高学年では地球の数学を学習する必要がある。発泡スチロールで地球儀を作り,2地点間の大圏距離を凧ひもで測ったりして「ベルリンを火曜日の20時に離陸したジェット機は,東京には何曜日の何時に到着するか」といった問題が解けるまでになる。それであるのに検定教科書は地球の数学に触れてもいない。
(2) 確率の概念は天気予報などで,小学校全学年で日常化している。それであるのに,検定教科書では確率は,6年になっても姿を見せない。
(3) 4年後期からは子どもの代数的思考が進展する。当然,多変数関数も扱われてよい。同時に,これら関数の演算に対応するソフトとしてExcelの活用が学習されてよい。さらに,6年にもなれば,PowerPointを活用して,数学的研究をPresentationでできるようにしたい。検定教科書は上記のいずれをも欠落させている。
4 子どもは各年齢に対応した数学的認識の発展を進める。検定教科書はこうした,各年齢に応じた発展過程に対応してはいない。多くの場合,子どもたちの認識を,いちだんと低次の認識へ追いやるように学習の展開をしている。事例を挙げよう。
(1) 低学年の子どもは体ごとの実践を通して数学的法則を把握する。1年の子どもが数7の分解を把握するのは,一定の距離から実際に7個の玉をホールに向かって投げ,ホールに入らないで外に転がる玉の数を数えて,ホールに隠れた玉の数を推定し,ホールから玉を取り出して推定の妥当性を判断する。こういった活動の繰り返しの中で,7は3と4に分解されるという事実を,確信を持って把握するようになる。体ごとの確信と言ってよい。ところが教科書は7が3と4に分解される事実を,絵を見せて子どもに保障させようとしている。つまりは体ごとでの体得を見失い,視覚による皮相的認識,つまりは皮相的な暗記に依存しようとしている。こうした皮相的認識の暗記では,1年が体得すべき,10までの数の分解,合成の事実の確信が保障できない。検定教科書は1年にふさわしい認識過程を見失っている。
(2) 子どもは4年後期から論理的体系的理詰めを通して数学的法則を把握するという認識過程に達する。ところが,検定教科書は,この認識過程を忘れ,子どもの思考を低学年以前の眼で見る皮相的認識に堕させている。例えば分数の除法計算の法則は,逆数の概念と性質を使えば,理詰めを通して把握できるのに,それを怠っている。理詰めを通せば乗法はもとより除法を含めて,乗除計算の法則は5時間あまりで把握できる。それであるのに,だらだらと絵で説明し,つまりは皮相的認識に堕させて15時間もかけて学習させている。そして,分数÷分数は,割る分数を逆さにしてかけるという機械的操作として把握させようとしている。同種のことは,割合や速さの第3用法でも見られる。
5 3年以降の子どもは,とりわけ創造力が急速に発展する時期である。それであるのに検定教科書には,創造力の育成に関する配慮が欠落している。あるのはせいぜい,誰それはこういう計算の仕方をしたとか,誰それは,それとは別の計算の仕方をしたとか,言わば,同一水準での多様な思考の並列に終始している。創造力の育成で重要なのは,質的に高い水準に向かって,子どもの思考を高めることである。例えば5年の長方形の運動模様の学習であれば,模様の型はいく種類に限られるかを理詰めで裏付けて明らかにすることである。あるいは,学習していない正三角形の運動模様には,いく種類の模様の型があるのか,それを理詰めで発見することである。本来の創造性の育成とは,同一次元の中で,あれか,これかを発見することではなくて,いちだんと高い段階での数学的発見を招来することである。検定教科書は,こうした配慮を欠落させている。
U部 検定外教科書の6学年の内容
1 この巻の執筆までの経過
この『検定外・学力をつける算数教科書』全6巻は,私が長年指導してきた,次の3つの研究会グループの協力によって作成された。
(1) 大阪教育大学教授・鈴木正彦氏を中心に指導と研究が重ねられている,「大阪研究グループ」
(2) 京都教育大学教授・守屋誠司氏,同大学講師・渡邉伸樹氏を中心に,指導と研究が重ねられている,「山形研究グループ」
(3) 私が山梨大学教授であった頃から育て,現在も前校長の山主富士彦氏,前山梨大学附属小学校教諭の奥山賢一氏を中心に指導と研究が重ねられている,「山梨研究グループ」
各研究グループには実践と研究の豊かな,肝入りの小学校の現場の校長,指導主事,先生方がたくさんそろっている。
私は2001年4月以来3か年間,明治図書刊『現代教育科学』に各年,「算数・数学教育の危機」「算数・数学教育の再建」「学力保障に応える算数指導の改革」の主題で連載を重ねた。その資料,ならびにこの『検定外・学力をつける算数教科書』作成のために時間をかけて準備した学年別の斬新な学習内容を持参し,上記の3つの研究グループのそれぞれで,数日間に及ぶ合宿研究会を持った。その合宿研究会では次の4点を強調した。
(1) 私が『検定外・学力をつける算数教科書』を公刊するに至った趣旨(1部で述べた)をよく理解した上で執筆に当たっていただきたい。
(2) 学習内容それぞれの執筆に当たっては,私の提案を尊重はしていただきたいが,それに機械的に拘束されることなく,担当の研究グループ,とりわけ執筆者の判断で,現実の子どもに,いっそうの適応ができるように改善を試みられたい。そして研究グループ,とりわけ執筆者の自信の作となるようにしていただきたい。
(3) 直接,間接に子どもに実践して確かめ,子ども自身が進んで学習するにふさわしい学習内容としていただきたい。
(4) 各学年の学習内容は,1学期,2学期,3学期といったように区分され,当該学年を通して,体系のある教育課程を予想して展開されたい。
上記の4点を基本方針として各巻が仕上げられた。以下では,6年用のこの巻の主な学習内容について,私はどのような提案をしたかを述べることにする。読者の皆様には,この巻の学習内容を子どもに適用していただくだけではなくて,前記羨で述べたように,皆様の研究と判断で,必要な改善を試みながら,実践されることを願っている。
2 この巻の内容
(1) 分数の乗除計算
現在の小学校では4年で整数の四則計算が完了し,5,6年でそれぞれ小数の乗除計算,分数の乗除計算を完了するようになっている。つまり負数ではない有理数の四則計算が5,6年で完了する。
子どもは4年から代数的認識とともに,論理的体系的認識が発展を始める。そして具体的事象から数学的概念だけを抽象化する能力も発展してくる。一方,ITはじめ,高度に発展した今日の社会に住む子どもたちには,有理数の四則計算,特に小数の四則計算に接する機会も多い。こうした観点から,私は小数,分数の四則計算は5年でいちおうの完了としたいと考えている。
この検定外教科書では,分数の乗除の学習時期を,いちおうは検定教科書に妥協するが,上記の認識の発展を考えて,分数の乗除は,代数的でしかも論理的体系的であるようにした。以下にその展開を述べる。私の意図は,U部1の最後に触れたように,『現代教育科学』の2003年4月以降の連載「学力保障に応える算数指導の改革」の第7回(10月号)の記事「分数の乗除学習の開拓」に掲載したので,以下ではその記事を引用する。
学習には,必要に応じて実際例を挙げ,多くの図示も必要となる。しかも子どもの思考を実際例の水準に留めたり,図の説明だけに満足させたりして,思考水準を4年以下の認識に堕させることはできるだけ避けていただきたい。下記の展開では,単位分数と逆数の役割が重要となる。
〈分数の乗法・除法に関する定義と規則〉
定義1 例 1/3,1/8。分子が1である分数を単位分数という。
規則1 例 3/7×4=(3×4)/7。分数に整数aを掛けると,分母はそのままで,分子だけがa倍される。
規則2 例 2/7×1/3=2/(7×3)。分数に単位分数1/aを掛けると,分子はそのままで,分母はa倍となる。
規則3 例 2/5×3/7は,2/5×1/7の結果を3倍した分数つまり2/5×3/7。
分数にb/aを掛けると,分母はa倍となり,分子はb倍となる。
定義2 例 3/5の逆数5/3。分数aの逆数とは,分数aの分母と分子を入れ換えた分数である。
規則4 例 4/7×7/4=1。分数に,その分数の逆数を掛けると,答えは1となる。
規則5 例 5/7×3/4×2/11=(5×3×2)/(7×4×11)。分数を続けて掛けると分母はもとの分数の分母の積となり,分子はもとの分数の分子の積となる。
規則6 例 5/7×3/4×4/3=5/7。分数aに,ある分数bと,分数bの逆数の3つの分数を続けて掛けると,積はもとの分数となる。
規則7 例 8/9=8/9×4/11×11/4だから□×4/11の□=8/9×4/11。
分数a,bがあって,a=□×bであるならば,□はaと,bの逆数を掛けた分数となる。
定義3 例 758は,ある数□の13倍である。
758=□×13,□は758÷13で求める。
390.78は,ある数□の23.4倍である。
390.78=□×23.4,□=390.78÷23.4で求める。
整数や小数では,a÷bとは,aが「ある数」のb倍となっている,「ある数」を求めることであった。a,bが分数でも,a÷bとは,aがある「分数」のb倍となっている,その「分数」を求めることである。
規則8 例 3/5÷2/7では,3/5=(3/5×7/2)×2/7だから,3/5÷2/7=3/5×7/2である。定義3と規則7より,a,bが分数の時,a÷b=a×(bの逆数)となる。
上記の定義,規則を学習する際の説明図の一部を1図に示した。1図(1)は規則1の説明図であり,1図(2)(3)は規則2の説明図である。
(図省略)
(2) 複合量の3用法
速さや密度に見る量の関係は,それぞれ,距離/時間=速さ,重さ/体積=密度,として表現される。また,食塩水の濃度に見る量の関係は,(食塩の重さ)/(食塩水の重さ)=濃度,として表現される。速さ,密度,濃度のように,いくつかの量の演算,とりわけ乗除演算で構成される量を複合量と呼んでいる。すでに述べたように,6年は代数的,論理的体系的思考が発展してきているから,複合量の数学的扱いも,代数的に,できるだけ一般化した扱いとなるようにしたい。
この検定外教科書では,5年で,基準×倍率=倍量(第2用法),倍量÷基準=倍率(第1用法),倍量÷倍率=基準(第3用法)と倍率の3用法を学習している。そこで,複合量でも,例えば,距離/時間=速さでは,速さを倍率,距離を倍量,時間を基準とみて,倍率の3用法と同じ扱いにさせていく。同様に,重さ/体積=密度でも,密度を倍率,重さを倍量,体積を基準とみて,倍率と同種の3用法に帰着させていく。また,(食塩の重さ)/(食塩水の重さ)=濃度でも,濃度を倍率,食塩の重さを倍量,食塩水の重さを基準とみて,倍率と同種の3用法に帰着させていく。
以上のようにして,言わば,倍率3用法の発展として,複合量を会得させるようにしたい。
(3) 相似に拡大,縮小と角錐台
朝日カルチャーの「横地先生の作る数学」教室の実践で明らかになったように,3,4年は相似の中心を利用した拡大,縮小の活動が大好きである。写真1,写真2,写真3にその実際例を示した。当然6年にもこの活動を実現していただきたい。そして活動の結果,2図に示した2つの性質を,相似に関する公理のように考えて確認させていただきたい。
6年には上記の性質と関連させ,空間図形の学習として角錐台の製作をさせていただきたい。実際,朝日カルチャーの「横地先生の作る数学」教室では6年に角錐台の展開図を与えて,各自に角錐台を製作させた。その後,直ちに,各自に好みの角錐台を考えさせ,各自に展開図を作製させたうえ,好みの角錐台を製作させた。この展開図作製には2図の性質が必要になってくる。角錐台は角錐を底面に平行な平面で切ってできる立体と考えられるからである。
写真4は好みの角錐台の展開図を描いた後,その角錐台の作製にかかる子どもの姿である。写真5は,私の方で与えた展開図による角錐台と各自好みの角錐台を,私に見せている情景である。写真6は,これら両種の作品例である。
上記の活動は,相似の学習を失った現行検定教科書を補充するものとして,きわめて重要な学習内容である。同時に空間に関する学習の重要な一環である。
(図,写真省略)
(4) 地球儀の数学
5,6年には,空間図形の学習内容として,ぜひとも地球儀の数学を学習させたい。地球時代,宇宙時代の今日,地球儀の数学は欠かせない学習内容である。検定外教科書では6年の内容とした。U部1の最後に付したように,私は『現代教育科学』に2003年4月以来連載の「学力保障に応える算数指導の改革」の第4回(7月号)の記事「分数の乗除学習の開拓」に,地球儀の幾何の実践を掲載した。以下ではその記事のうち,朝日カルチャーの「横地先生の作る数学」の苗場の夏季合宿での「Naeba Air Line(NALと略記)」の新入社員(5,6年)の活動の部分を引用する。
〈地球儀の数学〉
1 リンゴの地球儀
(1) 緯度,経度座標
新入社員はまずリンゴで地球上の地点の緯度・経度座標を学ぶ。リンゴをえぐり東京(東経140°,北緯40°)の地点を決める。写真7は仕上がりの紹介である。緯度,経度は,それぞれ東経,北緯に限定した。北京(116°,40°),ベルリン(13°,52°)などの地点をリンゴのえぐりで学び,続いて新入社員は下記の羨から船までを写真8,写真9のように学習する。ここでは夏時間の説明は省略した。
(写真省略)
(2) 時 差
地球は地軸の回りに東から西へと1日に1回転する。1時間に経度で15°ずつ回転する。太陽の位置を固定するロンドン(0°,51°)の経線に南中する太陽は,1時間前の11時に15°の経線に南中した。明石(135°,38°)の経線では135/15=9(時間)前に南中した。z°の経線では,z/15(時間)前に南中した。子どもは繰り返しの計算で上記の関係式をインホーマルに獲得する。
(3) 日本の生活時刻
日本では太陽が明石の経線に南中する時刻を正午(12時)と決めて生活している。この時刻を日本の生活時刻と呼ぶ。東京では明石の南中時刻の{(140−135)/15}×60=20(分)前,生活時刻で11時40分に太陽は南中している。
(4) 外国の生活時刻
ドイツでは15°の経線に南中する時刻を正午とする。ベルリンでは{(13−15)/15}×60=−8(分),つまり,生活時刻で12時8分に南中する。各国それぞれに固有の経線(標準経線)があり,標準経線に太陽が南中する時刻を正午として生活時刻を決めている。
(5) 生活時刻と時差
私の主催する研究会では1977年以来,ベルリン所在の学校と遠隔協同学習をしている。夕方の16時に教室に入った日本の子どもは,ベルリンで16−(135−15)/15=8(時),つまり朝の8時に教室に入った子どもと対面する。標準経線u°の国と日本との時差JはJ=(135−u)/15(時間)の関数式で求められ,子どもは繰り返しの計算で,インホーマルにこの関係式を獲得する。
2 地球儀作り
続いて新入社員は写真10,写真11のように発泡スチロールの球と凧ひもで地球儀を作る。手順は次の通りである。
@ 球面上の対点として北極,南極を決める。
A 凧ひもを両極を通るように張り,経線(東経,南経を含む)の大円を描いてみる。この大円を作る凧ひもを大円ひもと呼ぶ。大円ひもを8等分し,等分点に印をつける。
B 球面上に大円ひもで次々に経線を張り,大円ひもの中点に当たる地点に印をつける。これら中点を連ねて大円ひもを張りひもに沿って赤のサインペンで大円を描き赤道とする。
C 赤道に沿って大円ひもを張る。大円ひもの8等分点の地点に印をつける。これらの地点と北極,南極の3点を利用して,経度が45°間隔の経線を順次に引く。その1本を東経0°の経線(西経も含めて)と決め,この経線を基準に,45°ごとの経線(西経も含めて)を赤で記す。
D 大円ひもでいくつかの経線を張り,8等分点の地点を利用して,北緯90°(北極点),北緯45°,北緯(南緯)0°,南緯45°,南緯90°(南極点)の地点をいくつか決める。これらの地点を利用して,小円の緯線を描き赤で記す。
(写真省略)
3 NALの時刻表
写真12を見られたい。大円ひもを測ると平均33pだった。赤道を40,000kmとすると大円ひも1cmは1,212kmとなる。地球上の2地点間に大円ひもを張り,その長さがpcmであれば,2地点間の大圏距離sはs=1212×p(km)となる。これら2地点間を航空機が平均時速vkmで飛べば所要時間hはh=(1212×p)/vとなる。これら関数式も子どもはインホーマルに獲得する。上記の学習を経て新入社員は写真13,写真14のように計算し,写真15から写真17までのようにNALの時刻表を完成する。誇らし気な子どもの姿を見てほしい。
(写真省略)
/横地 清
-
明治図書
















