検定外・学力をつける算数教科書 第3巻 第3学年編

検定外・学力をつける算数教科書 第3巻 第3学年編

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検定教科書の欠点を補い、本来獲得すべき学力を身に付ける。

学校や学習塾での活用をめざす。九九と和で数を表す、わり算、3桁数の加法と減法、2桁数の乗法、時刻と時間、2面角など。検定教科書の不足部分を補う解説をつけ、各章に学力を検証するまとめくんを付す。特に検定教科書にない年齢別発展課題を詳細に解説。


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ISBN:
4-18-564514-7
ジャンル:
算数・数学
刊行:
対象:
小学校
仕様:
B5判 176頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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『検定外・学力をつける算数教科書』第3巻 第3学年編の趣旨 /横地 清
第T章 九九と和で数を表す
―整数の構造の学習―
1 九九とたし算で数を表そう
2 きまりをみつけよう
・まとめのテスト
3 他のだんもつくろう!
・まとめのテスト
・単元かくにんテスト
〈解答・評価の観点・配点・評価基準〉
第U章 わり算
―ずつ・回数からの除法―
1 わり算のはじめ
・まとめのテスト
2 わり算のおうよう
・まとめのテスト
・単元かくにんテスト
〈解答・評価の観点・配点・評価基準〉
第V章 3桁数の加法と減法
―「バラ数による計算法の発展―
1 3位数のたし算・ひき算
・まとめのテスト
2 3けた数のたし算・ひき算
・まとめのテスト
・単元かくにんテスト
〈解答・評価の観点・配点・評価基準〉
第W章 2桁数の乗法
―「バラ数に1位数×1位数から2桁数×2桁数まで―
1 1位数と1けた数のかけ算
・まとめのテスト
2 2位数と2けた数のかけ算
・まとめのテスト
・単元かくにんテスト
〈解答・評価の観点・配点・評価基準〉
第X章 時刻と時間
―時刻と時間の関係の学習―
1 時間と時こくを知ろう
・まとめのテスト
2 時こくと時間のかんけい
・まとめのテスト
・単元かくにんテスト
〈解答・評価の観点・配点・評価基準〉
第Y章 2面角
―空間の平行・垂直―
1 いろいろな平面
2 2面角を使って!
・単元かくにんテスト
〈解答・評価の観点・配点・評価基準〉

『検定外・学力をつける算数教科書』第3巻第3学年編の趣旨

 この本は,『検定外・学力をつける算数教科書』第3巻として,3学年担当の先生方が早速にも学校や学習塾などで活用していただけるようにと作成したものである。この本には,学校現場の先生方の協力を得て,私どもが研究してきた成果が生かされている。本来の3年生は,何を学習すべきかを探究してできた,斬新な検定外教科書である。

 現在の検定教科書の内容には数々の欠陥がある。私どもはこの欠陥を補い,子どもたちが本来獲得すべき学力を保障しようとして,この検定外教科書を作成した。そこで,以下ではT部,U部に分け,次の点を語りたい。T部では,私どもは,現行の検定教科書のどのような欠陥を克服しようとしたのかを述べる。U部では,この3学年用の検定外教科書で取り上げた内容と,その意図を語ることにする。


   T部 『検定外・学力をつける算数教科書』を作成したわけ


 私どもは,現行の検定教科書は,各学年の子どもが本来,到達するはずの学力を,はなはだしく喪失させていると考えている。その喪失をいささかでも防ぎ,子どもたちに,本来,到達できるはずの学力を保障しようとして,この検定外教科書を作成した。

 そこでまず,現行の検定教科書は,どのような欠陥を持っているか,率直に語ってみる。もちろん,この語りは,検定教科書が依拠した現行の学習指導要領の欠陥の語りでもある。ここでは,検定教科書の方で説明する。

 おことわりするが,私どもは,検定教科書や,それが依拠する学習指導要領の欠陥自体を荒立てるのが目的ではない。私どもは,そうした欠陥を越えて,日本の子どもたちに,本来到達するはずの学力を保障する検定外教科書を作成するのが目的である。

 それでは,現在の検定教科書の欠陥を,箇条書きにして率直に書いてみよう。これら欠陥は,これまでに実施した,私どもの各種教育実験を背景として語るものである。


1 学習内容の水準が極めて低い。事例を挙げよう。

 (1) 入学当初の1年生は,すでに100までの数を唱え,形式的ではないにしろ位取りの原理を把握している。数の学習はここから始めるべきである。また,1年生は10を単位とする数の加減にも十分に熟達できる。検定教科書はこれらのいずれをも欠落させている。

 (2) 平面図形の基本は,点,直線,円であり,これらは1年生が十分に学習しうる。検定教科書はそれを怠り,円に至っては4年生に出てくる始末である。

 (3) 拡大,縮小の概念,つまりは相似の概念は,遅くとも4年には学習しうる。検定教科書は,それを怠り,相似の概念も用語も小学校から消えている。

 (4) 4年生後期から代数的思考が始まり,文字を使った演算式が入って当然である。また,応用問題の問題構造は,文字を使った演算式でいちだんと明確になる。検定教科書は,これらを怠り,文字を使った演算式は6年になっても出てこない。

 (5) 割合や速度などの3用法,特に第3用法は,5,6年生の場合,文字式の考え方を生かし,逆演算を導入して把握できるのに,検定教科書はそれを怠り,5,6年の思考を3年生以下の絵で見る低次の思考に堕落させている。


2 平面や空間の領域では,極端なほどに内容が貧弱である。事例を挙げよう。

 (1) 2年生は工作用紙に展開図を描き,スポーツカーなどを作成するというのに,検定教科書はそれを怠り,展開図の用語は6年生に出る始末である。

 (2) 平面に角があると同様に,空間にも角がある。そして,多面体には2面の作る角として2面角が必要となる。検定教科書はそれを怠り,空間の角も2面角も姿を見せない。

 (3) 平面では多角形の特殊な場合として,台形や平行四辺形が存在する。その際には辺や内角が問題とされる。同様に,空間では多面体の特別な場合として,直方体や角柱が存在し,面や2面角,多面角が問題とされてよい。これに対応して,1,2年生には,歪(いびつ)な多面体作りが必要であり,子どもたちもその製作が大好きである。検定教科書はこれらを怠り,展開図に至っては6年に出る始末である。2面角はついに姿を見せない。

 (4) 平面上の図形については,回転運動,線対称運動といった運動自体の学習が必要である。そしてこれらの運動の把握や,それに基づく模様作りが,1,2年生は大好きである。また,長方形などの平面図形の模様では,模様作りの基本となる運動とそれら運動関係構造が重要であり,5年生にはそれが把握できる。しかし検定教科書は,上記のいずれをも欠落させている。


3 今日の子どもは早くから地球時代,宇宙時代,さらにはIT時代の世界に生きていると言ってよい。検定教科書は全くと言ってよいほど,これに対処していない。事例を挙げよう。

 (1) 高学年では地球の数学を学習する必要がある。発泡スチロールで地球儀を作り,2地点間の大圏距離を凧ひもで測ったりして「ベルリンを火曜の20時に離陸したジェット機は,東京には何曜日の何時に到着するか」といった問題が解けるまでになる。それであるのに,検定教科書は地球の数学に触れてもいない。

 (2) 確率の概念は,天気予報などで,小学校全学年で日常化している。それであるのに,検定教科書では確率は,6年になっても姿を見せない。

 (3) 4年生後期からは子どもの代数的思考が進展する。当然,多変数関数も扱われてよい。同時に,これら関数の演算に対応するソフトとしてExcelの活用が学習されてよい。さらに,6年生にもなれば,PowerPointを活用して,数学的研究をPresentationできるようにしたい。検定教科書は上記のいずれをも欠落させている。


4 子どもは各年齢に対応した数学的認識の発展を進める。検定教科書はこうした,各年齢に応じた発展過程に対応してはいない。多くの場合,子どもたちの認識を,いちだんと低次の認識へ追いやるように学習の展開をしている。事例を挙げよう。

 (1) 低学年の子どもは体ごとの実践を通して数学的法則を把握する。1年生の子どもが数7の分解を把握するのは,一定の距離から実際に7個の玉をホールに向かって投げ,ホールに入らないで外に転がる玉の数を数えて,ホールに隠れた玉の数を推定し,ホールから玉を取り出して推定の妥当性を判断する。こういった活動の繰り返しの中で,7は3と4に分解されるという事実を,確信を持って把握するようになる。体ごとの確信と言ってよい。ところが教科書は,7が3と4に分解される事実を,絵を見せて子どもに保障させようとしている。体ごとでの体得を見失い,視覚による皮相的認識,つまりは皮相的な暗記に依存しようとしている。こうした皮相的認識/暗記では,1年生が体得すべき,10までの数の分解,合成の事実の確信が保障できない。検定教科書は1年生にふさわしい認識過程を見失っている。

 (2) 子どもは4年生後期から論理的体系的理詰めを通して数学的法則を把握するという認識過程に達する。ところが,検定教科書は,この認識過程を忘れ,子どもの思考を低学年以前の眼で見る皮相的認識に堕させている。例えば分数の除法計算の法則は,逆数の概念と性質を使えば,理詰めを通して把握できるのに,それを怠っている。理詰めを通せば乗法はもとより除法を含めて,乗除計算の法則は5時間あまりで把握できる。それであるのに,だらだらと絵で説明し,つまりは皮相的認識に堕させて15時間もかけて学習させている。そして,分数÷分数は,割る分数を逆さにしてかけるという機械的操作として把握させようとしている。同種のことは,割合や速さの第3用法でも見られる。


5 3年生以降の子どもは,とりわけ創造力が急速に発展する時期である。それであるのに検定教科書には,創造力の育成に関する配慮が欠落している。あるのはせいぜい,誰それはこういう計算の仕方をしたとか,誰それは,それとは別の計算の仕方をしたとか,言わば,同一水準での多様な思考の並列に終始している。創造力の育成で重要なのは,質的に高い水準に向かって,子どもの思考を高めることである。例えば5年生の長方形の運動模様の学習であれば,模様の型はいく種類に限られるかを理詰めで裏付けて明らかにすることである。あるいは,学習していない正三角形の運動模様には,いく種類の模様の型があるのか,それを理詰めで発見することである。本来の創造性の育成とは,同一次元の中で,あれか,これかを発見することではなくて,いちだんと高い段階での数学的発見を招来することである。検定教科書は,こうした配慮を欠落させている。


   U部 検定外教科書3学年の内容


1 この巻の執筆までの経過

 この『検定外・学力をつける算数教科書』全6巻は,私が長年指導してきた,次の3つの研究会グループの協力によって作成された。

 (1) 大阪教育大学教授・鈴木正彦氏を中心に指導と研究が重ねられている,

   「大阪研究グループ」

 (2) 京都教育大学教授・守屋誠司氏,同大学講師・渡邊伸樹氏を中心に,指導と研究が重ねられている,

   「山形研究グループ」

 (3) 私が山梨大学教授であった頃から育て,現在も前校長の山主富士彦氏,前山梨大学附属小学校教諭の奥山賢一氏を中心に指導と研究が重ねられている,

    「山梨研究グループ」

 各研究グループには実践と研究の豊かな,肝煎りの小学校の現場の校長,指導主事,先生方がたくさんそろっている。

 私は2001年4月以来3か年間,明治図書刊『現代教育科学』に各年,「算数・数学教育の危機」「算数・数学教育の再建」「学力保障に応える算数指導の改革」の主題で連載を重ねた。その資料,ならびにこの『検定外・学力をつける算数教科書』作成のために時間をかけて準備した学年別の斬新な学習内容を持参し,上記の3つの研究グループのそれぞれで,数日間に及ぶ合宿研究会を持った。その合宿研究会では次の4点を強調した。

 (1) 私が『検定外・学力をつける算数教科書』を公刊するに至った趣旨(T部で述べた)をよく理解した上で執筆にあたっていただきたい。

 (2) 学習内容それぞれの執筆にあたっては,私の提案を尊重はしていただきたいが,それに機械的に拘束されることなく,担当の研究グループ,とりわけ執筆者の判断で,現実の子どもに,いっそうの適応ができるように改善を試みられたい。そして研究グループ,とりわけ執筆者の自信の作となるようにしていただきたい。

 (3) 直接,間接に子どもに実践して確かめ,子ども自身が進んで学習するにふさわしい学習内容としていただきたい。

 (4) 各学年の学習内容は,1学期,2学期,3学期といったように区分され,当該学年を通して,体系のある教育課程を予想して展開されたい。

 上記の4点を基本方針として各巻が仕上げられた。以下では,3年生用のこの巻の主な学習内容について,私はどのような提案をしたかを述べることにする。読者の皆様には,この巻の学習内容を子どもに適用していただくだけではなくて,前記(2)で述べたように,皆様の研究と判断で,必要な改善を試みながら,実践されることを願っている。


2 この巻のおもな内容

 この巻の内容の主要ないくつかについて,私がどのような期待をしたかを述べる。


 (1) 包含除と等分除

 『検定外・学力をつける算数教科書』第2巻 第2学年編ですでに述べたことであるが,例えば,6×7は,6ずつ7回取っていくらになるかを求める計算と決めている。被乗数を「ずつ」と見て,乗数を「回」(times)と見るのである。この結果,6×7=42となったのである。

 この見方をふまえて,積の42を知り,さらに被乗数,乗数のいずれかを知って,残りの値を求める計算が除法である。

 ここから1図のように,除法に包含除と等分除という2つの意味が出る。

 2年生の除法では,まず,こうした考え方で九九を適用して,割り切れる場合を習熟させる。しかし,包含除と等分除にこだわって,いつも包含除なのか等分除なのかと弁別していては困る。2図のように考えて,包含除と考えようが,等分除と考えようが,42÷6=7であると即算できることが大切である。


(図省略)


 余りのある除法に進む前に,『検定外・学力をつける算数教科書』第2巻 第2学年編ですでに扱ったように,3図のような「数被い(かずおおい)」の作成が必要となる。3年生になった子どもが,まだ「数被い」の作成の経験がないとすれば,3図のように,1の段での被い,2の段での被い,……,8の段での被い,9の段での被いの表を作成させてほしい。この被い表を作成していれば,4図のように,74÷8は,包含除で考えようと等分除で考えようと,商は9で余りが2であるとわかる。


 (2) バラ数

 経済的にも科学的にも発展した今日の社会では,子どもたちは早くから大きな数に接している。3年生には,兆までの数を扱うようにしたい。こうした大きな数には,概算が必要になり,手際よい計算も大切になる。バラ数やバラ数の四則計算は,こうした課題にきわめて有効に適応できる。ただ,1年生以来,子どもたちは従来の計算に慣れてきているから,あせらないで,子どもにもよく理解できる部分から順にバラ数の利用を拡大するとよい。

 0,1,2,……,9の10個の数を基数と考えると,7547985096は,基数に十億,億,千万,百万,十万,万,千,百,十,一を単位に付して,7十億,5億,4千万,7百万,9十万,8万,5千,0百,9十,6一の合成と考えられる。合成の意味を明記するため,各基数の頭部に単位を付して,次の@のように表現することができる。これでは複雑なので,日本で使用する4桁区切りの単位のところだけを基本単位として,Aのように表現する。ただ,計算その他の必要から,@に限定せず,必要な単位を適宜に基数の頭部に付することも多い。


  @ 5(億) 4(千万) 7(百万) 9(十万) 8(万) 5(千) 0(百) 9(十) 6(一)


  略して


  A 5(億) 4 7 9 8(万) 5 0 9 6(一)


 上のように,基数に単位を付して,数を数の合成と考える時,この数をバラ数と呼ぶ。さらに広義に考えて,バラ数の考え方で計算する場合も含め,バラ数と呼ぶことがある。

 整数の四則計算を全面的にバラ数で実現するのは4年生と考えている。その理由は,4図のような考え方が必要になったりするからである。

 したがって3年生では,バラ数について,次の計算までを実現したい。

 ・3桁数の間のバラ数の加法と逆の減法

 ・(2桁のバラ数)×2位数

 ・(2桁のバラ数)÷1位数

 事例で説明すると,5図の計算を3年生で学習することになる。


(図省略)


 バラ数の理論は,私が1977年,数学教育学会「研究紀要」1977年1・2号,pp.24−35に,横地清「筆算の形式と概算について」の論文で公にしたものである。当時,すでに私の指導で,久留米の研究会でバラ数が全面的に実践されて成功している。最近,その有効性が評価され,あらためて全国各地で実践されるようになった。


(図省略)


 (3) 時刻と時間

 検定教科書では,時間と時刻の学習が軽視されている。そこで,この『検定外・学力をつける算数教科書』では,多少とも理論的体系的に学習するように展開してみる。その方が3年生の認識の発展段階に適当と考えるからである。なお,以下の内容について,練習題などを含めて,さらに詳細に研究したい方は,明治図書から近刊の『算数科の到達目標と学習評価』3年用に執筆した,私の記事を参考にされたい。

 時刻は太陽をめぐる地球の運行と関係する。日本では東経135°(日本標準時子午線)の経線(南北線)に太陽が南中する瞬間の時刻を正午の12時としている。明石は東経135°の経線上にある。明石に太陽が南中する瞬間が,日本の12時であるということになる。こうした自然界での決まりが忘れられ,子どもは時刻は時計が決めるものと勘違いしている。もっとも往時と違い,現在は,科学的手続きで正確な時刻が決められはする。しかし,子どもにはまず,太陽をめぐる地球の運行,南中という自然現象と関連づけて指導することが大切である。

 一方,時間は測定され得る分量である。その測定には,タイマーや砂時計が利用される。今ではタイマーも1000円程度で購入できる。是非,学校にたくさん備えてほしい。時刻は過去から未来にわたる時間の中で刻々と経過する。この時刻の経過を表記する数直線は,−∞から+∞に延びることになる。この点,長さや重さを表記する数直線とは事情が違う。

  (a) 時間の測定

 子どもはビデオ,競泳,サッカー競技,列車の時刻などで,すでに秒・分の経過時間や,60進法による繰り上がり表記を知っている。また,24時間で1日ということも知っている。こうして時間や時刻に関心を持つ子どもは,タイマーを手にすれば,ただちにあれやこれやの時間経過を測定し,結果を下記のように記録さえする。なお,作業や活動を効果的にするために,漢字やアルファベットの英文字は,できるだけ利用させたい。

 @ 家を出てから校門に到着するまでの時間:34分47秒

 A 停留場に着いてから,バスが来るまでの時間:14分18秒

 B 家族で遊園地に行った時,家を出てから遊園地に到着するまでの時間:2時間23分

 C 床に就いてから朝起きるまでの時間:8時間15分

 D 親類の家に宿泊した時,家を出てから家に帰るまでの時間:1日と10時間

 こうした活動で,時間について次のことを把握させたい。

 @ 時間経過という量が存在する。

 A 睡眠中,エレベーターの停止中,何もしない時にも時間は経過する。

 こうした活動を,次のようにまとめる。

まとめ1:長さには単位の1pがあります。重さには単位の1gがあります。時間には単位の1秒があります。長さを測るには定規を使います。重さを測るには秤を使います。時間を測るにはタイマーを使います。

まとめ2:60秒で1分です。60分で1時間です。24時間で1日です。

  (b) 時間の計算

 時間の計算は,次の順に学習する。

 測定した様々な時刻(時間)について,その位置を数直線上に点として記す。数直線は7図のような分秒軸・時分軸の他に,日時軸の3種類を作図させる。この活動は同時に,時間の相等,大小関係の学習でもある。


(図省略)


 続いて,時間の加法・減法を学習する。筆算に習熟した後は,できるだけ暗算で計算できるようにする。8図から12図の順に学習させたい。


(図省略)


 学習順序をあらためて述べると,次の通りである。

 (1) 8図・9図:単名数の時間を2単位の複名数に変換する

   :2単位の複名数の時間を単名数の時間に変換する

 (2) 10   図:単名数の時間の加減

 (3) 11図・12図:複名数の時間の加減

 子どもはまず「影取り活動」を学習するが,先生方には本節の学習目標をはっきりさせるため,「(c)地球の自転と時刻」を先に書いた。

  (c) 地球の自転と時刻

 子どもには後述の「影取り活動」を学習させた後に,下記事項を学習させる。

@ 地球での経線と緯線の意味。

A 地球は地軸を軸に,西から東に向かって1日(24時間)で1回転する。だから,経線は1時間に15°ずつ,西から東に向かって回転する。

B 日本では,東経135°の経線(日本標準時子午線,明石を通る)に太陽が南中する瞬間を,正午の12時としている。

C 東京の経度は約東経140°である。日本標準時子午線(明石)より,

140°−135°=5°

だけ東にある。だから,明石に太陽が南中してから,5/15(時間)=3/1(時間)後,つまり,

東京に太陽が南中してから,60分×5/15=20分後に,明石に太陽が南中する。つまり,明石(日本標準時子午線)に太陽が南中する時刻は,東京に太陽が南中する瞬間の20分後である。東京に太陽が南中するのは,11時40分である。

D 同様に考えて,静岡(東経138°)では,60分×(138°−135°)/15°=15分と計算し,静岡に太陽が南中する時刻の15分後に,明石に太陽が南中する。つまり,静岡では11時45分に太陽が南中する。

E 神戸,大阪,和歌山,奈良では,経線は135°だから,太陽が南中する瞬間を12時としてよい。

F Bのように,明石に太陽が南中する瞬間を,日本では正午の12時と決め,あとは,正確なタイマーで測った1時間を基準にして,13時,14時,……と時刻が決まるといえる。そして24時間経過すると,再び太陽は明石に南中して,翌日の12時となる。

G 一般に,東経n°の地点では,12時より60分×(n°−135°)/15°(単位は分)以前(負数であれば,以後)に,太陽が南中する。

H 東経n°の地点で,平らな地面に南北線を引くには,次のようにする。

 太いひもの先に石を結わえておもりとする。このひもを,上の方に持ち上げる。そして,12時より60分×(n°−135°)/15°以前の時刻となる瞬間に,ひもの落とす影に沿って直線を引く。この影は太陽が南中する時の影であるから,この直線が南北線となる。

  (d) 影取り活動

 はじめに3つの注意をしよう。

 (1) 2つの半直線が作る角の測定は早期に指導する。また,分度器の使用にも慣れさせる。前の学習指導要領では,角は3年の内容であった。

 (2) 空間にある2つの半直線の作る角,つまり空間の角についても学習させる。

 (3) 2・3年生は,4・5年生より,慣れると分度器の使い方が速い。朝日カルチャーの「横地先生の作る数学」の講座で,文字盤が平面である日時計の正確な作成を全学年に実施した。その際,文字盤の角度線引きが大変な仕事であった。1年生は助手の助けが必要であったが,2・3年生は,いちばん早く完成した。5・6年生は慎重だが手遅い。2・3年生の時期にこそ,分度器をふんだんに利用させ,分度器の使用に慣れさせていただきたい。

 さて,子どもには次の活動をさせて,太陽をめぐる地球の運行,南中といった,時刻に関連する基本的な背景を意識するようにさせたい。そのため少なくとも次の活動をさせたい。

 私は研究園の保育園や幼稚園で,5歳児に「牛乳ビンの影取り遊び」とならんで「アフイン遊び(ごく初歩的なアフイン変換の遊び)」を実施している。写真1は駒ヶ根市の保育園で,1日の長い時間をかけて,先生が5歳児とともに仕上げた,牛乳ビンの影取り(太陽の運行の影取り)である。写真2〜4は,ガラス窓に貼ったセロハンの原画と,水平な面で子供が写し取った影である。こうした体験をしている5歳児を見ると,3歳も年上の小学校3年生が,「水平な地面に立つ,長さ1mの棒の影取り」ができないわけがない。セロハンに切り込んだ好みの絵を原画(原像)とし,太陽光線が水平な机上に落とす影(像)を描けないわけがない。是非,実行されたい。

  (e) 時刻軸の活用と,時刻と時間

 最近は,時刻の表現に午前・午後を使うよりも,24時制で時刻を表現することが多い。ここでも24時制を中心に学習を進める。

 この節では,先生方にまず読んでいただいて,何を教えようとするかを知っていただいた上で,子どもの学習にあたっていただきたいという観点から,以下の内容を書いた。ここには,3年生には高度と思われる内容も書いた。実際には,子どもに合った指導をしていただきたい。

 時刻を数直線に表示し,その表示から,ある時刻から他の時刻までの経過時間を求める手続きは,普通の長さや重さを表示する数直線の場合とはかなり違う。

 求める時間が3日6時間であっても,それが3日6時間前なのか,3日6時間後なのかをはっきりさせる必要がある。早く言えば,1次元のベクトルの考え方が登場してくる。こうした点を配慮し,ここでは,日・時の複名数の時間(時刻)について学習し,その余勢をかって,時・分・秒の複名数,さらには年・月・日・時・分・秒の名数の混ざった複名数の扱いに及ぶことにする。ページ数の関係で,ここでは日・時の複名数の学習を中心とした。

 13図@を見られたい。左右に延びる数直線を利用して,0日0時を示す点(原点)と,1時間の長さ,またはこれに代わる時間の長さを決めて,原点から後何日何時・前何日何時を記す時刻軸を作成する。この時刻軸で,原点が12月1日0時と決まれば,後何日何時・前何日何時と,「後」「前」をつける必要はない。13図Aのように,後2日0時は12月3日0時と記せるし,前1日4時は11月29日20時と記せる。


(図省略)


 実際の指導では,13図Aのように,0日0時を原点とした時刻軸の座標を座標軸の下に書き,特定の日付,例えば12月1日0時を原点とした時刻軸の座標を座標軸の上に書くとよい。そして,まず,13図Aのような座標軸の作成に習熟させる。なお,13図Aで時刻軸の上部の表示を「日付目盛り」,下部の表示を「経過目盛り」とでも呼ぶことにしよう。

まとめ3:時刻軸を描くには,まず,原点の位置と単位の時間(または,単位の時間に代わる時間)の大きさを決めます。時刻軸の下部には経過目盛りを書き,その経過目盛りを基礎に,日付目盛りを書きます。

  (f) 時刻と時間

 ここでは,2つの時刻間の経過時間を求めてみる。子供にはかなり難しい内容となる。実際の学習では,簡略化したり省略したりする。いちおう,高度な理想として書いてみた。

 2つの時刻間の経過時間を求める手続きは,次の2つに分ける。

 まず,経過目盛りで表示された2つの時刻間の経過時間を求めることを学習する。

 次いで,時刻目盛りで表示された2つの時刻間の経過時間を求める。その際には,2つの時刻目盛りのそれぞれを経過目盛りに変換して計算する。

 14図の@〜Cは,上記の計算方法の事例である。


(図省略)


まとめ4:経過目盛りで書いた2つの時刻について,時刻Aから時刻Bまでの時間を求めるには,時刻Bから時刻Aを引く計算を使います。日付目盛りで書いた2つの時刻について,時刻Pから時刻Qまでの経過時間は,まず,P・Qを経過目盛りに直してから計算を始めます(注意:A・Bは共に原点の右にあるか,共に原点の左にある場合だけを扱う)。

 この学習と並び,簡便な,15図・16図に示した方法を学習する。ここには,14図の@〜Cの問題が説明されている。


(図省略)


まとめ5:日・時の複名数で書いた2つの時刻A・Bについて,AからBまでの時刻を求めるには,Aを原点にとり,Aから1日刻みで時刻をたどり,ちょうどBを超すところを探し,それからBまで戻ってみる,といった方法で,問題を解きます。

 実際の学習では,14図@〜Cの方法ではなく,まとめ5を生かした,15図・16図の方法で解くようにする。4年生になれば代数的思考が目立ってくる。3年生は代数的思考は萌芽の時期である。だから,2つの時刻間の時間を求めるには,14図の方法よりも,時刻と時間の関係をかみしめながら,15図・16図の方法で問題を解いた方がよい。

   /横地 清

著者紹介

横地 清(よこち きよし)著書を検索»

1922年,愛知県生まれ

1945年,東京文理科大学 数学科卒

和光大学・山梨大学・東海大学・各教授を歴任

現在,北京師範大学・内蒙古師範大学・東北師範大学・華中科技大学の各客員教授

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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