- 『おもしろ和算』の刊行に寄せて
- 著者まえがき
- 第1章 和算とは何か
- 第2章 実践記録:和算を取り入れた授業
- はじめに
- 第1話 接触多数円問題(おうぎ形の中心角と面積)
- 第2話 和算の紹介と発展問題作り 和算・算額奉納・遺題継承・遊歴算家
- 第3話 接触多数円の発展問題(おうぎ形の中心角と面積)
- 第4話 大国魂神社の算額を見る
- 第5話 大国魂神社の算額問題を解く(三平方の定理・円と直線)
- 第6話 算額の発展問題(三平方の定理・円と直線)
- 第7話 和算の歴史
- 第8話 1人1題算額作り
- 授業を終えて
- 第3章 和算へのアプロ−チ:算額
- 第1話 算額を見に行こう
- 第2話 算額を解こう
- 第4章 和算からのおもしろい話題
- 第1話 裁ち合わせ(文字と式・三平方の定理の証明)
- 第2話 杉成算(自然数の和)
- 第3話 薬師算と変形薬師算(文字と式・素因数分解)
- 第4話 まま子だて(文字と式)
- 第5章 和算からのおもしろい問題
- 第1話 分けかたの問題(連立方程式・1次方程式)
- 第2話 配分の問題・出合い算・旅人算(1次方程式)
- 第3話 旅人算・出合い算(最大公約数・最小公倍数)
- 第4話 勾配の問題(三平方の定理)
- 第5話 測量の問題(相似)
- 第6話 開平計算(平方根)
- 第6章 算額で見る現代的解法と和算との比較(三平方の定理・相似)
- 本書で使用した単位・言葉の一覧
- 本書を書くにあたって参考にさせていただいた文献一覧
『おもしろ和算』の刊行に寄せて
本書は生徒たちに,
「考える楽しさ」,「わかるよろこび」
を体験させた,すばらしい実践の成果です。とてもよく下調べをされ,熱心に教えられた伊藤先生の熱意を,生徒たちがしっかり受けとめて,クラスの雰囲気が盛り上がっていくようすは,非常に参考になると同時に,読む人をさわやかな気持ちにさせてくれます。
たくさんの反復練習をやらせて,生徒の知識と計算力の定着をめざす――というタイプの指導は,あちこちで行われています。それはもちろん無意味なことではないのですが,それだけに偏るのは危険だ,と私は感じています。社会に出てからは,学校で習った知識や計算力では片づかず,「はじめて出会う状況で,どうすればよいかを考えなければならない」ことが多いからです。先行きが読めない国際現代社会では,なおさらでしょう。そこで私は,機会あるごとに「考える楽しさ」,「わかる喜び」の大切さを主張してきました。
しかし私は,この主張を初等・中等教育で,どのように実現するかについては,具体的なプランをもっているわけではありません。ですから私は,本書の原稿を読んで,とてもうれしくなりました。「ここによいモデルがある!」と思ったからです。たとえば「接触多数円の発展問題」の中で,
先生:私は手助けしないつもりです。
生徒:えー,ひどい。
のあと,生徒たちが自力で考えて
生徒:わかった,わかった!
という満足感を獲得するところ(17−18ページ)は伊藤先生もうれしかったと思いますが,読んでいる私も感動しました。
本書がなるべく多くの先生の目に触れ,授業の題材・進め方の参考にしていただけることを,心から期待しています。
2003年1月
大妻女子大学教授 数学教育協議会委員長 /野ア 昭弘
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