- まえがき
- 1章 算数科基礎・基本の定着の指導課題は何か
- §1 学力向上の課題
- §2 基礎・基本を定着させる指導の課題
- 2章 算数科基礎・基本の定着の視点と指導技法
- §1 基礎・基本の明確化
- §2 授業時間の弾力的運営
- §3 指導方法の工夫・改善
- §4 学習環境の工夫
- §5 指導と評価の一体化
- 3章 主要単元別基礎・基本定着指導の実際
- §1 第1学年 主要単元での実際
- 1 第1学年の基礎・基本
- 2 基礎・基本定着の指導技法の実際
- (1) 100までの数
- (2) たし算・ひき算(繰り上がり,繰り下がりあり)
- §2 第2学年 主要単元での実際
- 1 第2学年の基礎・基本
- 2 基礎・基本定着の指導技法の実際
- (1) たし算・ひき算の筆算(2桁のたし算と逆のひき算)
- (2) 1000より大きい数
- (3) かけ算九九
- §3 第3学年 主要単元での実際
- 1 第3学年の基礎・基本
- 2 基礎・基本定着の指導技法の実際
- (1) 余りのあるわり算
- (2) かけ算の筆算(2桁どうしのかけ算)
- (3) 表と棒グラフ
- §4 第4学年 主要単元での実際
- 1 第4学年の基礎・基本
- 2 基礎・基本定着の指導技法の実際
- (1) 分 数
- (2) 小 数
- (3) 面 積
- (4) 三角形
- §5 第5学年 主要単元での実際
- 1 第5学年の基礎・基本
- 2 基礎・基本定着の指導技法の実際
- (1) 垂直,平行と四角形
- (2) 小数のかけ算,わり算
- (3) 百分率とグラフ
- (4) 分数のたし算とひき算
- (5) 三角形と平行四辺形の面積
- §6 第6学年 主要単元での実際
- 1 第6学年の基礎・基本
- 2 基礎・基本定着の指導技法の実際
- (1) 分数のたし算とひき算
- (2) 分数のわり算
- (3) 体 積
- (4) 比 例
まえがき
久しく「基礎・基本の上に個性の花が開く」(1980年代)と言われていましたが,少し前から「基礎・基本を学ぶ過程で個性を伸ばす」(1990年代)というように変化してきたようです。
ところが,最近,「よみ,かき,けいさん」という言葉が遠い記憶の底から呼び戻され,算数科の学力は「知識と計算」であるかのような誤解が喧伝される傾向が見られます。
これは,教育課程審議会答申(評価,指導要録平成12年12月),教育改革国民会議報告(平成12年12月)の中に「読,書,算」,「読み,書き,話すなどの言葉の教育」などのキーワードが登場したことをきっかけに,基礎学力を漢字と計算と読書に限定して捉えてしまい,「読,書,算」を必要十分条件のように思い込んでしまったことにその原因を求めることができるように思います。
確かに,「読,書,算」は,学びの始めを支え,進めていく基にはなりますが,これだけを基礎学力の全てのように思い込むにはいささかの抵抗を感ずるのであります。基礎学力を時代の進展や変化に合わせて,期待し求められる内容は何かということについての検討を怠った私達教育に直接かかわる者に一端の責任があるのかもしれません。
今一度,算数科の目標を確認して,算数科の授業がどこに向かって進められるべきであるかを確認しておく必要があります。(「小学校学習指導要領解説・算数編」文部省(現文部科学省),平成11年5月)
<算数科の目標の構造>
数量や図形についての算数的活動を通して
○ 数量や図形についての基礎的・基本的な知識と技能を身に付ける
○ 日常の事象について見通しをもち,筋道を立てて考える能力を身に付ける
○ 算数的活動の楽しさに気づかせる
○ 数理的な処理のよさに気づかせる
○ 学んだことを進んで生活(算数の学習,他教科の学習,日常生活等)に生かそうとする態度を育てる
そこで,私達は,学力低下問題,算数科における基礎・基本の問題を「教室の中」で考えてみました。そして,「基礎・基本の中身」をどのように捉え,学びとらせたらよいかという根本に立ち返って整理してみました。
○ 学力を担任の立場から考えてみました。
○ 基礎・基本を具体的に洗い出してみました。
○ 基礎・基本を学ぶ過程で「考える,理解する,身に付ける,活用する」ことができるようにすることを検討しました。
○ 各学年の主要な内容について,どのように展開したらよいか具体的に提案しました。
これからの授業は,「子どもが育った」という「結果」を求められる温かく厳しいものでなければならなくなります。なぜなら,子どもと保護者と地域住民が求めているからです。これまで以上に,教師には,実践的指導力(授業力と評価力)が必要になります。
しかし,実践的指導力(授業力と評価力)を高め,発揮できるようになっても,肝心の内容が明確になっていなければ,子どもたちに無駄な労力を強いることになり,学習から遠ざけてしまいかねないのです。
本書は,地道にこれらのことに向き合って考え,実践している者が,同じようなことを考え,実践している人達へのメッセージとして編集したものです。
本書が,本質的な意味における算数科の基礎・基本の定着と発展にわずかでもお役に立つことができれば大きな幸せです。読者諸兄姉の目に留まり,ご指導賜ることができますことを切に願う次第です。
末筆になりましたが,ご多用のなかから玉稿を賜りました諸氏に対して心からお礼を申し上げます。有り難うございました。
また,企画の段階から大変お世話になりました明治図書教育書編集部の安藤征宏氏に対して特に名を記して感謝の意を表します。
2002年11月 編者 /小島 宏
-
- 明治図書