シリーズ・21世紀算数授業への挑戦12子供の問題解決を支援する算数授業

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21世紀に生きる子供に必要とされる問題解決力を一人一人の子供に確かに育てるために従来の問題解決の授業の何をどう改善したらよいかを提示。


復刊時予価: 2,332円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-559606-5
ジャンル:
算数・数学
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 128頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第
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目次

もくじの詳細表示

まえがき
第1章 算数授業は着実に改善されてきている
第1節 こんな子供たちが育ってきている
1 自ら作問し,理解を拡げ深める子供
2 学習計画を自分たちでつくる子供
3 教師と協力してティーム・ティーチングをする子供
4 粘り強く問題解決を遂行する子供
第2節 子供の考えのよさが生きる授業が工夫されている
1 ある算数の授業の風景
(1) 自分の考えを持つ
(2) 子供の考えを分類整理し,それぞれのよさを位置づけること
(3) 学び合いを大切にすること―アイディアの確かな共有―
(4) 自分の判断の確認とよりよい考えを追求すること
(5) ものごとを発展的に考えるよう導くこと
(6) 学習の成果を多面的にとらえること
(7) 学習に連続性や累積性をもたせること
2 子供の考えのよさが生きる指導
(1) なぜ,今,「子供の考えのよさが生きる指導」なのか
(2) 子供の考えのよさが生きる指導の工夫
第3節 子供一人一人の「独り立ち」を促す教育
なぜ,「支援」か―その登場の背景―
子供の「自立」や「独り立ち」を促す教育の創造と問題解決
「問題」と「課題」,それらの構成・設定
(1) 問題・課題
(2) 問題・課題の構成・設定
(3) 問題の特性と純粋数学研究における機能
@ 問題の一般的特性―自己増殖性と認識の深化―
A 純粋数学の研究と「問題」
(4) 算数科の問題・課題の構成・設定
@ 学習指導と問題・課題―教師の出と子供の出―
A 問題・課題の構成・設定で配慮したいこと
B 問題・課題の多様性
第2章 21世紀への算数教育と問題解決
第1節 新しい学力観に立つ教育から「生きる力」を育てる教育へ
1 新しい学力観に立つ教育
(1) 「新しい学力観」の登場
@ 指導要録の改善に関する調査研究協力者会議
A 学校週5日制に関する調査研究協力者会議
(2) 新しい学力観に立つ算数教育
(3) 観点別学習状況の評価の観点間の相互関係
2 「生きる力」の登場と算数教育
(1) 中央教育審議会「第一次答申」から
@ 生きる力と学校教育
A 生きる力の育成と算数のよさ
B 教育内容や教育方法の改善
C 新しい学力観に立つ教育の自然な発展としての「生きる力」を育てる教育
(2) 教育課程審議会「中間まとめ」から
@ 子供たちの成長への願いと学校への期待
A 教育課程の基準の改善のねらい
B 授業時数の縮減
(3) 教育課程審議会「答申」から
@ 算数・数学科の改善の基本方針
A 算数科改善の具体的事項
第2節 「生きる力」を育てる算数授業の基本
1 豊かな人間性の育成を視野に入れる
(1) 「人間性」概念の曖昧性と相対性
(2) 「豊かな人間性を育成する」前提
(3) 「中間まとめ」における「豊かな人間性」
(4) 算数・数学科と「豊かな人間性」
(5) 「豊かな人間性」と「算数のよさ」
2 自ら学び,自ら考える力を確かに育む
(1) 「考えること」と「学ぶこと」
(2) 考える対象,問題にすべきことの多面性
(3) 考えることへの動機
@ M.クラインに学ぶ
A 掛谷宗一に学ぶ
(4) 自ら考え.自ら学ぶ力を育てるために
@ 1つの問題を大切にする
A 「勉強」再考
3 基礎・基本の確実な定着を図る
(1) 生きる力の育成と基礎・基本
(2) 基礎・基本を捉える際に必要な視点
@ 基礎・基本の相対性
A 基礎・基本の多面性
B 基礎・基本の弾力性
第3節 子供の問題解決を支える基本的な資質能力を鍛える ―よりよい算数教育を求めて―
1 判断力を鍛える―『‘No’を‘No’と表明すること」ヘ―
(1) 国立教育研究所の基礎学力調査から
(2) 文部省の「ペーパーテスト調査」から
@ 分数の除法の問題(演算決定)
A 真偽の判断
2 表現力を鍛える
(1) 説明の質を問う
(2) ‘IfA,thenB’形式を生かす
3 コミュニケーション・マインドを培う
(1) ある授業の一コマから
(2) コミュニケーション・マインドを育てる
@ コミュニケーション
A コミュニケーション・マインド
4 算数観の点検とその転換
(1) 「生きる力」の育成と算数観
(2) 算数観の点検
@ 数学は仮説的思考といわれる一つの研究方法である
A 数学は創造的な分野である
B 数学は記号的言語である
C 数学は,単なる方法,技術,言語以上のものてあってそれは知識の体系である
D 数学は広い意味では,精神,合理的精神である
第3章 問題解決の典型としての「帰納」
―探究(学習)の方法としての「帰納」―
第1節 問題解決の典型としての「帰納」
1 帰納的な手続き
(1) 暗示的な接触
(2) 支持的な接触
(3) まとめ
2 帰納的な態度
(1) 知的勇気
(2) 知的正直さ
(3) 賢明な自制
3 おわりに
第2節 「帰納」における暗示的接触と支持的接触 ―第5学年:いろいろな問題(問題解決)―
導入
自力解決(その1)
集団解決(検討)
自力解決(その2)
終末
第3節 「帰納」における実験と観察
1「観察」と「実験」―その辞書的な意味―
(1) 観察―それは能動的な営みである―
(2) 実験―合目的的な活動としての実験―
2「観察」と「実験」―それらの教授上の意義―
(1) 観察と実験
(2) 観察と実験の教授上の意義
3 算数授業における観察と実験―事例「あまりのあるわり算(第3学年)」から―
(1) 子供たちの活動から(概要)
(2) 問題の特性「自己増殖性」を生かした新たな課題の設定
(3) 子供たちの着想を顕在化させ,位置づけること
あとがき

まえがき

 学校週5日制の全面実施を睨み,教育内容の厳選と指導時数の縮減を前提として21世紀初頭の教育課程の基準が策定されようとしている。指導時数の縮減幅は小学校算数で14%,義務教育九カ年で考えると200時間(45分換算)超であり,昭和22年の学習指導要領(試案)の水準を約一学年程度低下させた昭和23年の改訂の水準を下回ることになるのではないか。この指導時数の縮減により指導内容や時間数について量的な面での縮小を余儀なくされている。去る5月24日朝日新聞朝刊一面トップ記事として「算数・中学数学1/3引きます」(地区によっては「算数・中学数学3割引きます」)とのセンセーショナルな見出しで,教育課程審議会における審議の状況が報じられた。これによると,「ゆとり」の確保と関連すると推測されるが,指導時間数の縮減の割合14%よりも指導内容の削減の割合の方が大きく,およそ二倍となっている。このような指導時間数の縮減や指導内容の削減を質的な面の充実で補うことができるのであろうか。

 教育内容の厳選と指導時数の縮減を甘受するとすれば,個への対応を大胆に進める必要があろう。一つは現行の基準の水準を高等学校段階の科目構成で維持し,選択の幅を大幅に拡大することである。いま一つは自ら学び自ら考える力を確かに育て,その力を存分に発揮して主体的に活動できる場を小学校段階から意図的,計画的に設定することである。小学校高学年では課題選択的な学習も提案されており,そこに一つの活路を見いださなくてはならない。また,総合的な学習の時間の活用も視野に入れる必要があろう。このように見ると子供一人一人に問題解決にかかわる諸資質,諸能力を確かに育てることがこれまで以上に重視されることになろう。

 本書では,子供一人一人に問題解決にかかわる諸資質,諸能力を確かに育てるにはどのようにしたらよいか,及びそのために問題解決の指導をどのように改善したらよいかの二つの課題に応えようとしている。既に,前者の課題については拙著『自ら考える力を育てる算数授業』(明治図書,1992)後者については拙著『個性を生かす算数授業』(明治図書,1991)においてそれぞれ論じている。本書はそれらを踏まえ,子供に視点を当てて一層の前進をさせたいとの思いからまとめられている。

 本書では,まず,算数授業に見られる子供の育ちや授業改善の試みをエピソードとして紹介し,21世紀へ向けて確かな実践が積み重ねられていることを示す(第1章)。次いで,21世紀への算数教育と問題解決について,新しい学力観に立つ教育から「生きる力」を育てる教育への展開を視野に入れて教育の連続性と累積性に触れつつ,「生きる力」を育てる算数授業の基本及び子供の問題解決を支える基本的な資質,能力を鍛えることを中心に,子供の問題解決を支援する算数授業の基本について考えを述べる(第2章)。最後に,問題解決の典型としての「帰納」,すなわち,探究(学習)の方法としての「帰納」について,その基本的な考え方をG.ポリヤ(Polya)のアイディアに基づいて整理するとともに,具体的な算数授業の場面を取り上げて子供の問題解決を支援する視点から授業改善のポイントを提案する(第3章)。

 本書が日々の算数授業における問題解決の指導の改善並びに子供一人一人に問題解決を支える諸資質,諸能力を確かに育むことにささやかな貢献ができれば幸甚である。

 最後に,本書の出版に当たり,その企画から出版までひとかたならぬお世話を頂きました,明治図書算数教育編集部の櫻井芳子さんに厚く御礼申し上げます。雑誌『教育科学算数教育』への執筆並びに単行本の出版企画などについて長い間多大なご尽力と激励を頂きました。ここに記して感謝の意を表します。


  平成10年5月末日   /清水 静海

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