シリーズ・21世紀算数授業への挑戦2
算数科・子どもの声で授業を創る

シリーズ・21世紀算数授業への挑戦2算数科・子どもの声で授業を創る

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授業の流れをつくるきっかけは子供の言葉にあるとして,授業の中の子供の言葉を見逃さず,算数授業を生命力あふれる時間に変えていく実践提案


復刊時予価: 2,332円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-557808-3
ジャンル:
算数・数学
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 128頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 子どもの声で授業を創る
1 子どもの算数観と教師の授業観
1.子どものすごさに出合って
2.まずは,教師の授業観を変えよう
3.子どもの言葉で授業を創る
2 算数の授業づくりを問い直す
1.算数授業を新鮮にするもの
2.子どもと対象との関わりを軸に授業を創る
(1)3つの対象との関わりを大切にする
(2)教材の提示から生まれる子ども自身の問題
(3)自分自身の問題に関わる
(4)友達の考えに関わる
第2章 子どもの声が授業を変える
[下学年の実践提案 /柳瀬 泰]
1 子どもの声が授業を変える─図形領域における実践から─
1.子どもの声で授業を拓く
(1)何かが物足りないと感じる授業像
(2)子どもの声で動いていく
2.子どもの声を授業に生かす
(1)「わかった。直角が3つある三角形だ」
(2)一人の声を共有の問いにする
(3)知識を獲得するということ
3.子どもの中にある概念を引き出す
(1)変化していく状態を意識させる
(2)真っすぐに書きたい,という動機の発生
(3)子どもの中に残したいもの
4.共に学ぶ楽しさを伝える
(1)友達のアイデアに関わる楽しさを伝える
(2)楽しい算数作品の鑑賞
2 子どもの声を生かす授業の目的─なぜ,子どもの声を大切にするのか─
1.意欲の喚起と問題の理解を一体的に進めるために
(1)導入を子どもの声で構成していく
(2)問題を理解するということ
(3)子どもの発見に学ぶ
2.友達の声に関わる態度を育てる
(1)問い方を工夫する子どもたち
(2)友達の声を聞くことの大切さに気づかせる
(3)問い方に目覚める子どもたち
3.矛盾や誤りを修正していける子どもを育てる
(1)自己の行動を修正しようとする動きを作り出す
(2)S子の考え
(3)共に学ぶということ
3 子どもの表現に基づく算数授業
1.算数の表現と子どもの表現
(1)算数授業における表現のとらえ方
(2)子どもの表現をよみ取るということ
2.子どもの表現を結びつける
(1)表現することを重視し算数観を変えていく
(2)一人一人の表現を結びつけ知識を組み立てる
3.子どもの表現のすばらしさを知る
第3章 追究型の授業を創る
[上学年の実践提案 /田中 博史]
1.追究型の授業を創る
1.算数教育に「人間教育」の力を取り戻そう
2.子どものこだわりを軸にした授業づくり
(1)始まりは子どもの言葉から
(2)ひとりのこだわりを全体に広げる
(3)拡がる追究の世界
3.活動自体を授業の目標に
(1)考えることを楽しむ授業と活動
(2)角錐の体積に挑む子どもの活動
(3)作ってみたら見えてきた!
4.新単元「3,4,5から拡がる世界」で追究活動の場を創る
(1)目的は子どもの興味で授業を組織していくこと
(2)まずは何が見えるかを問う
(3)子どもたちの見つけたことで活動計画を立てる
(4)3,4,5だけに通じるきまりへ
(5)つまずくことを楽しむ子どもを育てよう
2 追究型の授業を支える教師の役割
1.教師の構えを見直そう
2.トピックの日は育てたい子どもの態度を身据えて
3.カプレカー定数に出合った子どもたち
(1)あれ?で始まる授業
(2)発展する子どもの問い
(3)取り組みの視点の変更を促す
4.追究の仕方を教える
(1)独り立ちのための力を育てる
(2)考えた足跡を残すノートづくり
(3)「困ったことを発表しよう」
(4)子どもの思考の変化を見抜いて本人に意識させる
(5)条件が変わると発展していく問題
(6)問題の発展を楽しんでいる自分の姿を記録させていく
第4章 まず,これから始めよう!
1 ノートづくりと発表の意識改革から
1.まず,ノートを変えよう
(1)つぶやきが残るノート
(2)考えた足跡が残るノートづくりのために
(3)ノートを育てる2つの方策
2.発表の意識改革をしよう!
(1)子どもの第一反応までを問題提示と考えて
(2)「発表」の意識改革で,素直な子どもの状態を!
2 子どもの算数世界を拓く
1.まず,教師が広い教育観に立つこと
(1)国際理解教育を算数で
(2)子どもが算数を感じる瞬間を大切にする
(3)日常の問いかけをもっと増やそう
おわりに

はじめに

 子どもたちが授業に求めているもの。それは,学ぶ楽しさであり,喜びである。一方,教師も,子どもが楽しく学ぶことを強く願っている。

 考えてみると不思議である。楽しく学びたいと思う子どもと,楽しく学ばせたいと願う教師が同じ時間を共有しているにもかかわらず,授業のなかで学ぶ楽しさを共に掴むことは容易なことではない。授業という舞台に上がると,双方の思いがすれ違いを見せはじめる。この矛盾を修正する鍵はどこにあるのだろうか。

 新しい時代の教育の在り方が問われ,社会の変化に対応できる人間の育成が求められている。確かに,これからの時代を予測したとき,授業はその目的に向かって努力を続けるものでありたい。しかし,授業を生命力にあふれた時間にしようと考えるときに目を向けるべきものは,社会の変化ではなく,「子どもの変化」ではないだろうか。今,私たちの目の前の子どもたちは,十分過ぎる物質社会,便利な文明社会のなかで,依存心を増大させ,耐性を低下させている。こうした変化を見せつつある子どもたちに,何より伝えたいことは,自ら問題にはたらきかけ,追究していく喜びである。

 それには,教師は以前にも増して,確かな指導の技術を身につけなくてはならない。支援的な立場に立つ,という気持ちはよくわかるが,変化しつつある子どもを,よりよく変化させるためには,これまで以上に教師の主体性が発揮された授業を構想していかなくてはならないと感じる。「授業観の変革」,「授業改革」などの勇ましい言葉があふれているが,その目的は授業を変えることではない。そこに育つ子どもを変えることである。

 こうした問題意識は,近ごろの算数の授業は形骸化されていないだろうか,という危惧にも繋がっていく。本書の執筆を進めている頃,角屋重樹氏(文部省小学校課教科調査官)が,次のような提言を投げかけられた。

 「問題解決は学習活動の一つの形態としてとらえられ,教師が課題あるいは問題を提示し,子どもが予想を立て解決方法を考え,解決するための情報を収集し,それらを討議し,結論を得る,というように形式化して実践されることが多いようである。そして,この形式だけが大切にされ,子供がその手順を踏むことだけが目標となっていることが多い」

 算数といえば,問題解決学習がまず思い浮かぶ。とすると,この提言は算数教育の在り方に対して,大きな疑問を投げ掛けたと言えよう。

 本書は,この疑問にいち早く一つの具体像を示し応えるものとなろう。

 私たちが算数の授業を創る起点として,「子どもの声」を重視する背景については,筑波大学附属小学校の正木孝昌氏の授業観に動かされるところが大きい。正木氏は,著書『活動する力を育てる算数授業』の中で,「授業の流れをつくるきっかけは,子どもの言葉,あるいは活動の中にある」と述べ,授業づくりの姿勢を示しておられる。正木氏のこの姿勢に学び,私たちはそれをさらに深めていきたいと考える。

 本書は,『算数教育』(明治図書)において,平成6年度に連載したものに加筆,修正をし構成したものである。毎日,教室で子どもに向かい合い,よりよい授業づくりに悩む私たちに,その実践を紹介する機会を与えて下さった櫻井芳子氏に心より感謝申し上げたい。


  1996年早春   /田中 博史・柳瀬 泰

著者紹介

田中 博史(たなか ひろし)著書を検索»

1958年 山口県防府市生まれ

1982年 山口大学教育学部数学研究室所卒業

山口県公立小学校教諭を経て,1991年より筑波大学附属小学校教諭

日本数学教育学会出版部幹事・同 興味調査特別員会委員

算数授業研究会理事,学校図書教科書「小学校算数」著者

柳瀬 泰(やなせ やすし)著書を検索»

1958年 東京都世田谷区生まれ

1981年 玉川大学文学部教育学科卒業

世田谷区立三宿小学校,都立教育研究所数学研究室研究生を経て現在,目黒区立不動小学校教諭

日本数学教育学会研究部幹事・同 教育課程委員会委員

国立教育研究所コミュニケーション能力育成委員会委員,算数授業研究会理事

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • 全国算数授業研宮城大会で新潟の間嶋先生が紹介された本。今読んでも本質が理解できます。
      2023/12/15組長
    • 自分も算数の授業のことをずっと考えているのですが、結果のみに注目してしまい、つまらない授業しか展開できていないです。子供の声を授業にいかせるよう、算数の授業観をかえたいです。
      2023/12/14
    • 素晴らしい内容の本を教育学部の学生にも紹介しようと考え2冊注文します。到着が楽しみです。憧れの田中先生のような授業がしたいです。
      2023/12/14けん
    • 名著です!
      2023/12/3jazu
    • この本は、子どもの声で創るという思いのもと、著者の方たちにとっても思い出深い書籍となっております。ですから、手にとってみて、著者の子どもに対する思いを読んでみて、自分の教育観に繋げたらなと思います。
      2019/8/20

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