- まえがき
- T 逆転現象は逐一指導からは生じない
- 1 いきなり問題を解かせて逆転現象〜6年「倍数と約数」での逆転現象
- 2 教科書の“また問題”をいきなり解かせて逆転現象〜6年「体積」での逆転現象
- 3 学習したことを復習したのち説明しないで授業する〜6年「分数のかけ算わり算」の単元末問題
- (1) 分数のたし算ひき算の復習
- (2) 教科書の問題を説明しないで解かせる
- 4 習ったことを習った通りに書く子が正解する〜6年「比」の授業での逆転現象
- 5 できる子が手を抜くから起きる逆転現象〜6年「比」の応用問題での逆転現象
- 6 文章題の授業での逆転現象〜「式計算答えの3点セットで解きなさい」でも逆転現象は生じる
- 7 概算の問題を説明しないで解くから逆転現象が起きる
- 8 いじめを受けていたKさんが自分に自信を持ち伸びた〜自然な流れの時間調整で,作業が遅い子に対応する5年「偶数奇数」の授業
- U 授業の開始時「できるできないの差」を際立たせないから逆転現象が起きる
- 1 5年「いろいろな四角形」の導入〜いきなり作図から始める
- 2 5年「小数のかけ算」〜前時の復習問題から授業を始めるシステムでIQ78のCさんは力を伸ばした
- 3 6年「倍数と約数」〜乱暴者Y君がノートをしっかり書き教科書の問題を解いた
- 4 時には前の学年の復習から始める〜6年「分数倍」の授業
- (1) 導入「○を使って割合を求める」
- V 逆転現象を作り出す向山型算数授業
- 1 基本型を子どもに応じて修正する
- 2 たった1つの基本型にこだわる〜6年「単位量当たりの大きさ」での基本型をシンプルなものにする
- (1) 数直線図の基本型
- (2) 基本型を修正する
- (3) 学んだ基本型を使いこなす
- (4) 基本型を応用する
- (5) そして起きた逆転現象
- (6) 翌日の授業,全員できなかった問題がY君にもできた
- (7) そしてまた,逆転現象が
- 3 クラス全員が150点満点中135点をとった〜6年「比」の授業の勘所
- (1) 一人残らず全ての子どもがテストで9割以上正解する
- (2) 「比」の授業の勘所 その1〜等しい比の基本型を繰り返す
- (3) 「比」の授業の勘所 その2〜文章題では比の対応を問う
- (4) 「比」の授業の勘所 その3〜比の式の基本型
- 4 3学期も大詰め「比例」の授業で逆転現象が起きる
- W 向山型算数授業が作る逆転現象が生んだドラマ
- 1 学校一のやんちゃ君Y君を変えた向山型算数の授業
- (1) また,Y君が……
- (2) 「テストができるようになった」その事実がY君を変えていった
- (3) 教科書チェックシステムでノートを書くY君
- (4) とことんシンプルな基本型を追い求める
- 2 「黒板を写していたらできるようになった」成功体験を積み重ね自信がついたN子
- 3 小学校6年生でとった100点のテストを今でも覚えています〜教え子からの手紙
- 4 できる子できない子を逆転させる授業は保護者の認識も逆転させる
- 5 わり算の筆算アルゴリズムと赤鉛筆でMさんができるようになった〜4年わり算の授業で起きた逆転現象
- 6 テンポ良く変化のある繰り返しで起こった「逆転現象」〜決して発言しなかった子がどんどん手をあげて答えるようになった!
- (1) 以前のA君
- (2) 逆転現象の授業
- (3) 逆転現象を作る「向山型算数」
- 7 ノートが変わると取り組みが変わる
- (1) うわさのA君
- (2) たった1時間で変わる
- (3) 生まれ変わったA君
- あとがき
まえがき
教室には厳然と,できる子・できない子が存在する。
授業力が低い教師の教室では,このできる子できない子の差が大きく,また,強固である。
できる子は尊大になり,自分は何でもできるのだと勘違いし,できない子は自分に対する自信をなくし,ずっとこのままできないものだとあきらめの境地に達してしまう。
できる子は自分に対して「自分はできる」という認識を抱くようになり,できない子は「自分はできない・何をやってもだめなんだ」という認識を抱くようになる。
それは,次のような授業を繰り返し繰り返し受けさせられてきた結果生じるからである。
できる子だけが活躍し,できる子だけができる授業
できない子ができるようにならないで,いつまでもできない授業
このような授業を受け続けてきたことで生じる「できる子できない子」の差は強固で永遠なものだと,できない子は思う。
そのことで学級内にいじめや差別等の問題行動も多く生じる。
できる子できない子の差が弱肉強食の社会構造につながっているからである。
子どもが自分に抱く「自分はできる」「自分はできない」という認識は,教師のお説教では変わらない。
先に述べたような事実を,繰り返し繰り返し体験したり,見てきたから抱くようになった認識だからである。
子どもの「できる子できない子」の認識を変えるには,それを変えられる事実を授業の中に作り出し見せていく必要がある。
逆転現象とは,このような教室での事実や子どもたちが抱く認識を逆転させる授業を指す。
例えば,次のような事実を教室に作り出す授業だ。
できる子もできない子もみなできる授業
できる子もできない子もみなできない授業
できる子ができなくてできない子ができる授業
こうした授業を受けると,子どもたちが自分に抱いている認識が変わってくる。
「自分もやればできるようになる」
「できると思っていた自分はあまりたいしたことないな」
「何だよ,いつもできるあいつができなくて,自分ができたじゃん。結構やるじゃん,自分って」
逆転現象の授業は,このように,子どもが自分自身に抱く認識を逆転させていく。
本書では,逆転現象が起きる算数授業の実践を紹介していく。
/赤石 賢司
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- 明治図書