数学科の授業づくり・はじめの一歩4
数学科の授業づくり 中学3年編

数学科の授業づくり・はじめの一歩4数学科の授業づくり 中学3年編

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指導書には書かれていない数学授業の基礎基本を詳細解説。

授業はみんなで学ぶ場だが、みんなが同じように学ぶとは限らない。でもこのことは「分からない子どもがいてもしかたがない」ことを意味するものではない。子どもたちが同じように学ぶ授業づくりを考える前に、子どもたちが自分なりに学ぶ授業づくりを考えてみませんか。


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ISBN:
4-18-539815-8
ジャンル:
算数・数学
刊行:
2刷
対象:
中学校
仕様:
A5判 152頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

もくじの詳細表示

第@章 平方根
小単元1 根号を用いて表される数の必要性やよさ
小単元2 根号を用いて表される数の計算
小単元3 個に応じた学習の時間
ほっとTime 机間指導で何をする?
やってみました! @ 数学の学習にレポートづくりを
第A章 式の計算
小単元1 単項式と多項式の乗法及び多項式を単項式で割る除法
小単元2 一次式の乗法,式の展開と因数分解
小単元3 自然数と素因数分解
小単元4 式の利用
小単元5 個に応じた学習の時間
ほっとTime 指導案のすすめ
第B章 二次方程式
小単元1 二次方程式とその解の意味
小単元2 二次方程式の解き方
小単元3 二次方程式の利用
小単元4 個に応じた学習の時間
ほっとTime 授業を観てもらおう
やってみました! A 「評価規準」から指導と評価の改善を考える
第C章 関数 y=ax^2
小単元1 関数 y=ax^2の関係
小単元2 関数 y=ax^2の特徴
小単元3 関数 y=ax^2の利用
小単元4 個に応じた学習の時間
ほっとTime 授業を観に行こう
第D章 図形と相似
小単元1 図形の拡大・縮小と相似の意味
小単元2 三角形の相似条件と図形の性質
小単元3 平行線と線分の比
小単元4 相似の考えの活用
小単元5 個に応じた学習の時間
ほっとTime 教材を開発しよう
第E章 三平方の定理
小単元1 三平方の定理を見いだすこと
小単元2 三平方の定理の意味と証明
小単元3 三平方の定理の利用
小単元4 個に応じた学習の時間
ほっとTime 数学を教えることについて語ろう
やってみました! B 実生活と数学を結び付けよう! 牛乳パックを数学でみると…

はじめに

 新しく世に出る本には,どれもその本なりの「新しさ」があります。人はその「新しさ」にひかれて本を手にとるのではないでしょうか。では,「この本の新しさは何か?」というと,それはズバリ「新しいことが何も書かれていないこと」です。冗談のように聞こえるかもしれませんが,このことが,この本の一番大切なところです。

 本書は,中学校の数学教師が,数学や授業について日々考えている「ごくごく当たり前のこと」をまとめたものです。なぜ,そんな当たり前のことを本にする必要があるのか…それは,次の3つの立場にある方々と,数学やその授業について,改めて考えてみたいと思ったからです。


○まず,中学校の数学の教師を目指す人,または若い数学の教師へ

 先日,あるベテランの先生から,「最近の若い先生は大変に熱心で意欲的である」というお話をうかがいました。私もこの意見に同感です。現在,教員の新規採用は大変に厳しい状況が続いています。私は10年間,大学の教育学部に附属する中学校に勤務して,将来教壇に立つことを夢見て教育実習にやってくる多くの学生と一緒に,数学の授業について考えてきました。そんな中には,大学卒業後,夢をあきらめず何年も教員採用試験にチャレンジしている若者がたくさんいました。

 「でもね」と,そのベテランの先生はお話を続けて,「彼らの授業は,教科書をなでて終わっちゃうんだよね…」とおっしゃいました。この意見にも私は大きくうなずいてしまいました。中学校の数学の授業は,教科書に沿って進められるのが一般的でしょうが,教科書をなでる…つまり教科書に書かれていることをそのまま伝えることを目指すものではありません。指導する数学についても,その指導の仕方についても,教師はひとりひとり自分なりの“思い入れ”を持っています。その思い入れを表現する場こそ授業です。若い教師は,こうした思い入れをどうやって身に付けていくのでしょうか? 私自身は,周囲の人たちとの関わりを通して教えられたような気がします。職員室でとなりに座っている教師がお兄さん,お姉さんといった立場から,いろいろなことを教えてくれました。経験談や失敗談を聞かせてくれたり,授業をみせてくれたり,参考になる本を紹介してくれたりしたものです。

 最近,教師の世界でも急速な高齢化が進んでいます。今や,職員室で若手教師のとなりに座っているのは,お兄さん,お姉さんというよりも,お父さん,お母さんといった世代の人たち,学校運営などで果たす役割が大きな教師たちです。私が新人だった頃のように,「有意義な雑談」を交わすことが難しくなっているのです。若い教師は,一生懸命授業をしています。その努力が,彼らの思い入れを豊かにするためには,経験者からの「当たり前」の引き継ぎが必要なのではないでしょうか。

 この本は,指導のまとまりである単元を章として構成されていますが,指導内容を網羅的に取り上げているわけではありません。もう少し小さな指導のまとまりである小単元ごとに,「あぁ,これって大切なんだよなぁ〜」という私の思い入れをピックアップしてあります。実際に授業を組み立てる前などに,気になる部分に目を通して,自分だったらどうするか,考えるきっかけにしてみてください。


○次に,中学生をお子さんにもつ保護者の方々へ

 最近は学校の中にいても,説明責任とか情報公開といった言葉の広がりとともに,保護者の方々の授業への関心の高まりを感じます。でも,その多くは通信簿とか高校入試の調査書などに関連したことではないでしょうか。こうした面で教師の果たす役割が重要であることは重々承知していますが,ここでは「教師は成績をつけるために授業をしているのではない」ということをわかっていただきたいのです。教師には,数学の授業を通して子どもたちに伝えたいことがたくさんあります。計算して答えを出す方法だけではなく,「こんなふうに考えられるようになってほしい」とか「こんな表現ができるようになってほしい」などいろいろです。

 この本では,こうした教師の思い入れを,保護者の方々にも知っていただきたいと考えました。各単元のはじめには,どんなことをどのように,どの程度の時間をかけて指導するのかを表にまとめてあります。また,学習の目標を,子どもの立場からまとめておきました。お子さんに「今,学校で何を勉強してるの?」と質問して,該当する部分だけでも読んでみてください。「へぇ〜,数学の先生って,こんなこと考えてるんだ…」ということを,ある程度理解していただけるはずです。


○そして,ベテランの数学教師へ

 「その方面で経験豊富な人」をベテランというそうです。本人が自覚しているかどうかにかかわらず,この本を読んで「何でこんな当たり前のことが本になってるんだ!」とか「私だったら,もっと〜と考えるぞ!」と憤慨した方はベテラン教師です。また,この本はみんなでワイワイ考えるきっかけづくりの本です。そのまま使える実践事例などはできるだけ取り上げませんでした。「私だったら,この思いをこんな題材でこんなふうに具体化して授業をつくるな」と考えた方もベテラン教師です。

 この本では,こうした声がベテラン教師から聞こえてくることも期待しています。あなたは,教師になったとき,「数学の教師」として採用されたのではありませんか? おそらく退職するまで「数学の教師」ですよね? 最近,数学やその授業について,あなたの思い入れを誰かに語りましたか? また,職場の仲間とそんな話をしましたか? 近い将来,教師の世界では急速な世代交代が進みそうです。現場の教師がこれまで積み上げてきた実践的な資産がリセットされないように,もっと数学やその指導について語り合っておくべきではありませんか?


 最後になりましたが,この本の出版に際して,お世話になった方々に感謝の気持ちを表したいと思います。千葉市教育委員会の五十嵐一博先生には,原稿の段階から貴重なご意見をいただきました。また,明治図書の仁井田康義さんと相田芳子さんには,できる限り自由に執筆する機会を与えていただきました。改めて御礼申し上げます。


  2004年12月   /永田 潤一郎

著者紹介

永田 潤一郎(ながた じゅんいちろう)著書を検索»

1962年生まれ

1988年3月 千葉大学大学院教育学研究科数学教育専攻修了

1988年4月 千葉県立浦安南高等学校教諭

1994年4月 千葉大学教育学部附属中学校教諭

2004年4月 千葉県立千葉南高等学校教諭

2005年4月 国立教育政策研究所 教育課程研究センター 教育開発部 教育課程調査官

文部科学省 初等中等教育局 教育課程課 教科調査官


2000年度日本数学教育学会実践研究優秀論文賞 受賞

日本数学教育学会会員

日本科学教育学会会員

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書

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