- はじめに
- 第1学年の実践
- 1.単元の目標/ 2.単元の指導について/ 3.児童の実態/ 4.指導の工夫/ 5.指導計画/ 6.本時の展開/ 7.実践の成果と課題
- 1.0 第1学年の指導のポイント
- 1.1 「10」より大きい数
- じゃんけんゲーム・カードゲームをしよう
- 1.2 のこりはいくつ ちがいはいくつ
- 入門期におけるひき算
- 1.3 繰り下がりのあるひき算
- ひき算名人になろう
- 1.4 かたちあそび
- 写し取り・仲間分け
- 第2学年の実践
- 1.単元の目標/ 2.単元の指導について/ 3.児童の実態/ 4.指導の工夫/ 5.指導計画/ 6.本時の展開/ 7.実践の成果と課題
- 2.0 第2学年の指導のポイント
- 2.1 「100」より大きい数
- 十進位取り記数法の理解をベースに
- 2.2 「1000」より大きい数
- 買い物ごっこを通して相対的な数の大きさを確実に
- 2.3 (2位数)−(2位数)の筆算
- 習熟は問題作りで
- 2.4 長さをはかる
- 動機付けを工夫する
- 2.5 かけ算(2)
- アレイ図を使って,視覚的にとらえる
- 第3学年の実践
- 1.単元の目標/ 2.単元の指導について/ 3.児童の実態/ 4.指導の工夫/ 5.レディネス・チェックテストとコースガイダンス/ 6.指導計画/ 7.本時の展開/ 8.実践の成果と課題
- 3.0 第3学年の指導のポイント96
- 3.1 3位数のたし算・ひき算
- 位取り表を使って
- 3.2 (2,3位数)×(1位数)の筆算(1)
- 児童が作り出す筆算の指導
- 3.3 わり算
- 包含除からの導入
- 3.4 水のかさ
- センチリットルを導入して
- 3.5 時こくと時間
- 生活経験を生かした教材から時間の感覚を育てる
- おわりに
はじめに
完全学校週5日制のもと,新しい学習指導要領が実施されて3年が経過しようとしています。「ゆとり」のなかで「生きる力」の育成を目指した学習指導要領は,基礎的・基本的内容を確実に身に付け,それを基に自分で課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力,豊かな人間性,健康と体力などの「生きる力」を育成することを基本的なねらいとしています。
これからの日本と世界は,これまで以上に激しい変化に直面することが予想されます。そのような中でこれからの社会を担う子どもたちが主体的創造的に生きていくため,一人一人の子どもたちに「生きる力」を知の側面から見た「確かな学力」を身に付けさせることが重要とされます。
本校では,この「確かな学力」を飛躍的に向上させるための施策である「学力向上フロンティア事業」の拠点校として,平成14・15・16年度の3年間,文部科学省・埼玉県教育委員会から学力向上フロンティアスクールの指定を受け,算数科における研究実践を積み重ねてきました。
研究の中心を児童一人一人の学力向上を目指すにはどのような授業改善が必要であるか,少人数指導を効果的に取り入れるにはどのようにしたらよいかというところにおきました。
研究を進めるにあたって,3年間にわたって東京学芸大学名誉教授伊藤説朗先生の御指導をいただくことができたことは,大変幸せなことでした。また,東京都三鷹市立北野小学校と連携して研究を進めることができたことも,幸運なことでした。伊藤先生から,問題解決指導とその基盤となるよい問題作り,そして今回の研究の中心であるコース別指導の実際をご教授いただき,どの子にも分かる授業,できる授業を目指して実践研究を進めてきました。北野小学校とは互いに授業を参観し合い,情報交換をし,協力し合いながら研究を深めてきました。
このたび,伊藤先生の編書である本書に,北野小学校と一緒に本校の実践を紹介できることは,この上ない喜びとするところです。
本校の実践しているコース別指導の実際は,児童の個性や能力に応じたコースを設定し,3年生以上は学級を解体しての学年内コース別指導,1・2年生は学級内コース別指導を,それぞれコース別に学習した方が効果的であると思われる時期から実施します。
3年生以上には,次の3つのコースを用意しています。
発展・拡充コース…教科書に示されている程度の内容を確実に身に付け,さらに,発展的な内容にも取り組むコース
基礎・習熟コース…教科書に示されている程度の内容を確実に身に付けられるようにするコース
補充・復習コース…学習指導要領に示されている基礎的・基本的な内容を確実に身に付けられるようにするコース
1・2年生はTTを基本に基礎・習熟コースで授業を進めますが,途中で個別指導が必要な場合には,該当児童を集めて,補充・復習コースの授業を展開するという2つのコースを用意しています。
コース別指導の基本的な考え方は,これまでどの子にも同じ内容を同じように教えようとしていた考え方から,どの子にも身に付けさせなければならない基礎的・基本的な内容を厳選し,一人一人の児童に確実に身に付けさせよう,さらにもっといろいろなことが学習できる児童には,それに見合った学習を準備し,さらに力を伸ばそうという考え方です。
このコースを設定しての授業は,今では児童・保護者にも理解され,本校の特色ある教育活動の一つとなっています。児童は自分で選択したコースで学ぶことに喜びを感じ,毎時間集中して学習し,分かる喜び,できる喜びを実感しています。その児童の姿から,私たちは,これまでの研究が児童の「確かな学力」の向上に確実に成果を上げ,学習指導要領の目指す「生きる力」の育成に迫っていることを確信しています。
本書では,各学年ごとに指導のポイントと主な実践例を紹介しています。その内容は,コース別指導が中心となっていますので,これからコース別指導に取り組まれる先生方の参考になれば幸いに存じます。
研究を推進するにあたり,また本書の原稿を執筆するにあたり,懇切丁寧な御指導を賜りました伊藤説朗先生に改めて深く感謝申し上げますとともに,北野小学校,明治図書の関係各位に心より厚く御礼申し上げます。
平成17年6月 埼玉県白岡町立白岡東小学校長 /長谷川 美代子
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