- まえがき
- 第T章 不登校ゼロの達成と維持
- [1] 不登校プロジェクトのその後の結果
- [2] 不登校ゼロまでの経過
- (1) 不登校減少プロジェクトの目的
- (2) 不登校減少プロジェクトの方法
- @ プロジェクトチーム/A プロジェクトの展開
- [3] プロジェクトの経過
- [4] プロジェクトの特徴
- (1) ワンユニット方式
- (2) 学校体制
- @ 春季休業期のバックアップスタディ/A 保護者への適切な休ませ方への指導体制/B 欠席への早期対応システムの実施/C 再登校した子どもへの学習補充体制/D 夏季休業期バックアップスタディ/E 学内マラソン大会事前トレーニング/F 冬季休業期バックアップスタディ
- (3) 再登校支援の進め方
- @ 第1ステップ:再登校支援体制確立会議/A 第2ステップ:個別プログラム決定会議/B 第3ステップ:IEP実施状況点検会議/C 第4ステップ:再登校予定日事前会議/D 第5ステップ:再登校状況確認会議/E 第6ステップ:計画的介入終結会議
- 第U章 不登校の個別支援計画の進め方
- [1] なぜ,不登校には個々にあわせた指導計画が必要なのか
- [2] 再登校のための個別支援計画のつくり方と進め方 −6つのステップ−
- (1) ステップ1:再登校支援体制確立会議
- @ 開催時期/A 目的/B 参加メンバー/C 場所/D 内容/E ポイント
- (2) ステップ2:個別支援計画決定会議
- @ 開催時期/A 目的/B 参加メンバー/C 場所/D 内容/E 行動アセスメントの着眼点/F 行動アセスメントとして情報をまとめる/G再登校するためにはどのような手順で何を実施したらよいのか
- (3) ステップ3:再登校個別支援計画実施状況点検会議
- @ 開催時期/A 目的/B 参加メンバー/C 場所/D 内容
- (4) ステップ4:再登校予定日事前会議
- @ 開催時期/A 目的/B 参加メンバー/C 場所/D 内容
- (5) ステップ5:再登校状況点検会議
- @ 開催時期/A 目的/B 参加メンバー/C 場所/D 内容/E 登校活性化計画について
- (6) ステップ6:計画的介入終結会議
- @ 開催時期/A 目的/B 参加メンバー/C 内容
- 第V章 不登校の解決事例の実際
- [1] 「回避」を「育む」に転換した再登校支援
- 1 ステップ1
- 2 ステップ2
- (1) 不登校になる前はどのような特徴のある子だったか
- (2) どのように不登校になったのか
- (3) 不登校児本人の全般的状態がどのように変化していたか
- (4) 面接時点での本人と学校・学習をめぐる状況はどのようになっていたか
- (5) 家庭においてどのように育てられたのか,現時点でどのような家庭内の状態なのか
- (6) その他
- (7) 行動アセスメントとして情報をまとめる
- (8) 再登校するためにはどのような手順で何を実施したらよいのか
- 3 ステップ3およびステップ4
- 4 ステップ5およびステップ6
- 5 予後の状況
- 6 支援成功のポイント
- [2] 特別扱いをしない再登校支援
- 1 ステップ1
- 2 ステップ2
- (1) 不登校になる前はどのような特徴のある子だったか
- (2) どのように不登校になったのか
- (3) 不登校児本人の全般的状態がどのように変化していたか
- (4) 面接時点での本人と学校・学習をめぐる状況はどのようになっていたか
- (5) 家庭においてどのように育てられたのか,現時点でどのような家庭内の状態なのか
- (6) その他
- (7) 行動アセスメントとして情報をまとめる
- (8) 再登校するためにはどのような手順で何を実施したらよいのか
- 3 ステップ3
- 4 ステップ4
- 5 ステップ5
- 6 ステップ6
- 7 予後の状況
- 8 支援成功のポイント
- [3] 教育支援センターとの連携による再登校支援
- 1 ステップ1およびステップ2
- (1) 不登校になる前はどのような特徴のある子だったか
- (2) どのように不登校になったのか
- (3) 不登校児本人の全般的状態がどのように変化していたか
- (4) 面接時点での本人と学校・学習をめぐる状況はどのようになっていたか
- (5) 家庭においてどのように育てられたのか,現時点でどのような家庭内の状態なのか
- (6) その他
- (7) 行動アセスメントとして情報をまとめる
- (8) 再登校するためにはどのような手順で何を実施したらよいのか
- 2 ステップ3およびステップ4
- 3 ステップ5
- 4 ステップ6
- 5 予後の状況
- 6 支援成功のポイント
- [4] 学級担任主体の継続登校支援
- 1 ステップ1
- 2 ステップ2
- (1) 不登校になる前はどのような特徴のある子だったか
- (2) どのように不登校になったのか
- (3) 不登校児本人の全般的状態がどのように変化していたか
- (4) 面接時点での本人と学校・学習をめぐる状況はどのようになっていたか
- (5) 家庭においてどのように育てられたのか,現時点でどのような家庭内の状態なのか
- (6) その他
- (7) 行動アセスメントとして情報をまとめる
- (8) 再登校するためにはどのような手順で何を実施したらよいのか
- 3 ステップ3およびステップ4
- (1) 学級担任のD君へのかかわりの変化
- (2) 父親のD君への登校支援の開始
- 4 ステップ5およびステップ6
- 5 予後の状況
- 6 支援成功のポイント
- 第W章 不登校ゼロのための8か条
- [1] 不登校ゼロ達成からのエッセンスとしての8か条
- [2] さらなる不登校ゼロにむけて
- 参考・引用文献
- あとがき
まえがき
小林正幸先生と筆者の共著『教師のための不登校サポートマニュアル−不登校ゼロへの挑戦−』は,幸いにも多くの教師の方に読んでいただいたようです。
筆者は,この本では,町単位で不登校ゼロとなった取り組みについて,主に学校・地域単位の取り組みに焦点を当てて報告しました。そのため,読者の教師の方から「個々の不登校事例への再登校支援の取り組みがどのようなものであったか教えてほしい」「こういうタイプの不登校にはどのようにかかわったらよいかを書いてほしい」との要望が筆者のもとに寄せられました。
そこで,本書では,主に不登校事例への再登校支援の取り組みを紹介します。そして,それぞれの不登校の子どもに合った支援を行えば,再登校は可能であることをお伝えしたいです。
まず,不登校ゼロ町の実践から不登校問題解決のための学校体制等をまとめました。
次に,不登校の子どもへの個別支援計画のつくり方をまとめました。行動契約を結んだ場合,ほぼ100% の高い再登校支援成功率で,今までにおよそ300 の不登校事例を再登校に導いた6 つのステップに分けられる手順です。その子に再登校の準備ができたかどうかを評価できるダイヤグラム,再登校して再発しない状態で登校しているかを評価し,教師として対策がすぐに立てられるダイヤグラムなど,教師,保護者,子どもがすぐ使える形にしてまとめました。
そして,事例は,現在の学校現場でみられるさまざまなタイプの不登校の典型例を取りあげました。また,現在見られるさまざまな支援形態,たとえば専門支援機関,教育支援センターを活用した事例も紹介しました。
こういった多くのタイプを紹介するため,再登校事例を不登校ゼロ達成の町だけでなく,他の不登校ゼロ達成の小・中学校の事例からも紹介することとしました。
そして,最後に,これらのエッセンスを不登校ゼロのための8か条として教師のみなさんが不登校の子どもとかかわるという視点からまとめました。不登校の予防,再登校支援,再発防止,この不登校ゼロのために必要な3つの目標に分けて示してあります。
従来,学校教育現場における不登校への対応については,どうすれば問題を解決するのか,という視点からの対策が少なかったといえます。
本来は神経症タイプの不登校への一時的対処であった「待つ」という方法を,すべての不登校のタイプに状況の如何にかかわらず適用してしまっている学校,家庭が多いことも原因の一つでしょう。
また,不登校問題から二次的におこる問題の予防のみを目的とした「〜をしてはいけない」教育が主流であることも原因の一つでしょう。
結果として,これらの対応は,現在,全国公立小・中学校で約12万1000人,全児童生徒数における不登校の割合が前年比約0.02%しか減少していないという現状を招いています。
どのような問題においても本質的な解決には,摩擦,葛藤は避けられません。不登校問題解決のプロセスには,必ず「山場」, 本質的問題解決のための摩擦に耐えて,生産的解決を図る時期がありました。「待つ」「〜をしてはいけない教育」では,そのような問題に直面する摩擦は生じませんが,当然,本質的な問題は解決しません。
さらに,不登校の問題は,不登校状態が継続すること自体で学習の遅れ,体力の低下といった新たな問題が生じるという性質の問題であり,時間の経過がさらに解決を困難にします。
このような現状の中で,筆者が再登校という依頼を不登校の子ども本人から受けた場合には,まず最初に,学校教育現場,保護者に従来の対応を変えてもらう必要がありました。
筆者は,教師のみなさんには,「自分は登校刺激だからといって遠慮されないでください」「先生が愛情を込めて不登校の子どもとかかわってくださったら,子どもは学校に来やすいのです」「前の日より何かできることが増えたら,すぐ子どもを褒めてあげてください」といったことをお願いしました。
また,保護者のみなさんへは,「義務教育年限の場合,お子さんの教育保障の責任者としての保護者のお考えをしっかりしましょう」「早寝早起きの生活リズム,食事習慣,できる限りの準備を家庭でしましょう」「子どもの不安は,適切な目標設定と充分な準備,できたら褒めるで取りましょう」「褒め上手になりましょう」「ありがとう,ごめんなさいを教えてください」「子どもが約束を守れなかったら,先生が無理矢理やったと責めるのではなく,お子さんにお詫びと自分を表現する言葉を教えてください」といったことをお願いしました。
このように子どもの周囲の方々の意識改革,行動改革を行いながら,それぞれの子どもに合わせた個別支援計画を日々実施して,ふと気がつけば,いくつもの学校が不登校ゼロとなっていたのです。
この「待つ」から不登校の子どもを「育む」という従来と異なる考え方,きめ細かく,具体的なやり方にとまどう教師の方が多いとは思います。
しかしながら,再登校していきいきと学校生活,社会生活を送っている子どもたちの姿から,何かを感じ取っていただきたいと思います。
そして,不登校問題に正面から向き合う教師のみなさんの教育実践に生かしていただくことを願ってやまないのです。
平成18年1月 /小野 昌彦
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