言語技術教育14
「この言語技術」を「この授業」で身につける

言語技術教育14「この言語技術」を「この授業」で身につける

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国語力の基礎として子どもに身につけさせるべきスキルは何か。

各研究グループが独自に行う「言語技術教育」研究を総点検する試みとして本書は編まれた。これまでの研究・実践を総括し、「言語技術」を子どもに教える「学習用語」として抽出するとどうなるか、という問題提起のもとに、研究者・現場からの提案と授業構想を示した。


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ISBN:
4-18-528810-7
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小・中
仕様:
A5判 152頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき /市毛 勝雄
第一部 日本言語技術教育学会の成果と課題
〜日本言語技術教育学会の研究・実践を総括する〜
話す・聞く 言語技術の重要性は立証された 体系化の追求と指導法の開発が課題 /村松 賢一
書く 発想の技術・実証の技術・論証の技術 /大内 善一
読む 評価基準の系統性・学びの質を高める「授業・評価研究」を /佐藤 洋一
音読・朗読 「音読」「朗読」は指導技術として定着しつつある /有働 玲子
話し合い・討論 討論形態の種別分析およびそれぞれの言語技術指導の展開 /高橋 俊三
メディア メディアの学習(メディア教育 /メディア・リテラシー) /中村 敦雄
言語事項 言語事項の教材づくりと授業実践の課題 /渋谷 孝
第二部 子どもに教えるべき「学習用語」とは
子どもに教えるべき「学習用語」〜説明文教材「ありの行列」を例にして〜
国語科の形成学力の顕在化のために ―学習用語の明示試論― /野口 芳宏
説明文では「キーワード・段落・文章構成」が教えるべき学習用語である /市毛 勝雄
説明的文章の「構造」「吟味」にかかわる学習用語 /阿部 昇
本学会での「花を見つける手がかり」の「飛び入り授業」の指導項目で「ありの行列」を授業する /向山 洋一
言語技術教育にとってなぜ「学習用語」が大切なのか
万事金の世の中だ ―警句こそが学習用語なのだ― /宇佐美 寛
「読むこと」の指導と「学習用語」の関係 ―技術と用語は不可分である― /鶴田 清司
国語科で用語指導が行われないのはなぜか /大森 修
国語科の「学習用語」が機能し学習成果を挙げ説明責任・結果責任を発揮する /小森 茂
小説教材の学習指導で「学習用語」をどのように扱うか ―グループ学習を取り入れた授業の場合― /町田 守弘
〈学習用語のカテゴリー化〉が確かな国語学力を育てる効果的な言語認知の方法である /柳谷 直明
第三部 「この言語技術」を「この授業」で身につける
漢字 漢字文化をこう教える /神谷 祐子
音読 音読で人物をとらえる技術を身につける /平川 恒美
作文 論理的な作文を「評価」する技術を身につける /国府田 祐子
読み 構成をつかむ・論理をつかむ・吟味する /柳田 良雄
読み 「宣言的知識」「手続き的知識」をスキーマ化することで読む能力が向上する /横田 経一郎
書評と第十三回大会の報告
大内善一著『国語科教育学への道』(渓水社) /菅原 稔
村上正子著『中学生の作文を教材にして説明力を鍛える』(明治図書) /岡本 明人
科学的「読み」の授業研究会編国語授業の改革4『国語科の教科内容をデザインする』(学文社) /市毛 勝雄
柳谷直明著『〈学習用語のカテゴリー化〉で〈国語学力〉を育てる』(明治図書)  /浜上 薫
柳澤浩哉・中村敦雄・香西秀信著『レトリック探究法』(朝倉書店) /有沢 俊太郎
柴田義松・日本教育方法学会編『現代教育方法事典』(図書文化) /小林 義明
田近洵一・井上尚美編『国語教育指導用語辞典第三版』(教育出版) /柴田 義松
日本言語技術教育学会第十三回大会の報告 /佐藤 洋一
編集後記 /鶴田 清司

まえがき

 わが日本言語技術教育学会は一九九二年設立以来十三年が経過した。

 その間「言語技術教育」について、さまざまな立場から多くの試みが行われてきた。何よりも「技術」を標榜している学会であるから、観念的な言葉の遊びを排して、事実による立証を尊重する態度は一貫している。

 本年は、学会内の各研究グループが行っている試みや研究を、総点検してみようという案が理事会で浮上した。そこでその具体化に理事全員が討議した結果、「『この言語技術』を『この授業』で身につける」という実行案がまとまった。そしてその実行案がそのまま本年の大会テーマとなった。

 わが学会の各研究グループでは「言語技術」という定義自体、多くの考えが存在する。現在のところ、その定義を学会において一つの定義に収斂させるには、もう少し時間がかかると思われる。その理由は、「言語技術」という定義を確立させるためには、一般社会の「言語」までを含んでいる必要があり、その一般社会の広い言語現象を対象とした「教育」という体系を考える研究が必要になるからである。

 しかし、学会員の大多数を占める小学校・中学校・高校・大学の教員が、各研究グループにおいて初等・中等教育における「言語技術」を「教育」として体系化する研究は、これは現在の態勢・組織の中において十分に可能であり、しかも、これまで惰性的に続いてきた形式的な「国語教育」の授業を変革する契機ともなりうる。

 わが学会の理事会ではこうした考えに基づいて、各研究グループが独自に進めている「言語技術」を、子どもに教える「学習用語」として取り出すとどうなるか、という問題として提起することにした。その問題提起を明確にするために、討論する教材を説明文教材「ありの行列」一つに限定した。うまくいけば、これは現在われわれが参加して推し進めている本学会の研究成果のすべてを一望できるのではないか。これが理事会において実現を目指した本大会の意義である。

 大会第一部では、野口芳宏氏は「『技術』は知識の安定的行為化」、阿部昇氏は「『構造』『論理』『吟味』という三つの観点」、市毛は「学習用語『キーワード』『段落』『文章構成』を教える」、向山洋一氏は「問いの文、目標の文から発する文章構造」という各氏の「学習用語」が提案される。

 大会第二部前半では、「模擬授業による『言語技術』の基礎・基本の解明」として、横田経一郎氏が「説明文における『学習用語』の指導」、柳田良雄氏が「文章の構成・論理を読み取る言語技術を、手だてが明確に示される授業で身につける」というテーマで模擬授業を行う。

 大会第二部後半では、模擬授業による提案として、神谷祐子氏が「漢字文化をこう教える」、平川恒美氏が「音読の技術とは」、国府田祐子氏が「作文を『評価』する技術を身につける」というテーマで模擬授業を行う。

 わが学会では、「理論」を述べ立てるためには、必ずそれを立証するための「事実」が要求される。その「事実」を立証する場が「模擬授業(体験)」である。きれいごとの「理論」を述べ立てただけでは、わが会員には誰にも信用されないけれど、反対に、驚くような「理論」でも「模擬授業」によって立証されれば多くの会員に賛成されるのが、わが学会の特色である。

 前述の通り、わが学会では「社会の『言語技術』を『教育』として体系化する研究」に取りかかる必要は認めており、そのための研究グループの立ち上げを期待している。多くの会員の奮起を期待したい。

 本年の大会で多くの会員に豊かな収穫があることを祈り、本書がそのよい手引きとなることを期待している。


  二〇〇五年三月   日本言語技術教育学会会長 /市毛 勝雄

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