- はじめに
- 第1章 日本の算数・数学授業研究
- 第1節 日本の教育と授業研究概観
- 第2節 日本の算数数学授業研究小史
- 第3節 日本での現職教員の研修はどのように行われているか
- 第4節 教育課程とその実現のための授業研究
- @我が国の算数・数学教育はどのように変わってきたか
- A算数・数学の教育課程における目標はどのように変わってきたか
- B教育課程の基準はいかに改善され,実施されるのか
- C各学校の算数・数学教育課程はどのように編成され,どのように実施されるのか
- D中学校における指導資料に基づく指導と評価
- E日本の教科書や教師用書はどのような特徴を備えているのか
- F日本ではどのような教材教具を活用しているのか
- G教師・教育実習生は授業研究をどのように考えているか
- 第5節 海外からみた日本の授業研究
- @これまでの国際比較研究の特徴比較
- A日本・海外の指導と評価の意味の相違例
- 第2章 研究授業の方法
- 第1節 授業の準備:研究授業以前にすべきこと
- @子どもを育てる計画としての年間指導計画
- A問いが連続的に発展する指導計画
- B多様な考えとよさの感得を主題とした学習指導を工夫するには?
- 第2節 日本に特徴的な授業展開モデルとその事例
- @問題解決型の指導方法とその事例
- A話し合い型の指導法とその事例
- B問題発見型の指導法とその事例
- 第3章 日本数学教育学会における研究の動向
- 第1節 小学校における授業研究
- @小学校算数科における授業研究の特徴は何か
- A算数教育の目標はどのように変遷してきたか
- B日本数学教育学会全国大会における研究動向はどのように変化したか
- 第2節 中学校における授業研究
- @中学校における授業研究の現状
- A学習指導要領の変遷に応じた内容項目の変化と授業時数の変化
- B日本数学教育学会全国大会の研究動向
- 第3節 高等学校における授業研究
- @高等学校における授業研究の現状
- A学習指導要領を中心とした高校数学教育の変遷
- B日本数学教育学会全国大会の研究動向
- 第4章 様々な授業研究
- 事例1.大学と附属学校の連携
- 事例2.附属のカリキュラム開発
- 事例3.授業研究〜教育現場・教育委員会・大学の連携〜
- 事例4.授業研究サークル
- 事例5.教員養成課程における授業研究
- 事例6.文部科学省支援授業研究プロジェクト
- 第5章 国際的な共同研究と国際教育協力プロジェクト
- 事例1.国際授業比較研究プロジェクト
- 事例2.タイにおける授業研究の動き
- 事例3.北米における授業研究
- 事例4.オープンエンドの問題を有効に活用するための授業研究
- 事例5.フィリピン理数科教育教師訓練センタープロジェクト
- 事例6.カンボジアにおける授業研究
- 事例7.ラオスにおける授業研究
- 事例8.インドネシアにおける授業研究
- 事例9.エジプトにおける授業研究
- 事例10.ケニアにおける授業研究
- 事例11.ガーナにおける授業研究
- 事例12.南アフリカにおける授業研究
- 事例13.ホンジュラスにおける授業研究
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はじめに
2004年12月,経済開発協力機構(OECD)並びに国際教育到達度評価学会(IEA)による学力の国際比較PISA,TIMSSの結果が公表され,学力問題が改めて脚光をあびることになった。先生方の立場からすれば,学力の向上のためには,まずは学習指導の改善こそが課題となる。そのためには一層の授業研究とそれに基づいた授業改善が期待される。
本書は,学習指導の改善のための授業研究のあり方を示し,教育課程改訂や時代の動向を踏まえて,これまでに,熱意ある先生方と研究組織によっていかに優れた学習指導法が開発されてきたか,そして,そこでの経験が,どのように世界の教育改善に寄与してきたかを解説することを通して,教育の質の改善に資することができるようにしたいとの思いから編纂された。
日本の学習指導法が世界的に脚光を浴びた1つのきっかけは,1980年代に始まる問題解決に関わる日米比較研究(米国代表Jerry Becker,日本側代表三輪辰郎)であった。算数・数学科を通して得られた日本の授業に対する高い評価は,1990年代にはJames Stigler等の研究を通して,一般の教育研究者の間でも広く知られるようになった。そして,そのように質の高い授業ができるようになる日本に固有な授業改善の方法として,「授業研究(jyugyou-kenkyuu)」が世界中で知られるようになり,米国を中心にした先進国で,授業研究ブームが起きている。他方で,開発途上国への教育協力においては,1990年には「万人のための教育」が採択され,その課題として「教育の質の改善」,「Numeracy(生活で有効な計数能力,数学的思考力)」が提案された。以来,算数・数学教育の改善は国際教育協力の中核の1つに数えられるようになり,現在では,世界中で日本の問題解決型の指導法や授業研究の方法が参考にされ実施されるようになった。
本書は,日本数学教育学会研究部と文部科学省国際教育協力のための拠点システム数学委員会による合同企画として,計画された。本書が内外の関係者に,教育の質の改善を実現するための授業研究ハンドブックとして役立てていただくことができれば幸いである。
末筆ながら,海外で実際に利用されている日本の教育経験である「算数・数学科の授業研究」のとりまとめをご支援くださった文部科学省の国際教育協力政策室の皆様,そして,広く開発途上国の教育協力プロジェクトを実施し,開発途上国における授業研究を推進する国際協力機構(JICA)の皆様にお礼申し上げたい。
日本数学教育学会研究部部長 /清水 静海
拠点システム事業数学課題代表者 /礒田 正美
同事務局 /大久保 和義/馬場 卓也
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