- まえがき
- T 土日に仕事を持ち込まない
- 一 教員世界には進歩がない
- 二 人事考課制度の導入を見据える
- 三 「時間を生み出す」という発想をもつ
- U 仕事は〈日程〉と〈時間〉でする
- 一 学校週五日制でこんなに忙しくなった
- 二 時間を一元化して管理する
- 三 仕事は〈日程〉でする
- 四 仕事は〈時間〉でする
- 五 仕事は「拙速」を旨とする
- 六 成績処理・通知表には早めに取り組む
- V 〈活きている時間〉は惜しまない
- 一 時間は「生き物」である
- 二 時間には〈活きている時間〉がある
- 三 〈活きている時間〉を惜しまない
- 四 研修は自主的にやらねば身につかない
- 五 研修する教師として生きる
- 六 時間を生み出し研修を続けるには前提がある
- W 校務分掌に効率的に対応する
- 一 「どこまでやるか」を決める
- 二 自分の「守備範囲」を確かめる
- 三 「自分でできること」を進める
- 四 「他の人に協力してもらうこと」を示す
- 五 「職場での呼吸」に通じる
- 六 仕事は「引き継ぐこと」を前提に終えていく
- X 通知表を効率的に作成する
- 一 生活・行動の記録のポイント
- 二 「総合的な学習の時間」の所見のポイント
- 三 「総合所見」のポイント
- 四 学級通信の果たす役割
- 五 進路指導とのかかわり
- Y 進路事務に効率的に対応する
- 一 生徒の総合的評価を記録するには「個人記録簿」が不可欠である
- 二 指導要録の所見はよい点を具体的に書く
- 三 よい保護者会には十か条がある
- 四 よい進路面談には十か条がある
- 五 受験校提出の調査書のポイント
- あとがき
まえがき
二〇〇二年四月。「新教育課程」とともに「学校週五日制」が始まった。
この二つが同時に開始されたことによって、学校現場は、これまで経験したことのないような多忙感に見舞われるようになった。まる三年が過ぎようとしている現在、この「これまでにない多忙感」に慣れるということがない。むしろ体を壊したり、心を病んだりする人が増えてきているようにさえ思われる。
「新教育課程」と「学校週五日制」の同時導入は、簡潔に整理すれば、次の十点の変化(詳しくは第U章の一を参照)を学校現場にもたらした。
(1) 六時間授業が増え、放課後の時間が少なくなった。
(2) 実質的に会議が増えている。
(3) 行事の準備時間が確保しづらい。
(4) 学級組織づくりの時間が確保しづらい。
(5) 教材研究の時間が確保しづらい。
(6) 「総合的な学習の時間」の計画づくりが時間を圧迫する。
(7) 選択教科の拡大が時間を圧迫する。
(8) 平日の部活動指導がままならなくなってきている。
(9) 事務仕事が多くなってきている。
(10) 休みの日に仕事をする肉体的・精神的余裕がなくなった。
現場教師であれば、誰もがうなずいてくれるだろうと思う。特に中学校の現場教師であれば、おそらくその納得の度合いは更に深いに違いない。
これらに加えて、次のような諸事象が教師の精神を圧迫している。
(1) 人事考課制度の導入による職員管理・勤務評定の徹底
(2) マスコミによるいわゆる「不適格教員」「指導力不足教員」の報道
(3) 文部科学省・大学研究者・現場実践家を巻き込んだ学力低下論争
(4) 少年犯罪の凶悪化に伴う「子ども変質論議」
(5) 「子ども変質論議」に伴ってマスコミで喧伝される「心の教育」の大合唱
(6) 一昔前に比べておそらくは数十倍に増えているであろう保護者からのクレーム
(7) 説明責任・結果責任・情報管理責任の強化
いま、教師には、「四面楚歌」と言っても言い過ぎでない状況がある。それとともに、「教師をやめたい」という声さえ聞くようになった。しかし…、しかし、である。こんな時代だからこそ、教師はもう一度、意を決して頑張らねばならないのではないか。気持ちを奮い立たせて、子どもにも保護者にも、正対しなくてはならないのではないか。私はそう思う。私たちは、現実的には教職を去るわけにはいかない。そして何より、かつては確かに教職に夢を託したのである。夢を託して教職に就いたのは、そんなに昔のことではないはずだ。多忙を嘆き、逆境を嘆いているだけでは、何も始まらない。いますべきは「スキルアップ」である。それも短い時間で、仕事を確実にこなしていける、そんなスキルを身につけることである。それがまず第一だ。
本書は、教育書としては異例の書かもしれない。本書には子どもの姿や教育理念・教育思想といったものが一切書かれていない。授業をどうつくるか、学級をどうつくるか、生徒指導にどのように取り組むか、そういったことも書かれていない。本書に書かれていることの多くは、勤務時間内をどう過ごすべきか、土・日をどう過ごすべきか、校務分掌にはどういう心構えで取り組んだらよいのか、といった教師が仕事をしていく上での「心構え」、そして仕事を進めていく上での「原理・原則」を書いた本である。また、事務処理能力を高めるために、「通知表作成」「進路事務」の具体的な進め方についても詳述した。
本書が、「私は仕事ができない」「私は仕事が遅い」と悩む多くの教師にとって、少しでも役立てていただけるなら、それは望外の幸せである。いま、何よりも教師が、元気にならなくてはならないのだから。
二〇〇五年一月 自宅書斎にて /堀 裕嗣
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- 明治図書
- 仕事術の基本を確認できました。2021/5/1640代・中学校教員