学級経営力を高める2
説明責任時代の生徒指導力

学級経営力を高める2説明責任時代の生徒指導力

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生徒指導に必要なのは、互いに響き合う教師の組織力である。

求められる「説明責任」…。これには「教師の組織力」を活かして当たる以外に乗り切る方策がない!と力強く主張する。失敗例を含む豊富な実践事例を元に、生徒指導における「教師集団の組織力」を高め、活かすことに絞って論を展開した。


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ISBN:
4-18-525717-1
ジャンル:
学級経営
刊行:
対象:
中学校
仕様:
A5判 144頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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まえがき
T 一人でできると思うから失敗する
一 「校内暴力」が増えている?
二 「小六女児同級生殺人事件」は防げたか
三 教員集団は「組織」として動くべし
U 生徒指導には役割分担がある
一 小学校の教師と中学・高校の教師は同列に論じられない
二 生徒だけでなく同僚をも視野に入れたマネジメント感覚をもつ
三 「毅然とした態度」だけでは危ない
四 「危機管理体制」をシステム化する
五 「役割ゲーム」か、「エロスゲーム」か
六 「仕事」か、「実践」か
七 「母性型教師」と「父性型教師」と「友人型教師」と
V 生徒指導の失敗事例に学ぶ
一 新卒担任の惨めな失敗
二 学級経営の失敗から学んだこと
三 教職員同士の連携が必要である
四 保護者にも教職員にも「自分」を理解してもらうために
W 生徒指導の核を教師集団の組織力と心得る
一 なぜ組織力が必要なのか
二 教師集団の組織力を高めるための五つのヒント
三 組織の一員として動くための七か条
X 説明責任時代の生徒指導力
一 「説明責任」「結果責任」の概念が学校を変える
二 「説明責任」「結果責任」の概念は学校に馴染まない
三 教師集団の「組織力」を活かす
四 教師の「組織力」とは校長を中心としたネットワークシステムである
五 「組織力」を活かすために教師に必要なのは「メタ認知能力」である
あとがき

まえがき

 昨今、子どもの変容論が方々で論じられている。家庭学習習慣が身に付いておらず学力が低下している、耐性がなく無用のトラブルが頻発する、コミュニケーション力が低下し引きこもり型の不登校が増え続けている……。私もまた、子どもたちは年々変容しているように感じている。教師の仕事は昔に比べて、ずいぶんと難しくなった。

 昨今、保護者の変容も方々で論じられている。友達親子、アダルト・チルドレンといった概念が大流行である。教育雑誌をひもとけば、保護者のクレームから心身症になった教師の事例がどの雑誌にも取り上げられている。私は現在の保護者と同世代である。私たちの世代は昭和十年代を親に持つ。自分の子どもに豊かさを享受させることが最善だと考えていた世代である。私たちの家庭には、生まれた時からテレビがあった。テレビは自分の権利が一番だ、自分の幸せが一番だ、私たちは幸せになる権利がある、というメッセージを流し続けた。私たちはそれらのメッセージを真正面から享受した。その結果、私たちの世代はかつての日本人がもっていた日本的な美徳を忘れていった。我が儘になった。そしてその世代が、現在の保護者なのである。教師の仕事は昔に比べて、ずいぶんと難しくなった。

 昨今、「心の教育」の充実が方々で叫ばれている。神戸の連続児童殺傷事件、黒磯の女教師殺害事件、長崎の児童殺害事件、佐世保の小六女児同級生殺人事件……事件が起きるたびに「心の教育」の大合唱が始まり、児童生徒の細かな心の変化を読み取ることが教師に求められる。児童生徒の情に訴える指導が教師に求められる。しかも、学校システムとしては管理が強化される。教師の仕事は昔に比べて、ずいぶんと難しくなった。

 昨今、教員の人事考課の問題が物議を醸し出している。東京都では教師がその実績によって「S・A・B・C・D」と五段階で評価され、「D教師」の給与の二〇%が「S教師」に上乗せされると言う。もしかしたらこれから、「C教師」給与の何%かが「A教師」にも上乗せされるかも知れない。教育予算の削減とともに、学校の多くの仕事を非常勤に任せようとする案さえある。「指導力不足教員」「不適格教員」と判断される教師も年々増え続け、二〇〇三年度は四〇〇人を超えたと言う。私のまわりにもびくびくしている教師がいる。教師の仕事は昔に比べて、ずいぶんと難しくなった。

 まだまだある。民間人校長の急速な導入、入試システムの複雑化、女子中高生を食い物にする性産業の拡大、「総合的な学習の時間」の導入をはじめとする学校独自カリキュラムの拡大、学校選択制による人事の混乱、絶対評価導入に伴う説明責任・結果責任、などなど。一部地域では、教師のフリーエージェント制度まで現れた。教師の仕事は昔に比べて、ずいぶんと難しくなった。

 巷では、「教師をやめたい」という声までしばしば聞かれるようになってきている。子どもや保護者の変質、新教育課程に伴う仕事の多様化と複雑化に対応しきれなくなり、仕事を続けるのが辛いということらしい。しかし、考え方を変えれば、こんな時代だからこそ、教師という仕事は「やり甲斐」があり、「生き甲斐」にもなるのではないか。時代が混沌に陥っているということは、それだけ主体性を発揮するチャンスもある、ということである。また、指導が難しくなってきているということは、それだけ新たな指導法の開発が求められている、ということでもある。その意味で、現在ほど教師が「能力」を求められている時代はない、とも言えるのである。そもそも、私たちはかつて、教育に、そして教師という仕事に夢を託してこの仕事を選んだのではなかったか。

 本書は、以上のような教育困難時代を踏まえ、主として生徒指導における「教師集団の組織力」に絞って論を展開している。現在、学校の教職員が一丸となって、「組織」として教育活動に当たることが求められている。しかし、その「組織」のあるべき姿は、決して学校長を頂点とした「ピラミッド型組織」ではなく、一人一人の教職員が自らの力量を最大限に発揮することによってボトムアップしていく、「ネットワーク型組織」であるべきである。そうした「組織」でなければ「組織の活力」を発揮することはできない。

 豊饒の時代に生まれた子どもたち、そして豊饒の時代に生まれた保護者たちの出現によって、教育状況は困難を極めていると言われる。しかし、そこに生まれた様々な困難状況が、今後の政策によって減少傾向を辿るという見通しは残念ながら、ない。「教育困難時代」はいま、始まったのである。この状況において、私たち現場教師は、教師集団の「組織力」を活かし、チームワーク指導を徹底することによって、真に主体性を発揮することを求められている。私たち「研究集団ことのは」の第一歩として、本書を提出したい。「教育困難時代」に悩む現場教師にとって、本書が少しでも参考にしていただけるなら、それは望外の幸せである。


  二〇〇五年一月 自宅書斎にて   /堀 裕嗣

著者紹介

堀 裕嗣(ほり ひろつぐ)著書を検索»

1966年北海道湧別町生まれ。北海道立帯広柏葉高校卒業後,北海道教育大学岩見沢校入学。森田茂之に師事し国語科教育を専攻。

1992年に国語教育研究サークル「研究集団ことのは」設立。

2004年北海道教育大学札幌校・岩見沢校修士課程修了。現在に至る。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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