- 序 文
- ◆第T部 理論編
- 第1章 学力が下がった!この憂うべき実態を認めよう
- §1 はじめに
- §2 学力をどうとらえるか
- §3 学力低下の実態をどうとらえたか
- 1 IEAの調査からみた学力低下
- 2 東京大学学校臨床総合教育研究センターの調査からみた学力低下
- 3 大学生にみられる学力低下
- 4 OECD国際学習到達度調査からみた学力低下
- §4 授業時数の縮減は学力低下に拍車をかけたか
- §5 おわりに
- 第2章 大学における数学科教材研究のあり方
- §1 はじめに
- §2 教科教育法へのいくつかの着眼点
- 1 高等学校までの学習内容の見直しと総合化,および数学的正当化
- 2 数学の特性への関心
- §3 おわりに
- 第3章 各教材の本質に基づく学力向上策
- §1 各教材の本質
- §2 学力向上の手立て
- 1 1つ1つの教材の本質をとらえて授業する
- 2 適度な競争をとり入れequity(公正)を意図して授業する
- 3 わが国の子どもの優秀さを誇りとして授業する
- §3 学力向上のための教材研究のあり方
- §4 学力向上につなげる学習意欲の喚起
- 1 本時の学習に必要な基礎的内容を把握している
- 2 学習する必要性・必然性のある課題にする
- 3 授業中は常に「今,なぜこれをしているのか」がわかっている
- 4 わかる授業にする
- 5 学び方を指導する
- §5 学力向上につなげる評価
- 1 1単位時間のなかで
- (1) 基礎事項の確認の段階では
- (2) 課題把握・課題設定の段階では
- (3) 課題追究・課題解決の段階では
- (4) 適用・まとめの段階では
- 2 授業をふり返って
- §6 学力向上につなげる指導の技術
- 1 本教材の本質に迫る数学的活動による学習意欲の喚起と習熟度に応じた単元のまとめ
- 2 発問,板書のくふう
- (1) 「自ら問うこと」のできる発問を
- (2) 「考える」とはどうすることかをおさえて
- (3) 板書は思考の過程が見えるように
- 3 学習形態のくふう
- 4 少人数指導のくふう
- (1) ティーム・ティーチングを効果的に実践するために
- (2) 授業を構想するにあたってのポイントをおさえて
- (3) ティーム・ティーチングによる少人数指導の効果として,次のことを期待して
- ◆第U部 実践編
- 1 1年/正負の数
- 2 1年/比例と反比例
- 3 1年/空間図形
- 4 2年/連立2元1次方程式
- 5 2年/1次関数と方程式
- 6 3年/根号を含む式の4則計算
- 7 3年/因数分解を用いた2次方程式の解き方
- 8 3年/3平方の定理
- 9 3年/相似
- 【ミニ知識】
- ◆7を−3で割ったときの余り
- ◆擬似変数Quasi variableとは
- ◆n次元空間
- ◆方程式とは
- ◆分配の法則とは
- ◆無限多集合はすべて対等か
- ◆nonAの強調
- ◆フェルマーの最終定理
- ◆相似変換と恒等変換
序文
こんにち,わが国教育界の実態からすれば,多岐にわたる「学力」の定義のいずれを選択してみても,残念なことに「学力低下の現実」を認めざるを得ない。
もともとわが国の算数・数学の学力は,1964年に始まった第1回IEA教育到達度国際評価計画の調査によって世界一の栄誉を与えられ,しばらくは数学学力トップという栄光の座を堅持してきたものだった。
この事実を承知しておればこそ,筆者らはここに至って日本国民の教育のため学力低下をくい止めよう,いなそれどころかむしろ,学力のV字型恢復を実現して国民教育に奉仕しようとの闘志をたぎらせたものだった。
授業時間数が物理的に減らされた悪環境のもとでは,各教材の本質に基づいた授業展開こそが,学力低下の救い主となるはずだとの結論に達した。
まず代表となる単元を選定し,本教材の本質は何かを討論しあい,その本質に迫る効率的な方策を探求した。
筆者らは2001年以来,目標達成に最大の努力を傾注してみたものの,そこはそれ浅学非才の身の悲しさ,いかんとも致し方ない障壁に突きあたり停滞を余儀なくされた。
ここに至って,ただなすすべを知らずして月日を過ごし,腕をこまねいて狐疑逡巡するよりも,このあたりで一応ピリオドを打ち,出版に漕ぎつけよう。そして読者諸賢の批判を仰ぎ,これを生かして改訂版を出すことこそ,障壁を破砕し読者諸賢に報いる最善の道ではないかと考え,ここに本書の出版を決意した。幸いなることに明治図書出版の好意と協力により出版の運びとなったことに対し,満腔の敬意を表し深甚なる感謝の念を呈するものである。
2005年8月 /佐藤 俊太郎
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- 明治図書