数学科の授業づくり・はじめの一歩2
数学科の授業づくり 中学1年編

数学科の授業づくり・はじめの一歩2数学科の授業づくり 中学1年編

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指導書には書かれていない数学授業の基礎基本を詳細解説。

教科書をなでた授業で終わってはいませんか? 数学の指導を通して生徒に伝えたいことは何か、自分なりの思い入れを表現する場こそ授業。本書はあなたの思い入れを豊かにするために中1の数学指導の仕方について「当たり前のこと」をまとめました。


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ISBN:
4-18-525217-X
ジャンル:
算数・数学
刊行:
4刷
対象:
中学校
仕様:
A5判 152頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

もくじの詳細表示

第@章 正の数・負の数
小単元1 正の数・負の数の必要性やよさ
小単元2 正の数・負の数の加法・減法
小単元3 正の数・負の数の乗法・除法など
小単元4 個に応じた学習の時間
ほっとTime 努力を要すると判断される子どもへの対応
やってみました!@ 「学習記録票」活用法
第A章 文字の式
小単元1 文字を用いて考えることの必要性やよさ
小単元2 文字の式の計算
小単元3 個に応じた学習の時間
ほっとTime 表現力を育てるためのノートづくり
第B章 方程式
小単元1 一元一次方程式及びその解の意味
小単元2 等式の性質と一元一次方程式の解き方
小単元3 一元一次方程式の利用
小単元4 個に応じた学習の時間
ほっとTime 子どもの発言をひろげる工夫
第C章 比例と反比例
小単元1 比例の関係とその特徴
小単元2 反比例の関係とその特徴
小単元3 比例,反比例の見方や考え方の活用
小単元4 個に応じた学習の時間
ほっとTime 電卓をどう使うか
やってみました!A 「評価規準」から指導と評価の改善を考える
第D章 平面図形
小単元1 平面図形の対称性
小単元2 基本的な作図
小単元3 個に応じた学習の時間
ほっとTime 挙手させることの効用
第E章 空間図形
小単元1 空間図形の平面上での表現
小単元2 空間における直線や平面の位置関係
小単元3 空間図形の平面図形の運動による構成
小単元4 基本的な図形の計量
小単元5 個に応じた学習の時間
ほっとTime 板書に関する三か条
やってみました!B 自分のための教材研究

はじめに

 新しく世に出る本には,どれもその本なりの「新しさ」があります。人はその「新しさ」にひかれて本を手にとるのではないでしょうか。では,「この本の新しさは何か?」というと,それはズバリ「新しいことが何も書かれていないこと」です。冗談のように聞こえるかもしれませんが,このことが,この本の一番大切なところです。

 本書は,中学校の数学教師が,数学や授業について日々考えている「ごくごく当たり前のこと」をまとめたものです。なぜ,そんな当たり前のことを本にする必要があるのか…それは,次の3つの立場にある方々と,数学やその授業について,改めて考えてみたいと思ったからです。


○まず,中学校の数学の教師を目指す人,または若い数学の教師へ

 先日,あるベテランの先生から,「最近の若い先生は大変に熱心で意欲的である」というお話をうかがいました。私もこの意見に同感です。現在,教員の新規採用は大変に厳しい状況が続いています。私は10年間,大学の教育学部に附属する中学校に勤務して,将来教壇に立つことを夢見て教育実習にやってくる多くの学生と一緒に,数学の授業について考えてきました。そんな中には,大学卒業後,夢をあきらめず何年も教員採用試験にチャレンジしている若者がたくさんいました。

 「でもね」と,そのベテランの先生はお話を続けて,「彼らの授業は,教科書をなでて終わっちゃうんだよね…」とおっしゃいました。この意見にも私は大きくうなずいてしまいました。中学校の数学の授業は,教科書に沿って進められるのが一般的でしょうが,教科書をなでる…つまり教科書に書かれていることをそのまま伝えることを目指すものではありません。指導する数学についても,その指導の仕方についても,教師はひとりひとり自分なりの“思い入れ”を持っています。その思い入れを表現する場こそ授業です。若い教師は,こうした思い入れをどうやって身に付けていくのでしょうか? 私自身は,周囲の人たちとの関わりを通して教えられたような気がします。職員室でとなりに座っている教師がお兄さん,お姉さんといった立場から,いろいろなことを教えてくれました。経験談や失敗談を聞かせてくれたり,授業をみせてくれたり,参考になる本を紹介してくれたりしたものです。

 最近,教師の世界でも急速な高齢化が進んでいます。今や,職員室で若手教師のとなりに座っているのは,お兄さん,お姉さんというよりも,お父さん,お母さんといった世代の人たち,学校運営などで果たす役割が大きな教師たちです。私が新人だった頃のように,「有意義な雑談」を交わすことが難しくなっているのです。若い教師は,一生懸命授業をしています。その努力が,彼らの思い入れを豊かにするためには,経験者からの「当たり前」の引き継ぎが必要なのではないでしょうか。

 この本は,指導のまとまりである単元を章として構成されていますが,指導内容を網羅的に取り上げているわけではありません。もう少し小さな指導のまとまりである小単元ごとに,「あぁ,これって大切なんだよなぁ〜」という私の思い入れをピックアップしてあります。実際に授業を組み立てる前などに,気になる部分に目を通して,自分だったらどうするか,考えるきっかけにしてみてください。


○次に,中学生をお子さんにもつ保護者の方々へ

 最近は学校の中にいても,説明責任とか情報公開といった言葉の広がりとともに,保護者の方々の授業への関心の高まりを感じます。でも,その多くは通信簿とか高校入試の調査書などに関連したことではないでしょうか。こうした面で教師の果たす役割が重要であることは重々承知していますが,ここでは「教師は成績をつけるために授業をしているのではない」ということをわかっていただきたいのです。教師には,数学の授業を通して子どもたちに伝えたいことがたくさんあります。計算して答えを出す方法だけではなく,「こんなふうに考えられるようになってほしい」などいろいろです。

 この本では,こうした教師の思い入れを,保護者の方々にも知っていただきたいと考えました。各単元のはじめには,どんなことをどのように,どの程度の時間をかけて指導するのかを表にまとめてあります。また,学習の目標を,子どもの立場からまとめておきました。お子さんに「今,学校で何を勉強してるの?」と質問して,該当する部分だけでも読んでみてください。「へぇ〜,数学の先生って,こんなこと考えてるんだ…」ということを,ある程度理解していただけるはずです。


○そして,ベテランの数学教師へ

  「その方面で経験豊かな人」をベテランというそうです。本人が自覚しているかどうかにかかわらず,この本を読んで「何でこんな当たり前のことが本になってるんだ!」とか「私だったら,もっと〜と考えるぞ!」と憤慨した方はベテラン教師です。また,この本はみんなでワイワイ考えるきっかけづくりの本です。そのまま使える実践事例などはできるだけ取り上げませんでした。「私だったら,この思いをこんな題材でこんなふうに具体化して授業をつくるな」と考えた方もベテラン教師です。

 この本では,こうした声がベテラン教師から聞こえてくることも期待しています。あなたは,教師になったとき,「数学の教師」として採用されたのではありませんか? おそらく退職するまで「数学の教師」ですよね? 最近,数学やその授業について,あなたの思い入れを誰かに語りましたか? また,職場の仲間とそんな話をしましたか? 近い将来,教師の世界では急速な世代交代が進みそうです。現場の教師がこれまで積み上げてきた実践的な資産がリセットされないように,もっと数学やその指導について語り合っておくべきではありませんか?


 最後になりましたが,この本の出版に際して,お世話になった方々に感謝の気持ちを表したいと思います。千葉県教育委員会の五十嵐一博先生には,原稿の段階から貴重なご意見をいただきました。また,明治図書の仁井田康義さんと相田芳子さんには,できる限り自由に執筆する機会を与えていただきました。改めて御礼申し上げます。


  2004年12月   /永田 潤一郎

著者紹介

永田 潤一郎(ながた じゅんいちろう)著書を検索»

1962年生まれ

千葉大学大学院教育学研究科数学教育専攻修了

2003年3月まで10年間千葉大学教育学部附属中学校勤務

2004年4月より千葉県の公立高校に赴任

2000年度日本数学教育学会実践研究優秀論文賞受賞

日本数学教育学会研究部幹事

日本科学教育学会会員

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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