- まえがき
- 第T章 授業をもっと楽しく,魅力あるものに
- 1.授業をもっと楽しく,魅力あるものに
- (1) 子どもたちをもっと信じよう!
- (2) 授業をもっと楽しく,魅力あるものに
- 2.授業力を鍛えよう!
- (1) 教育現場の現状
- (2) 算数の授業の常識を見直してみよう!
- (3) 教師の役割について見直してみよう!
- ◇コーヒーブレイク@ ジャマイカで遊ぼう!
- 第U章 確かな学力と考える力
- 1.確かな学力と考える力
- (1) 確かな学力とは
- (2) 確かな学力と考える力
- 2.確かさと豊かさの追求
- (1) 「確かさ」と「豊かさ」
- (2) 「確かさ」と「豊かさ」とのバランスを
- 3.考える楽しさの追求を
- ◇コーヒーブレイクA algoで遊ぼう!/B 数のピラミッドの秘密を探ろう!(1)
- 第V章 算数授業で育てたい確かな学力
- 1.計算に関する確かな学力
- (1) 演算を決定する力を育てる
- (2) 計算方法を考え出す力を育てる
- (3) 計算を確実に行う力を育てる
- 2.「量と測定」の確かな学力
- (1) 量についての豊かな感覚を育てる
- (2) 量を比較する力を育てる
- (3) 量を測定する力を育てる
- (4) 量感を豊かにする
- (5) 求積公式を創り出す力を育てる
- 3.図形の確かな学力
- (1) 図形についての豊かな感覚を育てる
- (2) 図形について構成的に見る力を育てる
- (3) 図形で論理的に考える力を育てる
- 4.数量関係の確かな学力
- (1) 関数的に考える力を育てる
- (2) 統計的に処理する力を育てる
- ◇コーヒーブレイク
- C マッチ箱パズルを作って遊ぼう!/D 数のピラミッドの秘密を探ろう!(2)
- 第W章 確かな学力をつける算数授業づくり
- 1.授業づくりの3つの観点
- (1) 学習のねらいを一言で言う
- (2) ねらいに結びつくための引き出したい子どもの動きやつぶやきを考える
- (3) 子どもの動きやつぶやきを引き出すための手だてを明確にする
- 2.算数的な活動で授業をもっと楽しく,魅力あるものに
- (1) 一人一人の顔が見える算数的な活動を
- (2) 基礎・基本がはっきりする発展的な扱いの算数的な活動を
- (3) 活動する楽しさが味わえる算数的な活動を
- 3.発展的な学習で授業をもっと楽しく,魅力あるものに
- (1) 「発展的な学習」による授業の意義
- (2) 発展的な学習で,授業をもっと楽しく,魅力あるものに
- 4.考える力の評価の仕方を考えよう!
- (1) 「数学的な考え方」の指導と評価の基本的な考え方
- (2) 「数学的な考え方」の指導と評価の実際
まえがき
2年生のクラスの子どもたちと給食を食べているとき,「このイチゴ,種なしイチゴだ!」と呟いた子どもがいた。確かにスプーンで切った切り口は,種なし水火のような白い筋が入っていて,そう言えなくもない。
この思いもよらぬ一言が「おもしろい!」と感じたので,「本当だ,種なしイチゴだ。すごい大発見かも。」と大げさに叫んでつきあってみることにした。その声を聞いていたのであろう,「私のも種なしイチゴだ!」,「僕のもそうだ!」とあちこちからつぶやく声が聞こえだした。
ところが,クラスじゅうが盛り上がっているのに,一人首を傾げている子どもがいた。気が弱いため,はっきり言えないのであろう。どうしたのか聞いてみると,「イチゴの種って,まわりの茶色の粒々じゃないの?」と小さい声で答えた。せっかく盛り上がったのである。夢がしぼむこの一言をうまく利用できないかと咄嗟に考え,「それ本当,実際に見たことあるの?」と聞き返すことにした。すると,自信なさそうに考えを引っ込めようとする。
「みんな,イチゴの種って,このまわりの茶色の粒々って言っている人がいるけれど本当かな。」「よし,実験してみることにしよう。」と宣言して,イチゴパックに脱脂綿を引いた上にイチゴを半分に切って置き,水を入れて育ててみることにした。
発芽するかどうか私自身も半信半疑であったが,2週間後に発芽したのである。それを見てみんなで感動。そのとき,初めてイチゴのまわりの茶色の粒々が本当に種であることが実感を伴って理解できたと感じた。
学力低下が叫ばれ,教室の中でドリル学習が増えたと聞く。やり方を教えて,それを使いこなすことができるまで繰り返し習熟を図らなくてはと考えてのことであろう。しかし,それで算数の楽しさを味わうことができるのであろうか。それえ覚えた知識は「確かな学力」」と言えるのであろうか。
「このイチゴ,種なしイチゴかな?」と素直な疑問を持つことができる子どもにしたい。「イチゴの種って,まわりの茶色の粒々じゃないの?」と,知識や経験と結び付けて考えようとする子どもにしたい。そして,このようなみんなの問いを追求する活動が「楽しい!」と感じることができる子どもにしたい。「あれっ!」「へぇ〜!」「なるほど!」と子どもたちと感動できる授業づくりを目指していきたい。
本書『確かな学力をつける算数の授業の創造』は,その想いを込めて執筆にあたったものである。「できる」「わかる」授業から,「なるほど!」「すばらしい!」という感動がある,「おもしろい!」「楽しい!」と感じることができる授業へ,授業観の変換を目指している。
そのために,「授業をもっと楽しく,魅力あるものにしていくには?」という観点から授業づくりについて考えたものである。日々の授業をその観点から見直してみれば,授業が少し変わるに違いない。授業が変われば,子どもたちも変わってくるはずである。それを考えるときに,大いに参考になるものと考えている。
本書は,明治図書の月刊誌『楽しい算数の授業』の連載「確かな学力をつける算数授業」(2003.4〜2004.3)をもとに加除修正を加えたものである。
算数の授業が楽しい,好きと感じる先生方や子どもたちが増えてほしい。その願いを込めて書かせてもらった。楽しく,魅力ある算数授業づくりのきっかけになれば幸いである。
本書の出版にあたり,明治図書編集部の石塚嘉典氏並びに篠原千恵さんには,その編集に大変お世話になった。心から感謝したい。
2004年11月 /細水 保宏
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- 明治図書