- 序章・「伝え合う力」は新世紀を生き抜く人間的能力 /瀬川 榮志
- まえがき /榊原 良子
- 第T章 言語で「人間関係力」を高める学校・学級づくり
- 一 国語科教育を中心に据えた学校・学級づくり
- 二 よき言語生活者としての「言語行動力」をつけた子供像
- 三 教師の国語研究と研究活動
- 第U章 言語で思考し行動する子供
- 一 子供の実態と指導法の課題
- 二 子供に国語の力を付けるには― 『ごんぎつね』の実践事例
- 三 国語の力で考え行動する子供を育てる授業創造のために
- 第V章 国語学力向上のための「生きて働く国語力」の発見と系統化
- 一 生きて働く国語力の発見
- 二 生きて働く国語力の螺旋的系統
- 第W章 「伝え合う力」が獲得される子供が創る学習
- 低学年
- 「話す・聞く力」を獲得する授業
- 読んでおもしろかったことを伝え合う ―音読・朗読で言語感覚を磨く―
- 「書く力」を獲得する授業
- 「おもちゃづくり」を説明する文章を書く ―考えを交流し、分かりやすい文章に直せたよ―
- 「読む力」を獲得する授業
- 言葉を創り出し、音読する楽しさを実感する わたしたちの『くじらぐも』音楽劇の発表会―
- 中学年
- 「話す・聞く力」を獲得する授業
- スピーチで深まった友達とのきずな ―「友達のよさを見つめ直して」―
- 「書く力」を獲得する授業
- 手紙で感動を共有し、人間関係力を深める ―「がんばったよ、マラソン大会」―
- 「読む力」を獲得する授業
- 対話で相互の考えと人間関係力を深める ―『ちいちゃんのかげおくり』音読劇発信―
- 高学年
- 「話す・聞く力」を獲得する授業
- 話の組み立てや言葉遣いを工夫して話そう ―読書スピーチで友達と交流―
- 「書く力」を獲得する授業
- 感動を言葉に≠ォらりと光る文章を書こう ―友達と対話しながら作り上げていくミニ文集―
- 「読む力」を獲得する授業
- 言葉の輪を広げ、人間関係力を育てる ―ぼく・私の好きな言葉の感動交流―
- 第X章 地域の教育力を高める国語科教育
- 一 あいさつ運動(おはよう運動週間)で共生の心を育む
- 二 音読・朗読・暗唱で地域の教育力を高める
- 三 朝の読書・読み聞かせ・親子読書で「人間関係力」を深める
- あとがき /榊原 良子
まえがき
『みんなでスポーツ集会をしよう』という議題で話し合い活動をしたときのことである。スポーツの得意な子は、ドッジボール・手打ち野球・キックベースボール・リレー・なわとび……など、自分がやりたい種目を得意気に発表する。しかし、スポーツが得意でない子は聞き役に回ってしまう。そして、話し合いが十分されないまま元気者の大きな声に押されて採決へ進められ、その結果、自分の意見が通った子は勝利と喜びの歓声をあげる。一方、意見が通らなかった子は敗北と不満の声をこぼす。学級会が終わった教室の中は、みんなで議論を尽くして決めた満足感や喜びを味わうどころか重々しく暗い雰囲気が漂ってしまった……。
これは、わたしが教員になりたてのころの恥ずかしい体験です。今、振り返ってみると"学級会とはどういう活動か"(人間形成)や"どのように話し合いを進めていけばよいか"(技能)の指導をしていなかったことが大きな原因であったことを反省せざるを得ません。過去の未熟さに立ち、他教科や領域・総合的な学習の時間に一人一人が持ち味を発揮して自己実現を図るためには、国語科の「話す・聞く」「書く」「読む」活動の中で『伝え合う力』を獲得させることは、学力向上のためにも重要であると考えます。『伝え合う力』の獲得は、人間尊重の精神を根底に相互に思いや考えを「伝え合う」活動によって高められるものです。さらに、友情・信頼の固い絆が生まれ、共に"向上しよう""新たな価値を創造しよう"という『人間関係力』として高められていくことになります。そして、『人間関係力』の高まりは、よき言語生活者を育て豊かな言語生活を送ることができる『人間力』(生きる力)を育てることへ結び付くと考えます。
本書は、国語科教育の重要課題である言語で『伝え合う力』を育てるために、「どのような国語科指導の理念のもとに授業を設計し、展開していけばよいか」理論と実践を統一した企画・編集です。日々国語科の研究実践を積み重ねておられる皆様と本書を通して研究情報を交流し、共に深め合っていくことができれば幸いです。
/榊原 良子
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- 明治図書