- 口絵
- はじめに
- T部 低学年の幾何学
- 1 点,直線,半直線,線分
- 2 菱形栞/多角形の始まり
- 3 花火大会/円
- 4 長方形,三角形,円
- 5 ピエロ人形/平行線
- 6 電車作り/直方体
- 7 車作り/直角でない2面角
- 8 歪筆箱/多面体
- 9 斜面のある風景
- U部 中学年の幾何学
- 1 相似に拡大,縮小
- 2 方眼紙による拡大図,縮小図
- 3 建造物の高さを求める/空間の角
- 4 Raum星団のFunf星/3年生は抽象・創造・自由思考が極大に達する
- 5 滑り台作り/2面角
- 6 斜面のある風景/抽象・創造・自由思考の開放
- 7 管理塔のある苗場スキー場/鉛直・水平・2面角
- V部 高学年の幾何学
- 1 回転縮小模様/平面運動と比例
- 2 5角柱の宝箱/2面角
- 3 斜面のある風景/角錐台,空間の嗜み
- 4 2つの角錐台のある風景/総合的に性質を捉える
- 5 地球儀の数学/小さな幾何学を創る
はじめに
今の小学生は幾何学に飢えている。加えて学習指導要領に依拠する算数教育には,2面角はもとより線分の用語すら出てこない。展開図に至っては6年生に出るという惨め極まる現状である。小学生は平面を這いずり回るのではない。この広い空間でこそ活動するのにである。学校教育が小学生の幾何学渇望に拍車をかけてさえいる。
この本は小学生の幾何学渇望をいささかなりと満たすために書いた本である。ここ6か年,東京の朝日カルチャーの「横地先生の作る数学」で実践した資料に基づいて執筆した。是非,小学校や小学生の通う学習機関,あるいは家庭で活用し,子供の飢えを満たす助けとして頂きたい。同時に教育問題に関心のある市民の方々に,今,小学生には何が必要かを考えるよすがとして頂きたい。
改めて語ってみよう。小学生が学ぶ幾何学の内容は大きく平面幾何学と空間幾何学に分かれる。平面幾何学の内容は,平面上の位置関係,点や直線,円に始まる図形の仕組み,図形の運動,及びこれらに関する諸性質であろう。空間幾何学の内容は空間での位置関係,点,直線,平面,球に始まる立体の仕組み,立体の運動,及びこれらに関する諸性質であろう。
しかしこの本は,上で語った幾何学を直接に教えるテキストの類ではない。そうした類の学習に形式的に急ぐり,ずっと緊急な事態が小学生に起こっている。端的に述べると次の2つである。
第1は,幾何学を学ぶための土台,幾何学的体験が極端な程に小学生に欠落していることである。幾何学的体験があってこそ,上で語った幾何学も小学生に実るというのにである。大地の栄養や太陽の光がなくては若芽は育たない。同様に,幾何学的体験がなくては幾何学は子供に育たないのである。
第2は,小学生達は本心から,知恵の蓋を開け,両手を広げ,「幾何学的体験が欲しいよ」「幾何学的体験が欲しいよ」と,大人達に向かって叫び続けているという事実である。私はこの事実を「横地先生の作る数学」の教室で,たっぷりと教えられた。子供達は幾何学体験を渇望している。乾ききった喉に水が欲しいと叫んでいる。
この本は上述の「幾何学的体験の極端な欠落」「幾何学的体験の渇望」に応えて書いた本である。
幸い,私は1997年以来,6か年にわたって,朝日カルチャーの「横地先生の作る数学」の教室で,小学生が渇望する幾何学的体験に多少なりと応えてきた。「横地先生の作る数学」は国立と青山の2会場で開催された。時期により増減はするが,各教室,30名から60名の1年生から6年生にわたる子供が参加した。月1回2時間,これ以外に,夏季休暇に苗場で2泊3日の「横地先生の作る数学」が開催される。自由応募で,参加者には学期毎,休暇毎に更新がある。低学年,中学年,高学年別に幾何学的体験の種類を異にした。
「横地先生の作る数学」を慕ってか,継続参加の子供も多く,遠路,大阪や盛岡から月1回2時間の「横地先生の作る数学」に通う子供もいたりして感激した。一方,「算数塾ではなかったのか」と怪訝に見られて失望もした。しかし,私にとって「横地先生の作る数学」は素晴らしい体験であった。私は子供達から,日本の小学生の「幾何学的体験の極端な欠落」「幾何学的体験の渇望」を強烈なパンチで教えられた。先ずもって「『横地先生の作る数学』の小学生よ,有り難う」とお礼を述べておきたい。
この本は「横地先生の作る数学」で私が創案,実践した小学生のための「幾何学的体験」に関する豊富な資料で執筆した。
ここで「横地先生の作る数学」の設営の中心となられた,エヌ・アンド・エス企画社社長稲葉茂勝氏始め社員の方々,朝日カルチャーセンター立川の方々に厚くお礼を述べておきたい。また「横地先生の作る数学」の教室でご援助頂いた,元法政第一高校校長小川純一郎氏,この本の図版のいくつかの作画に御協力頂いた,親友の数学教育学者,志田恵穗氏に感謝の意を述べておきたい。最後に,この本の出版にご尽力頂いた,明治図書編集部の江部満氏,鈴木徳子氏ほか,編集部の方々に厚くお礼を申したい。
2004年3月 /横地 清
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明治図書
















