算数科の未来型学力=思考力・表現力を育てる授業

算数科の未来型学力=思考力・表現力を育てる授業

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改訂についての解説だけではない!未来型学力を高める授業提案

今回の算数改訂の意義の算数教育界の重鎮の受け止めかたと、今後の改革の方向を明確に示したのが本書である。思考力・表現力という未来型学力をどう育むか、その手立てを著者積年の研究から具体的に現場人に提言する、これからの算数教育の中核を担う先生方の必読書。


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ISBN:
978-4-18-510616-0
ジャンル:
算数・数学
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 160頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
1章 改訂は算数科にどんな課題を提示したか
1節 新しい算数科教育の構築
(1) 授業時間数の増加に見合う内容の増加
(2) 算数的活動を生かした問題解決学習の充実
2節 望まれる人材の育成 ―科学技術の土台を築く
(1) 学力調査と学力低下
(2) 理数教育の充実
3節 改訂の歴史を踏まえて
(1) 平成元年版への逆戻りに終わるな
(2) 基礎学力の向上と学ぶ意欲
2章 未来に向けて算数の学力向上を期せよ
1節 改訂の全般的な事項 ―算数科から見て注目する点
(1) 基礎・基本の知識・技能の確実な定着
不確実な定着/ 獲得する過程/ 定着を図る
(2) 数学的な思考力や表現力の育成
思考力を鍛えること/ 表現力を高めること
(3) 学ぶ意欲や学習習慣の確立
学習意欲と態度/ 問題解決型の授業/ 家庭学習と学習習慣
2節 算数科の改訂に関わる具体的事項
(1) 第1 目標
(2) 第2 各学年の目標及び内容
[第1学年]/ [第2学年]/ [第3学年]/ [第4学年]/ [第5学年]/ [第6学年]
(3) 第3 指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱い
3節 指導方法の改善
(1) 子どもたちの現状と対策
(2) 指導方法の改革
効果的なコース別指導/ 学習の習慣と環境/ 学習評価の改善
3章 思考力・表現力を鍛えるイノベイティブな授業を開発しよう
1節 思考力を鍛えるための授業改善
(1) 2年 かけ算九九
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
(2) 4年 わり算の筆算―見積もりを生かして
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
(3) 4年 変わり方調べ
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
(4) 5年 ひし形の面積
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
(5) 5年 異種の2量の割合―単位量当たりの大きさ
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
(6) 5年 多角形の内角の和
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
(7) 6年 分数の乗法・除法
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
2節 表現力を高めるための授業改善
(1) 1年 求差のひき算
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
(2) 2年 簡単な分数
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
(3) 3年 わり算の筆算づくり
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
(4) 5年 小数のわり算
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
(5) 5年 比例
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
(6) 6年 円の面積
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
3節 イノベイティブな指導システムで授業改善
(1) 繰り返し・反復学習で確実な理解・定着を―2年 簡単な3位数の加法・減法―
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
(2) 効果的な補充学習と発展学習をコース別指導で―5年 台形の面積―
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
(3) 小・中学校の連携で9年間の一貫教育を―6年 文字を用いた式(比例と反比例)―
どのような問題が生じているか/ どうすれば,改善できるか
あとがき

まえがき

 現行の学習指導要領が告示されたのは平成10年であるから,今年はそれから丁度10年がたった。社会の変化が激しく目まぐるしくなり,10年一昔といわれるように,義務教育のような最も基本的であって時代の変化による影響が比較的少ない分野においても,やはり見直しが必要である。中でも学力低下の問題が深刻である。その原因の分析が進められているが,大坪亮氏ほか5名の分析によると,学力低下の原因は3つあるという。第一は「三十年来のゆとり教育」であり,第二は,「大学入試の“無意味化”」である。そして,第三は「家庭や地域社会の教育力の低下」である,という(週刊ダイヤモンド,「特集 学力大不安」,2008/04/05)。そして,「学力低下を引き起こしている原因は複合的であり,きわめて根が深い」と結論づけている。

 学力=学力テストの点数,という見方が主流であるが,一方では,点数だけでなく,学習に取り組む姿勢,学習への意欲や意識の悪化も心配されている。意欲の減退は,これから先々の行動と成果に悪影響を及ぼすからであり,ある意味では,点数になって顕著に現れていないだけに,いわば自覚症状がない悪性の病気にかかっている状況と似ていて,深刻である。

 見方を変えれば,このような危機意識は改革のためのエネルギーに転換できる。国際的な学力比較で日本の順位が下がったという。これを何とか引き上げたい。そのために教育を取り巻く環境を見直し,社会のみんながそれぞれの立場から力を合わせて改善策を講じよう。これはよいことだと思う。極めて根が深いとされる原因の一つ一つを丹念にねばり強く改善していくしかない。その原因を誰かの責任になすりつけても何の解決にもならない。

 私たちもこの改革のための果たすべき役割を積極的に担いたいと思う。算数教育の抱えている課題は何か。しっかりと現状を捉え分析し,その課題をこなすための智恵を出し合いたいと思う。この改訂がその機会を提供してくれたのだと実感し,それを一人でも多くの人と共有したいものである。

 本書は,改訂についての解説本ではない。この改訂を契機にして,これまでの算数教育を見直し,未解決のままに見過ごされたり,あきらめられたりしてきた多くの問題点に真正面から向き合い,果敢に挑戦しようと思う。したがって,従来の教科書にあるような内容の取扱いとは著しく異なっていたり,通俗的な啓蒙書のものとは相容れない提案がほとんどである。というのは,従来のやり方では打破できない困難に直面しているとき,それを乗り越えるための新しい智恵が必要とされているからである。本書に示した事例は,その智恵の一端を示したつもりである。もちろん,机上の空論ではない,それらはいろいろな機会に試行したものであり,成果が期待できると確信している。ただし,それを実践するためには,これまでの惰性を打ち破る勇気と新しいものに挑む情熱がいる。算数教育をさらに一歩前進させるために,ともに取り組んでほしい。そんな願いを込めて一つ一つの作品を作り上げた。

 今回の改訂を,な〜に,平成元年版に逆戻りしただけさ,といううわべだけの見方に終わらせたくない。そんな強い思いがあって,本書を書きながら,やはり授業改革だ,ホンモノの問題解決型の授業だ,算数の学力を鍛えるのだ,と自分に言い聞かせていくうちに,第3章がふくらんでしまった。どの事例にも私個人だけでなく,これまで一緒に実践研究に携わってくれた多くの仲間の智恵が込められている。ここに改めて感謝の意を表したい。

 次の改訂は多分,10年後になるだろうが,そのときには私はもう日本人男性の平均寿命に近づく。生きているかどうか分からない。その意味では本書の執筆は私にとって最後の機会になる。この機会を与えて下さった明治図書出版社の安藤征宏氏に心から感謝申し上げる。


  平成20年早春 著者記す   /伊藤 説朗

著者紹介

伊藤 説朗(いとう せつろう)著書を検索»

 1940(昭和15)年12月に東京都に生まれる。東京の空襲を避けるため1944年から父母の郷里である愛知県豊橋市に移住する。そして,豊橋市の市立小学校,中学校を経て,愛知県立時習館高等学校を卒業し,愛知学芸大学(愛知教育大学の前身)中学校教員養成課程・数学科を卒業後,1963年から愛知県立高校の数学科教員として9年間勤める。

 1972年に高校教員を退職し,東京教育大学(現在の筑波大学)大学院博士課程を単位取得退学し,1977年熊本大学教育学部に講師として就職し,数学教育関係の科目を担当する。1979年文部省初等中等教育局調査官に転勤となる。そして,1984年東京学芸大学教育学部に助教授として転勤し,1990(平成2)年同大学教授に昇任し,2004(平成16)年に定年退官し,同時に名誉教授となる。

 それから2年間の猶予を経て,2006(平成18)年から日本教育大学院教授となり,現在に至る。

 1992(平成4)年に「数学教育における構成的方法に関する研究」という論文をまとめ,筑波大学より博士(教育学)の学位を取得する。

 2000年の夏に還暦を記念して蓼科高原に小さな山荘を手に入れ,その後毎年,年間70日前後は落葉松林に囲まれて野鳥や鹿たちと一緒に四季の移り変わりを味わいながら過ごすことにしている。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書

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