- はじめに
- 第T章 基礎理論編
- 算数科の基礎学力向上のために:基礎・基本の意味と具体例
- 1 基礎・基本とは何か
- 2 計算技能は,基礎・基本!
- 3 子どもを鍛える基礎・基本
- 4 見方・考え方を大切に
- 5 おわりに
- 第U章 基礎・基本の実践編
- 《3年 題材》
- 1 わり数 ――同じ数ずつ分けよう――
- 1人分はいくつかな?/ 同じ数ずつ分けよう
- 2 かさしらべ ――たくさん入るのはどれ? 1旭マスを作って,かさあてゲームをしよう――
- だれの水筒がたくさん入るかな/ 1dl(100ml)マスを作って,かさあてゲームをしよう
- 3 たし算とひき算の筆算 ――3桁のたし算やひき算に挑戦しよう――
- 3桁のたし算に挑戦しよう!/ 3桁のひき算に挑戦しよう!
- 4 計算のじゅんじょ ――さあ背比べ! 私は,あなたの何倍?――
- 私は,あなたの何倍?
- 5 大きな数 ――数のしくみを見つけよう――
- 大きな数を見つけよう/ くずして考えよう
- 6 時間と長さ ――見当づけをして量感を育てよう――
- 時間の量感を育てよう/ 長さの見当づけをしよう1/ 長さの見当づけをしよう2
- 7 あまりのあるわり算 ――仲間づくりゲームを通して――
- あまりのあるわり算をしよう/ 全員が入るには,輪は何個いるでしょう
- 8 かけ数の筆算1 ――筆算の意味が分かったかな?――
- (2けた)×(1けた)の筆算に挑戦しよう
- 9 重さしらべ ――便利だよ! 身の回りにある1kg――
- 「はかりシート」を作ろう!/ いろいろなものの重さを量ってみよう!
- 10 かけ算の筆算2 ――補助数や数字隠しですっきり正しく計算しよう――
- 58×34の筆算を正しくしよう
- 《4年 題材》
- 1 大きな数 ――大きな数,どこまで読めるかな?――
- 大きな数を読んだり,書いたりしよう/ およそどれくらいになるだろう
- 2 わり算1 ――操作的な活動を,筆算の仕方につなげよう――
- 操作的な活動を,筆算の仕方につなげよう
- 3 円と球 ――輪ゴムで円がかけるかな?――
- まるい形をかいてみよう!/ どんな形だろう?
- 4 小 数 ――どんな数で表したらいいの?――
- どんな数で表したらいいの?/ 小数+小数は小数?
- 5 面 積 ――広さ比べをしよう――
- どの花だんがどれだけ広いでしょう/ 広さのちがいはどれだけでしょう
- 6 式と計算 ――式の意味を説明しよう――
- おつりはいくら?…言葉の式を考えて,1つの式に表そう/ どんな順序で計算すればいいのかな?…計算の順序の番号をつけよう
- 7 三角形 ――三角形のひみつを見つけよう!――
- ストローを使って,いろいろな三角形を作ろう/ 二等辺三角形のひみつを見つけて,かき方を考えよう/ かどの形をしらべよう!
- 8 わり算2 ――商の見当のつけ方をマスターしよう――
- 見当をつけてから/ 見当が大きすぎたら?
- 9 角の大きさ ――角を作ろう――
- 角を作ろう/ どれだけ大きいの
- 10 何倍でしょう ――関係図を利用しよう――
- テープの長さで考えよう/ 何倍になるかを考えよう
- 11 分 数 ――どうすれば1lになるかな?――
- どうすれば1lになるかな?/ 1mより長いけど…?
- 執筆を終えて
はじめに
いよいよ新教育課程が実施された。学校五日制の実施である。
新教育課程は,ゆとりと充実の中で「生きる力」をはぐくむことをねらいとしている。21世紀になって,今回の教育課程は何もかも新しいことずくめである。何としてでも学校五日制は成功させねばならない。
教育内容の3割厳選を図った。小学校でも3割ではないがかなり削減されている。教科の時間数が削減されたのだから,内容は減らすべきである。小学校の場合,個々の問題点はあるにしてもマクロに見れば正しい措置だったと言える。その上で基礎学力とは何かということを考えたい。
ところが,新教育課程実施前から学力低下の声があがった。
そのために,文部科学省は,少人数学級,相対評価から絶対評価への転換,学力調査の実施,発展学習の勧めなどの政策を重視しだした。
世論の学力低下という声は収まらず,文部科学省はやむを得ず「学びのすすめ」を発表せざるをえなくなった。そこでは,「確かな学力」の重視という表現が用いられている。
だから,基礎学力の充実というのは,これまで以上に求められていることなのである。しかも,「学びのすすめ」では,単に計算力だけを学力とは定義していない。やはり,計算力に代表される見える力と考える力という見えない力も学力と定義されている。つまり,バランスの取れた学力なのである。だから,この本のタイトルにある「基礎・基本の徹底」というのは,このコンセプトに基づいている。すなわち,「考える力」も大切にしつつ知識・技能の定着も図るというような授業展開でこの本は編集されている。
この本は,長年にわたり一宮算数・数学教育研究会(一数研)とおつき合いしてきた中から生まれたものである。平成12年の12月に研究会にこの話を提案した。それから,明治図書の樋口雅子部長の了解とアドバイスを得て,この本作りが開始された。
初めは,筆者が基礎・基本とは何かについて示した。その後,プロット案及び原稿見本について全て,一数研のメンバーと協議してきた。中学校の場合は,割と順調に進み,平成14年5月に『中学校数学の授業 基礎・基本の徹底!ハンドブック』として発刊された。
ところが,小学校の本作りは難航をきわめた。出版社の要望で,低学年・中学年・高学年の3冊を作ることから原稿の量が膨大になったのが最大の要因である。しかも,「基礎・基本」の解釈は意外と難しい。その解釈から始まり,原稿の形式をそろえ,そして,実際の原稿執筆に取りかかった。長年にわたる研究やそれぞれの授業経験を掘り起こして,現場で実践できそうな授業展開を執筆していった。
1・2年編,5・6年編から始まって,この3・4年編の完成まで1年と10か月を要した。筆者としては,噛みしめて出来上がったという気持ちである。根気強い一数研小学校部会のスタッフにご苦労様と言いたい。
これで,読者の皆様に使いやすいものができた。この本で基礎・基本を全てカバーしているとは言えず,不十分な点はあるが,取りあえず今の段階で刊行したい。子どもに学力をつけるのは教師の役目である。教師も子どもも楽しんでバランスの取れた基礎学力を身に付けさせたい。この本が役に立つ。
筆者は,日本の小学校教師と子どもの優秀さを信じている。この混乱期をうまく乗り越えることが明日の教育を開くことになる。共に頑張ろう。
平成14年10月1日 愛知教育大学 /志 水 廣
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- 明治図書