- はじめに
- 数学科:基礎学力向上の3つの視点
- 第1学年
- 2数の和はトランプゲームで《正の数・負の数》
- 3つ以上の数の加法・減法もトランプゲームで《正の数・負の数》
- 数から文字への4ステップ《文字の式》
- 代入練習は,値カードで!《文字の式》
- 偶数・奇数を文字を使って《文字の式》
- 等式の性質を定着させる工夫《方程式》
- 逆転カードを使った方程式の変形《方程式》
- 暗号を解いてみよう《比例と反比例》
- 反比例って何だろう《比例と反比例》
- 「MONKEY」は線対称?《平面図形》
- 線対称な図形は見逃さない!《平面図形》
- おうぎ形は円の何分の何?《平面図形》
- 仲間分けで立体の特徴をつかむ《空間図形》
- 円柱から円錐へ《空間図形》
- 第2学年
- 視覚的に訴える単項式の乗法《式の計算》
- 「奇数」+「奇数」=?《式の計算》
- 封筒を利用した代入法《連立方程式》
- 封筒を利用した加減法《連立方程式》
- 評価テストを利用した計算の習熟法《連立方程式》
- 変化の割合って何?《一次関数》
- グラフを利用した式の求め方《一次関数》
- 直線を増やして,角の関係を発見しよう《図形の調べ方》
- 証明の手順をはっきりと《図形の調べ方》
- 生徒の発見をもとにした円周角の定理《図形と合同》
- 三角形の変身《図形と合同》
- 確率の意味を実験で確かめよう《確率》
- 複数の硬貨を投げるときの確率を求めよう《確率》
- 第3学年
- スピーディーな練習で因数分解を確実に《式の計算》
- ○キーワードで印象づける《式の計算》
- 正方形の面積図を利用した平方根の導入《平方根》
- a√b=緜の変形《平方根》
- ○ミスを少なくする一工夫《平方根》
- ガリレオが発見した落体の運動の法則とは《関数y=ax2》
- 関数y=ax2でyの変域を求めよう《関数y=ax2》
- 中点を結ぶと定理が見える《図形と相似》
- ピタゴラスと同じ石畳の模様から発見《三平方の定理》
- 特別な直角三角形(三角定規)の各辺の長さは?《三平方の定理》
- 直方体への利用は,平面を取り出して《三平方の定理》
- 執筆を終えて
はじめに
いよいよ新教育課程が実施される。学校五日制の実施である。
新教育課程は,ゆとりと充実の中で「生きる力」をはぐくむことをねらいとしている。21世紀になって,今回の教育課程は何もかも新しいことずくめである。
総合的な学習,選択教科,課題学習の全学年化,少人数学級,相対評価から絶対評価への転換,発展学習の勧めなど,まったくこれでもかこれでもかという新しいことずくめである。
そんな中で一番心配なのが,基礎学力の充実である。週に6日間で行っていた学習内容が5日間になり,さらに総合的な学習に3時間とられることになり,本当に学力は大丈夫なのか。
3割厳選がうたい文句の教育課程は,実施する前からイエローカードが切られた。それが,世論からの学力低下問題である。先の文部大臣までも理科と数学は削減しすぎたという見解を論文で発表するぐらいである。
そこでどう考えるべきか。
まず,3割削減というのは本当か。
これは,本当ではない。特に中学校では,内容を削減したり,高校へ送った部分もあるが,第3学年で二次方程式,三平方の定理は残った。中学校としての達成目標は変わらなかった。また,小学校から立体の体積,図形の合同,拡大・縮小,線対称・点対称などが中学校に移動した。これによって,中学校は水膨れの状態となった。どこに「ゆとり」があるのだろうか。
だから,中学校の数学教師は,これまで以上に頑張らなければならないのである。
つぎに,ではどうすればよいか。それが,この本のタイトルにある「基礎・基本の徹底」である。
この本は,長年にわたり一宮算数・数学教育研究会(一数研)とお付き合いしてきた中から生まれたものである。平成12年の12月にこの話を提案した。それから,明治図書の樋口雅子部長の了解とアドバイスを得て,この本作りが開始された。
初めは,筆者が基礎・基本とは何かについて講義した。その後,プロット案及び原稿見本についてすべて一数研のメンバーと協議してきた。
でき上がってきた原稿に対して数回書き直してもらい,ここにようやく形がととのった次第である。書き直しの審議は筆者にとってまたメンバーにとって恰好の教材研究の場となった。その中で,さすが中学校の教師はプロだなあと思うことがしばしばあった。その知恵がこの本につまっている。
完成までに約1年かかった。あっという間であった。
きっと,役立つことであろう。いや,役立ててもらいたい。
3割削減は本当ではないことについて好意的に解釈してみると,中学校のレベルは下がっていないわけであるから,世論に対してはそのことを主張できる。そして,平成15年に行われると思われる全国学力テストにおいて,できるかぎりよい成績を残したい。このテストが,数学教育界に対する評価でもある。ここで失敗すると,学校五日制がくずれる恐れがある。気合いを入れて子どもに基礎学力をつけることである。
筆者は,日本の数学教師の優秀さを信じている。この混乱期をうまく乗り越えることが明日の教育を開くことになる。ともに頑張ろう。
平成13年12月5日 愛知教育大学 /志水 廣
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