- まえがき /瀬川 榮志
- 1 「伝え合う能力」とその発達系統
- 一 高学年で育てたい伝え合う能力
- 1 言葉で伝え合う喜びを自覚させる
- 2 高学年「伝え合う能力」の構成
- 3 「伝え合う能力」を育成する機会と場
- 4 授業で育てる「伝え合う能力」
- 5 繰り返しで育つ「伝え合う能力」
- 二 第五・六学年の「伝え合う能力」の発達
- 1 第五・六学年の「伝え合う能力」の実態と発達の系統
- 2 第五・六学年の「伝え合う能力」の実態と発達の系統表
- 3 「伝え合う能力」系統表の見方と活用の仕方
- 三 第五・六学年の話題・題材一覧表
- 1 話題・題材の見つけ方と選び方
- 2 話題・題材一覧表
- 3 話題・題材表の活用の仕方と指導のポイント
- 2 年間指導計画の作成と指導法の開発
- 一 「話す・聞く」年間計画の作成と活用
- 1 第五学年年間指導計画
- 2 第六学年年間指導計画
- 3 年間指導計画の意図と活用の仕方
- 二 「話す・聞く」指導・授業創造の要点・秘策
- 1 「話す・聞く」の楽しい授業創造のポイント
- 2 「話す・聞く」の授業で育つ国語の力
- 3 「話す・聞く」指導での留意点
- 3 基礎・基本が定着する第五学年の指導細案と授業展開
- 一 スピーチ「友達の家族を紹介しよう」
- 1 基礎・基本が定着する目標と内容
- 2 授業の展開 三八
- 3 獲得した基礎・基本が生きて働く場面
- 二 発表「リバーウォッチング」(総合的な学習)
- 1 基礎・基本が定着する目標と内容
- 2 授業の展開
- 3 獲得した基礎・基本が生きて働く場面
- 三 ディベート「テレビはよいか、よくないか」
- 1 基礎・基本が定着する目標と内容
- 2 授業の展開
- 3 獲得した基礎・基本が生きて働く場面
- 四 対話「私の好きなこの一句」
- 1 基礎・基本が定着する目標と内容
- 2 授業の展開
- 3 獲得した基礎・基本が生きて働く場面
- 五 対話「トライアングルトークをしよう」
- 1 基礎・基本が定着する目標と内容
- 2 授業の展開
- 3 獲得した基礎・基本が生きて働く場面
- 4 基礎・基本が定着する第六学年の指導細案と授業展開
- 一 話し合い「高学年としてやりたいこととできること」
- 1 基礎・基本が定着する目標と内容
- 2 授業の展開
- 3 獲得した基礎・基本が生きて働く場面
- 二 討論「日本の言葉の美しいところを探そう」
- 1 基礎・基本が定着する目標と内容
- 2 授業の展開
- 3 獲得した基礎・基本が生きて働く場面
- 三 ディベート「遠くの友達に近況を伝えるには、電話か手紙か」
- 1 基礎・基本が定着する目標と内容
- 2 授業の展開
- 3 獲得した基礎・基本が生きて働く場面
- 四 インタビュー「学校紹介のビデオを作ろう」
- 1 基礎・基本が定着する目標と内容
- 2 授業の展開
- 3 獲得した基礎・基本が生きて働く場面
- 五 紹介「私の町を紹介しよう」
- 1 基礎・基本が定着する目標と内容
- 2 授業の展開
- 3 獲得した基礎・基本が生きて働く場面
- 5 「伝え合う力」が生きる学級経営
- 一 第五学年の伝え合い活動
- 1 心の通い合う学級経営で大事にすること
- 2 子どもが言葉で通じ合うよさを自覚したとき
- 3 生きた情報で育つ豊かな心
- 4 生きる力を育てる伝え合う力
- 5 「伝え合う力」が生きる学級経営の要諦
- 二 第六学年の伝え合い活動
- 1 心の通い合う学級経営で大事にすること
- 2 子どもが言葉で通じ合うよさを自覚したとき
- 3 生きる力を育てる伝え合う力
- 4 「伝え合う力」が生きる学級経営の要諦
- あとがき /吉永 幸司
まえがき
――伝え合う技術が獲得される活動の組織化――
中京女子大学名誉教授・全国小学校国語教育研究会名誉顧問 /瀬川 榮志
新しい学習指導要領(国語科)では、音声言語による表現力が重視されている。
「第1の目標」には、「伝え合う力を高める」活動目標が掲げられている。「第2の3内容の取扱い」には、「活動」を例示している。例えば、第一・二学年においては、「『尋ねたり応答したりすること』『経験した事などについて話すこと』『友達の話を聞くこと』『読んだ本の中から興味を持ったところを紹介すること』」などが挙げられている。つまり、低学年では、「応答・体験を話す・聞く」「紹介する」などを具体的に示しているのである。このことは、三・四年、五・六年においても同様で、活動を具体的に例示している。
このような諸活動を通して、「伝え合う技術」が一人一人の子供に確実に定着し、その技術が、相手・場面・目的に応じて駆使・運用・波及される方法の具体策を講じることが、それぞれの学校・学級における重要な課題である。
つまり、活動を重視するあまり、その活動を通して、伝え合う技術をどう獲得するかを明確にしないと、単なる活動の空転になって「活動あって学習なし」という最悪の状況を露呈することになりかねない。
よい学習とは、「生き生きと活動を展開する過程で確実に基礎・基本が定着する」ことが原則である。
このことを前提として、「『伝え合う力』を育てる『子供が創る学習』」には、次の事項が必要である。
一 学習者が「興味・関心」を持つ話題・題材の精選と系統化
伝え合う活動は、話題・題材を中心に展開される。したがって、軽薄なものではなく「人としてどう生きるか」という「生きる力」に連動する価値ある主題・内容を含むものであることを考慮し、精選・系統化する。
二 伝え合う「活動」と「技術」が組織化された言語行動力の系統化
活発な伝え合いの活動があっても、そこで、要点をおさえて話す・聞く→中心点や段落構成をおさえて話す・聞く。あるいは、指示語・接続語・文末表現などを正しく駆使して話す・聞く……などのように、伝え合う活動に、上位・下位技能を組織的に構成することが重要である。
三 生きて働く「伝え合いの力」を「繰り返し学習」で獲得
国語科学習で、基礎・基本を定着しないと、他教科は勿論、総合的学習においても充実した内容にならない。その基礎・基本も「情報発信能力」や「コミュニケーション能力」を組織化した「総合的能力」として能力開発をし、繰り返し学習で獲得させなければならないのである。単なる練習でなく、易から難への段階的な学習訓練を導入し、一単位時間での学習過程に沿った繰り返し学習、低・中・高と段階を追って、螺旋的に繰り返し学習を創る方法を開拓する。
四 「心の教育」に連動する「伝え合う力」を育てる学習法研究
伝え合う力を育てる原点は何か。――それは相手の立場・人権を尊重することである。心と心を結ぶには、伝え合う技術が密接不離の関係にあることを念頭において、思いやりのある優しい心を育む必要がある。すなわち、「心技一体」の教育の強化である。誠実に聴く心なくして、伝え合う価値ある言語行動は実現できないのである。
五 「生きる力」を育む「伝え合う力」の駆使・運用力
学習者が解決すべき課題を発見・設定し、練り合い・磨き合い・学び合いながら、問題解決学習を連続し、価値生産に到達する。このような伝え合いを子供が自らの力で思考し、判断し、表現・行動していく学習法を開発する。「生きる力」は自己教育力で育つ。「子供が創る学習」を教師の徹底した厳しい指導と、温かい心、深い教育愛で支援していきたいものである。
教育課程の精神や学習指導要領の趣旨・内容を的確におさえながら、現場の実情に応じて 世紀を拓く教育を構想していく時代の到来である。つまり、教育における地方分権の流れを重視することは、地域・学校・学級の実情や、子供の実態に即して、特色のある学校教育、並びに国語学習を創造することである。
教師が高い教育理念と確かな理論を追究し、一人一人の子供の幸せの実現につながる教育立国論を念頭に、「国語教育実践理論」を構築していくことが価値ある研究課題となる。
本書三巻は、以上のような願いで企画・編集したのである。大阪府小国研・山本章先生(低学年)、千葉県小国研・大土かず子先生(中学年)、滋賀県小国研・吉永幸司先生(高学年)には、企画から編集まで、全力投球でご協力いただいた。心からお礼を申し上げる。千葉県・滋賀県・大阪府では、これから連続して全小国研大会を開催する予定である。
明治図書出版企画開発室長の江部満様には、編集・出版について特段のご高配をいただいた。また、全小国研の充実発展のために、常に温かいご支援を賜っていることにも深く感謝している。
平成12年1月
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- 明治図書