音声言語指導大事典

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これまでの音声言語教育の理論と実践との現状を整理し21世紀の実践へのアイデア・方法論を提言。コミュニケーション能力を育てる指導大事典。


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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-478804-1
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小・中・他
仕様:
B5判 424頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

第T部 音声言語指導の諸相
第1章 国語科における音声言語指導
1 音声言語の教育目標
1 学力
◇音声言語指導の学力観
◇音声言語指導の能力表
2 目標
◇音声言語指導の目的と目標
◇音声言語と人間教育
2 音声言語の教育課程
1 国語科教育
◇学習指導要領における教育課程
◇年間指導計画
◇取り立て指導と関連指導
3 音声言語の教育内容
1 教育内容
◇音声言語能力
◇音声言語活動・音声言語経験
◇音声言語感覚
◇音声言語の知識
◇音声言語に対する態度
◇入門期の指導
2 内言の指導
◇取材・選材
◇主題・要旨
◇構想・構成
◇再構成
3 話すこと
◇報告・説明・説得
◇スピーチ(独話・感話)
◇パブリック・スピーキング
◇相手・聴衆
◇場
◇プレゼンテーション
◇自己紹介
◇メモ(スピーチ)
◇あいさつ
◇口頭作文
4 聞くこと
◇聞き取り
◇メモ(聞き取り)
◇質問
◇批判力
◇読み聞かせ
◇民話/落語
◇聞き取り
◇お話し会
◇インタビュー
5 話し合うこと
◇対話・対談
◇ロールプレイング
◇座談会
◇自由討議・フリートーキング
◇バズセッション・六六式討議
◇シンポジウム
◇パネルディスカッション
◇ディベート
◇会議
6 音読・朗読
◇音読
◇斉読
◇朗読
◇群読
◇暗唱
◇表現読み
◇役割読み
◇シュプレヒコール・呼びかけ
◇劇化
◇紙芝居
◇ペープサート
◇オペレッタ
◇放送劇
◇朗読劇
7 言語事項
◇発声・発音の指導
◇矯正・治療
◇五十音図の指導
◇発声練習
◇発音練習
(母音・子音・アクセント・イントネーション)
◇間の指導
◇調子の指導
◇共通語の指導
◇方言教育
◇敬語の指導
◇話しことばの特徴
◇非言語コミュニケーション
◇日本語の特色とその指導
4 音声言語の指導課程
1 基本的指導過程と、
その指導展開例
◇話すことの基本的指導過程
スピーチ
説明
説得
◇聞くことの基本的指導過程
楽しんで聞く
批判的に聞く
◇話し合うことの基本的指導過程
フリートーキング
バズ・セッション
ディベート
パネルディスカッション
◇朗読の基本的指導過程
文学教材の朗読
説明的文章教材の朗読
◇群読の基本的指導過程
役割読み
群で読む
5 音声言語の教材開発
1 教科書教材の意義と限界
◇音声言語教材の変遷
◇言語教科書
2 教材開発の視点
@ 目的による教材の性格
◇意欲喚起の教材
◇内容提示の教材
◇方法提示の教材
◇見本提示の教材
A 素材による教材の性格
◇文字言語による教材の開発
◇音声言語による教材の開発
◇非言語メディアによる教材の開発
3 教師の音声言語
◇教材としての教師の音声言語
◇範読(教師の朗読)
4 児童生徒の音声言語
◇教材としての仲間の音声言語
◇教材の採集と活用
5 教材としての口承文芸
◇いろはうた
◇ことばあそび
◇早口ことば(舌耕芸能)
◇伝統芸能(語り芸)
◇民話・昔話
◇童歌・数え歌
◇カムイユカ (神揺)
◇創作童話
◇読みきかせ
6 朗読・群読の教材一覧
◇「十ぴきのねずみ」
◇「のはらのうた」
◇「こおろぎでんわ」
◇「たんぽぽ」
◇「どいてんか」
◇「雑草」
◇「夕日がせなかをおしてくる」
◇「風景 純銀もざいく」
◇「かもつれっしゃ」
◇「鶴が渡る」
◇「原爆小景」
◇「生ましめんかな」
◇「大阿蘇」
◇「永訣の朝」
◇「大きなかぶ」
◇「力太郎」
◇「かさこじぞう」
◇「スイミー」
◇「ソメコとオニ」
◇「大造じいさんとがん」
◇「オツベルと象」
◇「形」
◇「おいのり」
◇「舞姫」
◇「形」
◇「夏の葬列」
◇「つばめ」
◇「体を守る仕組み」
◇『おくのほそ道』から「平泉」
◇『伊勢物語』九段
◇『平家物語』第九「坂落」
6 音声言語の指導技術
1 授業以前
◇教師の話し方・聞き方・態度
◇非言語メディアの活用
2 授業の展開
◇授業づくり
◇発問(指示・助言)の仕方
◇発言の聞き方・取り上げ方
◇板書の活用
◇教師のプレゼンテーション
◇司会のし方
◇発表の場づくり
7 音声言語の教具・設備
1 教具の使い方
◇マイクロホン
◇ビジュアル・プレゼンテーション
◇録音再生機器
◇ビデオカメラ
◇コンピュータ
◇放送スタジオ
◇校内放送設備
◇オシログラフ
◇テレビ・ビデオ
(既製品の教材などの活用)
◇ラジオ
8 音声言語の評価
1 授業の評価
◇授業評価
2 子どもの評価
◇話すことの評価
◇聞くことの評価
◇話し合うことの評価
◇音読・朗読・群読の評価
◇言語事項の評価
3 評価の理論と方法
◇評価表
◇学習診断
◇相互評価
◇自己評価表
9 音声言語の関連学習
1 文学作品の読みと
音声言語の指導
◇物語と音声言語の指導
◇小説と音声言語の指導
◇詩と音声言語の指導
◇短詩型文学と音声言語の指導
◇随筆と音声言語の指導
◇民話と音声言語の指導
◇ノンフィクションと音声言語の指導
2 説明的文章と音声言語の指導
◇報道文と音声言語の指導
◇説明文・解説文と音声言語の指導
◇論説文と音声言語の指導
◇法律文と音声言語の指導
3 古典の読みと音声言語の指導
◇古典散文と音声言語の指導
◇古典韻文と音声言語の指導
◇漢文と音声言語の指導
4 児童文学と音声言語の指導…
◇児童文学と音声言語の指導
◇漫画と音声言語の指導
◇絵本と音声言語の指導
5 作文と音声言語の指導
◇生活文と音声言語の指導
◇学習作文と音声言語の指導
◇活動としての関連指導
◇言語技術としての関連指導
6 書写と音声言語の指導
◇視写と音読・朗読の指導
7 演劇教育と音声言語の指導
◇演劇教育と音声言語の指導
8 生活科と音声言語の指導
◇生活科と音声言語の指導
第2章 学校教育における音声言語指導
1 総合的学習
1 総合的学習
◇単元学習における音声言語指導
◇選択学習における音声言語指導
◇生活科における音声言語指導
◇情報処理学習における音声言語指導
◇地域学習における音声言語指導
2 言語障害児教育
1 言語障害児教育
◇言語障害
◇言語障害児教育
3 音声言語指導と言語環境
1 学校単位の指導
◇音声言語指導の年間計画
◇学校経営と音声言語指導
◇学校行事と音声言語指導
◇学年行事と音声言語指導
◇校長講話
◇あいさつ運動 オアシス運動
2 学級単位の指導
◇学級経営と音声言語指導
◇ホームルーム活動と音声言語指導
3 課外指導
◇児童・生徒会活動と音声言語指導
◇リーダー活動と音声言語指導
◇クラブ活動と音声言語指導
4 言語環境の整備
◇家庭・学校・社会における言語環境
第3章 社会教育における音声言語指導
1 家庭における音声言語指導
1 家庭における音声言語指導
◇家庭における音声言語指導
2 社会における音声言語指導
1 社会における音声言語指導
◇社会における音声言語指導
3 話し方・聞き方教室
1 話し方・聞き方教室
◇「話し方・聞き方教室」の変遷
4 放送教育
1 放送教育
◇放送教育
◇NHK学校放送
第U部 音声言語指導の背景
1 音声学・言語学
◇音声
◇清音
◇濁音
◇鼻濁音
◇長音
◇撥音
◇促音
◇拗音
◇母音
◇子音
◇音節
◇音便
◇訛音(方言音)
◇幼児音
◇アクセント
◇イントネーション
◇リズム
◇声調
◇音声記号
◇発声器官・発音器官
◇発音の矯正
◇口型図
◇唐音・呉音・漢音
◇外来語(音)と外国語(音)
2 一般意味論・コミュニケーション論
◇一般意味論
◇コミュニケーション論
◇報告・推論・断定
◇コトバの魔術
◇二値的考え方・多値的考え方
◇全体化の現象
◇批判的思考
◇創造的思考
3 心理学
◇言語と思考
◇内言と外言
◇言語と発達
◇認知心理学
◇ピアジェ
◇ヴィゴツキー
◇スピーチ不安
4 議論の理論
◇レトリックの歴史
◇レトリックの五分法
(構想・配置・修辞・記憶・所作)
◇エトス・パトス・ロゴス
◇パブリック・スピーキング
◇発想の方法と議論の型
◇トゥルミン・モデル
◇ディベートの理論
◇立証責任と反証責任
5 諸外国の音声言語教育
◇中国の音声言語教育
◇アメリカ合衆国の音声言語教育
◇イギリスの音声言語教育
◇フランスの音声言語教育
◇ドイツの音声言語教育
◇韓国の音声言語教育
第V部 音声言語指導の推移
1 音声言語教育の歴史
◇明治期の音声言語指導
◇大正期の音声言語指導
◇昭和(戦前)期の音声言語指導
◇昭和(戦後)期の音声言語指導
◇平成期の音声言語指導
2 学習指導要領の変遷
1 音声言語指導から見た学習指導要領の変遷
◇昭和二二年度版学習指導要領(試案)
◇昭和二六年度版学習指導要領(試案)
◇昭和三三年度版学習指導要領
◇昭和四三年度版学習指導要領
◇昭和五二年度版学習指導要領
◇平成元年度学習指導要領
3 音声言語教育史年表
1 音声言語教育史年表

音声言語指導大事典

 この『音声言語指導大事典』は、二十世紀我が国における音声言語の教育の理論と実践との現状を整理し、まとめるものであり、二十一世紀の音声言語教育のあり方にいささかの提言をしようとするものである。本書は、理論と実践とのいずれにも偏らないよう、理論の例証として常に実践を置き、実践の背景として常に理論を据えるよう配慮した。ただし、事典という性格から、一理論を掲げて主張するという態度は控えるようにした。その意味では、二十世紀に行われた諸実践を整理した書であり、二十一世紀これからの実践を進めるためにアイデアや方法論を提供する書であるともいい得る。

 音声言語の教育に関する研究は、平成期に入って、大いなる高まりを見せている。

 例えば、十数年前まで、群読という朗読法は、国語教育界にあって一般的なものとはいえなかった。その名前さえも知らないという教師が多かった。しかし今、その名を知らないという国語科教師はいないだろう。斉読と混同する教師も少ないだろう。また、ディベートという討論法についても、十年前と比較すれば、隔世の感がある。

 群読とディベートだけではない。スピーチにしても話し合いにしても、また、音読・朗読にしても、その指導法はずいぶんと開発され、改善されている。音声言語の教育に対する研究が積み上げられ、一般の関心が深まっていることを感ずる。

 子どもたちの音声言語の使用状況も、それとともに、全体的に見ればよくなっているといいうるだろう。しかし、そこには新たな問題が生じていることも確かである。

 その一つは、子どもたちの声が萎縮しているという現状である。あちらこちらの教育現場から、子どもたちの声が小さいという報告がなされている。正確にいえば、声が小さいのではない。響かないのだ。教室の前にいる教師の所まで届いてこない。その原因としては、子どもたちが外で遊ばなくなったこととか、コミュニケーションの場が少なくなったこととか、自閉的な精神的社会状況があるとか、多くのことが指摘されているが、未だその改善が充分に図られているとはいえない。

 子どもたちは、しかし、おしゃべりはよくする。子どもたちが不得手なのは、公式の場における話し方なのである。これからの国際化し情報化する時代を切り拓いていく子どもたちにとって、パブリック・スピーキングの能力に欠けるということは致命的である。

 もう一つの問題は、人の話が聞けなくなっているという現状である。聞かないのではなく、聞けなくなっているというところに、問題の深さがある。確かに、大学生から、高校生、中学生、小学生に至るまで、私語が多く、静かに聞くという緊張が続かない場面を随所に見かけるようになってきた。原因としては、教場のお茶の間化とか、テレビの影響であるとかいわれているが、これもまた、パブリック・スピーキング能力の欠損の問題に帰結する。

 子どもたちに欠けているのは、仲間うちでの話し方・聞き方ではない。異質の人との間に交わされる話し合い・聞き合いに欠けるところがあるのである。また、改まった場での話し方、聞き方に欠陥があるのである。

 きちんと話し、きちんと聞くこと、つまり、論理的で適切なコミュニケーションを行う能力は、これから更に求められるようになるだろう。聞くこと・話すこと・話し合うことの指導は、ますます重要性を増していくと思われる。

 音声言語の教育の改善は当面の急務である。文字言語と音声言語との関係、授業展開の中における音声言語の位置づけ、目的と場に適した音声言語活動の選択など、まだまだ改善しなければならない問題が山積している。

 音声言語の活動を、一方ではまた、文字言語の学習の手段として考える向きもある。

 例えば、朗読をすると、教材文の理解度が深まるという意見がそれである。音読や朗読が文章の理解を深めるということは事実であるが、音読や朗読はそのためだけに価値があるのではない。音読や朗読や群読を、文章理解の手段としてだけに位置づけることは、間違っている。それでは、いつまでたっても、理解中心の受け身の授業から抜け出すこともできないし、文字言語崇拝の呪縛から逃れることもできない。子どもたちにとっては、音読したり朗読したり群読したりすること自体に、価値があるのだ。

 また、群読が効果的な学習法だからといって、教材を選ばずに何でも群読してしまう向きがある。黙って読んだほうがよい文章は、黙読すればよい。一人で読んだほうがよい作品は、朗読すればよい。声を出して読んだほうがよい作品で、複数の読み手で読んだほうがよい作品の場合に群読するのだ。

 このことはディベートについても同じである。何から何まで、どんな場合にでも、ディベートで片づけるというのには無理がある。論題や内容などがディベートに向くものであるとき、ディベートをすればよいのだ。群読もディベートも、強い教育力をもつが、万能ではない。そのところを間違えると、言語の教育の本質から逸脱する。

 さらにまた、言語活動と言語能力の関係についても整理しておかなければならない。子どもたちに言語活動をさせることは大変重要なことであるが、活動させることと能力をつけることとを同一視してはならない。言語能力を効果的に身につけさせるには、それなりの指導が必要である。この点、音声言語の教育においては、未だ明確になっているとはいい難い。これからの整理が待たれる。

 二十一世紀を迎え、日本の社会はますます国際化し、情報化していくことであろう。国際理解というと、すぐにいろいろな国の文化や国民性について理解することと捉えがちであるが、他国の理解と同時に、日本のことを理解してもらうことも重要である。また、情報化社会に主体的に対応していくためには、情報を受信すると同時に自ら情報を発信していくことも必要である。良質の情報を受信し発信するという相互的コミュニケーションの能力の開発が、特に音声言語による本来的な双方向性のコミュニケーションの能力開発が、強く求められるものと思われる。

 一方、子どもたちを取り巻く言語環境を見るとき、それは、決してよいものとはいえない状況がある。中学生の心内に潜む対人恐怖、人間不信の背景にはコミュニケーションの欠損した社会の病弊が見えるし、一大流行語になった「超ムカツク」とか「切れる」とかの語の背景には一般意味論でいうところの言語の感化的内包と二値的反応とに翻弄される現代人の共通的な傾向が見て取れる。まことに、世紀末的世相といわざるを得ないような状況が展開されている。

 このときに当たって、音声言語の教育研究の現状と将来への展望を『音声言語指導大事典』として整理し、まとめておくことは、意義あることと考える。このたび、明治図書編集長の江部満氏から本朝初めてという音声言語に関する事典編纂のお勧めをいただき、浅学の身を省みず編集のことに当たる次第である。また、一人ではとてもできる仕事ではない。私の昔からの同志であり研究の同人である仲間に、手伝っていただいた。また、編集作業に入ってからは、編集部の松本幸子氏に、例によってというには余りにも多大なご心配とご無理をお掛けした。各項目の執筆を依頼した先生方にも、内容に注文を付けたり、加筆訂正をお願いしたり、失礼を省みず編集者の意図を強調させていただいた。ここに至って、ご関係いただいた多くの方にお詫び申し上げ、お礼申し上げる次第である。

 冒頭にも述べたように、本書はこれまでの音声言語教育の理論と実践とを整理し、今後の国語教育にいささかの提言をしようとするものである。この趣旨をご理解いただいて、折に触れ各項目を検索のうえ音声言語教育全般と各事項への認識を更に深められ、また、今後の研究と実践に役立てていただきたい。


  平成十年四月

   群馬大学教育学部教授 /高橋 俊三

  [編集委員]

   東京学芸大学教育学部教授 /大熊 徹

   聖徳大学短期大学部助教授 /有働 玲子

   東京都立豊島高校教諭 /近藤 聡

   東京都立府中工業高校教諭 /中村 敦雄

   東京学芸大学附属世田谷中学校教諭 /荻野 勝

   お茶の水女子大学附属中学校教諭 /宗我部 義則

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      2018/8/1

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