新学力観に立つ国語科授業の改革16考える力を育てるディーベート学習 5〜6年すぐに使えるワークシートつき

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「生きる力」を育む過程で思考力・創造力の練磨・獲得をめざした国語科のディーベート学習の具体的な実践記録。使いやすいワークシート付き。


復刊時予価: 2,332円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-478304-X
ジャンル:
国語
刊行:
2刷
対象:
小学校
仕様:
B5判 128頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
ディベート学習で国語科教育の質的転換 /瀬川 榮志
第T章 考える力を育てるディベート学習
1 思考力を錬磨・高揚する授業への転換
2 個性・特性を生かすディベート学習
3 ディベート論題作成のポイント
第U章 考える力を育てる5年生のディベート学習
1 ディベートの基本学習
(1) 一般的な論題によるディベート(論題「鉛筆とシャープペンシルはどちらがいいか」)
(2) 言語生活に関わる論題によるディベート(論題「担任の先生に敬語を使うべきである」)
2 ディベートを活用した文学的文章の学習
(1) 課題意識を高めるディベート(教材「大造じいさんとガン」)
(2)主題意識を深めるディベート(教材「木竜うるし」)
3 ディベートを活用した説明的文章の学習(教材「森林と健康」)
4 論理的思考力を育てるディベートの論題例(5年生)
第V章 考える力を育てる6年生のディベート学習
1 ディベートの基本学習
(1) 一般的な論題によるディベート(論題「手紙と電話,どちらがよいか」)
(2) 言語生活に関わる論題によるディベート(論題「日本語を標準語に統一すべきである」)
2 ディベートを活用した文学的文章の学習
(1) 課題意識を高めるディベート(教材「野の馬」)
(2) 主題意識を深めるディベート(教材「海の命」)
3 ディベートを活用した説明的文章の学習(教材「人類よ,宇宙人になれ」)
4 論理的思考力を育てるディベートの論題例(6年生)
第W章 考える力を育てるディベート学習の考察
1 各学年の実践の特色
2 これからのディベート学習の課題
編集を終えて /田村 征男
あとがき─ゲームとしての楽しさを─ /塩原 勇
【上巻の主な内容】
第T章 考える力を育てるディベート学習
第U章 考える力を育てる1年生のディベート学習
1 ディベートの基礎知識
2 ディベート的な話し合いの力を育てる学習
3 論理的思考力を育てるディベート学習
第V章 考える力を育てる2年生のディベート
1 ディベートの基礎学習
2 ディベートの基本学習
3 ディベートを活用した文学的文章の学習
4 ディベートを活用した説明的文章の学習
5 論理的思考力を育てるディベートの論題例
第W章 考える力を育てる3年生のディベート学習
第X章 考える力を育てる4年生のディベート学習
第Y章 考える力を育てるディベート学習の考察

まえがきディベード学習で国語科教育の質的転換

   ――「生きる力」を育む過程で思考力を練り言語技術の獲得――
      中京女子大学教授・全小国研名誉顧問 /瀬川 榮志


 21世紀に生きる子供たちには,ディベート学習に積極的に取り組ませる必要があります。広い視野に立ち高い理念と確かな理論的究明による客観性と独創性が調和統一したディベート学習の実践的理論を構築し,それが日々の授業に具体的に展開されるように努力したいものです。

 このような新しい視点に立つディベート学習の目指す基本的方向について考えてみたいと思います。

1 世界の中の日本人として国際社会に伍していく子供の育成

 日本人の話し方は論理性に欠けていると言われている。地球的な視野に立って,人類愛を基調とした世界平和を希求する国際人としての日本人は、国民性としての豊かな心情,温かな人間性を基盤にして,説得力のある表現力・行動力を身に付ける必要がある。

2 「生きる力」を育むための思考力・創造力の錬磨に連動する日本語の教育

 肯定側の立場,否定側における立場の明確化と主張・作戦タイムにおける討論。否定側の反対質問,肯定側・否定側の最終弁論……等において思考が働く。思考力・創造力は,人間としていかに生きるかを追究する源泉となる。

3 言語技術の総合的能力を獲得し,生きた学力としての言語教育を推進

 ディベート学習においては,要点を読み取る技能,要約する技能,中心点をおさえる技能,要旨・主題を明確にする技能等のさまざまな基本的能力が働く。つまり,単一技能だけではディベート学習は成立しないということである。また,発声・発音・間の取り方,緩急並びに,文字力・語句力・文章力……等の基礎的技能も働く。つまり,基礎的技能や基本的能力が総合的に働くわけである。言語の総合的能力は,学習や生活の場で生きて働く真の学力となる。

4 新学力観に立つ新国語能力の発見・系統化と獲得

 新しい学力観に立つ国語科教育においては学習指導要領に示された指導事項を羅列的・断片的に教えるものではない。価値ある課題解決のために,どのような技能・能力が必要であるかを気づかせ,それを組織化していくことが重要である。

 特にディベート学習においては,情報収集・情報精選,構成・情報発信能力が求められている。このような学習の目標や課題に必要な能力発見と獲得ができるディベート学習であることが条件である。

5 学び手が自力で考え判断し「表現・行動」できる学習の創造

 国語科教育においては「言語の機能を通して思考し,判断し『表現・行動」する子供を育てる」ことが究極のねらいである。つまり知識中心・理解中心の学力観から「価値ある言語行動」ができる学力観への転換である。

 ディベート学習は一貫して「表現・行動」の過程である。常に,言語の機能であるコミュニケーション能力や情報発信能力を駆使して,自力で言語力を獲得できるのである。

 わが国は現在,政治・経済・産業の各分野にわたって大きな改革,転換期にあります。このような環境に育つ子供たちの価値観は揺れ,倫理観も低迷し,人間として生涯充実した生き方がつかめない状況にあります。生きるめあてを持ち,精一杯自己実現を目指し,精神的に充実したよき言語生活者を育成できる教育を推進しなければならないと考えます。

 従って,新世紀を拓く教育にふさわしい学校観・教育観・学力観・言語観・児童観・学習観を確立する時代の到来です。

 明治5年の学制施行以来,百年に1回と言われる転換期に直面しているのです。まさにコペルニクス的転回であります。

 この大きな転換期において大切なことは,日本人として,人間としての生き方とは何か。普遍的なものは何か・・をしっかりとおさえての転換でなくてはならないと思います。

 先述の五項目は,これからの教育を構想するときの理念・原点・原理・原則を追求する手がかりになるのではないかと思います。ディベート学習は,単に学習が活性化するという表面的な現象だけを求めてはならないのであって,日本の教育のあるべき姿や日本人の生き方,あるいは学習の在り方を開拓するものでありたいものです。

 次にディベート学習を推進する場合の留意事項について考えてみます。


1 学習の全過程において「自主・自律」の言語行動で一貫する

 中央教育審議会は,「今後における教育の在り方の基本的方向」の中で「…自ら学び,自ら考え,主体的に判断し行動しよりよく問題を解決する資質や能力…」をこれからの子供に必要なものであると提言している。そして「…また自らを律しつつ,他人とも協調し,他人を思いやる心や感動する心等,豊かな人間性である…」と述べている。この文言の中で「自律」を強調していることは注目すべきである。「自主と自律」を調和したディベート学習であること。他と強調し思いやりのある言葉の交流であることを重視する。

2 「生きる力」と「ゆとり」との関連を的確に把握した授業を展開する

 教育課程審議会会長の三浦朱門氏は,中央教育審議会の「審議のまとめ」を受けて,就任の挨拶で「戦後私たちは,あれもこれも与えようとしてきた。しかし,今日何が本当に必要なのかが問題になっている…」と述べている。21世紀を拓く教育において「いま,何が必要か」の「何が」を高い理念,グローバルな視点に立って追究しなければならない。ゆとり=非生産ではないはずである。精神的に充実したとき真のゆとりが生まれるのではないか。ディベート学習の展開においても,真の充実感・達成感を得た後の「ゆとり」や,言語技術が完全に獲得された自信から生まれる心のゆとりを大切にしたいものである。


 以上述べたように,ディベート学習による教育改革や授業改善,あるいは子供を価値ある方向に変容させ,教師の「新教師論」を確立する役割を果たすものであると信じています。本書が国語教育の質的転換の契機になる役目を果たすことができればと念じています。

 明治図書出版企画開発室代表の江部満様には,企画から発行まで温かいご配慮と力強いご支援をいただきました。厚くお礼を申し上げます。

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