- まえがき
- 1章 絶対評価で社会科授業はどう変わるか
- 1 社会科授業の問題点と改善の方向を押さえているか
- 2 絶対評価を重視する意義を踏まえているか
- 3 絶対評価を重視することで社会科の授業はどう変わるか
- 2章 社会科指導と評価一体化の条件
- §1 指導目標の分析と具体化
- §2 評価基準の設定と活用の視点
- §3 評価方法への熟達
- §4 指導計画への評価計画の位置づけ
- §5 評価の実際と指導の工夫
- 3章 社会科指導と評価一体化の具体策
- §1 個別指導で対応する指導の方法
- §2 少人数学習で対応する指導の方法
- §3 習熟度別学習で対応する指導の方法
- §4 補充的な学習で対応する指導の方法
- §5 発展的な学習で対応する指導の方法
- §6 課題別指導で対応する指導の方法
- 4章 社会科指導と評価一体化の授業展開
- §1 社会科第3学年の授業展開
- 1 「杉並区のようす」(12時間)
- 2 「わたしたちのくらしと商店のしごと」(14時間)
- 3 「工場でものをつくるしごと」(10時間)
- 4 「昔の道具をつかって」(10時間)
- §2 社会科第4学年の授業展開
- 1 「水はどこから」(10時間)
- 2 「ごみのしまつと再利用」(12時間)
- 3 「火事を防ぐ」(13時間)
- 4 「玉川上水をつくる」(10時間)
- §3 社会科第5学年の授業展開
- 1 「米づくりのさかんな地域」(12時間)
- 2 「わたしたちの生活と工業生産」(11時間)
- 3 「テレビ局のはたらきと役割」(5時間)
- 4 「わたしたちの国土」(3時間)
- §4 社会科第6学年の授業展開
- 1 「3人の武将と天下統一」(7時間)
- 2 「明治維新を作り上げた人々」(8時間)
- 3 「みんなの願いを実現する政治」(9時間)
- 4 「日本と関係の深い国々」(6時間)
まえがき
教育改革が進行し,更に広がり深まることでしょう。改革は教育諸制度の改革から学校内部の改革に進行しています。「学校を変える」という学校外からの改革要請から「学校は変わる」という学校自らの改革努力,創意工夫が求められる段階に入ったということです。これまでもこうした勢いは何度も学校に寄せてきました。しかし,現実には学校の中,特に授業の在り方にまで及んで一般化したことはなかったと言ってよいでしょう。しかし,今次の諸改革は,すでに実感しているようにこれまでとは違います。まさに我が国の諸制度を根本的に変えていこうとするものであり,教育改革もその一環として進められています。これまでになく学校内部の教育システムの変革,さらには,授業そのものの在り方の変革が求められるでしょう。
総合的な学習の時間の創設は教育課程の構造を変え,子どもの主体性や創造性をはぐくむ時間を保障しました。各学校は特色ある学校づくりの一環として各教科等との関連を図りながら自校独自の総合的な学習の時間のカリキュラムを編成し実施します。また,個に応じた指導の一層の充実が求められ,少人数指導やティームティーチングなどの協力的な指導体制の確立のもと,習熱の程度に応じた指導,補充的な学習や発展的な学習が日常的に取り入れられていきます。これらに伴い,柔軟な日課表・生活時程や時間割なども工夫されています。学校全体が一つになり,特色ある学校づくりのビジョンや目標をもとに地域や家庭と一体となって教育活動を進めていかなくてはなりません。そのビジョンや目標も家庭や地域の参画のもとに設定され,具現する教育活動の過程や結果についても説明していく責任を負っています。
このように教育改革が着々と確実に進められています。学校・教師は,これらの改革の主体者となって子どもに生きる力を確かにはぐくむ教育を責任をもって行うことが必要です。その重要な視点として教科学習における評価の在り方の見直しがあげられます。子どもたちに確かな学力が身に付いたかどうかを確認するためには評価は欠かせません。それも,これまで行われていた知識・理解の評価に片寄った評価の在り方,テスト等による点数に片寄った評価から関心・意欲・態度,思考・判断,技能・表現,知識・理解の調和のとれた評価を目指す必要があります。なぜなら,今,子どもたちに求められている「生きる力」の中核となる「確かな学力」とは,これらすべてを含めたものであるからです。
社会科学習においては,これまでも問題解決的な学習や体験的な学習を重視し,教科目標に掲げられている「社会生活についての理解を図り,我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を育て,国際社会に生きる民主的,平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う」ことに多くの教師たちが努めてきました。しかし,それでもなお,教育課程の基準の改訂の度に,知識・理解の詰め込み,暗記中心などといった批判が出されたり,一方では社会的事象についての考える力が十分ではないということも取り上げられたりしていました。振り返るに,これらのことは,一に社会科の授業における評価の在り方が趣旨に即して徹底されていないという課題があったのではないかと考えます。
社会科学習における評価は,観点別学習状況の評価及び評定の二面から行われ,ともに「目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)」として行われています。観点別学習状況の評価は,「社会的事象への関心・意欲・態度」「社会的な思考・判断」「観察・資料活用の技能・表規」「社会的事象についての知識・理解」の4観点から社会科の学力を分析的に評価するものです。「評定」は,観点別学習状況の評価を基本的な要素として社会科の学力を総括的に簡潔に評価するものです。これらは,社会科学習の成果が子どもたちにどのように身に付いているかを見取り,より確かな学力として身に付くようその後の指導に生かすためのものです。また,教師は自らの指導や指導計画を振り返る材料として活用し,指導力の向上や指導計画の改善に生かすようにします。これらのことが日常的に行われ機能しなければ,社会科が求める学力は子どもたちに身に付きません。
本書では,以上のような考え方に立って,一人ひとりの子どもに確かな社会科の学力を確保・向上させるための指導と評価の一体化の考え方と実践を取り上げてみました。
1章では,社会科の授業についてこれまでに指摘された問題点を取り上げ,絶対評価を大切にすることでどのように克服することができるかについて考えてみました。
2章では,社会科の授業において指導と評価を一体的に考え実践する際に必要と思われる5つの条件についてまとめてみました。指導の結果から評価を考えるのではなく,評価という枠組みをしっかりもった上で指導を工夫していこうということです。
3章では,今日求められている社会科の授業の新たな課題,すなわち,個別指導,少人数学習,習熱度別学習,補充的な学習,発展的な学習,課題別学習などにおいて,指導と評価の一体化をどのように進めるかについてその具体策を提示しています。
そして,4章では,以上の視点をもとに各学年の授業展開を構想してみました。執筆者はいずれも社会科指導のベテランで,その豊かな指導経験を生かして,評価を重視し活用する授業展開を構想しています。
本書の社会科教育における指導と評価の考え方,そしてその授業構想が,よりよい社会科授業を目指す先生方の評価能力を向上させ授業改革のお役に立てばと念じています。
最後にお忙しい中,本書のためにご執筆いただいた皆様に心から感謝致します。
また,本書の企画・出版に多大の労をとって下さった明治図書編集部の安藤征宏氏に心からお礼を申し上げます。
平成16年9月 編者 /寺崎 千秋
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明治図書
















