- はじめに
- T ディベート教育はなぜ必要か
- 一 息づまる日本の言語空間
- 林秀彦は訴える
- 外国発の戦略的歴史観は去るべし
- 子供たちに価値高い日本の文化を
- 二 ディベート教育の効用
- ディベート導入の先駆者はどのように見たか
- なぜディベートで、多方面の能力が育つか
- 知識と情報の両面の力
- 複眼的にして柔軟な思考力
- 脱正義論の正義論
- U ディベートの手法はいかなる特色を持つか
- 他の授業手法と対比して捉える
- 対比の視点
- 一 問題解決学習と対比する
- 問題解決学習の誕生と発展
- 社会科の初志をつらぬく会の実践から
- 問題解決学習の授業とディベート授業と対比する
- 二 ネタ開発授業と対比する
- 「ネタ」授業の誕生
- 社会科は時代の子であり、時代の父
- 論争ネタ授業の実践例
- 論争ネタの授業とディベートの授業を比較して
- 名人芸と追試可能性の両面が備わっているネタ授業
- 三 ディベートと「提案する社会科」
- 「提案する社会科」は現れるべくして現れた授業
- 「花いっぱい道路をつくろう」と対比する
- 「ディベート授業」と「提案する社会科」の違い
- ディベートの「隠れたカリキュラム」
- ディベート型と「問題解決学習」「ネタ」「提案型」
- 時代が後押しする「ディベート社会科」「提案型社会科」「モラルジレンマ授業」
- 時代は今からどう変わるか、周期説では?
- 次の時代の社会科のイメージは?
- V 国際理解教育とディベート
- 一 「国際理解教育」の視野
- 指導要領から見る
- 軸足をどこにおくか
- 「地球市民」と日本人
- 溶けいく日本人
- 国際理解教育はユネスコに始まる
- 開発教育・グローバル教育・国際理解教育とはどのように違うか
- ではグローバル教育はどう違うか
- 国際理解教育、開発教育、グローバル教育の概念を整理すると
- 二 国際理解教育の中のディベート
- 国際理解教育の各手法
- 国際理解教育の授業手法とディベート授業@
- 国際理解教育の授業手法とディベート授業A
- なぜ国際理解教育でディベートか
- 国際理解教育における大津和子の他の手法
- 三 国際理解教育と自国文化の認識
- 根底にすえるべきスタンス
- 会田雄次、梅原猛、渡部昇一の日本論から
- 梅原猛はいかにして森の思想に到達したか
- 会田雄次の亡国論から何を学ぶか
- 渡部昇一の日本論は日本人の教科書である
- なぜ三人の日本観なのか
- W ディベートの論題の条件
- 一 ディベートはいつ、どんな論題で行なうか
- 小学校、中学校、高等学校のいついかなる論題で可能か
- 中学では教科学習が活きる論題で
- 高校では現代社会の問題を真っ正面にすえた論題で
- 指導要領に見る「表現力、社会認識力」の発達
- 二 国語、社会、道徳、学級活動のどこでどんな論題がよいか
- どんな論題が選ばれているか
- デイベートは国語の花形である
- 国語になぜディベートが必要か
- ディベート社会科の論題は多面的である
- ディベートは社会科を活性化する
- 道徳、特別活動ではディベートに何を期待するか
- ディベートは道徳・学級指導にも力を発揮する
- 指導要領が求めるものは
- ディベートは学級の人間関係を変える
- ディベートは各教科で何を目指しているか
- 三 社会科の三分野のどこでどんな論題がよいか
- 実際の行なわれた例から
- 歴史ディベートはいかなる論題で行なわれているか
- 公民の授業ではディベート授業を主として
- 四 このディベート論題はだめ
- この論題のどこがどうおかしいか
- この論題のどこをどう変えるとよいか
- 論題の条件をさらに追求したSDI
はじめに
ディベートを授業に使い始めるより少々前に、わたしは授業について記録されている著作や文献・記録を集め、これはと思うものはすべて追試し、記録に取り、もって修業としていた。その一つの試みとして、ディベート授業を志したのは、岡山で開催された「教育技術シンポジウム」で、岡本明人氏の講演を聞いたのがきっかけである。有田和正氏、向山洋一氏、それぞれの講演内容は大体は著作を読み、了解していたが、帰校後に今すぐにと思ったのは、岡本氏の説くディベート授業であった。その後、四年間一学期に一回程度のディベート大会を担当クラスで行なってきた。数多くの先行実践の追試はいずれも、おどろくほど興奮させられたが、なかでもディベート授業は、一種別のものがあった。本書では、ディベート授業を行ない、ディベートを参観し、ディベートの文献をあさり、考えたこと学んだことを記録した。まずディベート授業とは何たるかを書くために、ディベートの展開を解説する方法をとらなかった。そのような角度なら既にすぐれた著作が出版されている。他の授業手法と対比して、それぞれの特色を明らかにしようと試みた。問題解決学習、有田和正氏のネタ授業、小西正雄氏の「提案する社会科」、モラルジレンマ授業、国際理解教育で行なわれている授業を一つずつ取り上げて比較した。この対比を総括するために、小西正雄氏が行なった比較研究を紹介し、多少の私見を加えた。この検討を行なって、戦後の社会科の流れを見ることができた。今教育が当面しているのは、五〇年に一度の転換期であると確認できた。さらに近未来の社会科を予見してみた。
兵庫県では、本年から中学二年生を対象に、一週間学校を離れて、希望に応じて各種職場に参加し、従業員と同じ体験をする、という「トライやるウイーク」が行なわれることになった。現場ではあまりに唐突な決定に、少なからず反発を買ったが、この著作での予見に近いものがかくも早く実現し、私はいささか驚きかつ興味深く思った次第である。「トライやるウイーク」と社会科でのわたしの予見は、目的とするところは、少々異なるが、共通の基盤があるように思える。
この対比を通じて、自国をいかに認識するか、という視点にも焦点をあてた。近現代史のみならず日本の教育における自国認識が一面的で自己蔑視に満ちていている。私は国際理解教育の数々の授業実践に学びつつもある種の警戒心を深めるばかりだった。このまま放置できない、という危惧を覚え、意とするところを披露した。いずれもっとまとめた論考が必要と考えている。
最後の章で、ディベート授業が各教科でどのような目的のもとにどのような論題で行なわれているか、検討した。
ここに書いたディベート例は、いずれも討議やねらい、文献などなんらかの具体が記された実践ばかりを取り上げている。本書の対象にしている社会科でも地理、歴史、公民のそれぞれの分野で行なわれたディベート論題を分析した。先行実践を紹介し、あとに続く実践者の参考にすべく、雑誌、単行本等の文献名を記した。このような検討はまだ誰によってもなされていないものと自覚している。
最後に私自身の実践の歩みを書いたものが、著作の与えられた紙数がつき、本書に掲載することができなかった。
いつか機会があれば公開をと念じている。前任校の宝梅中学校の卒業生諸君に感謝したい。生徒の目覚ましい討論活動に驚嘆しながら、ディベート授業で、生徒とともに私も学びの道を歩んだと、と今にして思う所である。またこの著作を企画していただき、大幅に期限を超えたにもかかわらず、出版までお世話いただいた江部満氏に感謝いたします。
平成十年七月 宝塚市立安倉中学校 /羽渕 強一
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明治図書















