- まえがき
- 本書の使い方
- T 図画工作のなんでも小話
- 1 「図画工作」って何をする教科なの?〜何のための勉強なのだろう……〜
- 2 「図工」の前は,どんな教科だったの?〜図工の前は,お手本を写すという勉強だった!?〜
- 3 なってみよう!カメの目,烏の目,ミミズの目
- 4 ぐるぐる巻く絵,折りたたむ絵ってなあに?〜絵巻や屏風は絵のアイディア賞〜
- 5 外国人が描いても「日本画」?日本で描いても「洋画」?〜絵のジャンルって,何だろう?〜
- 6 版画のいろいろ
- 7 彫刻って,なあに?〜立体造形のいろいろなかたち〜
- 8 どんなものが使えるかな?〜身の回りのものを使った造形〜
- 9 生活の中のデザイン
- U 材料・道具のなっとく小話
- 1 新発明!描き味抜群!?
- 2 4B,2H,HB……BとかHって何?
- 3 消しゴムで消す? 描く?
- 4 紙って……すごい!〜立たせること,できる?〜
- 5 紙あれこれ――いろいろな紙
- 6 鉄と木,どちらが丈夫?
- 7 楽しい材料,粘土のいろいろ〜この学校の地下にも眠ってるかも!?〜
- 8 どんなねじでしめようか?〜ねじのいろいろ〜
- 9 はさみに「左利き」用ってあるの?〜しっかり考えたい「左利き」用〜
- 10 接着剤……昔は,どうやってくっつけた?〜接着のメカニズム〜
- 11 セロハンテープは巻いてあるのに,どうして自分にはつかないの?
- V 色のいろイロ小話
- 1 虹は七色?色はいくつあるの?
- 2 黒インクは,黒じゃない!?〜図工科学研究所が黒インクの秘密を暴く〜
- 3 きれいなカラー印刷,インクはいくつ使っている?
- 4 色で気分が変わる?温度も変わる?
- 5 白と黒だけの世界って……?〜白と黒だけで描いてみよう〜
- W 図工・芸術のなるほど小話
- 1 映画になった芸術家たち
- 2 ピカソって,どんな人?
- 3 ゴッホって,どんな画家?
- 4 図工が好きな人にオススメの職業
- 5 ゲイジュツって,いろいろだね
◆まえがき◆
この本を手にとってご覧になっている方は,図画工作科の授業をとても大切に思っていらっしゃる先生でしょう.図工の授業を楽しく充実させたいとお考えなのでしょう.そして,もしかしたら図工の授業がちょっと苦手だから……と思っていらっしゃる先生かもしれません.
この本は,図工を大事になさろうとしているそんな先生方に,少しでもお役に立ちたいと思って書いたものです.図工の授業の導入での話や,途中での「こぼれ話」に使えるような,子どもたちが身を乗り出して聞きたくなるお話をパッケージしてみました.
例えば……「虹の色の数って,いくつなの?」
こんな問いかけで,図工の授業,なかでも絵の具などを使う「色」に関わる授業を始めてみてはいかがでしょうか.
虹の色数など,「虹は七色,きれいだな」と口ずさむように言葉が出てきそうですが,本当に7色なのでしょうか.1年生の子どもたちが描く絵に登場する虹は,色の並び方は不定であっても,そこに彩られている色数はたいがい7つです.実際,子どもたちに「虹の色はいくつかな?」とたずねると,どの子も元気よく「7色!」と答えます.「だって幼稚園で教わったもん.」「おじいちゃんが7色だって言ってたよ.」などと口々に言います.確かにその通りで世の中では大人も「虹は7色」と言いますね.でも本当に虹の色は7つなのでしょうか.
実は,虹の色は国や民族によって数え方が違い,7色とは限らないのです.
6色,5色という国があるそうですし,驚くことに2色という国もあるようなのです.
日本では,虹の弧の外側から順に赤・橙・黄・緑・青・藍・紫と7色を並べていいますね.でもこれは赤から橙,黄と少しずつ色味が変化していきながら最終的に紫のようになって見えなくなっていくのです.つまり,虹の色は無限の階調(グラデーション)になって変化しているわけで,色テープのように描かれたイラストみたいに7色とはいえないというのが実際のところでしょう.私自身,雨上がりの空を見上げて虹の色を数えてみても,7色の区別はつきかねます.
それでは,虹の色の数はいくつと言えばいいのでしょうか.
その答えは,一人一人のなかにできるのだと思います.つまり,一人一人が自分の目で見て感じた色,数えた色の数が正解なのです.
この答えの導き方は,図画工作科の授業で一番大切にしたい「子ども一人一人の表現に意味と価値があり,それぞれの表現を見守り育てていく」という教師の姿勢と重なります.
本書は,図工や美術に関わるエピソードをこぼれ話的に面白く興味深く伝えようと,それを語る先生方のために書いたものです.ですから,「へぇ〜っ!」「そうだったんだ!」と子どもたちが身を乗り出して聞き入ってくれることを期待しています.ですが,それが単なる話で終わらないように,そこに図工や美術に通じる「心」を伝えたいと思って書いてあります.
前述の「虹の色」のエピソードは,本書P.94〜に詳しく書いてありますが,これは,子どもの「えっ?」から始まって,色彩に対する興味関心を高めながらも,単なる知識で終わらないように図工や美術における心遣いのようなものへとやさしくガイドできるように書きました.そして,可能な限り様々な題材の授業の導入へとつながるようにしてあります.
「図画工作科が大好き」という子どもたちは多いと思います.でも,ちょっと苦手……と思っている子もいることでしょう.図工に一層興味をもてるようにしたり,苦手意識や心のつかえを優しく除いてあげられるようにしてあげられたら,こんなに嬉しいことはありません.そして,この本を手にとられた先生ご自身のお役に少しでも立てればこの上ない幸せです.
どうぞ本書を使って,子どもたちに図工への心のとびらを開いてあげてください.
最後に,本書作成の企画を提供くださった基幹学力研究会ならびに編集に心を砕いてくださった明治図書編集部の樋口雅子氏,寺内雅子氏に心より感謝申し上げます.
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