- はじめに /田中 博史
- 本書の使い方 /田中 博史
- T 低学年向け算数面白小話
- 1 「たくさん」を表す数 /工藤 克己
- 2 ほんとうにたしざんでいいの? /藤田 究
- 3 たしざんのふしぎ /尾ア 正彦
- 4 もしも「0(れい)」がなかったら? /小松 信哉
- 5 サイコロの秘密 /山本 良和
- 6 +−×=のお話 /盛山 隆雄
- 7 「あた」ではかってみよう /中田 寿幸
- 8 だましぶねってしってる? /宮本 博規
- 9 九九のひみつをみつけよう /中村 浩司
- 10 身近にある「かけ算」 /間嶋 哲
- U 中学年向け算数面白小話
- 11 昔の時間と時刻 /中田 寿幸
- 12 「0」の不思議 /工藤 克己
- 13 3人に等しく分けることのできる数は? /近藤 修史
- 14 たし算は?ひき算は?かけ算は?わり算は? /藤田 究
- 15 切手シートの秘密 /間嶋 哲
- 16 紙を使って /永田 美奈子
- 17 重さはふしぎがいっぱい /宮本 博規
- 18 昔の数の読み方 /種市 芳丈
- 19 小数誕生秘話 /小松 信哉
- 20 いろいろな形でコマを作ろう! /永野 由美子
- 21 まん丸星のキャラクターを作ろう /平山 誠
- 22 数を積み木であらわすと /中村 浩司
- 23 ケーキを分けよう /尾ア 正彦
- 24 マンホールは丸くなくてもいい!? /宮川 章
- V 高学年向け算数面白小話
- 25 小数を大きくしたり,小さくしたりするには? /藤田 究
- 26 直角に交わっているところは? /中川 弘子
- 27 数と形の不思議! /羽染 聡
- 28 最短コースをたどってみよう /藤本 邦昭
- 29 三角形はいくつできるの? /尾ア 正彦
- 30 四角形の不思議! /土屋 直之
- 31 じゅんかん小数のひみつ /種市 芳丈
- 32 永遠に続く魅力的な円周率 /中田 寿幸
- 33 土俵の広さってどれくらい? /宮本 博規
- 34 碁石のパズル /山本 郁雄
- 35 約数をつかって /中村 浩司
- 36 わり算で最大公約数を見つけられる? /熊谷 純
- 37 のりしろの数はいくつ? /間嶋 哲
- 38 アジアに伝わる,線で作られた模様 /永田 美奈子
- 39 とっても不思議 メビウスの帯 /東郷 佳子
- 40 大きなものを工夫して測る /工藤 克己
- 41 正十二面体を見つけたヒッパソス /種市 芳丈
- 42 切り口はどんな形? /夏坂 哲志
◆はじめに◆
下のような模様のついたサイコロを2つ転がす.
1つのサイコロには,6つの面があり,模様は○が3つ,□が2つ,△が1つとなっている.さて,どのような模様の組み合わせが出るだろうか.
子どもたちに尋ねてみると,当然,○と○の組み合わせが多いと予想する.
(図省略)
ところが,実際に子どもたちと実験をしてみると,なぜだかわからないが,○と□の組み合わせがたくさん出る.子どもたちにはとても不思議.中には先生のサイコロには何か細工をしているのではないかと疑う子もいるぐらいだ.そこでためしに自分たちで作ったサイコロでもやらせてみる.立方体の学習と兼ねてやれば楽しい.それでもやはり同じ結果が出る.このあたりから,子どもたちはこのサイコロの目の出方を整理しようと考える.表を作ったり組み合わせをすべて書き上げてみようと動き出すのである.不思議さが子どもたちの知的好奇心を奮い立たせていく.
実は次のような表に整理してみるとこの仕組みはよく見えるようになる.
(図省略)
そうである.○と○の組み合わせは9通りしかないのに比べて実は○と□の組み合わせは12通りにもなる.だから誰が作ったってこれは○と□が当然出やすいのである.一見,3つずつある○と○の方が多いように錯覚してしまうから,大人だってこれにはだまされる.
手品のような算数の時間を体験しながら,物事を順序よく整理したり表に表したりすることのよさを実感させることができた.
教師がこのような話題をたくさん知っていると,子どもたちと知的な算数世界を面白おかしく旅する時間をつくることができる.整理もしたくないのに表を書かされる時間とは大きく異なるのである.
本書では,このような算数教師が知っておくといいなと思われる面白い小話をいろいろな角度からたくさん集めてみた.明日からの算数の授業で,子どもたちとちょっと知的な算数世界を旅することの手助けになればいいと考えている.内容は,数学の歴史にまつわるもの,子どもたちとやってみると楽しい物づくりのアイデア,個々のクラスの日常の子どもとの対話の中から紹介したい友達の発見の話.その構成は様々である.そのまま授業の中で活用できるアイデアから,朝の会や帰りの会で子どもたちに話して聞かせることで算数観を変えられる話題までバラエティに富んでいる.
どの場面でどのように活用するかはそれぞれの先生のアイデアに委ねる.しかし,間違いなく子どもたちの知的な算数世界への扉を開けるきっかけになるのは確かだ.算数というと,いつも力任せの繰り返し練習に明け暮れているのだとしたら,こうした世界もぜひ子どもたちに見せてあげて欲しい.
基幹学力研究会算数部は,こうした小話をきっかけに「算数の歴史」や「生活の中の算数」へ興味をもたせたり,さらに「算数世界の不思議さ」にひたらせることで,「算数は自分たちで発見することを楽しむもの」という学習観を育てることができると考えた.「算数大好き」に支えられてこそ「本当の使える学力」を育てることにつながると信じるのである.
最後になったが,本シリーズを刊行するにあたり,明治図書編集部の樋口雅子氏には多大なるご尽力をいただいた.感謝申し上げる次第である.
基幹学力研究会 算数編集長 /田中 博史
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