- はじめに
- 本書の構成・表記について
- 第1章 国語授業が変わる!発問パターン68
- 一番○○なものは?(文学)
- 1 一番いいなと思った(心に残った)場面は?
- 2 一番プラス(マイナス)の場面は?
- 3 一番大事な文は?
- 4 特に気持ち(様子)が分かる文は?
- 5 あらすじに特に必要だと思う言葉は?
- 6 特に関係が深い場面は?
- 7 特に重要な人物は?
- 8 特に深く考えてみたい会話文は?
- 9 特に気になった表現は?
- 別の表現だとしたら?
- 10 別の景色の表現だったとしたら?
- 11 別の会話文だとしたら?
- 12 別の行動描写だとしたら?
- 13 会話文・心内語があるとしたら?
- 14 気持ちが書かれているとしたら?
- 15 続きがあったとしたら?
- 16 読者としては? 登場人物だったら?
- 17 直接的に書いてあった方がいいのでは?
- 18 普通は、○○だよね?
- 19 統一した方がいいですよね?
- 20 変なお話(不思議な○○)ですね
- 21 性格があまりよくないよね
- 22 どちらが本当の○○なの?
- 23 仮に○○説が正しいとすると?
- 24 書かれている通りですよね?
- 25 プラス? マイナス?
- 26 見たものは? 聞いた音は?
- 27 何日間・何年間のお話ですか?
- 28 いくつ(何人)ですか?
- 29 誰の会話文? 誰の人物像?
- 30 不思議な世界の入口と出口は?
- 31 何型の物語ですか?
- 32 組み合わせは?
- 33 今までに学習した文章との共通点は?
- 34 今までに学習した文章にない新発見は?
- 一番○○なものは?(説明文)
- 35 一番いいな(すごいな)と思った事例は?
- 36 一番大事な文(段落・資料)は?
- 37 一番たくさん出てくる言葉は?
- 38 特に驚いたこと、初めて知ったことは?
- 39 特にいいな(なるほどな)と思った文は?
- 40 特に「まとめているな」と思う文は?
- 41 特に説明が上手だと思う文は?
- 42 特に難しいと感じる段落は?
- 43 特にどの文にかかっていますか?
- ○○は必要ないのでは?
- 44 問いの文は必要ないのでは?
- 45 問いと答え以外の文は必要ないのでは?
- 46 本文にない情報は資料にいらないのでは?
- 47 事実や具体例がなかったとしたら?
- 48 ある段落(事例・場面)がなかったら?
- 49 一つあれば十分なのでは?
- 50 作者・筆者のねらい(気持ち)は?
- 別の○○の方がいいのでは?
- 51 別の題名の方がいいのでは?
- 52 事例の順序を入れ替えた方がいいのでは?
- 53 説明の順序を入れ替えた方がいいのでは?
- 54 説明を分けた方がいいのでは?
- 55 仲間分けを変えた方がいいのでは?
- 56 知られている言葉の方がいいのでは?
- 57 筆者がこのように言っているのですが…
- ○○を加えたとしたら?
- 58 問いがあったとしたら?
- 59 説明を加えたとしたら?
- 60 事例を加えたとしたら?
- 61 どういうこと? ○○ということかな?
- 62 本当にそう言えますか?
- 63 分類できますか?
- 64 どんな色分けかな?
- 65 どちらでしょうか?
- 66 説明が似ているところは?
- 67 何型の文章ですか?
- 68 5段階で表すとしたら?
- 「国語発問」を考えるためのブックガイド
- 第2章 文学の発問事典
- 1年
- 「やくそく」
- 「くじらぐも」
- 「たぬきの 糸車」
- 2年
- 「スイミー」
- 「お手紙」
- 「わたしはおねえさん」
- 「スーホの白い馬」
- 3年
- 「まいごのかぎ」
- 「ちいちゃんのかげおくり」
- 「モチモチの木」
- 4年
- 「白いぼうし」
- 「一つの花」
- 「ごんぎつね」
- 5年
- 「なまえつけてよ」
- 「たずねびと」
- 「大造じいさんとガン」
- 6年
- 「帰り道」
- 「やまなし」
- 「海の命」
- 第3章 説明文の発問事典
- 1年
- 「くちばし」
- 「うみの かくれんぼ」
- 「じどう車くらべ」
- 「どうぶつの 赤ちゃん」
- 2年
- 「たんぽぽの ちえ」
- 「馬のおもちゃの作り方」
- 「おにごっこ」
- 3年
- 「こまを楽しむ」
- 「すがたをかえる大豆」
- 「ありの行列」
- 4年
- 「思いやりのデザイン」
- 「アップとルーズで伝える」
- 「世界にほこる和紙」
- 5年
- 「言葉の意味が分かること」
- 「固有種が教えてくれること」
- 「想像力のスイッチを入れよう」
- 6年
- 「笑うから楽しい」
- 「時計の時間と心の時間」
- 「『鳥獣戯画』を読む」
はじめに
本書は、国語科、読むことの発問のパターン集です。
しかし、ただ単に発問をかき集めたパターン集ではありません。
「大事典」とネーミングされているのは、次の三つの理由によります。
まず、第一に、「特に汎用性が高いと考えられる発問」を集めています。
しばしば耳にするのが、次のような声です。
「教育書に載っている発問を、そのまま自分の実践に取り入れることはできる。でも、それを参考に、自分で発問を考えるのは、難しくて――」
本の通りに発問するだけではなく、本で学んだ発想をもとに、自分なりに発問を考えられるようになりたい。私自身、そう思いながら文学や説明文の教材研究を積み重ねてきました。
教材研究を積み重ねる中で、感じるようになってきたことがあります。それは、「あ、この教材でも、あの発問が使えるかもしれないな」という閃きです。
教科書には、さまざまな文学的な文章や、説明的な文章教材が掲載されています。
内容はもちろん、発達段階によって文章の長さや書かれ方も多様です。
しかし、多様である一方で、実は、「間接的な気持ちの表現が用いられている文学的な文章」や、「複数の事例が紹介されている説明的な文章」などのように、共通項を見出して「類型化」することも可能なのです。
教材を類型化することができるからこそ、発問にも、汎用性が生まれるのです。
つまり、同じ類型の文章では、同様の発問が活用できることが多いというわけです。
本書で紹介しているのは、特に汎用性の高い68パターンの発問。
きっと、読者の先生方が教材研究や授業の構想をする際に、「今回の授業では、この発問が使えるかも…」と、目の前の子供たちにぴったりの発問を閃く一助となるはずです。
次に、第二の理由は、「授業を活性化する発問」を集めているということです。
私は、十年以上に渡って読むことの発問研究をしてきました。
国語授業の活性化を促すのは、「面白そう」「考えてみたい」と「個々」の子供たちの「読みへの意欲」を引き出す発問です。
そして、「私はAと考えたのに、Bと考えている人がいるのは、なぜだろう?」というような「集団」の「読みの多様さ」を生み出す発問です。
さらに、忘れてはならないのが、そうした発展的な発問に対する思考を支える、基本的な内容の理解を促す確認的な発問です。
本書では、こうした国語授業の活性化を促す発問を、どんな場面で用いる発問かという観点から、「確認する場面の発問」「広げる場面の発問」「深める場面の発問」の三つに分類・整理をして紹介しています。
どの発問も、先生方の国語教室の活性化のお役に立てると考えています。
そして第三の理由は、「発問とセットで指導内容を示している」ということです。
国語授業は、教えることが曖昧になりがちです。
国語科の教科の学びがあったのかということが、きちんと意識されていないことが多いのです。
例えば文学では、各場面の人物の気持ちを話し合って単元が終わるということが起こります。
気持ちを考えることは促しても、気持ちを読み取る方法の明確な指導がされません。
ある文学教材の、ある場面における登場人物の気持ちを考えることを促すだけで、国語科の教科の学びがあったと言えるでしょうか。
文学の授業で登場人物の気持ちを考える活動を行うのであれば、その活動を通して、「気持ちの読み取り方」を教える必要があります。
それこそが、国語科の教科の学びを明確に位置付けるということだと考えています。
また、この問題と関連して、国語授業における発問が、「色々な意見が出されて、盛り上がったから、いい発問だった」のように評されることがあります。
でも、そうではなくて、国語科の教科の学びの獲得を促す発問として、または、その学びへとつながる発問として効果的だったのか否か、という点こそが検討されるべきだと思うのです。
そこで本書では、取り上げている各教材で扱うべき指導内容、とりわけ「教科内容(国語科ならではの指導内容)」を整理し、発問とセットで提案するようにしました。
「発問のバリエーション」を知ることができる本にとどまらず、国語授業において、どのようなことを教科内容として扱っていけばいいのか、つまり「国語科の教科内容」を考える上で、参考にしていただける本になっていると考えています。
国語授業は、指導内容が明確に位置付くことで、より「本質的な国語授業」に「変わる」のです。
本書が、お読みいただいた先生方のお役に、少しでも立つことができれば幸いです。
なお、本書で紹介していることは、私がこれまでお世話になってきた先生方に教えていただいたこと、そして先人たちから学んだことに他なりません。心から感謝申し上げます。
二〇二二年六月 /橋 達哉
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