- はじめに
- Part1 コーディネーション運動と「動きことば」とは
- 1 子どもたちに伝わる表現とは
- 2 コーディネーション運動×「動きことば」でみんなが運動を楽しめる
- 3 保育者の表現で子どもたちの雰囲気が変わる
- 4 知っておきたい「動きことば」リスト
- コラム 保育者が知っておきたいキーワード6
- Part2 歩く動作・走る動作を取り入れたコーディネーション運動と動きことば
- 歩く動作・走る動作を取り入れたコーディネーション運動のポイント
- 歩く動作・走る動作での動きことばのポイント
- 1 まねっこ走り
- 2 いろいろ走り
- 3 なりきり移動
- 4 いろいろご挨拶
- 5 いろいろ変身
- 6 レンジおに
- 7 ボールと競争
- 8 あちこちジャンケン
- 9 お片付けゲーム
- 10 いろいろ忍者
- Part3 跳ぶ動作を取り入れたコーディネーション運動と動きことば
- 跳ぶ動作を取り入れたコーディネーション運動のポイント
- 跳ぶ動作での動きことばのポイント
- 11 跳び箱跳び
- 12 ジャンプおに
- 13 空中足うらタッチ
- 14 いろいろスタート
- 15 いろいろ着地
- 16 321どっか〜ん!
- 17 あちち,ジャンプ
- 18 見えないボール
- 19 きのこちゃんジャンプ
- 20 フットアップジャンケン
- Part4 投げる動作・捕る動作を取り入れたコーディネーション運動と動きことば
- 投げる動作・捕る動作を取り入れたコーディネーション運動のポイント
- 投げる動作・捕る動作での動きことばのポイント
- 21 輪でキャッチ
- 22 くるりんキャッチ
- 23 ボール当ておに
- 24 水切りショット
- 25 投げ上げストラックアウト
- 26 みんなでボール当て
- 27 いろいろキャッチ
- 28 壁当てキャッチ
- 29 イチゴちゃんキャッチ&スロー
- 30 一緒にキャッチ
- Part5 全身を使った動きを取り入れたコーディネーション運動と動きことば
- 全身を使った動きを取り入れたコーディネーション運動のポイント
- 全身を使った動きでの動きことばのポイント
- 31 ワニ
- 32 チョウチョとハチ
- 33 赤ちゃんおに
- 34 はじまるよ♪
- 35 コマ
- 36 動物園に行こうよ♪
- 37 マリオネット
- 38 ジャンケンハグ
- 39 ジャンケンダッシュ
- 40 英語でコーディネーション
- Part6 用具・道具を使った遊びを取り入れたコーディネーション運動と動きことば
- 用具・道具を使った遊びを取り入れたコーディネーション運動のポイント
- 用具・道具を使った遊びでの動きことばのポイント
- 41 どっちが速いか!?
- 42 じょうずによける! くるっと回転
- 43 お座りストップ
- 44 ちょうだいおに
- 45 フープキャッチ
- 46 想像ゲーム
- 47 スリーボール
- 48 あちこちダッシュ
- 49 トンネルボール
- 50 バトルブロック
はじめに
あなた(ルミ先生)は,4歳児クラスのコーディネーション運動を担当しています。子どもたちがおしゃべりをしていて,あなたの方を向きません。さあ,あなたならどうしますか!?
1.笑顔で首をかしげながら,静かになるまで待つ
2.ルミ先生どこ? と聞く
3.お話をしたいのですが,なかなかできません,と言う
4.いいですか? と聞く
5.みえちゃんとゆきこちゃんはお行儀よく座っていますね,と言う
どれが正解,ということではありません。他にも対応の仕方はあると思います。大切なことは,子どもたちはどんな存在なのか,子どもたちの行動をどのようにとらえるのか,そして,「それは本当に子どもたちのためになりますか?」という考え方ではないでしょうか。 子どもたちは,かけがえのない存在であることに異を唱える方はいないはずです。さらには,保護者の所有物ではなく,社会における共有資産(宝物)だ,というとらえ方についても同様と思われます。また,上記のようにおしゃべりをする子どもたちや動き回る子どもたちの裏側に隠されたメッセージをどのようにとらえるか,という点もとても大事な視点です。
前著『楽しみながら運動能力が身につく! 幼児のためのコーディネーション運動(2015)』では,「保育者が子どもと一緒に考え,創り,喜び合う」ことを中心に組み立てました。今回は,前著の考え方を継承しつつ,「それは本当に子どもたちのためになりますか?」という問いを常に持ちながら実践していただけたら,と期待しています。一例をあげると,先生方の子どもたちからのさまざまなメッセージの受け止め方,「それは本当に子どもたちのためになりますか?」。子どもたちはひとりひとり違うのにそのことばがけ,「それは本当に子どもたちのためになりますか?」。子どもたちは自ら学ぼうとする力をもっているのに,支援と思ってすぐに手を差しのべること,「それは本当に子どもたちのためになりますか?」というように,自問自答していただけたら幸いです。
そしてもう一つは,「動きことば」になります。「動きことば!? なにそれ?」と思ったのではないでしょうか。例えば,「立つ」「座る」「跳ぶ」という動詞でもあり,「高く」「小さく」「ゆっくり」などの形容詞,「頭」「足」「お腹」といった名詞など,「運動をするときに使うことば」です。私たちのチームでは,毎月80か所以上でコーディネーション運動(以後COEと略します)を行い,毎月一回の全体報告会でさまざまな事例を共有しています。その中で分かってきたことの一つに,「語彙力が動きに及ぼす影響」があります。当たり前のことですが,子どもたち個々のことばの数が多いと,話している内容を理解できるため,言われたように動くことができるということです。反対に,ことばの数が少ないと理解できないために,走り回ってみたり,お部屋の隅で小さくなるという行動をとってしまいがちです。そこで私たちは,「動きことば」に注意して子どもたちに話して,動きを観察するようにしています。
最後が,「共感するコーチング」です。一言でいうと,「子どもたちがどんな気持ちなのか,を感じようとするコーチング」になります。決して正解でなくてもいいのです。心穏やかに,「感じようとする」その行為が重要だと思います。残念ながら,大きな声で怒って,保育者がやらせるシーンが少なくないのが現実です。これもまた当たり前のことですが,子どもたちはできないことだらけです。だから一所懸命に取り組もうとします。なのに「どうしてできないの」とか「何やってんの」とか怒鳴られる現場がまだまだあります。私たちが提唱する「共感するコーチング」は,前著でも示しましたが5つの技法(軸移動理論,ブレインストーミング,動機づけ,must & will,ユーモア)を中心に進めていきます。特に,「子どもたちの何を見るのか,どこを見るのか,どんなことばに耳を傾けるのか」がポイントになります。
そこでチェックリストです!
1.早口で話す
2.大きな声で話す
3.否定文をよく使う
4.できていないところを見つける
5.睨みつける
一つでも当てはまる方は,要注意ですよ。運動を教えることは,誰でもできます。しかし,どのように教えるかで結果がまるで変わってしまいます。本書を読み進める中で,解決していきましょう。
さて.2012年3月に文部科学省から『幼児期運動指針』の発表があり,各幼稚園では「体力・運動能力の向上」が求められるようになりました。そして2017年には,保育所保育指針・幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改定によって保育園・こども園も幼児教育施設と認められるようになり,幼稚園と同様に「体力・運動能力の向上」をはじめとした幼児教育が求められるようになりました。このように現在,国をあげて幼児教育を促進している最中ですが,保育現場の多様化もますます進み,外国籍の子ども,発達障害のある子どもの増加などさまざまな理由をもった子どもたちも増えています。
子どもの年齢や国籍,障害などの違いを受け入れるインクルーシブ教育では,「他者との違い」を幼児期から経験することで,お互いに違いを受け入れ,差別や偏見を防ぐメリットがあると言われています。人格形成に関わるさまざまな経験,考え方,対人関係などをどのように育むか,という本質的な議論と併せて,幼児教育の重要性は,各方面で叫ばれています。「それは本当に子どもたちのためになりますか?」小さな問いかもしれませんが,それがきっかけで行動に至り,何らかの結果を得られそれがまた次の小さな問いを生み出すきっかけ,とループします。そして,子どもたちの成長を育むためのより良い環境づくりにつながるアイデアを,「一緒に考えて行きましょう!(Think together !)」。
2019年12月 /東根 明人
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- 明治図書
- 単なるネタ本ではなく、子供への言葉かけに関する考え方や、パターンなどがわかりました。運動の場面だけではなく、学校教育の様々な場面、子育てなどで使えるテクニックだと思いました。2021/2/7ヤッシー