- はじめに 〜子どもと保護者の心に、希望の灯をともすために〜
- 第1章 「本当は、また学校へ……」――その小さな願いを拾い上げるために
- 子どもと保護者の「願い」とは?
- 「学校って本当に必要なのかな?」という問いの向こう側
- 子どもの視点で考える「学校の可能性」
- 「本当は、学校へ行きたい」と口にする子どもたち
- 保護者の「本当の願い」に寄り添う
- 不登校が家庭に与える「もう一つの悩み」
- 「本当は学校へ…」保護者の願いに、まっすぐ向き合う
- 「今、できること」から始めたい
- 第2章 不登校のリアル――子どもが発する「SOS」と心の現在地
- 増え続ける不登校の現状と背景
- データから見える不登校の現状
- 子どもを理解する
- (視点1)SOSのサインを読み解く
- (視点2)「現在地」の確認をする
- 現在地@ 家から出ることが難しい状態
- 現在地A 家からは出られるが、学校の敷地に入るのが難しい状態
- 現在地B 学校には行けるが、教室に入ることが難しい状態
- 現在地C 教室には一人で入れるが、友達がいると難しい状態
- 現在地D 教室で過ごせるが、気持ちが不安定な状態
- その子の成長を見逃さないために
- 「寄り添う」の一歩先へ──支援の本質を見つめる
- 一人で抱え込まないための「支援マップ」
- たくさんのアドバイスに、どう向き合えばいいか
- 「きっかけ」の裏にある「本当の原因」
- 「見守る」だけでは、届かない声(Dさんの事例から)
- 「見守りましょう」というアドバイスとの向き合い方
- 「見守り重視」のアプローチが生まれた背景とは?
- 子どもが語る「理由」の裏にあるもの
- 「きっかけ」と「本当の原因」を分けて考える
- 第3章 孤独な保護者の「伴走者」になる――「寄り添う優しさ」を希望へとつなぐ
- 不登校に苦しむ親の心情
- まさかうちの子が……
- 私が保護者の気持ちを理解するまで
- 闘病体験を通して見えてきたもの
- 情報に翻弄され、不安に蝕まれる日々
- 絶望の中で出会った一言の希望
- 保護者の心強い「道しるべ」に
- 優しさを「本当の力」に変えるために
- 第4章 複雑な現実を解きほぐす――「心への寄り添い」と「自立への導き」
- 観察を通して、現状を的確に見極める
- 愛情をもって見つめ、希望の糸口を探る
- 本人の「現在地」と「言葉」を見つめる
- 本人が語る言葉に耳を傾ける
- 心と体と生活は、すべてつながっている
- 保護者の「言葉」と「行動」を理解する
- 保護者の方の語る「言葉」から想いを理解する
- 保護者に、子どもへの関わり方についての考えがある場合
- 保護者がどうすればいいか、わからずにいる場合
- 保護者の「行動」から状況を読み解く
- 子どもとの関わり方を「安心」と「自立」という視点で整理してみる
- パターン1:温かい共感を示すが、自立への導きがゆるやかになりすぎる状態
- パターン2:説得が難しく、子どもの訴えに抗いきれない状態
- パターン3:お互いに関わる心のエネルギーが枯渇してしまった状態
- パターン4:愛情深い共感で支え、自立へ着実に導く、理想の状態
- 大切なのは「バランス」と、共に歩む姿勢
- 「家庭の環境」と「関係性」を理解する
- 「子どもとデジタル機器との距離」を把握する
- 「子どもと保護者の心の距離」を理解する
- 親子の心の交流は、温かく円滑なものか?
- 「心が動いた瞬間」に目を向ける
- 第5章 支援の「引き出し」を増やす――学校・家庭・医療でつくる回復の土台
- 状況に応じた支援の考え方
- 子どもの心の声に応じた、三つの支援の視点
- 「学校での出来事」がきっかけの場合
- 人間関係のトラブル
- 学習に対する不安
- 学校生活への不安
- 「心の体力」を育む支援
- 「心や体の不調」がきっかけの場合
- 医療と教育の上手な連携
- 学校での負担を和らげる、具体的な「環境調整」
- 「しんどさ」の理解が、折れそうな心を支える
- 「自分でも理由がわからない」場合
- 生活習慣からのアプローチ
- 「心身の健康」を支援のゴールに
- 「ゆっくり休む」とは?
- 「睡眠負債」から抜け出す
- 回復への土台を作る
- 希望へつなぐ保護者との対話
- 私が犯した、ある大きな失敗
- 保護者と共に歩むための、対話の3ステップ
- まずは、じっくりと話を聞く
- 考えられる選択肢を、すべて誠実にお伝えする
- どの方法から試すか、保護者に「選んで」もらう
- 医療機関との連携について、留意したいこと
- 第6章 「回復する力」を引き出す――背中をそっと押す、具体的な関わり方
- 「回復する力」を引き出す具体的な関わり
- 小さな一歩が「回復する力」を引き出す
- 関わり@:「安心の傾き」――「行きたいけど行けない」背中を支える
- ケース1:「ここからは大丈夫」という信頼のバトンタッチ
- 保護者の心を支える、放課後のフォロー…@様子を伝える
- 保護者の心を支える、放課後のフォロー…A想いを伝える
- ケース2:安心のゴールを「教室」に設定する
- 先生自身が、その子の「新しい安心基地」に
- 関わりA:「小さな選択」――「選べた」という成功体験を
- 「あなたはどうしたい?」という問いかけの難しさ
- なぜ「どうしたい?」に答えられないのか
- 「選べた」という成功体験を積み重ねる
- 「小さな選択」で信頼関係を育む
- 「補助輪」を外し、自立へ向かう次のステップ
- 言葉で選べない子への、さらなる工夫
- 「指さし」で、非言語の選択を促す
- 「回数」を示して、聞く余裕をつくる
- 「時間」を区切ることで、決断を後押しする
- 「カウントアップ」と「カウントダウン」の使い分け
- 関わりB:「成長への背伸び」――自分で道筋を決定する力を育む
- 「無理」ではなく「背伸び」を
- 「背伸びポイント」を提示する
- 「0.01の背伸び」を積み重ねる
- 関わりC:「心のバケツ」――言葉を受け止める「器」を整える
- まず「聞く準備」を整える
- 対話へと導く、4つのステップ
- クールダウンルーム(CDR)を活用して、その子の成長を後押しする
- 感情が昂り、どうしても対話が難しい場合
- 「対話」を選べるまで寄り添いながら静かに待つ
- 未来志向の対話で、次の一歩を「練習」する
- なぜ「対話する力」を育むことが大切なのか
- 「信頼のメッセージ」が、固まった心を溶かす(N君の事例)
- 「焦らない」という覚悟が、回復力を引き出す
- 第7章 ケーススタディで学ぶ――現場の悩みに答える実践事例
- 具体的な事例を通して、支援の引き出しを増やす
- 事例1:保護者が「まずは休ませたい」と考えている場合
- 事例2:「行かせたいのに、行かせられない」と保護者が悩んでいる場合
- 事例3:学校へ行く途中で、足が止まってしまう場合
- 事例4:昇降口などで、体が固まってしまう場合
- 「一人で行ける」と答えたら
- 事例5:教室の入り口で、立ち止まってしまう場合
- 事例6:別室登校が、周囲から「ずるい」と思われてしまう場合
- 事例7:教室ではなく、「クールダウンルーム(CDR)へ行きたい」と訴える場合
- 事例8:「放課後なら行ける」と訴える場合
- 事例9:登校したり、休んだりを繰り返す場合(五月雨登校)
- 事例10:教室にはいられるが、ふとしたきっかけで心が折れやすい場合
- 答えは、目の前のその子の中に
- おわりに
はじめに〜子どもと保護者の心に、希望の灯をともすために〜
「子どもの不登校が続いて、どうしていいかわからない」
面談の場で、保護者の切実な声に耳を傾けてきました。大切な子どもが学校へ行けなくなると、多くの保護者は先が見えない暗闇の中に、たった一人で取り残されたような気持ちになってしまいます。
「どうしてうちの子が……」
「私の育て方がいけなかったのかしら……」
「この子の将来は、一体どうなってしまうんだろう……」
そんなふうにご自身を責め、眠れない夜を過ごしている保護者を前にして、私たち支援者もまた、かける言葉が見つからず無力感に苛まれることがあります。「もっと何かできることはないか……」と悩み、迷っている先生方も少なくないのではないでしょうか?
不登校についてインターネットや本で情報を探すと、
「不登校は、決して問題行動ではありませんよ」
「学校へ行くことができなかったからこそ、学べたことがありました」
「学校以外にも成長できる場所はたくさんありますよ」……
といった、温かい言葉にたくさん出会います。これらの言葉は、本当にその通りだと思います。自分を責め、張り詰めた気持ちでいる保護者の心をふっと軽くしてくれる、かけがえのないメッセージです。実際に、国も「学校に再び通えるようになることだけを、ゴールにしなくてもいいんですよ」と明確に伝えており、学校以外の多様な学びの場が、今、社会全体に広がりつつあります。
その大切な考え方を、私も心から尊重しています。その上で、この本では、ある一つの「もしも」に、光を当ててみたいのです。それは、もし子どもや保護者が、心の奥で「本当は、また学校で笑える日が来てほしい」という願いを、ほんの少しでもおもちであるならば、その切実な想いにどこまでも寄り添いたい、という想いです。
そして、その願いを、私たち教員が具体的な支援で後押しし、「学校で学ぶ」という選択肢を子ども自身がもう一度、自分の意志で選び取れるようになるために、何かできることはないか、一緒に考えていきたいのです。
なぜなら、私たち教員は、「学校」という場所がもっている価値や可能性を、誰よりも知っているからです。もちろん、学校だけが全てではありません。しかし、たくさんの友達や先生と関わる中で社会性を学び、ときにはうまくいかない経験を通して、困難を乗り越える力を育んでいく……。そのような「子ども時代だからこそ得られる貴重な機会」が、学校にはたくさん眠っていることも事実です。だからこそ、「学校で学ぶ」という選択肢を簡単にあきらめてほしくない。それが、教育に携わる者としての、私の心からの願いなのです。
さきほどの国からの言葉の後には「児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」という言葉が続きます。これは、「学校復帰だけがゴールではない。でも、子どもが将来、社会の中で自分の足で立っていくために、私たち大人は支援を諦めちゃいけないんだよ」という、国からの力強いメッセージだと、私は受け止めています。不登校は、決して誰かが「悪い」わけではありません。しかし、子どもやご家族が、今この瞬間も悩み、苦しんでいるとしたら、私たち支援者が「大丈夫ですよ」「焦らないで」と寄り添うだけでは、そのご家庭を本当の意味で支えきれないのではないか……? 支援者としてそんなジレンマに直面することがあるのです。
「寄り添う」という基本姿勢はもちろん何より大切です。でも、明日からの面談で、保護者に、子どもに、具体的にどんな言葉をかけ、どう働きかければいいのか迷ってしまうこともあるでしょう。この本はそうした現場の先生方の「具体的な一手が知りたい」という声に応えることを目指しています。
しかし、どうかご安心ください。この本は、「学校へ行くべきだ」という価値観を押し付けるものでは、決してありません。もしあなたが、迷い、悩みながらも、子どもの可能性を信じ、「学校」という場所がもつ力をもう一度だけ試してみたい、と願う保護者や先生であるならば、この本は、暗い夜道をそっと照らす、心強い伴走者になれるかもしれません。そうなれることを心から願っています。
/古田 直之















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不登校の子だけでなく、その家庭を含めて支援をしていくことの大切さがわかった。