- まえがき
- 序章 もうイライラに押しつぶされない! 先生のためのアンガーマネジメントの基礎知識
- 1 知っておきたいその「イライラ」の正体
- 「イライラ」は、悪い感情?
- 「イライラ」は氷山の一角
- 「イライラ」はストレスが溜まっているサイン
- 2 イライラをコントロールするために必要な4つの領域
- ストレスマネジメント―心身を落ち着かせる方法を身に付けよう
- 認知変容―自分の「考え方のくせ」を緩めたり、変えたりしよう
- 傾聴―相手を理解するために相手の話に耳を傾けよう
- アサーティブコミュニケーション―自分も相手も大切にし話し合おう
- 第1章 「学級経営のイライラ」のアンガーマネジメント
- Q1 トラブルを相手のせいにする子どもに、つい強い口調で指導してしまいます
- Q2 何度注意しても相手を傷つける行動を繰り返す子どもにへとへとです
- Q3 反抗的な言い方や態度をする子どもについ声を荒らげてしまいます
- Q4 行事の練習で協力せず、好き勝手する子どもへの対応に困っています
- Q5 授業の妨害をし、困っている教師を見てニヤニヤする子どもに腹が立ちます
- Q6 提出物をいつも忘れ、自分から申し出もしない生徒に毎日時間をとられます
- 第2章 「授業中のイライラ」のアンガーマネジメント
- Q7 立ち歩きを注意してもすぐ歩き出す子どもへの対応に疲れてしまいます
- Q8 指示に「やりたくない」と大きな声で反発し、他の子に迷惑をかける子どもがいて困っています
- Q9 グループ活動で子どもの気持ちが切り替わらず、声を張り上げてしまいます
- Q10 授業中の指示がなかなか入らない生徒の行動が理解できず困っています
- Q11 教師のミスを得意気に指摘する生徒、追い打ちをかける生徒にムカッとします
- Q12 注意を素直に聞かず、教師の揚げ足を取り笑っている生徒に冷静に対応できません
- 第3章 「保護者へのイライラ」のアンガーマネジメント
- Q13 連絡帳を見ず、電話にも出てくれない保護者にイライラします
- Q14 困っていることを伝えてものれんに腕押しで協力してくれない保護者に困っています
- Q15 支援が必要な子どもに対する考え方に温度差がある保護者に悩んでいます
- Q16 一生懸命対応しているのに、保護者から過度の要求をされて困っています
- Q17 保護者が自分の意見を押し付けてきたり、明らかに間違ったことを主張してきたりします
- Q18 保護者が子どもの言い分のみを聞いて、一方的に要求や不満を伝えてきます
- 第4章 「同僚・管理職へのイライラ」のアンガーマネジメント
- Q19 頭ごなしに同僚の前で否定され、落ち込んでイライラします
- Q20 職員室で態度や言葉遣いが悪く、予定変更も平然と行う同僚がいて辛いです
- Q21 相談しても話を聴いてもらえず、逆に圧力をかける先生がいて心が萎えます
- Q22 多忙な時期に急に理不尽な仕事を要求され、イライラして攻撃的になります
- Q23 ネガティブな意見や感情をぶつけてくる先輩の言葉に傷つき、イライラします
- Q24 事実確認をしないで、一方的に注意をしてくる先生にイラっとします
- 第5章 「自分自身へのイライラ」のアンガーマネジメント
- Q25 家庭と仕事の両立が思うようにいかない自分にイライラします
- Q26 要領が悪く、仕事も子どもへの指導も上手くいかない自分に腹が立ちます
- Q27 仕事が多い上に整理整頓もできなく、疲労困憊で集中できません
- Q28 子どもの対応などに追われ、自分のペースで仕事が進められず落ち込みます
- Q29 頭で考えた通りに授業が進まず、劣等感を抱き、自分を責めてしまいます
- Q30 体調が良くない時に限ってミスをしてしまい、余計に時間を取られてイライラします
- あとがき
まえがき
人生の中で、私に影響を与えた3つの出会いがあります。1つ目は、私を育ててくれた両親(里親)との出会い、2つ目は小学校3年生の時の先生、3つ目は小学校、中学校の先生達との出会いです。この本を書くにあたり、今までの人生を振り返り、いかに大人の存在が、私の人生に大きな影響を与えたかを考えました。
存在を受け止めてくれた両親
1つ目は、両親との出会いです。この両親なくしては、この本を書くことはなかったでしょう。生後間もなく実母は私と姉を置いて蒸発しました。なぜか? それは、今ではメディアで取り上げられている家庭内暴力のある家庭だったからです。姉と妹(私)も引き離され、私は乳児院へ行くことになりました。しかし、乳児院へ行く間際に、私を育ててくれた両親に出会ったのです。
今思えば、両親との出会いがなかったら、十分な教育も受けられなかったでしょう。温かい家庭を経験することもなかったと思います。小さい頃から、私の感情をとても大切にしてくれた父や母でした。決して裕福ではありませんでしたが、両親の愛を感じながら幼少期・児童期・思春期・その後を送りました。お正月、ひな祭り、七夕、夏休み、お月見、運動会、クリスマスと様々な行事を父や母と一緒に楽しみました。特にクリスマスの時期になると、父は山に登り、もみの木を切り倒し肩に担いで運び、大きなバケツにもみの木を入れて、お手製のクリスマスツリーを飾ってくれました。また、私の周りにはうさぎ、ニワトリ、犬などの動物もいて、「もうすぐうさぎの子が生まれるぞー」とうさぎの出産を父と母と一緒に待ちわびる刺激的でわくわくする幼少期・児童期でした。
わくわくする時間がいっぺんに変わってしまったのが、高校時代に自分の出生がわかってからでした。ちょうど思春期です。「私は捨てられた子なんだ」という言葉がいつも頭の中に浮かんでいました。自己肯定感も自尊感情も何もなく、自己否定的な考えや感情がいっぱいで、荒れ狂う毎日を送っていました。そして、一生懸命育ててくれた両親に、怒りの感情をいやというほどぶつけました。しかし両親は、一度も私の存在を否定する言葉を言いませんでした。反対に「今一番辛いのはあの子なんだ。絶対立ち直るから信じよう。俺たちが育てた子なんだから」と両親は日々お互いに言いながら過ごしていたそうです。
良い面も悪い面も、丸ごと今ある存在を受け止める心の姿勢を私は両親から学びました。
先生は怖い!
2つ目は、小学校3年生の担任との出会い。これは良い出会いではありませんでした。今でもその先生の髪型、顔形や表情、顔のしわ、特に手のしわ、口調ははっきり脳裏に浮かびます。とても怖い体験で、「先生」がみんな怖い存在に映りました。小学校3年の私には衝撃的な出来事でした。私は元来、給食が大好きで嫌いな物は何もないのですが、ある日、パンの中に異物が入っていて、それを先生に見せたら「食べなさい! 大丈夫!」と言われました。どうしてもそのパンを食べる気になれず、家に持ち帰りました。そのパンを見た父は、それを持って学校へ行き、校長先生に話をしました。決して、学校に対して文句を言う父ではありませんでしたので、よほどのことだったと思います。
しかし、その後担任から、みんなが下校した後に、「残りなさい」と言われ、私は一人で残りました。先生から「あなた何を言ったの!? 私は校長先生から怒られたのよ!」と延々と感情的に叱責を受けました。ただただ先生の手をじーっと見つめ怖さに耐え、沈黙して時間が過ぎるのを待ちました。鬼の形相(私にはそう映った)で叱責されている時間は地獄でした。この体験がもととなり、学校も先生も大っ嫌いになりました。今ではおそらく「体罰」として取り上げられると思います。とても深く傷ついた体験でした。
救いの先生現れる!
「学校嫌い! 先生嫌い!」それでも私は学校へ休まず行っていました。
そんな私を救ってくれたのが、高学年で出会う先生、保健室の先生、中学校の先生達でした。私の存在をとても大切にしてくれたという感覚は今でも鮮明に残っています。
現在は、保健室で児童生徒が休む時間は一時間くらいだと思いますが、その当時は、一日保健室で過ごすことができました。保健室の先生に話を聴いてもらったり、脱脂綿を切ったり、カーゼを切ったり、シーツを替えたり、結構やることがありました。長い間、私の学校は保健室でした。そこで、先生が私を必要としてくれて、いつも「ありがとう」と言葉をかけてくれたことで、「ここにいていいんだぁ」と思えるようになりました。
また、道徳の時間には、『レ・ミゼラブル』をまるで私に語ってくれるかのように読み聞かせをしてくれた先生がいました。私は一番前の席で、微動だにしないでその話に耳を傾けて聴いていました。この先生とこの時間も私に大きな影響を与えてくれました。
中学生になると、今度は更なる受難の日々がやってきました。それは病気によって言語障害が起こり、「あいうえお」も発音できなくなったのです。これは思春期の私にはかなりショックな出来事でした。クラスでは「あいうえお」の発音ができない私を笑う生徒が出てきました。「なりたくてなった病気ではないのに!」と怒りの感情が湧いてきました。
しかし、そんな私を救ってくれたのは先生達でした。文章を書くのが好きな私、英語が好きな私、わからないことは探求するのが好きな私に、担任の先生だけでなくいろいろな教科の先生が声をかけ、私なりにできることを提案してくれたのです。新聞社へ記事を書いて投稿、英語弁論大会への出場。「話せないのに、どうやったらいいの?」と不安でしたが、放課後、口を動かすリハビリを兼ねて英語の特訓。理科では、太陽に向かって咲くひまわりの研究など、私ができることを一緒に考え伴走してくれる先生達がいました。
今でもすごいなぁと思うのですが、担任一人に任せていないのです。担任以外の先生もみんな声をかけてくれたのです。常に先生達に守られていると感じました。中学生の時の先生達との出会いは、いつしか「学校嫌い、先生嫌い!」という言葉を私の頭の中から消してくれ、少しずつ心が癒えていろいろなことにチャレンジできるようになりました。
アンガーマネジメントを伝えたい理由
私は、沢山の学校の先生と話す機会があります。どの学校でも先生達から「やることが多い」「時間がない」「本来の授業の準備ができない」等の言葉をよく聞きます。先生達は、ストレス状態の中で児童生徒に対応するのですから、イライラすることも多いと思います。加えて、様々な家庭環境や特性を持った子ども達も学校へ来ています。先生達の理想とする授業を行えないことも少なくないと思います。先生も完璧ではありません。イライラして衝動的な言動をしてしまうこともあるでしょう。しかし、それにより子どもの心は傷つき、大人に対して不信感を持つ子どもがいるのも事実です。その一方で、先生の関わりで私のように救われる子どもも必ずいます!
本書では、先生のイライラする場面に関する相談に対して、先生達が少しでも気持ちをらくにして授業や指導に臨めるように、アンガーマネジメントの視点から回答しました。先生達がイライラして感情的に対応しても、子ども達にはプラスにはなりません。まず、大人が感情と上手く付き合い、子ども達と接することで、子ども達が変わる一歩となります。将来を生きていくかけがえのない子ども達が、「先生と出会えてよかった!」と思える出会いがありますようにと心から願っています。
先生が子どもの対応に困った時に、この本を開いてくださいましたら幸いです。
2021年2月
一般社団法人アンガーマネジメントジャパン(臨床心理士) /佐藤 恵子
-
- 明治図書
- 具体的で、分かりやすかったです。2022/10/1630代・小学校教員
- 怒りのコントロールをして、子供に接しなければならない。自分の課題です。きっかけになる本でした2022/4/2430代・小学校教員
- 現場で良くある場面に対して、具体的対応方法が記載されており、大変参考になった。2022/2/1350代・中学校主任教諭