- はじめに
- Introduction 「トータルウィン」な働き方を実現する5つの視点
- 01 「自分自身」の仕事が効率化されるか?
- 02 「子ども」の成長につながっているか?
- 03 「同僚」に負担をかけすぎていないか?
- 04 「管理職」の理解を得られているか?
- 05 「保護者」の協力は得られているか?
- Chapter1 自分自身の時間を生み出す
- 01 スキマ時間を上手に活用する
- 5分以内にできそうなことはすぐに取り掛かる
- 02 ショートカットキーを使いこなす
- よく使うものから楽しく覚える!
- 03 紙を制するものが仕事を制す
- フローチャートで仕分けしていく
- 04 データ化の方法を使い分ける
- データ化&クラウド保存でキーワード検索
- 05 1年間の時短になる4月の事務作業
- 春の必須作業 4選
- 06 夏休み中は落ち着いて事務作業貯金
- 夏の必須作業 4選
- 07 冬休みに春休みの仕事をする
- 冬の必須作業 4選
- 08 作業量が2倍になる4つの作戦
- 2倍の速さで/2分の1の作業で
- 09 クラウドでワークシートを使う
- デジタル化で時短&紛失防止
- 10 ノート計画もデジタルで
- アナログと同じで,それ以上のメリットを
- 11 デスクトップを工夫する
- 背景を使って業務を効率化
- 12 日々の記録が時短につながる
- 所見は記憶ではなく,記録で書く
- 13 思い出すきっかけをつくる
- 人は忘れる。だから自動化&リマインダー
- 14 「締切」を使いこなす
- 自分にも周りにもやさしい締切の考え方
- 15 スキマ時間にできる範囲を理解する
- 自分の作業スピードを把握する
- 16 8割主義で仕事をする
- 2割で報告。8割で一旦完成!
- 17 日頃のこまめな支援が自分の時間を生む
- 生徒指導が起きないような手立てを
- Column01 情報を一つにまとめる 30穴バインダー
- Chapter2 子どもの能力を高めつつ,効率化する
- 18 学級通信は子どもと一緒に
- 子どもと作れば時短&子どもの力も高まる!
- 19 「やりたい」を尊重する係活動
- 係活動は「あったら良いな」の活動
- 20 交換作文で文章力UP
- ノートは半分!効率2倍!
- 21 フィードバックの機会を増やす
- フォームでなんでもコンテスト
- 22 仕組みを変えれば人は動く
- ルールではなく仕組みで「やりたくなる」
- 23 期間を固定して能力UP&効率化
- 当番でプロフェッショナルを育てる
- 24 休み時間に子どもと関わる
- 子どもと遊んで実態を把握しよう!
- 25 その日のテスト,その日のうちに
- 即時フィードバック
- 26 プリントは丁寧に配る
- プリント配りは「ありがとう」のチャンス
- 27 一人一役で効率化する
- 協力性と責任感を養う
- 28 いろんなリーダーをつくる
- 役割が明確になる「全員リーダー」
- 29 子どもができることは任せてみる
- 挑戦の機会を増やす
- 30 丸つけの方法を工夫する
- 教師だけが丸をつけない
- 31 無駄のない指導が良い指導
- 注意1秒,指導1分を心がける
- 32 子どもの時間を大切にする
- 子どもの定時も守る
- Column02 赤ペン一本ですぐできる 楽しい丸つけ方法
- Chapter3 同僚と協力する/理解し合う
- 33 所見は共有してつくる
- みんなで時短&文章力向上
- 34 清掃の時間を減らしてみる
- 掃除の目的を見直し,考える
- 35 これいいな!と思ったら共有
- いろいろな方法で共有する
- 36 平日に休む
- 協力して休む日を作る
- 37 会議での司会の役割とは
- 効率的な会議は司会がカギを握る
- 38 ホウレンソウを「育てる」
- ホウレンソウされる人柄が大事
- 39 職員室にはスペシャリストがたくさん
- 得意な先生にお願いする
- 40 自分では気づかないこともある
- 他の先生から学ぶ
- 41 人のふり見て自分に取り入れる
- 苦手な先生からこそ学ぶ
- 42 必要なものは自分で買わない
- 学校を操るのは事務員さん?
- 43 根回しは卑怯なのか?
- 「事前の相談」と捉える
- 44 当たったらラッキー!と思い込む
- 誰の仕事?と思ったら自分の仕事
- Column03 子どもから好かれる先生の特徴 よく笑う先生
- Chapter4 管理職の理解を得る/負担を軽減する
- 45 “愚痴”から“意見”に変える
- 自分の考えを根拠を持って伝える
- 46 全員のコストを削減する会議に
- ペーパーレス職員会議
- 47 通知表の在り方を見直す
- 変えられるところはたくさんある
- 48 家庭訪問を変える
- 目的を確認する
- 49 スムーズな欠席連絡に
- フォームやアプリで欠席連絡
- 50 電話の受付時間を変える
- 電話の応対時間を決める
- 51 行事の内容を吟味する
- 目的を大事にする
- 52 管理職の負担感を減らす
- 管理職の仕事の効率化を図る
- 53 地域からの目も忘れない
- 管理職は地域との架け橋
- 54 10年後の職場環境を変える
- 振替・年休・育休をとる
- Column04 多忙感解消とは 人間は感情の生き物
- Chapter5 保護者の協力を得る/理解を促す
- 55 保護者だって暇じゃない
- 保護者の負担を減らす
- 56 時間外対応への理解を促す
- 勤務時間を伝える
- 57 来てよかったと思える面談を目指して
- 面談への見通しを互いに持つ
- 58 懇談会の在り方を考える
- 懇談会で横のつながりを作る
- 59 どの保護者も我が子が一番大事
- こまめな連絡&学校生活の充実
- 60 苦情はチャンスと捉える
- 苦情を業務改善のヒントにする
- おわりに
- 参考文献
はじめに
今回は,数ある教育書の中からこの本を手に取っていただき誠にありがとうございます。
「頑張って憧れの教師になったのだから子どものために一生懸命働こう!遅くまで残って仕事をする人が偉いのだ」。初任の頃の私です。職員室に残り,学級通信を書いたり,授業の準備をしたりしていました。ひと通り終え,校舎を出てみると,校庭の時計が深夜2時を回っていました。頑張った自分に自己肯定感を抱き,その時計をスマホでパシャリ。遅くまで働くことが正解だと思っていました。完全に自分に酔っていました。借りていたアパートは,帰って寝るためだけの場所。土日も教材研究や事務整理のために出勤して,そのまま月曜日に突入。そんな日々を過ごしていました。
地元に転任して部活動の顧問を受けもつことになった時には,一番に校門を開け出勤。教材研究をした後に朝練のサポート,授業を行い,18時半ごろまで部活動を見て,その後は学年会や事務仕事。帰りは20時過ぎが当たり前。「今年は19時には帰りたいと思います」と,今思うと低すぎる目標を掲げ仕事していました。
そんな働き方で学級経営や授業が満足のいくものになるわけがありません。一生懸命働いているはずなのに,どこか充実していない自分がいました。口から出るのは文句ばかり…。
こんな忙しい生活のおかげで,効率的な働き方を意識するようになったのかもしれません。教師としての働き方を考えました。本当に必要なことは何なのか,法的に問題はないのか,世の中にはどんな時短術があるのか,書籍や判例,インターネット記事を読み漁りました。
何のために働いているのか。一言で言えば「子どものため」ですが,「子どものために働いて自分が辛い思いをする」,それは本当に子どものためと言えるのでしょうか。私が子どもなら,クラスで疲れた顔をして働く先生に申し訳ないと思ってしまいます。たとえ成績が上がったり,友達が増えたりしたとしても,苦しむ先生の存在を知れば,心から嬉しい気持ちにはならないでしょう。結果としてそれは良い教育とは思えません。
なので私は,教師も子どもも幸せになる道を選びたいと思います。どちらか一方が不利益を被るのではなく,教師にとっても子どもにとってもどちらにも利点があり,納得のできるWIN-WINの関係です。もちろん,教師対子どもだけではなく,教師対保護者,同僚などとの関係も同様です。それが回り回って未来の教育に良い影響を与えていく,そんな世の中になれば良いと思います。
「教師,子ども,同僚,管理職,保護者や地域…学校に関するすべての人が納得して,そして安心して過ごせる環境を目指した働き方を考えたい」そんな意味で『トータルウィン』というタイトルをつけさせてもらいました。みんなが幸せになる道は必ずあります。
働き方改革については文部科学省や教育委員会等に制度を改善してもらいたいところは大いにあります。しかし,制度改善を待つだけではいけないと思っています。個人や現場レベルでもできることはたくさんあります。そんな思いもあり,今回は個人や現場レベルでもできることを中心に紹介させていただいています。教育に正解はありませんから,今回紹介させていただく内容も,すべてが正解だとは思いません。自治体や勤務校などによってできることできないことがあると思います。すべての人に当てはまるものではないかもしれませんし,私もまだまだできていないものもあります。しかし,多くの先生が,今の仕事に誇りを持って教師として働き続けられるために,犠牲の上に成り立つ教育ではなくみんながより良い関係の上で子どもの成長に関わるために,そんな働き方ができることを願っています。
この本が明日の教育,そして回り回って10年後の教育の一助になれば幸いです。
2023年5月 /日野 勝
より良い職場環境をつくるのは、自分たち自身なのだと勇気をもらえる本でした。
これからもコツコツと自分らしくこの仕事を頑張りたいと思いました。