- はじめに
- 第T章 子どもが自ら学ぶ「自己調整」×単元で考える社会科授業デザイン
- 1 社会科授業づくりの難しさと「あるある」
- 1 社会の授業づくりが難しい
- 2 社会科の授業づくりに時間を割けない教員の実態
- 3 教材研究自体は楽しい
- 4 社会科一生懸命あるある
- 5 子どもが自ら学ぶ授業が遠のく
- 2 そもそも社会科の授業で目指したいのは?
- 1 「目的」「方法」「内容」で整理する社会科の目標
- 2 社会科の目標をざっくりとわかりやすく
- 3 「自ら学ぶ子」から「自ら行動する人」へ
- 3 「学び方」に着目し子どもが自ら学ぶ授業づくりへ
- 1 「内容」への着目が生む教材研究に追われている感
- 2 「内容」は「目的」に向かうための具体 26
- 3 「内容」ばかりに着目すると「目的」や「自ら学ぶ」を見失いがち
- 4 あまり着目されない社会科の「学び方」
- 5 学び方に着目した授業づくり〜キーワードは「自己調整」と「単元」〜
- 4 「自己調整」のプロセスと押さえておきたいポイント
- 1 「自己調整」についての前提
- 2 「自己調整」のプロセス
- 3 「自己調整」は場面限定的
- 4 「自己調整」の発達レベル
- 5 本書における「自己調整」
- 5 「社会がわかる」は単元で考える
- 1 「社会がわかる」とは「関係性がわかる」こと
- 2 概念化を促す「社会的事象の見方・考え方」とは
- 3 社会的事象の「見方」とは
- 4 社会的事象の「考え方」とは
- 5 単元レベルでなされる概念的知識の獲得
- 6 単元は願う姿に近づくための「方法」
- 6 社会科の「自己調整」は単元での「学びのプロセス」で考える
- 1 単元を構想することの難しさ
- 2 単元レベルでの学びのプロセス
- 3 教員ではなく「子どもの学びのプロセス」
- 4 子どもが問題解決過程の各段階を使いこなして学習計画を立てる
- 5 学びのプロセスの自覚が自ら学ぶ授業そして「自己調整」へ
- 7 「自己調整」×「単元」学び方を生かして授業をデザインする
- column1 「自己調整」はいつも「方法」?〜目的と方法の関係〜
- column2 見学や体験は強力な情報収集その1〜共通のアンカー〜
- 第U章 社会科「自己調整学習」学び方を生かした単元デザイン
- 1 【見通す】段階:「単元を貫く問い」から始まる「自己調整」
- 1 単元を貫く問いとは
- 2 単元を貫く問いを構想する
- 3 単元を貫く問いの具体
- 4 単元を貫く問いは「単元目標の裏返し」だけでは不十分
- 5 単元を貫く問いが立つ場面〜実践例【見通す】段階@〜
- 6 「自己調整」は予想から:一石四鳥の効果〜実践例【見通す】段階A〜
- 7 ざっくりした学習計画を立てることで「自己調整」の力を大きく育む
- 2 【調べる】段階:子ども一人ひとりに合った調べ方で小さな「自己調整」
- 1 一人ひとりがそれぞれの方法で調べることで小さな「自己調整」
- 2 学級全体で同じ資料を読み取ることは必要か〜一人ひとり違う認知構造〜
- 3 「詰め込み授業」は詰め込めていない
- 4 大事なのは一人ひとりの見取り〜実践例【調べる】段階〜
- 5 動画も情報収集の選択肢〜「刺さる」資料で夢中になる〜
- 3 【整理する】段階:問題解決に向けて絞り込んでいく
- 1 集めた情報から【捉える】ための重要な段階
- 2 情報をつなげ概念化するために「見方」を働かせて【整理する】
- 3 単元の「ゴール」にたどり着くために段々と絞っていく〜実践例【整理する】段階〜
- 4 【捉える】段階:それまでの問題解決を発揮しつつ中心概念に「触れる」でOK
- 1 これまでの学びを存分に発揮し見方・考え方を働かせて【捉える】〜実践例【捉える】段階〜
- 2 「対話」を捉え直す〜話し合いは思考を深める「きっかけ」〜
- 3 全員が単元目標に「触れる」
- 5 【振り返る】段階:まとめて振り返りながら概念化&自分の学びを実感し次の学びの「自己調整」へ
- 1 「まとめ」と「振り返り」
- 2 まとめながら学びを深める〜実践例【振り返る】段階@〜
- 3 「枠」で選択・判断と振り返りを支援
- 4 「どうする」系の問いの結論を出す〜実践例【振り返る】段階A〜
- 5 学びのプロセスを「振り返る」ことで「自己調整」へ
- column3 見学や体験は強力な情報収集その2〜「記号接地」〜
- 第V章 「社会がわかる」そして「自己調整」する単元デザインへ
- 〜学び方を生かした単元統合型授業〜
- 1 よくある単元デザインの問題と改善のヒント
- 1 多くの単元は「具体→結論」型〜実は「社会がわからない」場合も〜
- 2 「仮説→具体」型の方が合っている子
- 3 単元デザインのヒント〜中心概念と具体の結び付き&比較から共通点を見出す〜
- 2 「社会がわかる」そして「自己調整」する単元統合型授業の提案
- column4 「自分で学ぶ」「未来をつくる」に潜む落とし穴〜子どもたちに本当に必要な「学び」とは?〜
- あとがき
はじめに
そもそも,子どもはどのように社会科を学ぶのでしょうか。
日頃,社会科の授業づくりで耳にするのは,次のような言葉たちです。
「教材研究が重要」
「〜を調査して,新しい教材を開発しました」
「社会科は資料が命です」
「どのタイミングで資料を提示するかが大事です」
確かに,社会科における教材は魅力的です。特に小学校では,3・4年生を中心に地域教材を扱うことも多く,教材研究が教員自身の学びになったり,時には教材開発をして授業化したりと,他教科にはあまりないような特徴があります。筆者も,教材研究や教材開発は楽しいと感じます。
筆者は,そんな社会科の授業を子どもが「自ら学ぶ」場にしたいと常々感じています。学習者,そして世の中をつくっていく人としての自立に,少しずつ近づいてほしいからです。何より,自ら学んでいる時間は,時に夢中になれる,楽しい時間だからです。
一方,学習指導要領は改訂され続けても,示された内容を限られた時数の中で学ぶという前提は,基本的には変わっていません。
子どもは一人ひとり異なります。よく,子どもが主体的に学ぶ授業にしましょう,ということを耳にしますが,この言葉,子どもを主語にしてよくよく考えてみると,どうしても不自然さが拭えません。
どれだけ教材研究をしても,授業では同じ内容を同じ学年や学級で扱う以上,結局みんな同じように学んでいることが多い……子どもの学びの自由度はどこにある? 子どもは自ら学べている? と感じることは少なくないように見受けられます。
そんな時,ふと,「そもそも,子どもはどのように社会科を学ぶのか」という疑問が湧いてきました。
社会科の授業をより良くしようとする時,教材研究や資料の工夫をすることが多いように感じます。しかし,視点を変え,そもそも,子どもがどのように学ぶかといった「学び方」を生かした単元デザインをすれば,子どもが自ら学ぶ授業,より良い授業づくりにつながると考えました。
そして,実践,研究,試行錯誤を続けて見えてきたものを,「自己調整学習(自己調整)」「単元」をキーワードに「学び方」としてまとめました。
筆者は大学の研究者でもなければ附属学校の教員でもなく,公立小学校のイチ教員です。そんな筆者が,微力ながら実践や研究をまとめたのが本書です(ご期待に添えなかったらスミマセン)。
本書で述べる授業の考え方や単元デザインは,筆者の拙い実践や研究をまとめたもので,あくまで選択肢の一つに過ぎません。しかし,少しでも子どもが自ら学ぶ授業づくりや授業を楽しくするヒントに,そして,一緒に授業づくりを考えるきっかけになればと思っています。
本書が社会科を楽しく学ぶ一助となれば幸いです。
【本書の目的】
本書は,「自己調整」と「単元」をキーワードに,内容(教材)ではなく方法,つまり,そもそも,子どもはどのように社会科を学ぶのか,という「学び方」に着目して授業をデザインする,子どもが自ら学び,その学びを深めていく社会科の授業づくりを提案し,授業づくり,そして授業そのものを改善していく一助とする。
/加藤 達也
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- 明治図書