- はじめに
- Chapter1 学びの質は指導スキルで大きく変わる
- 1 教育界と医療界を対比する
- 2 指導スキルがないと授業はどうなるか
- 3 「めあて」と「まとめ」はだれのものか
- 4 発表会=対話的な学びではない
- 5 やらせっぱなしの深い学びと振り返り
- Chapter2 算数授業の指導スキル50
- 教材・教具
- 1 きまりを見つける問題をつくるスキル@(数と計算)
- 2 きまりを見つける問題をつくるスキルA(図形)
- 3 日常や社会の事象を算数の教材に変身させるスキル@(測定・変化と関係)
- 4 日常や社会の事象を算数の教材に変身させるスキルA(データの活用)
- 5 子どもの理解を助ける教具づくりのスキル
- 問題提示
- 6 主体的に問題にアプローチさせるスキル@(□にする)
- 7 主体的に問題にアプローチさせるスキルA(一部を隠す)
- 8 主体的に問題にアプローチさせるスキルB(条件不足にする)
- 9 主体的に問題にアプローチさせるスキルC(情報過多にする)
- 10 主体的に問題にアプローチさせるスキルD(オープンエンドにする)
- 11 主体的に問題にアプローチさせるスキルE(問題づくりをさせる)
- 12 全員授業に参加できるようにするスキル@(単純化する)
- 13 全員授業に参加できるようにするスキルA(視覚化する)
- 14 問題への興味・関心を高めるスキル@(ゲーム化する)
- 15 問題への興味・関心を高めるスキルA(計算問題にしかけを仕組む)
- 自力解決
- 16 手が止まっている子どもに考えるきっかけを与えるスキル
- 17 ペア対話(小集団の学び合い)を有効に活用するスキル
- 18 スモールティーチャーを活用するスキル
- 話し合い・発表
- 19 子どもの考えをつなぎながら話し合いを展開するスキル
- 20 苦手な子どもを話し合いに参加させるスキル
- 21 グループ学習を有効に活用するスキル
- 22 ジグソー学習を活用するスキル
- 23 誤答や誤認識を生かすスキル
- 24 発表のハードルを下げるスキル
- 25 発表をアクティブにするツール活用のスキル
- 振り返り・まとめ
- 26 統合・発展につながる振り返りのスキル
- 27 問題解決の過程で行う振り返り・まとめのスキル
- 28 知識・技能を確実に習得させるまとめのスキル
- 29 学習感想を有効に活用するスキル
- アイスブレイク
- 30 授業モードに素早く切り替えるスキル@(低学年)
- 31 授業モードに素早く切り替えるスキルA(中学年)
- 32 授業モードに素早く切り替えるスキルB(高学年)
- 発問
- 33 問題に対する問い(めあて)をもたせるスキル
- 34 意味を考えさせるスキル
- 35 理由や根拠を引き出すスキル
- 36 子ども思考を揺さぶるスキル
- 37 統合的に捉えることを促すスキル
- 38 発展的に考えることを促すスキル
- 板書
- 39 授業の流れをわかりやすく示すスキル
- 40 数学的な見方・考え方を可視化するスキル
- 41 子どもの考えを比較したり,関連づけたりするスキル
- 42 アイテムを効果的に活用するスキル
- ノート指導
- 43 学習内容をすっきり整理させるスキル
- 44 思考の過程をノートに残させるスキル
- 45 計算などのミスを生じにくくさせるスキル
- 46 ノートの点検・評価で意欲を高めるスキル
- 特別支援
- 47 数を数えるのが苦手な子どもへの支援のスキル
- 48 計算が遅い,間違いが多い子どもへの支援のスキル
- 49 文章題の読み取りが苦手な子どもへの支援のスキル
- 50 図形を見る力が弱い子どもへの支援のスキル
はじめに
昨年10月,現在私が勤務している学校で算数の全国大会を実施しました。
1年から6年まで全クラスで計36本の公開授業を行いました。授業の大半は著名な先生方による飛び込みによる授業でしたが,担任は授業者の先生方の要求に応えることができる子どもたちを育てようと,日々の算数授業を一つひとつ丁寧に指導してきました。
指導の際のキーワードの1つは「学び合いの心」です。それにはまず,友だちの発言や考えに共感する心や態度が大切になってきます。研究を深める中で,授業者が「○○さんの気持ちわかるかな?」等の友だちの思いへの共感を促す発問の大事さを再確認し,意識して使う姿が増えてきました。
一見,「学び合いの心」の育成と「発問」という指導スキルは結びつかないように感じる方も多いかもしれません。でも,そうではないのです。指導スキルの1つである「発問」を大事にし,それを積み重ねていくことによって,子どもたちの心は豊かになっていくのです。
また,私の勤務している市では,12月に学力テストを実施します。4月に担任した子どもたちの8〜9か月間の授業への取組が数値となってあらわれるわけです。4月当初は均等に分けられたクラスも,12月の時点でクラス平均4〜5ポイントも差がついてしまうといったことが起きてきます。1日1日,1時間1時間,その1時間の中の質の高い指導スキルの確かな積み重ねの良し悪しが,クラス平均の差となってあらわれるのです。
数値の高いクラスの先生の授業を観れば,質の高い問題提示のスキルによって,子どもたちが主体的に問題に働きかける状況になったり,質の高い話し合い・発表のスキルによって,全員参加の深い学びへと子どもたちを導くことができたりしています。それが1時間ごとに積み重なり,できているクラスとそうでないクラスの差がついていくわけですから,8〜9か月間でクラス平均4〜5ポイント差というのは当然のことなのかもしれません。
よい授業をつくるには,教師自身が自分なりにその効果を実感した質の高い指導スキルを積み重ね,資質・能力を高めていくしかないのです。
そこで今回は,普段から指導スキルの大切さを実感し,常に先進的な実践を提案されている23人の先生が,算数授業で大いに役立つ指導スキルを紹介しています。
Chapter1は「学びの質は指導スキルで大きく変わる」と題して,尾ア正彦先生(関西大学初等部)が執筆しています。指導スキルの大切さを医療界のことにも触れながら,「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」という視点から論じています。
また,Chapter2は「算数授業の指導スキル50」ということで,具体的な指導スキルを「教材・教具」「問題提示」「自力解決」「発問」「板書」など10のジャンルから計50本提案しています。
順番に読む必要はありません。どうぞご自分の課題意識の高いジャンルからページを開いてみてください。課題解決の糸口となる指導スキルが見つかるはずです。
ここに掲載した50の指導スキルは,決して単なる小手先の技術ではなく,「全員の子どもたちに楽しく,わかる,できる授業を提供したい」という授業者の熱い思いのこもったもので,明日からでもすぐにご活用いただけるスキルだと確信をもっておすすめします。きっと今よりも数段よい授業が展開できるはずです。
最後になりましたが,この本を書く機会を与えていただき,また編集にご尽力いただいた明治図書の矢口郁雄氏に心より感謝申し上げます。
2019年3月 /宮本 博規
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- 明治図書
- とても参考になりました。2020/10/2520代・小学校教員
- 一つ一つが具体的でよかった。2020/4/20ギン
- どれも具体的なスキルで参考になった。教科別に出版されているため、その教科にとかした内容になっており、すぐに実践できそうなものばかりであった。2020/3/3020代・小学校教員
- 専門外の教師にもわかりやすい書籍である。2019/5/2650代・大学勤務
- すぐに授業でやってみたいとやる気の起きる内容でした。2019/4/940代・小学校教員