- なぜ今「言語技能」か――まえがきにかえて
- /沼澤 清一
- 1 主語・述語
- 1 主語・述語
- 2 名詞・動詞・形容詞・形容動詞
- 3 複雑な文の組み立て
- 2 助詞
- 1 「や」「も」「は」
- 2 「へ」「を」「が」「で」
- 3 「て」「に」「を」「は」
- 3 修飾語
- 1 たとえる言い方
- 2 修飾語のはたらき
- 3 たとえる言い方
- 4 動詞や形容詞をくわしくすることば
- 5 たとえる言い方
- 4 様子を表すことば
- 1 様子を表すことば
- 2 様子を表すことば
- 5 文末
- 1 文の終わり方
- 2 ことばのつながり
- 3 「れる」「られる」
- 4 名詞で終わる文
- 6 句読点など
- 1 句読点の使い方
- 7 ていねい語
- 1 「である」「です」
- 2 敬語(ていねい語・尊敬語・謙譲語)
- 8 接続語
- 1 接続語
- 9 指示語
- 1 指示語
- 10 ことばの意味
- 1 いろいろな意味をもつことば
- 2 むすびついてできたことば
- 3 気持ちを表すことば
- 4 送りがな
- 〈解答例〉
- 【本書のワークの学年配当表(下巻四〜六学年用)】
なぜ今「言語技能」か――まえがきにかえて
PISAによる世界的学力に評価がされた今、遅ればせながら日本でも読解力を中心とした学習が重視されようとしている。
そんな中、なぜ今「言語技能」か。
世界基準に沿った学力評価に向かう過程で、目の前の評価を無視するわけにはいかない現状がある。
たとえば、平成一九年度の教研式標準学力調査(NRT)で本書の扱う「言語技能」に関する問題は、次のようになっている。
【本書の扱う言語技能に関する問題数/総問題数】
一 年 二 年 三 年 四 年 五 年 六 年
合 計 14/60 12/65 20/65 10/65 14/68 14/72
話すこと・聞くこと 0/13 0/15 4/15 2/17 0/16 4/18
書くこと 5/13 6/14 6/15 1/13 5/16 6/14
読むこと 1/13 1/14 3/14 2/16 3/16 1/16
言語事項 8/21 5/22 7/21 5/19 6/20 3/24
※表中の「言語事項」には、漢字・片仮名などが含まれる。
これを見て、NRTテストの中に位置づけられる言語技能の問題が多いと感じるか、少ないと感じるか、見方はさまざまあると思われる。しかし、本書の扱う言語技能に関する内容に漢字・片仮名などを含めた「言語事項」を加えると、
一 年 二 年 三 年 四 年 五 年 六 年
言語事項 合計 27/60 29/65 34/65 24/65 28/68 35/72
という五〇%前後の数値を示すことに驚かされる。日本の現在の学力観が如実に表れているといえよう。
平成二三年四月一日からは新学習指導要領が全面実施となる。
中央教育審議会答申における国語科の改善の基本方針には、
「言葉のきまりの指導については、系統的に指導するとともに、実際に文章を書いたり読んだりするときなどに役立つよう、指導の改善を図る」
とある。
新学習指導要領の国語科の内容は、これまでの「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の三領域は変わらないまま、[言語事項]が[伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項]に改められた。
[伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項]は、次の(1)と(2)から成っている。
(1) 「ア 伝統的な言語文化に関する事項」
「イ 言葉の特徴やきまりに関する事項」
「ウ 文字に関する事項」
(2) 書写に関する事項
(1)は、各領域の指導を通して指導することと明示されている。
言語事項がより細分化され、明確化され、教科全体で指導することの重要性が述べられている。
この中で、本書の内容は、(1)イに位置づけられる。
漢字や九九などは該当学年の内容をしっかり身に付けさせるよう指導しているが、言語技能にあたっての取り組みは教師によってさまざまである。
教えていて分からなければ仕方がない(本来は、それではおかしいのであるが)。しっかり教えもしないでテストを受けさせることは、教師の責任を果たしていないといえよう。
言語技能をしっかり身に付けさせることは、本来は教師の当然の仕事なのである。教師の理念も大切であるが、現実的に評価を受ける子どもたちに、適切な評価を得られる力を付けることは当然の責務だと考える。
言語技能の向上を図る学習が十分に行われていない大きな理由に次の二点がある。
・授業で扱う時間的な余裕がない。
・まとまったテキストやプリントがない。
単発の問題は、ワークテストに登場し、それをもって指導したような気になっているが、系統だった問題集などは少ない。
本書が生まれた大きな理由は、この二点を補うことにある。
もちろん、言語技能向上は、受験やテストのためだけの学習ではない。該当学年でしっかり定着させることによって、国語の基礎基本が身に付くものである。作文、読解など日本語の根底に言語技能があることは言うまでもない。
言語技能か読解かなどのような極端な二者択一ではなく、どちらも大切な内容である。
言語技能向上のための学習をくり返し行い、暗記を強いることなく、効果的に身に付けさせることはできないものかと考え、本書が作成されることになった。
そうすることによって、ゆっくりとPISA型を意識した授業をすることもできるようになるはずである。
〈本書の特長〉
本書は、言語事項の学習をくり返し行い、暗記を強いることなく、効果的に身に付けさせることができることを願って編集した。
一部を除き、基本、練習、チャレンジの三段階で四ページ構成となっている。
特長1 学年ごとの編成
上巻(一〜三年)・下巻(四〜六年)を、学年ごとの内容に分けて編成した。該当学年の内容を授業で扱う教材に合わせて使用することができる。
特長2 内容ごとの編成
「国語科の指導内容は、系統的・段階的に上の学年につながっていくとともに、螺旋的・反復的に繰り返しながら学習し、能力の定着を図ることを基本としている」(小学校学習指導要領解説 国語編 文部科学省)
学年の内容を確実に定着させるだけでなく、系統性をもって段階的に使用することができる。
@ 定着が図られていない子には、
前学年までの内容を復習させることができる。
また、
A 力のある子には、
次学年の内容を学ばせることができる。
たとえば、二年生の「主語と述語」のワークを学習するにあたって、まず一年生の内容の「なにがどうする」を事前に行ってから活用すれば、理解が図りやすい。
利用にあたっては、一度目は授業で説明を加えながらじっくり行い、あとは宿題や授業の合間の時間を利用して定着を図るなど、子どもの実態に合わせて工夫して活用してほしい。
子どもの実態、教師の方針に合わせて、同一ワークがどのようにも活用できるように願って作成した。
国語科の目標は、
「国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し、伝え合う力を高めるとともに、思考力や想像力及び言語感覚を養い、国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てる」
とある。
言語感覚とは、【言葉の使い方の、正誤・適否・美醜などについての感覚】と明示されている。
知らないことは話せない。
身に付いていない「言語技能」は、「話すこと」や「聞くこと」には使えない。
つまり、言語感覚の基礎基本は、言語技能の上に成り立っているのである。
平成二一年六月 編著者 /沼澤 清一
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- 明治図書