主体的・対話的で深い学びを実現する 中学校国語科教科書教材の発問モデル

主体的・対話的で深い学びを実現する 中学校国語科教科書教材の発問モデル

書評掲載中

主体的・対話的で深いことばの学びにつながる発問・問いとは?

「主体的・対話的で深い学び」は国語科では「主体的・対話的で深いことばの学び」ととらえ、中学校の「読むこと」領域における「主体的・対話的で深い学び」を実現するための発問のあり方についての考え方とともに新教科書教材を含む31教材の発問モデルを詳しく紹介。


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ISBN:
978-4-18-390927-5
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
中学校
仕様:
A5判 176頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年4月1日

目次

もくじの詳細表示

まえがき
第1章 主体的・対話的で深い学びを実現する発問づくりのポイント
1 ことばの世界を楽しむ
2 発問を分類して捉える
3 学び(読み)の過程に即して学習課題・発問を設定する
4 思考力を働かせて作品・文章を捉え直し、読み直すことを促す
5 批判的読み(クリティカル・リーディング)を取り入れる
―例「鰹節―世界に誇る伝統食」(東書二年)
6 文章の形式面に着目して批判的に読む
―例「フロン規制の物語―〈杞憂〉と〈転ばぬ先の杖〉のはざまで」(三省三年)
7 「研究的手続き」を批判的に読む
―例「『言葉』をもつ鳥、シジュウカラ」(光村一年)
8 事例のあり方に着目して批判的に読む
―例「動物園でできること」(三省二年)
9 語り手である主人公「私」のあり方を読む
―例「故郷」(各社三年)
10 語りの構造の特徴を踏まえて読み深める
―例「少年の日の思い出」(各社一年)
11 心情描写が多い特徴や読者の読みの傾向を踏まえる
―例「走れメロス」(各社二年)
12 描写を実感的に捉え、語りの必然性を問う
―例「トロッコ」(東書・三省一年)
第2章 教材別・主体的・対話的で深い学びを実現する教科書教材の発問モデル
説明文の発問モデル
1 オオカミのイメージから常識を疑うことを知ろう
「オオカミを見る目」(東書一年)
2 「感」からオノマトペが人の心情に与えるしくみを理解しよう
「食感のオノマトペ」(三省一年)
3 筆者に代わって結論を書いてみよう
「玄関扉」(三省一年)
4 この一文は必要か? 結論部を吟味しよう
「幻の魚は生きていた」(光村一年)
5 筆者は何をねらったのか? 序論部の「役割」や「効果」について検討しよう
「ニュースの見方を考えよう」(東書一年)
6 地球環境の問題を語ってみよう
「人間は他の星に住むことができるのか」(三省二年)
7 「できない」ことをチカラとキセキに変えられるのか
「見えないチカラとキセキ」(三省二年)
8 論の進め方に注目して読もう
「黄金の扇風機」「サハラ砂漠の茶会」(東書二年)
9 モアイからのメッセージに答えよう
「モアイは語る―地球の未来」(光村二年)
10 資料をよく見て批評の手法を手に入れよう
「君は『最後の晩餐』を知っているか」(光村二年)
11 具体例の順序を吟味して読もう
「間の文化」(三省三年)
12 キーワードを見極め、筆者の主張を読もう
「情報社会を生きる―メディア・リテラシー」(三省三年)
13 反例を考えることで、文章を批判的に読もう
「何のために『働く』のか」(東書三年)
文学の発問モデル
14 三つの「そっと」をつなげて読もう
「さんちき」(東書一年)
15 キキの幸福観から解釈を広げよう
「空中ブランコ乗りのキキ」(三省一年)
16 エーミールは何者か? 登場人物の設定に迫る読みを楽しもう
「少年の日の思い出」(各社一年)
17 登場人物同士の関係に注目して読もう
「坊ちゃん」(光村一年、東書・教出二年、三省三年)
18 土工はいかなる存在か? 登場人物の設定に迫る読みを楽しもう
「トロッコ」(東書・三省一年)
19 離れたところにいるぐうちゃんと話そう
「アイスプラネット」(光村二年)
20 「努力は報われるのか」討論しよう
「卒業ホームラン」(東書二年)
21 「えびフライ」の裏側を探ろう
「盆土産」(光村二年)
22 討論によってメロスの人柄に迫ろう
「走れメロス」(各社二年)
23 朗読・演出によって詩を捉えよう
「わたしが一番きれいだったとき」(東書二年)
24 動作が表す意味にこだわって読もう
「握手」(光村・三省三年)
25 登場人物の行動にこだわって読もう
「百科事典少女」(東書三年)
26 話者や視点に注意して読もう
「故郷」(各社三年)
27 構成や表現の差異による印象や解釈の違いに注目して読もう
「初恋」(光村・教出三年)
28 Jポップと比較して読もう
「レモン哀歌」(東書三年)
古典の発問モデル
29 異界性と人間性に着目し、おもしろさに触れよう
「竹取物語」(各社一年)
30 武士の心情の「複雑さ」を読み取ろう
「敦盛の最期」(三省・教出二年)
31 「対比」に注目して読もう
「おくのほそ道」(各社三年)
執筆者一覧

まえがき

 中学校では教科書も新しくなり、「主体的・対話的で深い学び」を目指す教育課程が本格実施となった。本書は、読むこと領域において、この「主体的・対話的で深い学び」を実現するための発問のあり方について、その考え方と実践例を示したものである。

 「主体的・対話的で深い学び」は、国語科では「主体的・対話的で深いことばの学び」ということになる。読むことで言うと、まず「主体的」ということは「読んでみよう」とか「読んでみたい」という読むことへの志向性、姿勢・態度である。趣味としての読書であろうと、目的的な読書であろうと、自ら本を手に取って(またはその他のメディアを探索して)読む態勢を取るということである。

 すでにこうした態度が身についている生徒もいる。しかし、そうでない生徒には「読むことも、まあおもしろいな」「読んでみるか」と思わせる必要がある。そのためには、楽しい読むことの授業を経験させることが一番である。生徒にすれば、はじめは小難しさはつきまとうだろう。敬遠しがちになるだろう。それでもちょっとした楽しさのきっかけを与えてやり、読むことへの入り口に立たせてやることができればと思う。これまで知らなかった読みの楽しさ、おもしろさに触れることができれば、「それじゃあ、次も読んでみるか」というふうになることが期待できる。そうした思いが連続すれば、主体的な読みの態度は形成されていく。

 そのためには、文学や説明的文章・評論の読み方、学び方を習得させることが必要である。「小説や詩は、こういうところに目をつけると、こんなふうに読めるのか。味わい深くなるのか」「評論文は、納得できないことについては率直に自分の考えを表明してもよいのか」―こうした読むことの経験は、そんなふうに作品・文章に向き合うよう教師が問いかけ、働きかけてやらねば得られない。単純に筋を追って、確認することに終始する読むことの授業しか受けていない生徒に、主体的に読む行為を期待することは難しい。良質な問いを受け、解決する中でこそ、新たな読み方は習得される。

 「対話的」ということでは、作品・文章としっかり向き合わせ、そのよさ(そして不十分さ)を発見させたい。「作品・文章との対話」ということである。表面的な内容、事柄は、読んで理解できるかもしれない。辞書的な意味もつかめるだろう。しかし、それは読むことの入り口に立ったということであって、当該作品・文章の本当の価値を捉えたことにはならない。そして、読むことによって自分が成長したということにもならない。再読し、読み直し、ざっと読んだだけでは気づかなかった作品・文章のおもしろさ、価値、問題点などに意識が向いていくような読み方を体験させたい。

 作品・文章に自ら問いかけ、自分なりの答えを見つけ、再度問いかけていく。そうした読みを現出させるには、先にも述べたように教師の良質の問い(発問)が必要である。作品・文章の特徴、特性に即した発問を受けて読み進めるうちに、その問い(発問)は内面化され、教師から問われなくても、自ら自身に問いかけ読んでいけるようになる。自立して作品・文章と対話ができるようになる。それは、そのまま「深い読み」となる。

 こうした「作品・文章との対話」は、自分自身の見方・考え方を問い直すことにつながる。社会を含めた外界との関わりの中で、自身のあり方を見つめ直す機会となる。「自己との対話」である。

 「仲間との対話」は、「作品・文章との対話」「自己との対話」を推進し、充実させるための活性剤の役割を果たすことになる。自分とは異なった見方・考え方をもった複数の他者との率直な読みの交流は、結局は一面的であった自分の読みを対象化させ、新たな読みを創出する格好の場となる。読みの多様性に気づき、それを認めることのできる柔軟な態度の醸成が、「深いことばの学び」を産出することになる。

 こうした考え方を踏まえて、国語科読むことにおける「主体的・対話的で深い学び」を、本書(第1章)では次のように定義した。

  「教材文にあることば・表現を手がかりに、作品・文章の内容に深く、多角的に入り込み、作品世界、筆者の考えに対する自分の思い・考えを豊かに、強く、つくりあげる学び」

 自力で、そして仲間と作品・文章を読むことは、新たな世界を発見し、新たな自分をつくる、すてきで楽しい営みなのだ、そう生徒が感得できる授業が開発されることを願っての定義でもある。そのためには、まずは教師の発する問い(発問)のあり方が重要である。そうした認識で本書を編んだ。

 本書は、『教育科学国語教育』誌(明治図書)の二〇二〇年度の連載「主体的・対話的で深い学びを実現する学習課題&発問モデル」で掲載された論考がもとになっている。本書に所収するに際して、それぞれに加除・修正を施した。また一部の論考は、新たに書き下ろした。雑誌連載の貴重な場と、そこでの原稿を精選し単行本として刊行する機会を与えていただいたことに、記して感謝申し上げる。


  二〇二一(令和三)年七月   兵庫教育大学大学院教授 /吉川 芳則

著者紹介

吉川 芳則(きっかわ よしのり)著書を検索»

兵庫教育大学大学院教授。博士(学校教育学)。

兵庫県生まれ。神戸大学教育学部卒業。兵庫県公立小学校教諭,兵庫教育大学附属小学校教諭(この間に兵庫教育大学大学院修士課程言語系コース修了),兵庫県教育委員会事務局指導主事を経て現職。全国大学国語教育学会(理事),日本国語教育学会,日本読書学会,日本教育方法学会等会員。国語教育探究の会代表。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • 理論編と実践編の関連付けがより明確でわかりやすく提示してもらえると読みやすいと思いました。
      2021/12/130代・私学教員
    • 大変勉強になりました。精進します。
      2021/10/130代・中学校教諭
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