- はじめに
- 1 指導と評価の一体化を目指す!高校歴史「PDCA」授業デザイン
- ―つまずきから授業改善に向かう3つのアプローチ―
- 1 はじめに
- 2 第1のアプローチ
- ―アクション・リサーチを踏まえた事例的研究―
- 3 第2のアプローチ
- ―PDCAサイクルを踏まえた観点別評価の歴史授業デザイン―
- 4 第3のアプローチ
- ―観点別評価を踏まえたつまずきの読みとき―
- 5 おわりに
- ―つまずきから授業改善に向かう3つのアプローチ―
- 2 つまずきから授業を変える!高校歴史「PDCA」授業&評価モデル
- 〈古代〉
- CASE1 2年 ハンムラビ法典には,どのような意図があったのだろうか
- ―「目には目を」だけではなく―
- 世界史探究 神権政治
- CASE2 2年 諸子百家から考える古代中国
- ―あなたが春秋戦国時代の諸侯なら,選ぶ思想家は誰か―
- 世界史探究 諸子百家
- CASE3 2年 摂関政治における藤原氏の権力の源泉は何であったか
- ―摂政・関白と外戚の意義を考える―
- 日本史探究 摂関政治
- 〈中世〉
- CASE4 2年 秦檜と岳飛,あなたはどちらを評価するか
- ―歴史家の目で歴史事象を捉えてみる―
- 世界史探究 中国と北方民族の活動
- CASE5 2年 王朝の盛衰を法則化できるのか
- ―イブン=ハルドゥーン『歴史序説』から読みとく歴史の世界―
- 世界史探究 イスラーム
- CASE6 2年 中世ヨーロッパに国家はあるのか
- ―国家・国民のはじまりを考える―
- 世界史探究 封建社会
- CASE7 2年 十字軍に対する疑問を問いとして表現しよう
- ―十字軍を多様な視点で読みとく―
- 世界史探究 十字軍
- CASE8 2年 古代から中世の土地支配はどのように展開したのか
- ―土地制度をどう教えるか―
- 日本史探究 荘園制
- CASE9 2年 鎌倉幕府はどのような政権か
- ―源頼朝と御家人の主従関係から切り込む―
- 日本史探究 武家政権
- CASE10 2年 中世の仏教はどのような役割を果たしていたのだろうか
- ―「自力救済」の歴史的概念化―
- 日本史探究 中世の社会
- 〈近世〉
- CASE11 3年 日本の鉄砲は世界に何をもたらしたのか
- ―議論の構造で朝鮮出兵の影響を考える―
- 日本史探究・世界史探究 軍事革命
- CASE12 3年 ルネサンスって何? 自分の言葉で定義しよう
- ―歴史的事象を自分に引き寄せるための試み―
- 世界史探究 ルネサンス
- CASE13 1・3年 『コロンブス航海誌』は真実を語っているのか
- ―資料・過去・歴史の関係について―
- 歴史総合・世界史探究 大航海時代
- CASE14 3年 新たな交流が歴史をどのように動かしたのだろうか
- ―アイルランドにおけるジャガイモの普及を通して―
- 世界史探究 大航海時代
- CASE15 3年 絶対王政下に国民は存在したのか
- ―国家・国民について考える―
- 世界史探究 絶対王政
- CASE16 3年 江戸幕府はどのように人々を支配していたのか
- ―江戸幕府の法や制度による支配秩序の形成と身分制―
- 日本史探究 幕藩体制
- CASE17 3年 なぜ江戸地廻りの産業は発展したのか
- ―名産から学ぶ産業・流通・金融・政治―
- 日本史探究 近世の産業
- CASE18 3年 庶民文化とはどのような文化か
- ―化政文化を庶民を視点に読みとく―
- 日本史探究 近世の文化
- 〈近代〉
- CASE19 1・3年 産業革命は人々の生活や社会をどのように変化させたのか
- ―シミュレーションによる深い学び―
- 歴史総合・世界史探究 産業革命
- CASE20 1・3年 なぜ条約改正に反対する運動が起こったのだろうか
- ―明治の政治・外交・文化を総合的に理解する―
- 歴史総合・日本史探究 ナショナリズム
- CASE21 1・3年 日露戦争を歴史の転換点として評価しよう
- ―複数の資料の考察を踏まえた多面的・多角的な評価の試み―
- 歴史総合・世界史探究 帝国主義
- CASE22 1・3年 帝国主義とアジアの民族運動
- ―安重根の『東洋平和論』を考察する―
- 歴史総合・世界史探究 帝国主義
- CASE23 1・3年 パリ講和会議において戦勝国は何を求めたのか
- ―戦勝国・日本の主張を軸にして―
- 歴史総合・日本史探究 第一次世界大戦
- CASE24 1・3年 イタリアのエチオピア侵攻はどうすれば止められたのだろうか
- ―考察から構想へ―
- 歴史総合・世界史探究 国際連盟
- CASE25 1・3年 ナチスは「合法的」に政権をとったといえるのか
- ―ジグソー法を用い協働して学ぶ―
- 歴史総合・世界史探究 ファシズム
- CASE26 1・3年 チェンバレン首相の宥和政策を評価してみよう
- ―現代史の転換点を批判的に読みとく―
- 歴史総合・世界史探究 第二次世界大戦
- 〈現代〉
- CASE27 1・3年 55年体制とはどのような政治体制だったのだろうか
- ―冷戦時代の先進国の政治動向を読みとく―
- 歴史総合・日本史探究 先進国の政治動向
- CASE28 1・3年 定時制の生徒たちは学校に何を求めたのか
- ―資料から当時の高校生の生活を考察する―
- 歴史総合・日本史探究 高度経済成長
- CASE29 1・3年 紛争はその後の社会にどのような影響を与えるか
- ―ルワンダの投票率を視点にして―
- 歴史総合・世界史探究 国際紛争
- CASE30 1・3年 文化財はどこにあるべきか
- ―文化財返還要求の解決を考察する―
- 歴史総合・世界史探究 ポスト植民地主義
- おわりに
はじめに
新学習指導要領は,2022年度から年次進行により高等学校で本格実施となり,完結します。この間,「板書型」「知識教授型」の授業が中心であった高等学校でも「討論型」「議論型」「対話型」「ペア・トーク型」など,児童・生徒の「アクティブ・ラーニング」を通した「深い学び」の実現を目指す授業が展開されています。
しかし,授業を行っていく中で,生徒が取り組む学習課題に対して,教師が想定していない「つまずき」,@「わかっているつもりでも正確にはわかっていない」,A「『生徒の思い込み』でわかっていない」,B「解決策を考える際に,机上の空論を主張する生徒がいる」,C「そもそも『表面』的理解に止まりやすく,『深い』理解に行き着きにくい」等の認識面での「つまずき」,D他所の人の立場・状況を想像できない(地理),歴史上の事柄・事柄の意味を想像できない(歴史),今の自分の立場から離れることができない(公民)ためにバランスのよい検討ができない,E「自己責任論」等の「道徳的な判断規準」に傾斜したり(公民),F「『問題』を問題として意識できな」かったり(公民),といったような判断面での「つまずき」をし,その「修復」に時間を要したり,生徒同士の議論が思わぬ展開に進むことで,想定された授業目標が達成できていない授業が散見されるようになりました。
高校歴史の場合,上述したつまずきは,まず,史資料の読解場面において生じることが多くなっています。個人での読みときが難しい場合には,複数人で対話的に試みる場合もありますが,つまずきが解消されることは少ない状況です。こうした歴史授業におけるつまずきは,「討論型」「議論型」等の授業実践だけでなく,「深い」学びの実現も困難にします。また,高等学校では,その評価の方法が「ペーパーテスト一辺倒」だったこともあり,「討論型」「議論型」「対話型」の授業の評価のあり方については,今後の検討課題となっています。
以上の問題意識から,本書では,生徒の「つまずき」から授業を変えるといった視点で授業及び評価のプランを提言します。そのため,史資料を多面的・多角的に考察する,あるいは,歴史に見られる課題の解決を構想する授業実践がより求められ,かつ,評価方法について十分な検討がなされてこなかった高等学校の歴史授業について検討します。本書を通じて,高等学校において,「討論型」「議論型」「対話型」の授業実践がさらに充実し,かつ,高等学校において「指導と評価の一体化」が実現できれば幸いです。
2022年7月 /橋本 康弘・宮本 英征
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- 明治図書
- 高校の実践も把握できてよかった。2023/2/2620代・中学校教員