- はじめに
- 1 指導と評価の一体化を目指す!高校地理「PDCA」授業デザイン
- ―つまずきから授業を変える!―
- 1 はじめに ―なぜ,今,指導と評価の一体化なのか―
- 2 なぜ,「PDCA」授業デザインなのか
- 3 「PDCA」授業デザインの指導と評価の一体化の方略
- 4 おわりに ―つまずきによる授業改善の見える化―
- 2 つまずきから授業を変える!高校地理「PDCA」授業&評価モデル
- CASE1 1年 身の回りの地図を集めよう!
- 地理総合 地図とGISの活用:地図
- CASE2 1年 GISでどんなことができるのか
- 地理総合 地図とGISの活用:地理情報システム
- CASE3 1年 主食や食べ方の背景を考えて自他の文化を尊重する
- 地理総合 生活文化の多様性と国際理解
- CASE4 1年 ムスリムの行動様式と自己の価値観を照らし合わせる
- 地理総合 生活文化の多様性と国際理解
- CASE5 1年 地球温暖化の解決に向けた国際協力の吟味
- 地理総合 地球的課題:地球環境問題
- CASE6 1年 再生可能エネルギーと新たな資源・エネルギーについて考える
- 地理総合 地球的課題:資源・エネルギー問題
- CASE7 1年 世界および日本の人口の今後と新たな人口問題について考える
- 地理総合 地球的課題:人口問題
- CASE8 1年 食料問題に対して,国際社会はどのような取り組みをしているのだろうか
- 地理総合 地球的課題:食料問題
- CASE9 1年 都市の人口集中にともなう課題
- 地理総合 地球的課題:居住・都市問題
- CASE10 1年 地球的課題の解決にはどのような国際協力が必要なのだろうか
- 地理総合 国際協力
- CASE11 1年 どこに避難する? 地形と防災の学習をいざという時の行動に結びつける
- 地理総合 防災
- CASE12 1年 フィールドワークで考察する生活圏の課題
- 地理総合 生活圏の調査
- CASE13 2年 時間・空間スケールの相違を相対化する地形学習
- 地理探究 自然環境:地形
- CASE14 2年 砂漠化は,どこで起きているか。どのような対策が考えられるか
- 地理探究 自然環境:気候
- CASE15 2年 環境学的アプローチによる生態系の広がりを捉える学習
- 地理探究 自然環境:生態系
- CASE16 2年 とうもろこしの国際価格が変動することによって,どのようなことが起きるか
- 地理探究 資源・産業:農業
- CASE17 2年 どのような場所に工場をつくるのが効率がよいか
- 地理探究 資源・産業:工業
- CASE18 2年 なぜ国によって交通機関の利用割合が違うのだろうか
- 地理探究 交通・通信:交通
- CASE19 2年 世界中の人たちがインターネットにアクセスできる社会の実現のためには
- 地理探究 交通・通信:通信
- CASE20 2年 なぜ,A国は首都の移転を計画しているのか
- 地理探究 人口,都市・村落
- CASE21 2年 なぜ世界各地で民族的な対立や紛争が起こるのか
- 地理探究 民族・宗教
- CASE22 2年 世界は多様な地理的条件によって,様々に区分できる
- 地理探究 現代世界の地域区分
- CASE23 3年 アメリカの農業が「適地適作」というのは本当なのか
- 地理探究 現代世界の諸地域:アメリカ
- CASE24 3年 中国では一人っ子政策をやめたのに,なぜ,出生率が上がらないのだろう
- 地理探究 現代世界の諸地域:中国
- CASE25 3年 インド地誌を様々な文化や急速な経済成長に着目して捉える
- 地理探究 現代世界の諸地域:インド
- CASE26 3年 ヨーロッパの工業はどのように発達し,どのように変化しているのか
- 地理探究 現代世界の諸地域:ヨーロッパ
- CASE27 3年 アフリカ社会の課題と可能性
- 地理探究 現代世界の諸地域:アフリカ
- CASE28 3年 アマゾンの森林破壊の責任は,誰にあるのだろうか
- 地理探究 現代世界の諸地域:南アメリカ
- CASE29 3年 オーストラリアは資源が豊富なのに,なぜ工業があまり発展していないのか
- 地理探究 現代世界の諸地域:オーストラリア
- CASE30 3年 どうすれば持続可能な社会の担い手は自分だと気づくのだろうか
- 地理探究 持続可能な国土像の探究
- おわりに
はじめに
新学習指導要領は,2022年度から年次進行により高等学校で本格実施となり,完結します。この間,「板書型」「知識教授型」の授業が中心であった高等学校でも「討論型」「議論型」「対話型」「ペア・トーク型」など,児童・生徒の「アクティブ・ラーニング」を通した「深い学び」の実現を目指す授業が展開されています。
しかし,授業を行っていく中で,生徒が取り組む学習課題に対して,教師が想定していない「つまずき」,@「わかっているつもりでも正確にはわかっていない」,A「『生徒の思い込み』でわかっていない」,B「解決策を考える際に,机上の空論を主張する生徒がいる」,C「そもそも『表面』的理解に止まりやすく,『深い』理解に行き着きにくい」等の認識面での「つまずき」,D他所の人の立場・状況を想像できない(地理),歴史上の事柄・事柄の意味を想像できない(歴史),今の自分の立場から離れることができない(公民)ためにバランスのよい検討ができない,E「自己責任論」等の「道徳的な判断規準」に傾斜したり(公民),F「『問題』を問題として意識できな」かったり(公民),といったような判断面での「つまずき」をし,その「修復」に時間を要したり,生徒同士の議論が思わぬ展開に進むことで,想定された授業目標が達成できていない授業が散見されるようになりました。
高校地理の場合,生徒の「つまずき」は,地図や統計などの諸資料に関わる場面で多くなっています。それは,問いの発見や興味・関心を高める際のつまずき,読み取りの技能に関わるつまずき,一面的・ステレオタイプ的な考察や表面的な現実味のない構想などとなって現れます。つまり,「討論型」「議論型」「対話型」等の授業を実践しても,「深い」学びが実現できていないのです。また,高等学校では,その評価の方法が「ペーパーテスト一辺倒」だったこともあり,「討論型」「議論型」「対話型」等の授業の評価のあり方については,今後の検討課題となっています。
以上の問題意識から,本書では,生徒の「つまずき」から授業を変えるといった視点で授業及び評価のプランを提言します。観点別評価が導入され,「指導と評価の一体化」のもと形成的評価が求められている中で,実践上の具体的な生徒(教師)のつまずきとその対処例を示すことで,「地理総合」や「地理探究」を担当する先生方だけでなく,特に,若い先生,地理の授業を苦手とする先生方の授業開発や授業改善が図られ,生徒(教師)のつまずきが解消され,ひいては学力向上に資する真正な授業実践と形成的評価の一助となることを期待しています。
本書を通じて,高等学校において,「討論型」「議論型」「対話型」等の授業実践がさらに充実し,かつ,高等学校において「指導と評価の一体化」が実現できれば幸いです。
2022年7月 /橋本 康弘・中本 和彦
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- 明治図書
- 高校の実践も把握できてよかった。2023/2/2620代・中学校教員