- まえがき
- I 問題作り学習をどう進めていったらよいか
- 一 問題作り学習はいかにして生まれたか
- 二 問題作り学習における読みの主体性の確立
- 三 学習問題の設定
- 四 問題の追求・解決
- 五 問題作り学習の問題点
- U 問題作り学習の学年的展開
- 一 問題作り学習入門
- 1 一年生でもできる問題作り
- 2 先生ごっこの楽しさ
- 3 問題の程度と範囲
- 二 問題作り学習の発展
- 1 二・三年生の問題作り学習
- 2 説明文における問題作り
- 3 問題作り学習に生きるノート
- 三 問題作り学習の充実
- 1 高学年の問題作り学習
- 2 問題を見つける学習
- 3 問題を発表し、話し合う学習
- 4 確かめの学習
- V ジャンル別問題作り学習の試み
- 〈物語教材〉
- 一 一年生でもできる問題作り学習「大きなかぶ」の指導
- ・「初発の感想をもとに問題を作り、学習計画を立てる」学習
- ・「ねずみが加わって、かぶが抜けた時の登場人物の様子や気持ち」の学習
- 二 豊かな読みを重視した「お手紙」の問題作り学習
- ・学習問題作りの方法
- ・「お手紙をはじめてもらったがまくんは、どんな気持ちだったか」の詳しい読み取りの授業
- 三 子どもの意欲的な読み深めを重視した「飛べあげはちょう」の問題作り学習
- ・問題作り学習の方法
- ・「あげはちょうが羽化し、飛び立つ場面」の授業の実際
- 四 共通問題を練りあげてすすめる「大造じいさんとがん」の問題作り学習
- ・問題作り学習の具体的な過程
- ・「おとりのがんを使った計略で大造じいさんの高まりゆく心情を、心理描写、情景描写を手がかりに深く読み取る」授業
- 五 自問自答から問題作りを進める「だれも知らない」の指導
- ・教材と指導計画
- ・自問自答から学級全体の問題へと発展する授業の展開
- 〈説明文教材〉
- 六 「人間とチンパンジー」における問題作り学習
- ・題名読みの実際
- ・「題名読みや一読後の感想や教科書をもとに問題文を作り、それをもとに解決していく」授業の実際
- 七 目をかがやかせて取り組んだ「心のはたらき」の授業
- ・指導計画
- ・「『ねむりについて』を読み、学習問題を作り、学習計画を立て、ねむりの量をグラフと関連させて読み取り、まとめる」学習
- 八 文章数直線を追って学習問題を作る「さびしい地球人」の授業
- ・文章数直線
- ・「自問自答と学習問題(@なぜ手紙を出したかAなぜ、さびしいと言っているのか)で解決に導く」学習
- 〈伝記教材〉
- 九 人物の生き方・考え方を共感と感動をもって読み深める問題作り「田中正造」の授業
- ・全体計画と本時に至るまでの主な学習経過
- ・「議員をやめた正造の次の行動と政府の対応、を叙述に即して読み取り、感想をもつ」授業
- W 問題設定から解決まで―各校における実践研究の歩み
- 一 自ら求める国語の授業づくり
- 結城市立絹川小学校
- ・「大きなかぶ」「大きなしらかば」
- 二 各自の問題意識を大切にして意欲的な読みをめざす
- 宇都宮大学教育学部附属小学校
- ・「野の馬」―問題を子どもの言葉で考えさせ、授業に位置づける
- 三 問題の発見・設定から解決まで
- 取手市立白山小学校
- ・「いちごつみ」−みんなで作った問題から気持ちや様子を読み取る
- 四 文学文教材における問題設定から解決まで
- 鹿児島市立西紫原小学校
- ・「わらぐつの中の神様」―問題解決のための一時間の授業事例
- 五 説明文教材における問題設定から問題追求まで
- 茨城県牛久町立奥野小学校
- ・「たんぽぽのちえ」―初発の感想をもとに問題作り、学習計画を立てる
- 六 自己評価力を育てる問題作り学習の実践
- 白河市立白河第一小学校
- ・「わらぐつの中の神様」―ノートを活用して学習の深化、変容を図る
- X 問題作り学習と学級経営
- 一 教室環境づくり
- 二 好ましい言語環境づくり
- 三 子ども相互の信頼
まえがき
学校の中心は、なんといっても授業である。そして、国語の授業は授業のなかの授業である。というのは、時間数が他教科よりも多いとか、担任はすべて国語の授業をするというだけではない。どの授業もすべて「ことば」を通して行われるが、国語の授業はその基礎基本を養う、大事な役割をになっているからである。子どもたちは、ことばによって思考し、ことばによって理解し、伝達する能力を身につける。
したがって、国語の授業が楽しいかどうか、充実感がもてるかどうか―それによって、子どもにとっての「学校」が決まるといっても過言ではない。
ところが、最近「国語の授業がおもしろくない」とか「国語ぎらいな子が多い」などの声を聞く。一、二年生ではそうでもないが、中学年から高学年になるにつれて、国語ぎらいが増えるという。これは由々しい問題である。
国語の授業は、もともと楽しいものであり魅力にみちた学習であるが、それが楽しくない、おもしろくないというのは、教師のほうで子どもを真に学べなくしている何かがあるのではないか。謙虚に反省してみる必要がある。
ア 子どもがひとりで考えられるのに、教師が先回りして教えてしまう。
イ ある程度時間をかければ解決できることを、時間を気にするあまり教師の一方的な説明ですませる。
ウ 教師が先に正答をもっていて子どもに発問し、正答以外の発言や反対の意見を極端にきらう。
エ 教師用指導書に忠実な、ワンパターンの授業が多く、子どもをハッスルさせることが少ない。
言うまでもなく、授業の主役は子どもである。能力の違う子どもの一人ひとりが、意欲をもって進んで学習に参加するように仕向けることが教師の仕事である。それには「子どもの側に立つ授業」を、子どもと教師の協力で作っていかなければならない。
子どもの側に立つ授業の一つの方法として、いま「学習課題」(学習問題)による授業が現場で実践されている。学習課題とは学習のめあてとなるものであるが、従来のように教師のほうから一方的に、天下り式に与えられるのではなしに、学び手である子どもサイドで具体的な学習課題を決めることが多くなった。これは大きな進展である。
なんといっても、子ども自体から出てきた問題には力がある。教師からのそれよりも親近感がある。かれらが自分の学習として真剣に取り組み、苦労してそこから得られた解決のよろこびを感じ取るであろう。それが学習への自信となり、国語学習を「楽しい」ものにするはずである。
とはいえ、子どもは子どもである。文章のすみずみまで読み取ることができないかもしれない。完璧な学習を子どもに望むことは無理であろう。学習課題といい、あるいは個々の具体的な問題作りといい、教師が手をこまねいて見ているわけにはいかない。そこには、一人ひとりに合った個別指導が必要であり、また一斉指導による授業の効率化も図られなければならない。
「問題作り学習」は、そのおおもとは子どもの主体性を育てる学習である。時間がかかるという壁は、子どもと教師の努力、工夫によって取り払わなければならない。
本書は、そうした考えのもとにそれぞれの現場で試行した実践の記録である。読者の方々のご批判とご教示を切にお願いしたい。
一九八〇年一二月 /編著者
国語授業が流れる1冊だと思います。