「話すこと・聞くこと」の習熟度別指導ステップワーク集 中学年編

「話すこと・聞くこと」の習熟度別指導ステップワーク集 中学年編

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多様な学び方を織り込んだワークで話す・聞くの力を養成する。

聴解作業を「話し言葉教育」のシステムに位置づけ、@技能・能力コース、A興味・関心コース、B補充・発展的コースなどステップワークを多数集録した。特に中学年の話す・聞くことの実態をふまえ、中学年の習熟度別指導、基礎・基本・統合発信力の系統的指導を示す。


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ISBN:
4-18-373917-9
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小学校
仕様:
B5判 144頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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序  章 教育の究極のねらいは習熟度別達成で個を生かすことである /瀬川 榮志
まえがき 聴解作業を話し言葉教育のシステムに位置づける指導を /平田 信章
第一章 「話す・聞くこと」の習熟度別指導と到達度の螺旋的系統表
1 中学年の「話す・聞くこと」の実態
2 中学年の習熟度別指導
3 行動学習を導入したステップワーク教材例
第二章 「話す・聞くこと」の到達度の螺旋的系統表
1 螺旋的系統表作成の意図
2 基礎・基本・統合発信力の系統的指導例
第三章 「話す・聞くこと」の習熟度別系統表
1 「基礎・基本・統合発信力」の系統表を新視点から整理する
2 「話す・聞くこと」領域における習熟度別指導系統表
第四章 技能・能力コース
■基礎的技能の習熟度十二級‥その場の状況に応じた適切な音量で話すことができる
『知ってほしいな わたしのこと』(三年)
■基本的能力の習熟度十一級‥伝えたいことを選び、要点がわかるように話すことができる
『自分のことをしょうかいしよう』(三年)
■基本的能力の習熟度十級‥筋道だてて、話の要点を聞き取ることができる
『聞き取りメモを取りながら聞こう』(三年)
■基本的能力の習熟度八級‥互いの考えや話題に沿って、進んで話し合うことができる
『名前をつけよう』(三年)
■統合発信力の習熟度十二級‥自分にとって興味のある言語情報を進んで選び、話すときに役立てることができる
『わたしたちの町のひみつを見つけよう』(三年)
■基礎的技能の習熟度五級‥その場の状況や目的に応じた適切な速さで話すことができる
『楽しいスピーチをしよう』(四年)
■基本的能力の習熟度五級‥伝えたいことを選び、自分の考え方がわかるように話すことができる
『知らせたい、あんなことこんなこと』(四年)
■基本的能力の習熟度四級‥筋道だてて適切に聞き、まとめることができる
『わたしはレポーター』(四年)
■基本的能力の習熟度二級‥互いの考え方の共通点や相違点を考えながら、進んで話し合うことができる
『「みんなで遊ぼう集会」を開こう』(四年)
■統合発信力の習熟度五級‥言語情報の中心が明確になるように組み立てることができる
『「くらしの百科」の時間です』(四年)
第五章 興味・関心コース
■基礎的技能の習熟度九級‥その場の状況に応じた適切な速さで話しているかを聞き取ることができる
『あの子はどこに?』(三年)
■統合発信力の習熟度十級‥言語情報の要点と細部との関係を考えながら聞いたり読んだりすることができる
『要点たんけんたい』(三年)
■基礎的技能の習熟度三級‥その場の状況や目的に応じた適切な速さで話しているか、メモを取って聞くことができる
『電話で伝え合おう』(四年)
■統合発信力の習熟度四級‥情報の事実と情報の感想と意見とを区別して聞いたり書いたりすることができる
『「伝え合う」ということ』(四年)
第六章 補充・発展的コース
■基礎的技能の習熟度八級‥丁寧な話し方と普通の話し方をどんなときに使い分けるのかを考えて話すことができる
『ていねいな言い方 ふつうの言い方』(三年)
■統合発信力の習熟度七級‥しっかり聞いて、字・絵などをパソコンに入力することができる
『パソコンでワープロ入力をしよう』(三年)
■基礎的技能の習熟度二級‥ローマ字表記を声に出して読み、話し慣れることができる
『ローマ字に親しもう』(四年)
■統合発信力の習熟度二級‥考えを明確にするため、理由や根拠をあげて話し合うことができる
『学級の行事について』(四年)
あとがき /中津 充

序章

   教育の究極のねらいは習熟度別達成で個を生かすことである

                  中京女子大学名誉教授 /瀬川 榮志


 国語科における習熟度別指導とは、一人一人の子どもが国語学力としての基礎・基本・統合発信力の習熟度に応じて、きめ細かで最適な指導を受けられることを徹底することである。

 学習者の国語学力を的確に測定し、それぞれの達成状況を確実に把握して、学習における遅れやつまずきを解消することはもちろん、習得すべき学力を完全に習熟し自信をもつまで指導することである。

 また、習熟という語の意味は、国語科で習得すべき知識や技能・能力を身体に浸透・同化させることである。要するに「話す・聞く」「読む」「書く」に関わる知識・技能・能力が関連・統合され、学習者が国語学力を完全習得した状態であるとも言える。すなわち、目的・必要場面に応じて「生きて働く国語力」を一人一人の能力・個性・特性で駆使・運用する「価値ある言語行動力」の完全習熟であると定義したいのである。完全習熟の段階で、それぞれの子どもを真の学力へと到達させることが、教育の究極のねらいであり、国語学力の習熟度別達成で個を生かす国語科教育の究極の目標に連動する。


 「価値ある言語行動」とは、人間が人間として「生きる力」を支える「人間関係力」で一貫した言語行為のことである。このような「価値ある言語行動」を駆使し、人間形成に寄与するためには、「生きて働く国語力」を高めることが前提となる。

 他教科の学習はもちろん、総合的な学習の時間や日常の生活に「生きて働く国語力」を波及・応用することによって、国語科教育の機能は明確になり、役割を果たすことができる。従って、「習熟度別指導」を円滑に実施するには、国語科教育で完全習得しなければならない「基礎的技能・基本的能力・統合発信力」を分析・統合・精選し、到達度を明確にして「習熟度別指導」を徹底する必要がある。この理念や理論を具現化するには、学習指導要領に示された目標や内容を分析・精選し、螺旋的系統によって「国語科教育を体系化」することが重要である。加えて学習指導要領に示された内容の基礎・基本の技能・能力を分析し組織化して、単元や一単位時間をどのように展開するかの実践研究を経ないと「習熟度別指導」は成立しない。このことを無視看過した研究は、真を極めることができず、失敗に終わるのである。

 以上のような基本的な考えで、本書刊行の前提として、第一段階では『「基礎・基本・統合発信力」ワーク〈理論と実践〉』(小学校・中学校全七巻〈国語科教育を体系化し、いつ、どこで、何を指導するかの明確化〉)を刊行した。第二段階として『国語学力を高める「到達度」チェックカード』(小学校・中学校全十二巻〈国語学力到達度の明確化と指導法の開発〉)を企画編集し発刊したのである。この重要な実践研究過程を経て、第三段階として本書「「読むこと」の習熟度別指導ステップワーク集」(小学校・中学校全十二巻〈習熟度到達度の明確化と個に徹した習熟度指導法のワーク・教材の開発〉)を出版するのである。

 言語の力で一人一人の子どもの幸せを実現するには、「国語力とは何かを明確にし、『習熟度別指導』の理念を追究し、確かな実践理論を確立する」ことが大切である。


 次に、個に応じた『習熟度別指導』に対しての基本的な考えと指導法および、本書の企画・編集についての基本方針を述べる。


◎ 教育の究極のねらいとしての『習熟度別指導』とは何かを把握する

 教育の最終的な目的は、一人一人の子どもの可能性を最大限に引き出し、個性を伸張し、さらに生涯にわたっての幸福実現とその保障である。子どもの個性・特性は多様で、的確に捉えることは困難である。「関心・意欲・態度」「話す・聞く」「書く」「読む」(基本的能力)「言語事項」(基礎的技能)についての到達目標を的確に押さえるとともに、子どもの言語能力の実態を調査・分析し、個に応じた習熟度の程度を明確にすることが大切である。

 子どもが自分の判断で「学習の習熟の程度に応じたコース」を選択したり、「興味・関心で選んだ課題コース」に挑戦したり、「補充的なコース・発展的なコース」を選んだりする。そして、学習過程においては、一人一人の子どもが、それぞれの習熟段階に応じて「わかる→かわる→できる」の向上的変革のステップを踏んで、真の学力を高め自己実現を目指す「習熟度別学習」でありたいものである。「習熟度別指導」について最も重要なことは、学ぶ意欲をもたせることである。能力別や課題別、あるいは発展的・補充的にコースを設定することによって、子どもたちが劣等感や優越感をもったりして、競争意識が芽生えるようなことがあってはならない。また、保護者にも誤解のないように配慮する必要がある。「習熟度別指導」の目的は、価値ある目標に向かって個人の能力を発見し、個性・特性を他と協力協調して最大限に伸ばし、「生きる力」を育むことである。


◎ 学習指導要領の「規準性」を確認し「習熟の程度」を明確にする

 新学習指導要領の趣旨の実現に向けて、一人一人の習熟の程度等に応じたきめ細かな指導をいっそう充実させることが、「学力向上フロンティア事業〜文部科学省と都道府県教育委員会との連携事業〈二〇〇二年四月〉」に明記され、小・中・高等学校一貫して「習熟度別指導」が強調された。また、文部科学省「小学校・中学校・高等学校等の学習指導要領の一部改正等について(通知〈二〇〇三年十二月二十六日〉)」の「習熟度別指導など個に応じた指導の充実に向けた推進方策」では、基礎・基本の内容の重視および、その効果的指導方法等について述べている。国語科の学習指導要領は、内容の範囲が広く膨大であるという批判もある。学習指導が、羅列的網羅的にならないように配慮し、基礎・基本を精選・秩序化して習熟の程度を明確にすることが大切である。習熟の程度の第一段階は学習事項についての基本的な考え方や学習方法を理解すること。第二段階としては、学習事項や学習方法を定着し習得し向上変容すること。第三段階は、既習の学習・方法を適用・実践することである。つまり、理解→変容→実践行動のプロセスをたどることになる。

 習熟の程度を明確にするためには、学習指導要領の「規準性」をふまえ、指導のいっそうの充実を図ることが大切である。学習指導要領に示されている内容を整理・秩序化し、確実に指導した上で、子どもの実態をふまえ、学習指導要領に示されていない内容も加えて指導できることを明確にする。情報化時代に必要な言語能力等は付加すべき新能力である。


◎ 国語科の「基礎・基本」を明確にして指導を徹底する

 国語学力の到達度を明確にしないと習熟度別達成は実現できない。それを実現するためには、学習指導要領の目標・内容を精選・系統化することが前提条件である。文部科学省は「ゆとりの教育」を掲げ、学習指導要領の内容を大幅に減らしたが、学力低下批判を受け、二年程度の短期間で改訂を余儀なくされた(二〇〇三年十二月二十六日付で部分改訂、指導要領を超えた発展的内容を教えることを認め、都道府県教育委員会に通知)。これを受けて現場では、改めて波及・応用力に富む「基礎・基本」とは何かを吟味する必要がある。すべての子どもが学習指導要領の内容を身につけるよう、教師が指導することが前提で、さらに発展的な内容を指導する。ただし、国語科においては、従来「基本的能力」の指導が不徹底であった。たとえば文学的文章の読み方が十分身についていない子どもに、作者の生い立ち、生涯にわたっての業績調査、あるいは作品集め、時代背景、等の調べ学習に必要以上の時間を設定し、多様な学習へと発展させた。また、説明的文章の指導では、論理的文章の読解力が未定着のまま、理科的な内容にまで深く立ち入り実験や観察におよぶ脱線授業も散見した。また、社会科的内容に拡大し、現地見学にまで発展する授業もあった。その結果、高校生や大学生でも文学的文章や説明的文章の読み書きの能力が完全には定着していない実態である。このような発展的学習(?)を今後も継続すると、典型的なジャンルの文章の確実な定着は望めない。適切で妥当性に富む発展学習とは、教科書教材で読み書きした文章力をさらに充実発展させ、その文章力を完全習得させることである。この方法を選択しないと、豊かな感性や想像力も、確かな論理的思考力も育たない。国語科に配当された時間数が大幅に削減された現状において、発展的学習については厳しく吟味し、広い視野に立ち、しかも高い識見での抜本的な対策を図る必要がある。


◎ 「習熟度別指導」の効果を高めるために「国語科教育を体系化」する

 国語科で指導する基礎・基本を明確にするためには、学習指導要領を徹底的に分析し、組み立て直す研究が必要である。学習指導要領の目標や内容には、一事項に複数の技能・能力が示されている。このままでは単元や本時の学習指導目標の精選が難しく評価も複雑となる。従って、学習指導要領の趣旨や精神を生かしながら、基礎的技能(指導要領の言語事項)と基本的能力(指導要領の活動例)と統合発信力(情報活用能力→人間関係力)の新国語力を重視した「国語科教育の体系化」に基づく言語能力観を確立し、「習熟度別指導」事項を精選・系統化する必要がある。

 「基礎的技能」は、学習指導要領の言語事項である。言語に関する指導事項は、発声・発音・漢字・ひらがな・接続語・指示語・語彙・敬語などである。「基本的能力」の「習熟度別指導」事項は「話す・聞く」「書く」「読む」の三領域に関わる諸活動を支持する順序・要点・要約・段落・中心・細部・要旨・主題……等である。情報化時代に生きる子どもたちが「生きて働く言語能力」として身につけておかなければならない「統合発信力」の「習熟度別指導」事項は、学習指導要領に示されていない。しかし、この「統合発信力」はパソコン操作技術の必要性と、進展する時代の要請に応じた、国語科で指導すべき実用的新能力である。情報化時代に必要な新国語力である「統合発信力」の「習熟度別指導」事項は、日本語の伝統文化・言語文化・知識・教養等に関する価値ある話題・主題の理解を重視する。あるいは、課題解決のために情報を収集・選択・構成・保存・発信する等の「情報活用能力」を駆使・運用する。また、この「情報活用能力」を国語科学習ではもちろん、他教科や総合的学習の時間ならびに日常生活にも活用する。この価値ある情報の相互交流によって、学び合い、助け合い、励まし合い、鍛え合う……等の協力・協調する双方向的活動を通して真の友情が生まれ、「生きる力」を支える「人間関係力」を獲得することになる。従って、「統合発信力」は二十一世紀を拓く国語科教育で培う新国語力であり、発展的学習として位置づけることも意義ある選択である。


◎ 「習熟度別指導」事項を分析し具体的・数量的に表現する

 「習熟度別指導」事項は、絶対評価が的確にできるように具体化・数量化の考えを重視することが大切である。たとえば、「要点を落とさずに話すこと」の事項を習熟させる程度や指導法は抽象的表現で理解困難である。しかし、「基礎的技能」の漢字力の習熟度は具体的であり、数量的であると言える。つまり、筆順・字形・音訓の読み、あるいは学年の配当漢字がどれだけ(字数)書けたか等は習熟の程度が明確で指導しやすい。従って「習熟度別指導」においては、「基礎的技能」はもちろん、「基本的能力」「統合発信力」の指導事項の具体化・数量化を図らなければならないのである。

 また、「習熟度別指導」を徹底するためには能力差に応じた方法を工夫する必要がある。国語科における能力差は非常に大きい。小学校で習得すべき指導事項を中学一年生になっても完全習得していない実態もある。たとえば、かたかな・ひらがな・漢字が正しい筆順・字形で書けない事実や、中学三年生でも「要点を聞き取ること・読み取ること」等の小学三年生で身につけるべき能力を習得していない事実もある。「要旨や意図を押さえて話すこと・書くこと」等の小学校高学年で習得すべき能力を中学校卒業時点でも習得していない実態もある。また、同学年においても能力差は大きい。たとえば、小学六年生でも接続語が的確に使えない。あるいは、段落ごとにまとめて読み書きできない子どももいる。つまり、小学校卒業時点でも、低学年や中学年で定着・習得すべき技能・能力が身についていない危惧すべき実態である。子ども一人一人の習熟度に応じて指導することの重要性を認識しなければならない。加えて、技能・能力に応じた「習熟度別指導」の類型を考慮した集団を編成する必要がある。国語科においては、新国語学力としての「基礎・基本・統合発信力」の螺旋的系統で「生きて働く技能・能力」として習熟することが原則である。取り上げる話題・主題への関心・意欲・態度を大切にするとともに、特に技能・能力については重視しなければならない。従って、技能・能力の習熟度に応じて集団を編成するのである。その類型には(A)二学級を習熟の程度に応じて三つの集団に分ける、(B)一学級を二つ以上の習熟の程度に応じた学級集団に編成し、それぞれの集団に異なる教師が指導する、(C)一学級を単位として、習熟の程度に応じて課題を設定して一人あるいは複数の教師で指導する、等の指導類型が考えられる。


◎ 少人数集団による「習熟度別指導」には教師の授業研究が絶対の条件である

 少人数の学級あるいは少人数グループによる指導で学習効果が高まることは当然である。つまり、子どもの個性や能力を的確に把握することができるし、個に応じた指導もきめ細かにできる。しかし、多人数の学級においても多大の学習効果をあげている事実もある。それはなぜであろうか。言うまでもなく教師の指導力が大きく影響するのである。従って、「習熟度別指導」に最適な「教材研究や教材開発」→「学習指導案の綿密な検討や作成」→「個に徹する授業展開と再構成」――の研究サイクルによる研究法の開拓を確立しなければならない。特に、授業研究においては「学習指導過程」を軸に「指導技術・秘策」と「指導形態」が有機的・総合的に関連し、全過程で「生きて働く国語力」が確実に身につき、しかも「人間関係力」が獲得される学習のシステム化を図る必要がある。

 このような科学的で合理的な研究法を目指し確立しない限り「習熟度別指導」を徹底することは無理であることを再確認しなければならない。ワークシートの作成にあたっては、学習者主体・言語行動主体の「行動学習」の理論を導入する必要がある。習熟度達成のためのよい授業とは「生き生きと『行動学習』を展開する過程で『技能・能力』を確実に定着する」ことが原則である。

 従って、ワークシートが、〇×をつけたり、チェックをしたり、補い書きをしたりするだけの程度では単調すぎる。吹き出し法・抜粋法・要約法・連結法・サイドライン法・キーセンテンス法・キーワード法・囲み法・絵筋法・書き加え法・分類法・比較法・文責法・類推法・小見出し法・完成法・会話挿入法・連想法・中心法等の「行動学習法」を開発し、多様な学び方をワークシートに織り込み、面白くて楽しく豊かな学習体験をさせるようにしたいものである。

 加えて「習熟度別指導」には、積極的に教材を開発する必要がある。その理由は、国語科の教科書にはワンスキルを確実に定着する簡潔でしかも短い教材がきわめて少ないからである。たとえば、「様子を想像して読み取る」という単一技能を定着させるための適切な文章を探すのが困難で、ほとんどの教材では複数のスキルが混在しているのである。従って、教師が自力で習熟度に到達する教材を作成したほうが確実であり、また、教師が技能・能力の実態を把握し授業力を高めるのにも役立つのである。

 習熟度別指導は、一人一人の子どもの可能性を最大限に発揮し生涯の幸せを実現し保障するものである――ということを冒頭で述べた。「子どもを愛し研究に徹する」教師にとっては「生きがい」に通じる価値ある研究である。本書の発刊には、国語科研究の歴史と伝統に輝く「山形最上地区金山国語教育研究会」「名古屋国語教育研究会」「北九州国語教育研究会」が相互に価値ある研究情報を交流し協力・協調し「質的に高く実践に役立つ具体的研究」を完結した。温かく力強いご協力に敬意を表し感謝している。また、向田宏男先生には、全巻の企画・編集の統括に誠心誠意対応し、同志同行のつながりをいっそう深めた。明治図書の教育図書企画室代表の江部満様には、常に新時代の国語科教育を拓く理念や理論の示唆をいただき、その実現に絶大のご支援を賜っている。深く感謝し心からお礼を申し上げる次第である。母語・日本語教育の充実を目指し「国語教育立国論」の構想を練り、その実践的な展開へのご期待にお応えしたいと心を新たにしている。

著者紹介

瀬川 榮志(せがわ えいし)著書を検索»

現在 中京女子大学名誉教授

   全国小学校国語教育研究会名誉顧問

   日本子ども文化学会名誉会長

   全国創造国語教育研究会名誉会長

   21世紀の国語教育を創る会代表

   全国日本語教育学会名誉会長

1928年鹿児島に生まれる。東洋大学国文学科卒業。鹿児島県・埼玉県・東京都の公立学校教諭,東京都教育委員会指導主事,東京都墨田区立立花小学校・中野区立上鷺宮小学校・同鷺宮小学校長を歴任。その間,文部省教育課程教科等特別委員・教育課程調査研究協力者並びに副委員長。学習指導要領指導書作成委員,NHK学校放送教育番組企画委員。現在も全国的規模で授業実践理論の確立と「国語教育立国論」の提唱と展開に全国的に活躍中。

向田 宏男(むこうだ ひろお)著書を検索»

現在 山形県長井市立伊佐沢小学校校長  山形県現職教育協議会国語部会理事

1947年山形県生。昭和49年より東京都公立小学校教諭,昭和60年より山形県公立学校教諭,米沢市立広幡小,長井市立伊佐沢小教頭,白鷹町立十王小校長,同東根小校長,小国町立小玉川中校長等歴任。その間,昭和54年 東京都教育研究員(国語科)昭和55年〜59年 同教育研究委員に委嘱され研修を積む。

中津 充(なかつ みつる)著書を検索»

現在 北九州国語教育研究会事務局次長  北九州市立北方小学校校長

1954年福岡県に生まれる。福岡教育大学教育学部卒業。昭和54年より北九州市の公立小学校に勤務する。昭和60年より2年間,兵庫教育大学大学院で学ぶ。そこでは主として児童読者論研究を行った。現在,北九州市の国語教育充実発展のために各種研究会・授業研究会等で指導助言を行っている。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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