- はじめに
- Chapter 1 子供主語を実現する算数授業10のしかけ
- 01 子供が思いや目的をもてる単元デザインのしかけ
- 02 子供の興味・関心を引き出す教室環境のしかけ
- 03 子供の思考の余白を生み出す問題設定のしかけ
- 04 子供に思考を深める視点をもたせる発問のしかけ
- 05 子供の思考を可視化する板書のしかけ
- 06 子供の思いや思考を受け止める見取りのしかけ
- 07 子供の理解を深める考えの共有のしかけ
- 08 子供が自らの学びを調整するふりかえりのしかけ
- 09 子供が学びを発展させるふりかえりのしかけ
- 10 子供の学びを価値付ける評価のしかけ
- Chapter 2 学年別 算数授業のしかけ大全
- 1年
- なんばんめかな
- ひきざん
- 3つのかずのけいさん
- かたちをつくろう
- なんじなんぷん
- 2年
- ひょうとグラフ
- たし算とひき算のひっ算
- かけ算
- 10000までの数
- 長さ
- はこの形
- 3年
- 長さ
- 円と球
- あまりのあるわり算
- 大きい数
- 三角形と角
- 重さ
- 4年
- 角
- 面積
- 分数
- 直方体と立方体
- 5年
- 整数の分け方
- 図形の角
- 単位量あたりの大きさ
- 速さ
- 割合
- 6年
- 対称
- 資料の整理
- 比とその利用
- ならべ方と組み合わせ方
はじめに
子供が見ている世界を見つめる
「今まで四角形で作られていると思っていたものが,三角形で作られている世界に見えてきた。学習を通して自分の中に新しい世界が広がった感じ」
ある日,クラスの子供が私に話してくれました。この子は算数の三角形の学習で身の回りにあるものやマーク,物について調べていました。そして,円を除く全ての図形は三角形の組み合わせによってできていることに気付いたのです。さらに,身の回りの模様やマークも三角形を組み合わせることによってできているのではないかと探究し始めました。そして,探究を楽しんだ後,私に伝えてくれたのが冒頭の言葉でした。子供が「自分の中に新しい世界が広がった」と感じられるとは素敵なことだなと素直に驚きました。これこそ,まさに「学ぶことの価値」だと思います。学ぶことで自分の中の世界が広がっていく…学ぶことの価値を,子供の姿から教えてもらったような気がしました。最近,子供たちがどのような世界を見ているのか,どのような見え方や感じ方をしているのかということが気になるようになりました。(図省略)
出発点は子供の声
(図省略)
一度立ち止まって自分の授業をふりかえってみたとき,浮かんできたのは,子供たちの声でした。前述のような子供の声は,とても素敵であり,当時の私にとって嬉しい言葉でもありました。一方で,「このような子供の姿は受け身ではないか?」という疑問が浮かんできました。もしかすると,子供から豊かな発想を奪っているのは自分ではないか? 子供は一人一人違うのに,同じように学ぶことを知らず知らずのうちに強いてきたのではないか? ふりかえってみると,これまでの私の授業は,“教師が学ばせたいことを教師の思ったような方向を向かせて学ばせる授業”でした。結果的に,子供は受け身になってしまうのでしょう。変化の激しい時代において,子供が自分で学ぶ力をどのようにして育んでいくか,私の授業の大きな課題が見つかりました。
その後,同僚と授業の在り方について話したり,仲間と互いの授業を見て語り合ったりしました。自分の授業に足りないことを繰り返し分析した結果,“少し先を歩く子供に教師が光を当てる授業”を目指そうと決めました。
子供主語の算数授業
「子供が見ている世界を見つめる」ことが,私にとっての「子供主語の算数授業」のスタートです。例えば,同じ問題を提示しても,一人一人がその問題から受け取ることは異なります。その一人一人の見え方や感じ方を教師も見つめようとするか,教師にとって都合のよい声だけを聞こうとするかでは授業に大きな違いが生まれるでしょう。
そう考えたとき,授業の始まりは,決して授業の中だけではないことに気付きました。子供が過ごす学校生活や家庭生活,その全てが学びの種になるのです。例えば,休み時間に遊んでいる子供が見つめている世界。学校行事や児童会行事。子供が興味をもっていること。それら全てが学びのきっかけになり得ると考えると,世界が開ける感じがしませんか? 教室に学びのきっかけになりそうなものを置いてみたら,子供はどんな反応を示し,どのように関わろうとするのか,とワクワクしてきませんか? このような授業を続けていると,子供の姿も少しずつ変わってきました。受け身ではなく,自分が学びの主体であるということが匂ってくる子供の声が増えてきました。
(図省略)
「子供主語」というと,子供に任せて教師は大きく出てはいけないと思う人がいるかもしれませんが,それは違うと私は考えています。「子供主語」の授業は,子供と教師がともに主体性を発揮しながらつくられます。ただ,これまで以上に,教師が主体性を発揮する場面を絞る必要があると考えました。今回Chapter1で書いた10個のしかけは,子供主語を実現するために,私が必要だと考えた教師の出番です。ぜひ,Chapter1のしかけの概要とChapter2の実践事例をつなげながらお読みいただければと思います。
子供の発想はいつも自由で,いつも素敵です。そして,私たちの想定を大きく超えてきます。そんな子供たちが,その子らしく学ぶことができる授業をしたいと考えるようになりました。本書では,そんな思いをもちながら,目の前の子供とともに,子供が主語になる楽しい算数授業をできないかと奮闘する中で,私が授業を考える際,授業をしている際に意識していることをふりかえってまとめたものになります。本書を読んでくださった方が子供主語の算数授業を考える際の一助になれば幸いです。
2026年6月 新潟大学附属新潟小学校 /二瓶 亮
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明治図書

















