- まえがき
- 第1章 100万人が受けたい!地理的な見方・考え方を鍛える授業のポイント
- 第2章 地理的な見方・考え方を鍛える「世界と日本の地域構成」大人もハマる授業ネタ
- 1 世界の国々 マクドナルドで世界を見る
- 2 世界の国々 なぜアメリカというの?
- 3 日本の河川 川の長さと流域面積
- 4 都道府県 一級河川と二級河川から都道府県を学ぶ
- 5 都道府県 隣接県の多い県
- 6 都道府県 なぜ福島県の県庁所在地は福島市なの?
- 7 防災・減災 日本の減災
- 第3章 地理的な見方・考え方を鍛える「世界各地の人々の生活と環境」大人もハマる授業ネタ
- 1 世界の気候と生活 なぜヨーロッパはパスタ? 日本はうどん?
- 2 乾燥帯 鳥取砂丘は砂漠なの?
- 3 北大西洋気候 キルナの鉄鉱石の輸出港
- 4 イスラム教 イスラム教徒が豚肉を食べないわけ
- 第4章 地理的な見方・考え方を鍛える「世界の諸地域」大人もハマる授業ネタ
- 1 中国 13億人の胃袋
- 2 西アジア 産油国の多角化
- 3 アフリカ チョコレートの裏側
- 4 アフリカ 空飛ぶバラ
- 5 EU EUはなぜ統合されたのか?
- 6 EU EUへの加盟,離脱そして課題
- 7 中・南アメリカ なぜブラジリアに首都移転したのか?
- 第5章 地理的な見方・考え方を鍛える「日本の諸地域」大人もハマる授業ネタ
- 1 中核方式 味深い,奥深い日本酒
- 2 九州 人口の増えた福岡市と減った北九州市
- 3 九州 耕地が少ないのに農業生産額が高い宮崎県
- 4 九州 沖縄で豚,昆布の消費が多いわけ
- 5 中国・四国地方 らっきょうとカレー
- 6 中国・四国地方 どうして島根県には“お肌美人”が多いのか
- 7 近畿地方 古都奈良と京都の景観保護の是非
- 8 中部地方 魚沼産コシヒカリが美味しいわけ
- 9 中部地方 日本一豊かな飛島村
- 10 関東地方 からっ風って何?
- 11 関東地方 千代田区の人口変化
- 12 東北地方 青森県でりんご生産が多いわけ
- 13 東北地方 なぜ三陸沖は好漁場なのか
- 14 東北地方 東北の未来像を構想する
- 第6章 地理的な見方・考え方を鍛える「地球的課題」大人もハマる授業ネタ
- 1 地球環境問題 地球温暖化とグローバル化に翻弄される島々
- 2 都市化 都市への人口集中
- 3 持続可能性 リンとナウル共和国
- あとがき
まえがき
私の実家である京都府木津川市の木津駅近くにマフィンを提供するステキなカフェがある。国道24号線沿いにあり,隣は田園地帯だ。カフェができるまでは,冬場の田園は農業従事者以外は,誰も見向きもしなかった。年末に墓参りに行ったおり,たまたま入ったカフェの窓越しから見える景色が実に素晴らしかった。ときおり走るJR奈良線の列車と田園地帯のコントラストが,店の風情を高め,客のささやかな和みの時間をつくっているようだった。
カフェと田園そしてJRのつくる見事な空間に「授業」を考えるヒントがあるように思う。「田園を走るJRの列車」という題材には,これまでは,誰も見向きもしなかったが,カフェ,そして美味しいマフィンを介することにより,素晴らしい情景がつくり上げられた。授業では,一つ一つの何ら脈絡のないモノを繋ぎ,関連性を紐解き,「へっ!」「ウソ!」「ホント!」という驚きや知的興奮を与えることが不可欠である。学ぶ場を提供していく教師や教材は,このカフェと同じ役割を担うべきではないだろうか。
また,この田園とJRの列車を別の視点から見てみよう。この二つは,誰からも忘れられていたものが,カフェとマフィンにより復活したものである。私たちは,目立たない生徒やヤンチャな生徒を,おきざりにしたまま授業を展開してこなかっただろうか? 多少,こじつけがましいが,そんな自問自答をしてみた。
私は2012年から『100万人が受けたい「中学社会」ウソ・ホント?授業』シリーズを世に出した。そのおり,本来「学ぶ」とは“新たな発見”をし,“知的興奮”を喚起し“生き方”をゆさぶるものでなくてはならないとした。しかし「学力低位層」や「学習意欲のない」生徒にとっては,「抑圧装置としての授業」になっているのではないだろうかと自問自答した。ここで,ドラマ『塀の中の中学校』の刑務所に収監されている,中学校を卒業していない服役者(千原せいじ)が,学び直す物語を紹介した。「わからない」授業に耐えられず,「俺をやめさせてくれ。もう耐えられない。俺はいじめなどしたことがなかったが,今,俺はいじめをしている。このまま,ここにいたら,どんどんイヤな人間になってしまう」(要旨)と叫び,自殺しようとした物語である。再度,学ぼうとする服役者の気持ちを生かすことができなかった物語の世界が,現実の学校にも,事実として存在することは否めない。いわゆる「できない子」に光をあて,この「カフェ」のようなモノ(授業)があれば救われるのに……と。
その後,約10年が経過したが,いわゆる「学習意欲」のない生徒への眼差しは,一向に変わらないのではないだろうか? 「主体的・対話的で深い学び」がキーワードになっているが,彼らの「学習意欲(主体性)」は問題視されず,「対話」においても「疎外」されている現状がある。また,「思考力,判断力,表現力等」「見方・考え方」を問う「深い学び」は,「知識」「理解」ですらあやうい彼らにとっては埒外であろう。私は,「学習意欲」のない生徒が活躍できる授業への工夫をライフワークとしており,授業力は,このような生徒により鍛えられてきたと思っている。「できる」生徒だけが主役なのではなく「すべての生徒」が意欲的に参加できる「学力差のない」授業を追究するのがプロとしての教師の“仕事の流儀”であろう。
本書は「見方・考え方」を軸にすえた授業事例をまとめたものである。「できる生徒」=「活用・探究」,「できない生徒」=「習得」ではなく,「すべての生徒」が「思考力,判断力,表現力等」「見方・考え方」である“汎用力”を身につける,そんな授業が広がることを願ってやまない。
/河原 和之
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- 明治図書
- 具体的な教材ネタが紹介されているので、使いやすく、参考になりました。2024/1/430代・中学校教員
- 授業でそのまま使える内容でした。2022/11/620代・中学校教員
- 河原先生の著書は毎回授業にすぐ活用できる内容ばかりで重宝しています。2020/11/2730代・首席教諭
- 生徒に興味を持たせ考えさせるために、こんなにも熱心に考えておられる教師の存在に感銘!多くの教師の方々がそうであって欲しいと思います。誤字?をひとつ。P.51の1行目「危弱性」→「脆弱性」? 楽しい本でした。勉強になりました。著者に御礼を。2020/9/960代・会社員
- 教材研究の際に参考になっている2019/7/3120代・中学校教員