- 序章 音読・朗読・暗唱の徹底で基礎学力を向上 中京女子大学 名誉教授 /瀬川 榮志
- 高学年「音読・朗読・暗唱」指導のポイント /山本 直子
- T 正しく読む 音読の基礎学習
- 正しく読む@ 「早口言葉」を正しく読もう
- 正しく読むA 「十二支・十二ヶ月」を正しく読もう
- 正しく読むB 「春の七草」「秋の七草」を正しく読もう
- 正しく読むC 「いろはがるた」を正しく読もう
- 正しく読むD 「畳語」を正しく読もう
- 正しく読むE 『坊ちゃん』(夏目 漱石)を正しく読もう
- 正しく読むF 『蜘蛛の糸』(芥川 龍之介)を正しく読もう
- 正しく読むG 『風の又三郎』(宮沢 賢治)を正しく読もう
- 正しく読むH 『竹取物語』・『土佐日記』(紀 貫之)を正しく読もう
- 正しく読むI 『故郷』(高野 辰之)を正しく読もう
- 正しく読むJ 「短歌」を正しく読もう
- 正しく読むK 「俳句」を正しく読もう@
- 正しく読むL 「俳句・川柳」を正しく読もうA
- 正しく読むM 「天気予報」を正しく読もう
- 正しく読むN 「スポーツ中継」を正しく読もう
- 正しく読むO 「日本国憲法前文」を正しく読もう
- よいしせいで声を出しましょう・口の形に気をつけて発音しましょう
- U 深く読む 朗読の基本学習
- 深く読む@ 『雨ニモマケズ』(宮沢 賢治)を深く読もう
- 深く読むA 『静夜思・黄鶴楼送孟浩然之広陵』(李白)を深く読もう
- 深く読むB 『風景 純銀もざいく』(山村 暮鳥)を深く読もう
- 深く読むC 『君死にまたふことなかれ』(与謝野 晶子)を深く読もう
- 深く読むD 御伽草子『浦島太郎』を楽しく読もう
- 深く読むE 『山椒大夫』(森 鴎外)を深く読んでみよう
- 深く読むF 『銀河鉄道の夜』(宮沢 賢治)を深く読もう
- 深く読むG 『東海道中膝栗毛』(十返舎 一九)を深く読もう
- 深く読むH 『椰子の実』(島崎 藤村)を深く読もう
- 深く読むI 「短歌」を深く読もう
- 深く読むJ 「俳句」を深く読もう@
- 深く読むK 「俳句」を深く読もうA
- 深く読むL 「ニュース」を深く読もう
- 深く読むM 「十七条の憲法」を深く読もう
- 深く読むN 『学問のすゝめ』(福澤 諭吉)を深く読もう
- 深く読むO 「お経」を作ろう
- 文学館に行ってみよう
- V 豊かに読む 暗唱の統合学習
- 豊かに読む@ 『汚れつちまつた悲しみに』(中原 中也)を暗唱しよう
- 豊かに読むA 『竹』(萩原 朔太郎)を暗唱しよう
- 豊かに読むB 『初恋』(島崎 藤村)を暗唱しよう
- 豊かに読むC 『荒城の月』(土井 晩翠)を暗唱しよう
- 豊かに読むD 「小倉百人一首」を暗唱しよう
- 豊かに読むE 「俳句」を暗唱しよう
- 豊かに読むF 『源氏物語』(紫式部)・『枕草子』(清少納言)を暗唱しよう
- 豊かに読むG 『平家物語』・『奥の細道』(松尾 芭蕉)を暗唱しよう
- 豊かに読むH 『吾輩は猫である』(夏目 漱石)を暗唱しよう
- 豊かに読むI 『やまなし』(宮沢 賢治)を暗唱しよう
- 豊かに読むJ 『草枕』(夏目 漱石)を暗唱しよう
- 豊かに読むK 「語呂あわせ」を暗唱しよう
- 豊かに読むL 『論語』(孔子)を暗唱しよう
- 豊かに読むM 「ことわざ」を暗唱しよう
- 豊かに読むN 「ずいずいずっころばし」を暗唱しよう
- 豊かに読むO 『山かつぎ』(北原 白秋)を暗唱しよう
- 「この本に出てくる作品の年表」
- W 資料集 心に響く名作集
- 資料@ 『杜子春』(芥川 龍之介)を読む
- 資料A 『走れメロス』(太宰 治)を読む
- 資料B 『山月記』(中島 敦)を読む
- 資料C 『卒業の日によせて』(関 洋子)を読む
- 資料D 『ことばは心』(せがわ えいし)を読む
- X 付録 ワーク枠
序章音読・朗読・暗唱の徹底で基礎学力を向上
中京女子大学 名誉教授 /瀬川 榮志
「正しく美しい日本語で優れた日本人の育成〜よき言語生活者を育てる日本語教育」……このキーワードは、二十一世紀に世界の中の日本人として国際社会に生きていく児童・生徒を育てる学校教育の重要課題です。
しかし、大人と子供の言葉遣いの実情には危惧感を抱くことがあります。「言葉の乱れは心の乱れ、心の乱れは行動の乱れ、行動の乱れは社会の乱れ、社会の乱れは国家の衰亡につながる」〜のではなかろうか。
正しい発声・発音ができない子。語彙が貧弱で自分の思いや考えを的確に話せない子。国語の教科書の文章を明瞭な音声で正確に読めない子。読みが浅く文学作品などの高い価値や深い感動を豊かに表現できない子もいます。この子供たちを温かく支援し、的確に指導して「正しく美しい日本語」を、学校・家庭・社会生活で場面や相手あるいは目的に応じて適切に駆使・運用できるようにしたいものです。
音読・朗読・暗唱を積極的に取り入れると国語学力が確実に向上します。学力の低下が議論されていますが、この重要な問題を解決する具体策は、音読・朗読・暗唱の指導の強化であると確信しています。
また、この指導を徹底することによって言葉のひびき合い、余韻余情のある日本語、季節の変化を巧みに描き心のひだを微妙に表現できる日本語。視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚などの五感を駆使して、正誤・適否・美醜・主題・行動〜感覚などの五感を磨き語感を豊かにして、日本語独特のよさを学ぶこともできます。このことは、現在の我が国の教育に求められている「心の教育」に連動します。
音読・朗読・暗唱の指導をより一層効果的にし、一人一人の子供の国語学力を高めるためには次の事項を押さえることが大切です。
一、生きて働く国語力として確実に定着させるために学習者の能力の発達段階に即して「基礎的技能」→「基本的能力」→「統合発信力」の螺旋的系統によって指導する。
二、学習体系も螺旋的系統に即して「基礎学習」→「基本学習」→「統合学習」とし、その方法も、生きて働く国語力をつけるために、段階的にレベルアップする言語行動としてシステム化する。
三、教材の選択の開発に当たっては、「基礎・基本・統合発信力」の系統に即すると共に、学習のシステム化に適切な作品・名文・名句・名作・俚諺・漢詩・古典等々を開発したり精選したりする。
四、指導に当たっては、系統的・段階的に言語行動を編成する。断片・偶発的に指導しても効果は上がらない。また、音読する→朗読する→暗唱する〜という全身表現の行動学習に徹することである。
五、音読・朗読・暗唱力の向上の決め手は、繰り返し学習の徹底である。継続的に反復練習することに尽きると言っても過言ではない。それも単なるドリルではなく、「易から難へのステップ」を踏む学習法である。
六、学習の効果を上げるために、絶対評価と指導の一体化を図る。特に、自己評価や相互評価で学習者の興味・関心・意欲を高めるようにする。音読・朗読・暗唱力は、的確な評価ができるものである。
七、音読・朗読・暗唱を通して感動したことや、理解・表現の方法を友達と双方向的に情報交換をする。あるいは児童集会や施設の訪問などでも「伝え合う力」が育ち人間関係力が培われる。
八、日本の伝統文化・言語文化・文学等についての知識や教養を身に付ける素地を養うことができる。朗読・暗唱・朗読力を練磨し継続する努力・精進・昂揚によって生涯充実した生き方ができる。
このように、音読・朗読・暗唱は国語力の基礎力の習得から文化の習得や、人間関係力さらには人間力獲得の生涯教育にいたるものであり、幅が広く奥の深いものであると確信しています。
『基礎学力を高める音読・朗読・暗唱ステップワーク』は、以上のような国語教育の理念・理論や、指導の原理・原則に基づき具体的なワーク学習つまり、行動学習を通して国語力が定着できるように楽しく企画構成したものです。本書の三巻は、『「国語学力向上アクションプラン」シリーズ』の一環として企画したものです。基盤となる実践書としては『基礎的技能・基本能力・統合発信力ワーク』全七巻(明治図書)を発刊しています。それに『ゆとり教育から学力向上へ「国語学力・絶対評価で鍛える」一年〜六年』全六巻(明治図書)も評価重視の視点から根底に据えました。
学力向上行動計画の本企画は、低学年の企画編集を岩谷武利先生(北九州市小倉国語の会)、中学年の企画編集を大江英麿先生(山形21世紀の国語教育を創る会)、高学年を山本直子先生(埼玉21世紀の国語教育を創る会)にお願いしました。
各研究会においては、低・中・高学年の能力や特色に応じた編集に工夫を凝らしており、国語科教育の理念・理論や国語科指導の原理原則に基づいた行動学習が展開できるようにシステム化されています。
本書が、新世紀に生き抜く子供たち一人一人の生きる力の支えとなる「生きて働く日本語力」の獲得に連動することを心から願っているものです。
山本直子先生をはじめ同会員の武市幸子先生、草村久美子先生、藤田恵子先生には編集調整等の総括を意図的・計画的に進めていただきました。この実践研究力を備えたスタッフの先生方は、これまでに『楽しく学ぶ「話し方・聞き方」ワーク』〈一年〜六年 全六巻〉『「学び方技能が育つ総合的な学習」ワーク』〈三・四年用 五・六年用 全二巻〉(明治図書)を刊行した実績があります。
本企画においても「声を出せ!」(全小国研協力)や「音読集」(まど・みちお監修)についての教材分析ならびに行動学習の実践などの事前研究を積み重ね、情報交換を密にして「基礎学力を高める音読・朗読・暗唱ステップワーク」を完成しました。次は、「伝え合う力を育てる『対話法』の指導〜ステップワーク」作成に挑戦しています。今後さらに研究体制を確立して「ワーク学習」つまり「行動学習」で「基礎・基本・統合発信力」を獲得する方法の開発を推進することを期待しています。
「国語学力向上アクションプラン」の価値あるシリーズを企画してくださった明治図書出版企画開発室長代表、江部満様には、本書(三巻)の企画から発刊まで心温まるご支援いただき感謝しております。
学力向上は我が国の重要課題であり、この解決には国語力を高めることの具体策が求められます。国語教育において、何のために、何を、いつ、どこで、どのように指導すればよいのか。また、学習者主体・言語行動主体の国語教育を理論的に体系化し、どのように具現化すればよいかを追求して、このシリーズを充実していきたいと考えています。
まどみちお、阪田寛夫両先生には作品掲載にあたって、特別にご諒解を得た。心からお礼を申し上げたい。
21世紀の国語教育を創る会 代表
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- 明治図書