- はじめに
- 第1章 知的障害・発達障害がある子への体育授業づくりの基本
- 子どもを信じることから授業が始まる
- 「できる・楽しい・もっと」のサイクルで考える
- 子どもの“つまずき”を深掘りする
- メッセージを込めた教材をつくる
- 「できる」に導く教材の設計図
- 教材をワンランク上げる一工夫
- 体育と生活をつなげる Let’s 体育 for Life!
- 第2章 すぐに使える! つまずき解消グッズ&活動アイデア
- 解説 つまずきをほどくという考え方
- 体つくり運動系
- 解説 体つくり運動系で見られるつまずき
- 01 自分の体がよくわかる! ミラーマン
- 02 姿勢や動きを整える! チリンスティック
- 03 ゆっくり回せる! 跳びやすい! なが・おも縄
- 04 ビヨーンと回しやすい! のびのび縄
- 05 たわまないから跳びやすい! タワマン縄
- 06 弧を描けるから跳びやすい! カチカチ縄
- 07 縄の動きがゆっくりに! プードル縄
- 08 回しやすさが連続跳びへ! おもりくん縄
- 09 ぐるぐる回して感覚づくり! ぐるぐるタオル
- 10 手首の動きを引き出す! リモコンフライパン
- 器械運動系
- 解説 器械運動系で見られるつまずき
- 01 だんごむしになろう! 僕を見テープ
- 02 色テープが教えてくれる! 色テープマット
- 03 入れたいなら手を伸ばすべし! ダンクシュート
- 04 見てわかる! 触ってわかる! 手置き枕
- 05 キックが回転のスイッチに! オーバーヘッドキックボール
- 06 遠くに運ぼう! 卵ボール
- 07 勢いをつけて遠くに着地! おしりドーンマット
- 08 回転を止めない! ごろんと滑り台
- 09 あらやだ,跳びやすい! スマート跳び箱
- 10 これなら跳べる! かえるの跳び箱
- 11 グイっと押そう! カーリングペットボトル
- 陸上運動系
- 解説 陸上運動系で見られるつまずき
- 01 見て,聞いて,逃げろ! チリン♪鬼さんカード
- 02 色が変われば急カーブ! いろいろスクリーン
- 03 変幻自在で跳びやすい! 新聞スティック
- 04 触りたい! 鳴らしたい! カラフル鈴ポッキー
- 05 たためば変わる,跳ぶ長さ! 新聞こいのぼり
- 06 見て,考えて,跳ぶ! マット舟
- 07 空中ミッション! 足型忍者
- 08 両足着地を引き出せる! グシャッとペットボトル
- 09 両足着地で何かが起きる!? シーソージャンプ台
- 10 選んでジャンプ! 箱ワニさん
- 水泳運動系
- 解説 水泳運動系で見られるつまずき
- 01 フーっとふくらむ! ぷくぷくマン
- 02 かがんでくぐる! フラフープトンネル
- 03 頼りになる安定感! ダブルビート板
- 04 めざせスーパーマン! ダブルスティック
- 05 ぼくの足はここ! カラフル足首バンド
- 06 動かないから動かせる! バタ足ドーナツ
- 07 学びの道しるべ&足跡! 巨大進級表
- ボール運動系
- 解説 ボール運動系で見られるつまずき
- 01 蹴り方ナビゲーター! ボールくん
- 02 よく見て,蹴って大変身! 魔法のペットボトル
- 03 蹴る力のコントローラー! 段ball
- 04 こぼさず集めろ! インサイドブルドーザー
- 05 蹴りやすさをつくる! ペットボトルティー
- 06 投げる動きをつくる! かたつむりボール
- 07 枕の形で安心キャッチ! まくらボール
- 08 捕るを,やさしく! 段ボールグローブ
- 09 高さ自在! 活動量アップ! 段ボールティー
- 10 入るからフォームが身に付く! ひっくーゴール
- 11 入る! 見える! 楽しい! パックンゴール
- 表現運動系
- 解説 表現運動系で見られるつまずき
- 01 見る・わかる・動くが,色でつながる! いろいろ輪ゴム
- 02 見えないつまずきをダンスで整える! うごきリメイク・ダンス動画
- 03 イメージが広がると,体が動く! イラスト物語
- 04 音が動きの答えになる! チリン輪ゴム
- 05 “一緒”を感じる! シンクロものほし
- 06 動きが集まる表現のシンボル! ものがたりツリー
- 全ての領域
- 学校の学びを家庭へつなぐ! 学びカード
はじめに
子どもたちが「できた!」「楽しい!」を実感できる体育授業を目指して
体育の授業は,子どもたちが体を動かす楽しさや喜び,心地よさを味わいながら,心と体を一体的に育むことができる大切な時間です。また,仲間や教師との関わりを通して,協力し合う力や安全への意識,自分と運動の関係を考える力など,多様な資質・能力を育む機会にもなります。
一方で,体育は「うまくできない」「思うようにいかない」といった経験をしやすい教科でもあります。特に運動が苦手な子どもや,いわゆる知的障害や発達障害のある子どもたちは,授業への参加そのものに不安や困難さを感じることがあります。しかし,それは必ずしも子ども自身の特性や能力に要因があるわけではありません。
近年重視されている「障害の社会モデル」では,障害を個人の特性だけでなく,本人と環境との相互作用によって生じる困難さとして捉えます。例えば,運動のルールを口頭だけで説明すると理解が難しい子どもも,絵カードやホワイトボードの活用,ロールプレイを交えて説明すれば理解しやすくなります。このように,環境や方法を工夫することで,困難さは軽減され,子どもたちは安心して参加できるようになります。
そのため体育授業では,子どもの特性を理解したうえで,活動内容や指導方法,支援方法や教材等を工夫することが大切です。特別支援学校学習指導要領でも,一人ひとりの障害の状態や発達段階に応じた指導の充実が求められており,体育科・保健体育科では,生涯にわたって健康な生活や豊かなスポーツライフを送るための資質・能力の育成が重視されています。そこでは,運動技能の向上だけでなく,運動の楽しさや喜びを味わい,自ら運動に親しむ態度を育てることが大切にされています。
そのためには,子どもたちの「できないこと」に注目するのではなく,「この子はこれができる」「この子はこれが得意」「この子はこの支援があれば力を発揮できる」という視点をもつことが欠かせません。教師による教材の工夫や環境調整は,子どもたちの「わかる!」「できる!」「楽しい!」を引き出し,成功体験につながります。そしてその成功体験が,「もっとやりたい!」「次はできそう!」という意欲や自信を育み,運動に親しむ気持ちも育まれていきます。
本書では,主に知的障害や発達障害のある子どもたちが,体育授業において「できた!」「楽しい!」「もっとやりたい!」を実感できるようになるための具体的なアイデアを紹介しています。体育科の領域ごとに,子どもたちがつまずきやすい場面やその背景にある困難さを整理し,それに応じた教材や教材の作り方,活動アイデアを紹介しています。また,教師が授業の中で感じやすい疑問に応えられるよう,子どもの実態に基づいた指導のポイントもできるだけ具体的に解説しています。紹介する教材や活動は,特別な設備や教具を必要とせず,すぐに実践できるものを中心に紹介しています。さらに,本書のアイデアは特別支援学校だけでなく,特別支援学級や小・中学校でも活用できる内容となっています。
本書が,一人ひとりの子どもの健やかな心と体を育むことができる体育授業づくりの一助となり,運動の楽しさや喜びを実感できる学びの実現につながることを願っています。
2026年6月 /奥田 隼人・平沼 源志
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明治図書

















