- はじめに 国語学力を高めるモデル学習指導案を創る /瀬川 榮志
- 第T章 低学年の国語力の発達と絶対評価ができる学習指導案
- 第U章 基礎的技能が定着する学習指導案作成
- ○第1学年(入門期)【話す・聞く】
- 正しい「姿勢・口形」の指導
- ――「はなしたいな,ききたいな」(教育出版)――
- ○第1学年(入門期)【書く】
- 「ひらがな」を正しく書く指導
- ――「『は・を・へ』をつかってかこう」(光村図書)――
- ○第1学年()入門期【読む】
- 文中における主語と述語との関係に注意しながら読む指導
- ――「けむりのきしゃ」(教育出版)――
- ○第2学年【話す・聞く】
- 正しい「発声・発音」に指導
- ――「口を大きくあけてはっきりと」(東京書籍)――
- ○第2学年【書く】
- つなぎの言葉を使って「短作文」を書く指導
- ――「文と文のつながりを考えて」(教育出版)――
- ○第2学年【読む】
- 文末表現や接続語に注意しながら読む指導
- ――「たんぽぽんのちえ」(光村図書)――
- 指導案の検討と再構成
- 第V章 基本的能力を習得する学習指導案作成
- ○第1学年【話す・聞く】
- 友達にわかるように話したり,質問したりすることの指導
- ――「わたしのたからもの」(光村図書)――
- ○第1学年【書く】
- 経験したことのだいたいを考えて簡単な説明文を書く指導
- ――「みたことをかく」(教育出版)――
- ○第1学年【読む】
- 説明の基本的な文型を捉えながら読む指導
- ――「いろいろなふね」(東京書籍)――
- ○第2学年【話す・聞く】
- 相手に応じ,話題に沿って対話することの指導
- ――「ふたりで話そう」(教育出版)――
- ○第2学年【書く】
- ききたいこと,教えてあげたい事柄を集めて手紙に書く指導
- ――「お手紙こうかん会」(光村図書)――
- ○第2学年【読む】
- 生き物の成長過程を順序に気をつけながら読む指導
- ――「さけが大きくなるまで」(教育出版)――
- 指導案の検討と再構成
- 第W章 統合発信力を獲得する学習指導案作成
- ○第1学年
- 体験的な言語活動を通して楽しく伝え合う指導
- ――「たのしいはなしあい(みぶり)」(教育出版)――
- ○第1学年
- 読んだ本のおもしろさを絵と文に表し紹介し合う力を高めていく指導
- ――「うみへのながいたび」(教育出版)――
- ○第1学年
- 調べたことを楽しく伝え合う指導
- ――「どうぶつの赤ちゃん」(光村図書)――
- ○第2学年
- 好きな本のおもしろさを楽しく伝え合う指導
- ――「スーホの白い馬」(光村図書)――
- ○第2学年
- 「おすすめ絵本」のインタビュー活動を通して,知りたい情報を集めまとめる指導
- ――「きつねのおきゃくさま」(教育出版)――
- ○第2学年
- 調べたいことをわかりやすく伝え合う指導
- ――「ビーバーの大工事」(東京書籍)――
- 指導案の検討と再構成
- 第X章 国語科指導の本質に迫る指導細案作成
- ○基礎的技能が定着する指導細案
- 子どもが自ら発見的に主語と述語の関係や句読点の打ち方を身につけていく指導
- ――「生きものかんさつカード」(光村図書・2年)――
- ○基本的能力を習得する指導細案
- 場面の様子や登場人物の心情について想像を広げながら読む指導
- ――「スイミー」(光村図書・2年)――
- ○統合発信力を獲得する指導細案
- 説明の順序と対象を確かめ,不足する情報を補って読む指導
- ――「きつつき」(教育出版・2年)――
- 指導案の検討と再構成
- おわりに /工藤 達成
はじめに
国語学力を高めるモデル学習指導案を創る
『国語科教育の改革は授業改革から』〜『授業改革は学習指導案の改革から』
―「基礎技能の定着⇒基本能力の習得⇒統合発信力の獲得」ができるモデル学習指導案―
1 国語科教育研究法の開拓と「学習指導案作成法」の確立
国語学力を確実に定着させる学習指導案にめぐり合うことが,きわめて少ないのはなぜでしょうか。
国語科は,すべての教科の基礎であり,国語学習で培った力が他教科や総合的な学習に生きて働かなくてはならないはずです。したがって,わかりやすく,使いやすい学習指導案がぜひ必要です。
特に,戦後半世紀以上にわたって研究を積み重ねてきた国語科教育で培った国語の力が,学校や家庭ならびに地域・社会の言語生活の向上に波及・応用されないのはなぜでしょうか。また,先生方の中には,国語科の授業が難しく確実に基礎・基本が定着した手応えを得ることが少ないという声もあります。子どもたちの中にも国語学習は嫌いだという傾向があります。このような憂慮すべき原因を追究し解決しなければなりません。
国語学力を向上することにより,全教科はもちろん,総合的な学習の時間における学習も充実し,学力向上に連動するはずです。国語科教育を充実することによって,母語・日本語の教育が徹底し,国民の資質・教養を高め,国際社会に伍していく世界の中の日本人の育成に連動するものであると確信しております。
誰にでもできる,わかりやすく,力のつく国語科授業。言語力があらゆる学習場面や日常の生活に役立つ授業。子どもたちが生き生きと言語行動を展開していく過程で確実に力がつく授業。このようなよい授業を創りたい――日々,子どもに接している先生方は,常時あるべき授業の姿を求めて実践しているものと信じております。
よい授業を創るためには,教師自身が授業力をつけることが前提条件であると考えます。研究力・指導力・授業力を高め,自信をもって授業に臨めば学習者の反応は鋭く豊かになります。国語学習大好きの子どもが多くなり,学力が向上し「自ら思考し判断し,主体的に『表現・行動』する」自己実現の学習力が高揚し,「生きて働く国語力」を駆使・運用して充実した言語生活を営むことができるようになると思います。
そのためには,「国語科研究法」を発見・開拓し,授業力の研鑽に励むことが必須条件です。この方法で自己研修・研究を積み重ねない限り,よい授業の創造はあり得ないのではないでしょうか。
国語科研究法は,「教材研究法」⇒「学習指導案作成法」⇒「授業研究・再構成法」……の実践研究サイクルを納得いくまで繰り返すことであると確信しております。これまで校内研究を共にした先生方は,この方法で切磋琢磨し研鑽して確かな授業力を獲得し,共感・感動あふれる授業ができるようになりました。その学校の研究も質的に高まり公開研究発表会で多大な成果を収めています。
このような実践的研究でないと「生きて働く国語力」を定着⇒習得⇒獲得できる授業は実現できないと思います。不徹底でマンネリ化した研究が続く限り,日々の授業を満足に展開することはできないし授業力の向上はあり得ません。戦後半世紀以上経過しても,他教科や総合的な時間の学習に波及・応用できる国語力が育たない原因も,この「国語科研究法」が未開拓であったためではないかと考えています。
本書においては「学習指導案作成法」に焦点を当て「理論と実践を統一」した研究を開拓していくことにします。その理由は,最近の現場の傾向として学習指導案の形式や内容がいろいろありすぎて,どのプランがよいのか判断に迷うという声を聞くことがあるからです。
したがって,学習者の主体的な活動によって国語学力が確実に身につくよい学習指導案の条件を明らかにし,作成の方法を無駄や無理のないように秩序化することが大切であると思います。
2 よい授業を創る学習指導案の必須条件と作成法の開発
(1) 指導すべき基礎的技能・基本的能力・統合発信力を的確に押さえる
単元や教材がねらいとしている指導事項を明記していることが重要です。特に本時の展開においては,基礎的技能と基本的能力ならびに統合発信力の,いずれの指導であるかを明確にします。このことは,言語の教育としての立場を重視した国語科の学習指導案として欠くことのできない事項です。新しい視点に立った国語科教育の学習指導案は螺旋的系統による国語科教育の体系化に基づいて作成することによって「生きて働く国語力」が確実に獲得されるはずです。従来の国語科教育は「なんのために,なにを,いつ,どのように指導するか」という常識的で至極当たり前のことが軽視され,科学的に秩序化されていなかったようです。
(2) 絶対評価の規準ならびに基準を明確にし,具体的な評価方法を明記する
指導計画の各過程では絶対評価規準を,本時の過程においては絶対評価基準を的確に設定します。特に1時間単位の授業過程においてはA・B・Cの評価項目を具体的な用語で表現し,評価の方法もわかりやすく記述することが大切です。「評価なき授業は成立しない」という原則で授業展開を工夫します。
C段階の評価項目の設定については,いろいろな考え方がありますが差別などでないことはもちろんです。国語科教育における最も重要な課題は,遅れつまずいている子どもをどのようにB段階に引き上げるかということであると確信しています。そのためにはC段階にある学習者の国語学力の実態を詳細に調査・分析し,具体的な評価項目を設定し,多様な評価方法を工夫することこそ重要であると考えています。
(3) 「学習活動」「指導事項」「指導・支援・評価」の相互関係を重視する
“生き生きと学習活動を展開する過程で指導事項が定着する授業”が実践者の目指す授業の到達目標です。その実現のために的確な指導が必要であり,支援・評価を吟味するわけです。したがって,本時の展開構造図には,この3項目が密接不離の関係にあります。これまでの学習指導案には「学習活動」と「指導上の留意点」の二つの欄だけの形式もありました。また,「学習内容」と「教師の働きかけ」と「支援・評価」の三つの欄の形式もありました。いずれにしても指導すべき基礎・基本・統合発信力が的確に記載されていないのです。このような学習指導案の内容・形式に対しては,「活動あって指導なし」の批判は当然であると思います。
(4) 「生きて働く国語学力」を完全に獲得するレベルアップの活動を編成する
国語科教育は,実践的研究に関して永い歴史と伝統があるはずです。しかし,他教科や総合的学習に波及・応用できる国語力は完全習得されていません。国語科教育の改革がさかんに主張されている現在においても抜本的な対策がないようです。したがって,易から難へのステップを踏んで「生きて働く国語力」を確実に獲得し,学力が向上していく学習のシステムを開発する必要があります。
学習の展開においては,「わかる⇒かわる⇒できる」の向上的変容過程で確実に生きて働く学習法や技能・能力が身につく学習方法を開拓します。また,「かわる」変容過程では,「ホップ⇒ステップ⇒ジャンプ」のプロセスで段階的に「生きて働く国語力」を獲得する学習指導法の組織化が今後の実践的課題です。
(5) わかりやすく役に立つ学習指導案の内容・形式を開発する
新しい視点に立つ学習指導案の主な項目は,○単元名,○単元設定の根拠,○単元目標,○児童の実態と定着する力(「関心・意欲・態度」「基礎・基本・統合発信力」〈「話す・聞く」「書く」「読む」〉),○単元の指導計画,○本時の展開(目標・展開〈「学習活動」「学習指導事項」「評価・支援・指導」〉),○学習評価,○授業評価,等です。学習指導案には略案と細案があります。いずれにも上記の項目は設定したいものです。また,略案を作成する場合にも細案の作成過程を確実に踏む心構えが必要です。
学習指導案には,授業者の人生観・国語教育観・授業観・児童観等が根底にあり,一人一人の子どもへの限りない愛や教育者としての理念・信念・情熱がこめられているものであると信じています。
「授業は教師の生命である」「教師は授業で勝負する」「生きる力を育む授業を創る」の心構えで授業に臨むことも大切です。参観者をして,「立ち去りがたい魅力ある授業」として共感・感動させるのも「客観性と独創性が調和統一」した学習指導案が原点・基盤となります。「国語科教育の改革は授業改革から」〜「よい授業創造は学習指導案の開発から」〜本書は,以上の教育理念と実践理論を根拠に企画しました。
本書の低学年・中学年・高学年の編著を担当した先生や執筆者の皆様には具体的な実践を直に実証した充実したサンプルを作成していただきました。価値ある研究を共にしたことを心から喜び感謝しています。明治図書出版企画開発室代表江部満様には本書(三巻)の企画から発刊まで,心温まる激励ご支援を賜りました。厚くお礼を申し上げます。
監修・中京女子大学名誉教授 /瀬川 榮志
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- 明治図書
- 授業をする上で参考にしたいと思います。2017/9/3040代・小学校教員
- 役にたった。(なる)2015/9/650代・小学校教員